2020.11.29
ここ数日の新型コロナ感染症の観測をまとめた(facebookのコピーである)。

11.26
内閣官房新型コロナ感染症対策本部のページには提案コーナーがあったので、下記の提案をした。大分前には東京都にも電話で提案したのだが、何も起こらないので、、、
(提案)
コロナ感染症対策の手法は、
1.個々人の感染対策(マスクの着用、換気、等)
2.他人との接触回避(外出や旅行の抑制、飲食店や劇場公演等の制限、等)
3.早期検査による陽性者の隔離(自宅待機や施設隔離)
4.感染者の治療
5.ワクチン接種
に大別されると思います。5.は開発に期待するしかありません。4.については医療関係者に大きな負担がかかっていて、これ以上の期待はできません。現状では 1.と 2.が強調されているように思います。実際それらに即効性と実効性があることは確かですが、社会経済活動に与える影響が大きい為に、徹底することには大きな困難が伴うという状況だと思います。

・・これらに比べて、政府諸機関の果たす役割が主となる3.については、長期的な効果であるためか、あまり議論されていないように思われます。その成果についてもPCR検査の数が増えている、という指標でしか語られていないように思います。しかし、3.の効果は発症日から陽性確定日までの経過日数の統計データを整備すれば、COVID-19の医学的特徴を考慮することで、かなりな精度で見積もることができます。同封の論文はその方法を提案したものです。
http://www.asahi-net.or.jp/~aw7k-mk/DSEIQRmakijp-v3.pdf
簡便には図2、あるいはより正確には式(2.22)、で見積もれます。表1にコロナ第一波とその後の解析結果がまとめてあります。今後検査体制が整備されてくると、とりわけ重要になるのが未発症の陽性者のデータですが、その場合はその後の発症日が必要になります。現状では特に重要な東京都において発症日のデータが公表されておりません。(同封の論文では神奈川、埼玉、千葉のデータを使っています。)検査体制の整備の目標設定や評価の為にも、発症日データの整備をされては如何でしょうか?スマホを利用した警告システム(COCOA)の重要性もより明確になるのではないでしょうか?

11.27
大分騒いでいるなあ、と思って、久しぶりに東京都のページを見た。対数でプロットしてみると良く判るが、第2波は終息することなく第3波に繋がっている。発症日ベースでのデータも選択できるようになったので、比較してみた。(発症日ベースで最後が下がっているのは、まだ検査されていない患者が居るからである。)黒い線は多項式近似である。

依然として発症日と検査確定日の関係を個別に公表してくれていないのだが、全体の傾向からその差が判るかなあ、と思ってピークの高さを合わせながらずらしてみたが、かなり遅延が長めに出てくるので、正確ではないだろう。第1波に比べて第2波の方が遅延が短くなっていることは言えるだろう。また第1波ではそのピークあたりで遅延が長くなっていることが判る。これらは勿論PCR検査体制が発症者数に追い付いているかどうか、を反映している。

気になったので、東京都以外の東京圏(神奈川、埼玉、千葉)について、同様のプロットをしてみた。これは個別の発症日データが公表されているので、データの記録されていない患者を排除して比較できる。第1波だけであるが、東京都に見られたような検査体制の破綻傾向が見られない。都内よりも余裕があったということだろう。

11.28
昨夜のBSTBS報道1930で北九州市長が出演していて、北九州市ではクラスター対策において、濃厚接触者のPCR検査を発症していない人についても行っていて、そのために感染終息が速やかになり、更に第3波もまだ起きていない、という事であった。
・・国の基準では濃厚接触者については発症者に限って検査するという事になっているそうで、これでは破れたザルでドジョウを掬うようなものである。北九州市では当初自腹で未発症者検査を始めたらしいが、その内厚労省も負担するようになったということである。

・・そこで、北九州市の陽性者数推移と発症日から検査確定日までの日数データを見てみた。残念ながら未発症者が後に(数日後になるが)発症した場合の発症日が記録されていないようなので、その効果の程は計算評価できない。しかし分布グラフから見て、東京圏の場合(実際上は神奈川、埼玉、千葉)の6−7月頃よりも早期検査が徹底されたことは言えそうである。未発症者隔離の効果は計算できないのだが、この範囲だけで実効再生産数の減少割合を計算できる。
北九州市、東京圏3−5月、東京圏6−7月で、それぞれ22%、12%、21%である。発症日記録の無いケースの内、どれくらいが未発症者なのか?未発症者であれば、感染力の強い期間における隔離なので、効果が大きい。

11.29
韓国でのPCR検査状況についての論文がMedRxivに出ていた。
https://doi.org/10.1101/2020.04.03.20051847
発症日から検査確定日までの平均日数が、第1波で緊急事態宣言を出す前で4.3日、宣言後は3.3日だそうである。ただし特定の分布関数形を仮定している。因みに東京圏での3−5月では生の平均で7.17日、6−7月では4.69日である。

11.29 (後日であるが、ここで使ったデータを元データと比較した処、発症日無しのケースには発症日が記載されていた。現在元データを整理中である。傾向としては合っていると思うが、北九州市と福岡市の差異はこれほど大きくはない 。)
北九州市のデータである。陽性者積算数681名の内発症日が記述されているのが143名、記述無しが681名である。(他の殆どの地域では後者の方が少ない。)これから個別シートを調べるが、記述無しは未発症あるいは不顕性(ずっと発症しない)と思われる。(東京圏では、記述無しの場合、単に記憶が曖昧だった場合もあると思われる。)5月末の余波に驚いて無症状者の検査を始めた。未発症感染者を多く見つけることで7月末の第2波を終息させていることが判る。

比較の為に、福岡市の同様な推移グラフを示す。第2波の終息状況(9月末)に大きな差異がある。北九州市では8月に未発症者として隔離されていた人達が福岡市では発症者として隔離されていて、その差異が終息に影響している。

 
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