梅雨である。畑仕事が出来ないので、読書とテレビ。。。どうも知らなかったことが多い。もう少し勉強しなくてはと思う。

7月1日
      午後、NHKアーカイブで昔放映された原子炉廃棄物処理問題が放送されたのを見た。アメリカやドイツでは燃料が取り出された後の圧力容器は解体されずに地下に埋められているが、日本では解体処分が東海村の最初期の実験原子炉で試みられた。これは時間と費用がかかるだけでなく、廃棄物を増やしてしまうやりかたである。使用済み核燃料そのものについては増殖炉の目処が立たないまま青森県六ヶ所村で再処理が始まり、プルトニュームが溜まり続けて、仕方なくプルサーマルが始まったが、コスト的には無意味であるし、再処理によって新たに生じる廃棄物の問題もあって、2004年に燃料棒の直接処分が検討され始めた。しかし、「直接処分の研究が行われていないので判断できない」、という理由で再処理が再び決まったそうである。そうなると、直接処分の検討はなされないから、これではいつまで経っても直接処分はあり得ないということになってしまう。実に馬鹿馬鹿しい議論だと思う。

      その次の番組はヨーロッパにおける原発問題の3題話になっている。ドイツにおけるある街の自主的な電力会社経営の話があり、それは送電線を買い取るために、寄附によって始まったが、現在では自由化がなされて、その電力会社は大きくなっているという話。デンマークでは原子炉建設計画に対して、賛否両論併記した資料を政府が作って2年間議論した結果、反対論が優勢を占め、そこに風力発電の会社が出来た、という話。フィンランドでは原子炉の直ぐ側に電力会社の本社があり、その近くでは25万年の間使用済み核燃料を保存する施設が開発中で、1920年から稼動するという話。日本の原子力委員会での直接処分の技術が判らないという理由がこれで覆されることになる。

      誰が考えてもあり得ない結論が原子力委員会では何故推進されてしまうのだろうか?電力会社はそもそも核燃料の処分については責任を持っていないし、それに関われば原発のコストが合わなくなるので、どうでも良いと思っているし、任された科学技術庁の方では増殖炉を一途に進めてきて今更止められず、それに関わる人々が委員会の多数を占めているので自らの首を絞める結論を出す筈がないのである。国家予算が無駄に使われ続けることは、それによって財政が悪化するから勿論日本の企業にとって(特に輸出産業にとって)問題であるが、消費税さえ上げれば当面回避できると考えているようである。「専門家」による誤った政策のつけは結局税金という形で国民全員で負担しているのである。その一方で使われたお金は当事者である原子炉関連企業の利益に還元されている。

      今日はよくテレビを見る。大河ドラマ「平清盛」が終わった後、大英博物館シリーズでギリシャ彫刻というのは本来極彩色だったという話を見た。ギリシャは貧乏国であったので、先進国であるエジプトに傭兵として出稼ぎする人が多かった。彼等はエジプト文明に驚き、帰ってきて周りの人々にその様式を伝えて彫刻などを作った。その影響を受けているので彫刻も神殿も極彩色であった。17世紀までは実はこれが常識だった。しかし、産業革命によってヨーロッパの諸国が世界を制し始めると、ヨーロッパが世界に比べて優れた血統を持つ文明であることの根拠が必要となり、折りよく発見されたポンペイの遺跡に刺激されて古代ギリシャこそヨーロッパ文明の故郷である、という考えが広まったのである。ギリシャが東方の国から影響されたというのは都合が悪かった。また当時エリザベス女王の結婚式での純白のドレスが流行し、純白こそ優れたものだという感性が流行したため、大英博物館に収められていたギリシャ彫刻が一人の有力なパトロンによって表面の彩色を削られたという事件が起きた。それだけでなく至るところで、当時のギリシャ彫刻は白くなくてはならないという思い込みから削られたのである。こうして今や殆どの人がギリシャ彫刻が白い大理石に無彩色である、と思い込んでしまうようになっていた。今回精密な分光分析によって、表面に残されていた顔料が特定されるようになって、殆どの彫刻や建築物がエジプトと同じ色調であったことが明らかとなった。

      ギリシャ人というのは結局ローマ時代には社会の下層であって、ユダヤ世界におけるイエスの死を今日のキリスト教に意味変換した民族である、ということではないだろうか?彼等が社会の下層であったが故に国家のための宗教ではなく貧富の差別無く恩恵を与える宗教が必要とされた。イエスの死がそのために利用され、解釈されたのである。論理整合性や幾何学思想などは後のアラビア世界も含めて当時の地中海沿岸地帯全体の遺産である。

      その次の番組は日本人の思想というシリーズで内村鑑三と新渡戸稲造の話であった。2人とも札幌農学校という隔離された環境下でキリスト教の洗礼を受けた。また英語教育による弁舌能力を身につけた。内村はアメリカでキリスト教における信仰の意味を知り、不敬事件による排斥を乗り越えて、無教会での活動を続けた。日露戦争における絶対反戦論を唱え、このままでは日本は兵営国家になる、と警告する。内村の性格は率直であり、自分の誤りに気づけば直ぐに訂正する。また説得する術としては実務的であり、戦争にしても、それだけの戦費をどう使えばもっと良い結果が得られるか、という代案を論じる、というスタイルであった。

      新渡戸もアメリカに渡りクエーカー教徒になる。日本に帰ってからは有名な武士道の本を書く。第一次世界戦争の後に出来た国際連盟に代表として参加し、各国の文化団体や識者を組織して、後のユネスコの基礎を築いた。太平洋戦争の勃発時にはアメリカに渡り日本が平和主義であることを説いて回ったが、その甲斐もなく開戦に至り、カナダで客死する。彼の性格はクエーカー教徒らしく絶対的な楽観主義者である。話しあえば必ず判りあうと信じている。国内では女子教育を始めた。他国の文化を学び、平和主義を守るような女性を育てる事が戦争をなくす道であると信じたのである。戦後の教育基本法を作った人たちの殆どは内村と新渡戸の弟子であった。その代表は矢内原忠雄である。

7月4日
     昨夜録っておいたBS世界のドキュメンタリーでインドネシアのタバコ問題を見た。一昨年に2歳の幼児がタバコを吸っている映像がインターネットに流れて世界中が驚き、アメリカの記者が取材に行った記録である(Current TV製作)。タバコの規制がないので、アメリカのタバコ会社が生き延びる為の天国になっている。マールボロはアメリカでの規制が厳しくなると、インドネシアのタバコ会社を買収してマーケッティングのターゲットをインドネシアに向けたのである。1960年代を思わせるタバコの広告が国中に溢れていて、一本4円位で中学生がタバコを買っている。若者向けのコンサート等を主催してタバコのイメージを売りつけている。若者をニコチン中毒にして、将来予想される規制の始まりにおいても市場を維持しようという戦略である。政府の規制に対しては買収された国会議員による妨害が入る。タバコは国内で栽培生産されており、それに従事する人たちの雇用問題(400万人)としての側面やタバコによる税収が6000億円と歳入の1割もある事もあって、国会議員もタバコに反対ができなくなっている。インドネシアではタバコの害はまだ広く知られていないがやがて知られるようになれば、規制が可能となるだろう。それにしても、国際資本の貪欲さには驚く。日本の企業もこういうことを見習わなくてはならないのだろうか?それがグローバル化ということなのだろうか?

7月5日
     昨夜録っておいたナイジェリアの海底油田の話を見た。これはフランスのテレビである。アフリカ一の人口1億人のナイジェリアの三角州とその沖合いは世界有数の良質の油田となっている。地上部は既に終わっており、今は沖合いに海上の掘削船が並んでいる。パイプラインで地上に入ってタンカーに積み込む。地元では採油の時に出てくる天然ガスの燃焼(このガスだけでナイジェリアのエネルギー需要を満たすと言われている)や原油の漏れによる公害が拡がっている。もはや漁も出来ない。補償も何も無い。漁師は漏れ出た原油を集めてドラム缶製の精製設備で灯油やディーゼル油を作り、闇市場で売って生計を立てている。マングローブのジャングルだった三角州にはパイプラインが張り巡らされていて、至る所で原油が漏れていて、水辺は原油で覆われている。沖合いでとれた原油は海外に輸出されているが、ナイジェリアは石油不足であり、闇市場が国内の需要に応えているというのが現状である。設備の老朽化による流出だけでなく、石油会社と政府を相手取り、ゲリラ活動によってパイプラインの破壊を行う集団も出てきている。ところで、原油収入の行方については報道がなかった。別途調べると、中央政府と地方政府で折半しているらしい。勿論住民には行き渡らないし国内の産業に投資される訳でもない。汚職の記事や裁判記録によれば、海外の銀行に預けて投資に廻されているということであるから結局は海外の投資家に吸い取られるのであろう。
  
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