2024.09.12
中島みゆき関連書籍を借りに図書館に行ってきて、書架で『バッハと対位法の美学』(松原薫、春秋社)を見つけた。東大の博士論文ということである。序文と結論だけ読んだ。また暇なときに中身を読んでみよう。
勝手に要約する。バッハの生きていた時代、対位法という言葉は音楽における調和そのものを意味したが、やがて理性よりも感性が、教会よりも世俗が重視されるようになって、時間軸方向での自由な旋律的展開を束縛する対位法というものが否定的なものとして攻撃されるようになった。そのような時代の流れの中で(神の秩序を求めて?)バッハは頑固に対位法を極めていった。やがて、作曲技法が、同時並行する単音の間の調和(和声)と同時並行する旋律の間の調和(対位法)に整理されることで、バッハの極めた対位法が「古典的」価値として研究されるようになり、ソナタ形式の楽章に追加して(単一テーマの)対位法的扱いの楽章が使われるようになった。人々はその中で、自由な旋律の展開を越えて、ある種の普遍的な秩序や美学を表現することが可能であることを再発見した(バッハに教えられた)のである。このようなバッハの復活にはまた楽譜の印刷技術の普及も大きく貢献している。
博士論文データベースに本人による概要があった。・・・J.S. バッハと18世紀における対位法の美学(松原 薫)
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