2019.10.10
      坂本眞人『場の量子論』はなかなかの名著かもしれない。半分読んで電弱理論に入った処で貸出期限が切れて返却したら、誰かが借りてしまったので、小林富雄『超対称性とは何か』(ブルーバックス)を借りてきて読んだ。

      前半が標準理論の説明になっていて、僕はもっぱらそちらが目的であったが、結局の処数式をある程度追いかけないと納得感が得られない。その上で後半では、標準理論の不充分な処を補って、暗黒物質まで説明しようとすると、超対称性(フェルミオンとボソンを統一する)を満たす『超ひも理論』が必要となるということで、それを検証する為の様々な試みが解説されている。暗黒物質の候補としてはニュートラリーノという超対称性素粒子が有力候補らしい。これらの実験は税金の投入無しでは不可能だから、そのための解説でもあるのだろうが、ますます難しくて判らない。

      印象だけで大雑把に言えば、対称性というのはさまざまな粒子=場の励起状態がお互いに移り合って同等となることで、エネルギーレベルが上がっていくと次第にこの対称性が回復されていく。逆に下がっていくと、どこか非対称な局所安定状態に落ち着くことになる。現在の宇宙はかなり低いエネルギーレベルにあるので、そこで成り立つ標準理論の非対称性を説明するためには、より大きなエネルギーレベルで成立している対称性がどんなものか、を推定する必要があり、その検証の為には、確率的には稀であっても生じてくる高いエネルギー状態を実験的に捉まえるしかない。この間標準理論を完成させるために(質量の存在を説明するために)空想されたヒッグス粒子が観測されたばかりではあるが、まだその先がある、と言う次第である。
 
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