昨夜は新生「なでしこ」のアルガルベカップ中国戦を観ていて、遅くなった。風呂には早く入ってしまって冷えたのか、寝付かれなかった。今日は本川町の「とん平」でお好み焼き(関西風専門店である)を食べてから、相生橋を渡った。このあたりは河岸がよく整備されていて気持が良い。4月から開催される菓子博会場(市民球場跡地)を見ながら、中央図書館の隣のひろしま美術館まで歩いた。

  「アンデルセンのメルヘン大賞、絵本画家・イラストレーター・100人の原画展」である。広島のパン屋「アンデルセン」が1983年に童話の一般公募をしたのが始まりである。審査委員長が立原えりか(1937年生まれ)で、今でも続いている。懐かしい名前である。学生の頃結構好きで、よく読んでいた。審査員に5人の絵本画家やイラストレーターを選び、彼等が選んだ5つの童話に挿絵を描いて出版している。一冊 1,050円である。今年は30周年ということで、ストーリーのさわりと一緒にその原画を展示したものである。一つのストーリーに絵が2つという展示である。ひとつひとつ丁寧に読んでは絵を眺めていたら随分時間がかかってしまった。なかなか面白い。

    童話というのはシュールリアリズムである。ディーテイルが現実的なのに、展開が奇想天外である。ふとした日常から感覚的というか実感的というか感情的というか、リアルでありながら別世界に吸い込まれていく。大括りに「民話・昔話」、「動物メルヘン」、「ユニバーサルメルヘン」と分類されていたが、確かに民話というのもそんな感じで、集落全体で見る夢のようなものである。絵本そのものも置いてあって自由に読むことができたので、幾つか読んでみたが、それぞれの応募者の来歴を反映していて、科学者も居れば農民も居る。その文体も科学的なのもあれば詩的なのもある。童話の童話たる所以はそういった文体にあるのではなくて、日常的な論理を辿っていくといつの間にか非日常世界に連れて行かれる、という夢想的なストーリーにある。どこかカオスと似ていると思った。カオスも逐次的にはキチンとした方程式なのだが、辿っていくと予測不可能な振る舞いになる。それぞれの絵はそのストーリーに触発された自由な想像が楽しい。絵に感じる自由というのは、形や色に関わってそれを解釈する脳の働きを利用しつつも絶えず裏切っていく、そのプロセスにある。つまりは生き物の面白さである。これもまたカオスか?
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