今日は秋分の日で休日。新聞を見ていたらルネサンス音楽をやるというので行ってみた。CADENZAというグループで、どうやら京大のハイマート合唱団のOBとOGらしい。もう19回目である。場所は太秦の右京区ふれあい会館ということで、204番で西の京円町まで行ってから歩いた。1時間以上かかってしまって、10分前にやっと着いた。

      Stage 1 がルネサンスの合唱曲で、T.L.deVictoriaという人のAveMaria, W.ByrdのVigilate、T.TallisのO sacrum convivium, パレストリーナの Nunc dimitttis、とかいってもさっぱり判らないが、パレストリーナなどでは歌詞に沿わせてか左右2群に別れて対話的に配置してあった。合唱の美しさには感動した。こういうのはステレオ再生装置では耳の悪い僕には声部が区別できなくなってしまって判らない。多分合唱をCDで聞いても退屈なのはその為なのだろう。だから、自分でやるか生で聞かないとなかなか判らないのである。

      Stage2 は信長貴富という人が立原道造の詩を作曲したものである。これもなかなか良かった。合唱というのは器楽に比べて表現が軟らかくて繊細である。多分人に聞かせるレベルになるには器楽よりも難しいのではないだろうか?曲を聞いてからあらためて歌詞を読んで深い意味が判る。ただ、合唱だけではどうしてもリズムの要素が足りなくなるので対比的にピアノなどで補うことになる。ピアノの熊谷啓子さんもなかなか良かった。

      Stage 3 はちょうど皆川達夫の本の最後に出てきた隠れキリシタンの音楽である。五島列島でひそかに継続されていて現在まで残っている祈祷曲。大変興味深かった。仏教に梵語や漢語が残っているように、キリスト教にもラテン語が残っている。ただその発音は日本語化され、音律も多少変化している。それでもやはり元はグレゴリア聖歌なのである。祈祷は漁師の歌のようなものにまで紛れていてその意味の多重化が複雑な余韻を残す。そういう音楽を千原英喜という人が合唱にまとめた曲である。ふと中学生の時の親友を思い出した。五島列島の出身で、島の事をよく話してくれた。もっともキリスト教ではなくて創価学会であって、これから学会が政治に進出するという話も聞いた。科学クラブで知り合って、ウサギの解剖をしてアルコール漬けにしたものを詳しく説明してくれた。また、校庭で遠近法についてしつこく議論したのを覚えている。僕の背丈くらいもあるおおきなキャンバスに赤ばかりを使った絵を描いていて賞を貰った。僕が生まれて初めて始めて見た抽象画であった。空手をやっていて手が岩のようになっていた。下痢ばかりしていた。うーん、これが昔の中学生という存在なのである。今どうしているだろう?

      Stage 4 は現代イギリスの作曲家 Ralph Vaughan Williams という人のミサ曲である。ミサ曲というのはカトリックの典礼音楽であって、歌詞はもう決まっているが、それをいろいろとエコーさせたり組み合わせたりして曲にまとめる。ここでは時折ソロがでてくるが、流石にソロとなると馬脚を現す感じがしてやや興ざめした。それと最後になって疲れてきたので眠くなった。アンコールが3曲あったが、多分歌いなれているのだろう。とても美しかった。

      ところで、歌っている人は陶酔しているようでとても美しく見える。まあ、これが合唱にとりつかれる理由なのだろう。気持ちは判るが、こういう曲を正しい音程で歌うには相当な訓練が必要だろうと思う。指揮も器楽よりも難しいかもしれない。

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