最新レビュー


8/1 - 8/31


Blue Mountain/Homegrown (Roadrunner Japan/RRCY 1043)

個人的に年間ベスト5クラスの傑作。前作も相当よかったけど、今度のアルバムは何というか、実にのびのびと自然体で作られているのだ。5や7のようにこれぞオルタナ・カントリーというアップ・テンポの曲は文句なくかっこいいし、3や10のようにしみじみと聞かせる曲がまた渋い。途中で入るスライドの音色がたまらない4では絶妙のタイミングで犬の声を入れたりして、遊び心も十分。前作に引き続きジャケットにも登場しているこの犬、どうやらウィリーという名前で、正式にヴォーカル担当(笑)のメンバーらしい。解説で山口智男氏も注目しているジム・スコット(ウィスキータウンのレビュー参照)がミックスとタンバリンを担当。プロデュースを手がけたジェフリー・リードは元アーデント・スタジオのエンジニアで、フランク・カウチ(ds)の高校時代の親友だそうです。

Jon Hiatt/Little Head (Capitol/Toshiba-EMI/TOCP-50245)

あえてここで取り上げるまでもなく話題作なのだけど、ピーター・ホルサップル参加とくれば、やはり触れずにはいられない。参加に至る経緯はよくわからないが、1,2曲の参加というみみっちいものではなく、何と全曲でピアノとオルガンを演奏している。これにはびっくりだ。もちろん内容の方は「Bring The Family」以来駄作の1枚もないジョン・ハイアットらしく手堅くまとめられており、安心してお勧めできるアルバムに仕上がっている。

10,000 Maniacs/ Love Among the Ruins (Geffen/Univarsal Victor/MVCF24009)

再結成第1弾。フロントをチェンジしてバンドの存続を図るというのはかつてフリートウッド・マックの得意技だったが(今でもやってるって?)、どうやら10,000マニアックスも同じ道を辿りだしたようだ。昔からのファンは複雑な気持ちだろうが、ジョン&メアリーにおける彼女のヴォーカルが大好きだったので、個人的にジョンとメアリーの加入は大歓迎。メアリーもナタリーの後釜というプレッシャーを見事にはねのけて、瑞々しい歌声の魅力を存分に発揮している。心なしか曲の方も以前よりさわやかになった気がする。フレッド・メイハーの中途半端に人工的なプロデュース(1と7)は全く逆効果としか思えないが(確かにロキシーのカヴァーにはふさわしいかもしれないけど)、ジョン・キーンがプロデュースした残りの曲はあくまでアコースティックな肌触りを重視しており、丁寧な仕事ぶりに好感が持てる。特に僕のお気に入りは、ジュールズ・シアーと共作した3曲のうちの1曲"Love Among the Ruins"。数あるジュールズの共作曲中でも1,2を争う出来の良さである。ほんとだよ。

Blue Rodeo/ Tremolo (Sire/73001)

カナダの正当派カントリー・ロック・バンドによる通算7枚目。ディスカヴァリーに移籍して作られた前2枚では、かなり枯れた味わいを前面に押し出していて、それはそれでまたよかったのだが、サイアー移籍第1弾となる本作では以前のさわやかさが幾分戻ってきている。カナダといえば判で押したようにロン・セクスミス、ヘイデン、アラニス・モリセットというのも悪くはないけど、こういう地道に活動を続けている中堅バンドも忘れないでね。カナダではもう一つ好きなバンドに、ブルー・ロデオよりカントリー度、ポップ度共に高い、ジュニア・ゴーン・ワイルド(解散してしまったらしい)というバンドもあるんですが、これについてはまたいずれ。

Delevantes/ Postcards from Along the Way (Capitol/7243-856179-2-8)

元ホボーケンのポップ・バンド"Who's Your Daddy"のメンバーがナッシュビルに移って始めたポップ・デュオによる2枚目。バンド名は中心メンバー、マイク・デレヴァンテ、ボブ・デレヴァンテ(実の兄弟...のはず)2人の名字からつけられている。さすが兄弟だけあって、ハーモニーは完璧。ただ主旋律を歌う方の声はちょっとダミ声で、美声マニアには不満が残るところだが、曲がいいのでそんなに細かいことは気にしないように。ラウンダーからの1st「Long about That Time」(Rounder/CD 9041)に続いて、ゲイリー・タレント(Eストリート・バンドのベーシスト)がプロデュースとベースを担当している。ベンモント・テンチも前作に引き続き参加。こういったベテラン陣のしっかりした演奏に支えられて、軽快なロックンロールから落ち着いたカントリー・ブルースまで幅広く歌いこなしている。フォスター&ロイドやマーシャル・クレンショウのファンに大推薦。

Five-Eight/ Gasolina! (Velvel/VEL79702-2)

いつの間にか出ていた新作。アセンズの4人組ギター・バンドによる3作目のフル・アルバムだ(93年のEPを入れると4枚目)。メンバーは前作と同じだが、M-1がいきなり今までになくポップでラウドなので、これはかなり変わったなという印象がまず先に立つ。マイケル・スタイプ風のヴォーカルと音圧の高いひしゃげたようなギター・サウンドは確かにファイブ・エイトの特徴だが、続くM-2も随分とキャッチーに仕上げられている。前作のレビューで僕が気にしていた、アップテンポな曲とスロー・ナンバーの極端な分離も、スローなナンバー(M-6やM-8)にラウドなギターを全面的に使用することでうまくクリアされ、アルバムの統一感は今までと比較にならないほど。変化の原因はやはりエッジの効いたギター・サウンドに定評のあるプロデューサー、エド・ステイシアム(リヴィング・カラー、スミザリーンズ、ラモーンズ他)の起用だろう。エドの持ち味が今回は上手く生かされた形となった。場合によってはパンキッシュとも言えるこの変化には是非もあろうが、これは彼らの代表作となるに違いない。

Gila Bend/ Natureburger (San Jacinto/DRAM 2025)

アリゾナの注目インディーからGila Bendの新作が出た。Gila Bendはアリゾナを拠点に活動するローレン・ダークス [Lauren Dircks] が中心となったバンド...というかユニットで、93年にドイツのスティル・セインから「Kim Chee Cowboy」(Still Sane/084-92182)をリリースしている。骨太でアーシーなロックンロールを中心とした佳作だった(リッチ・ホプキンスもゲスト参加)。メンバーには今も昔も変わらず地元の友人3人が顔をそろえている。その3人とは元ジャイアント・サンドで現ネイキッド・プレイのドラマー、トム・ラーキンス [Tom Larkins]、キャトルのリーダーでダン・スチュアートと共作アルバムも出しているアル・ペリー [Al Perry]、(この人だけ素性が分からないが)ジム・ブラックホール [Jim Blackhall]、以上である。最近2枚目を出したインスト・バンド、ディーン・オブ・フレンズ・マルティネスもそうだが、本当にアリゾナのロック・シーンではメンバー間の交流が激しく、トム・ラーキンスなど一体どれだけのアルバムに参加しているのか見当もつかないくらいだ。地域性の強さと良質な音楽はもちろん同義ではないが、購入の際ある程度の目安にはなるので、悪くはないと僕は思う。ロック色の強かった前作に比べると、今回はかなり穏やかなサウンドがメインで、少しカントリー色が強まっている。成熟を感じさせる1枚。

House of Usher/ Neptune (Lonesome Whippoorwill/INGY-005)

さすがはLonesome Whippoorwill(詳しくはレビュー(2)を見てね)。やってくれました。今までカセット・リリースのみだったハウス・オブ・アッシャーをついにCDで再発してくれたのだ。もうテープがのびる心配をしなくてもいい。それだけでもうれしいのに、ボーナス・トラック3曲つきとは! いや、もう何も言うことはありません。哀愁と郷愁のギター・ポップをこの機会に是非体験してみて下さい。僕のベスト3は"Avenue A"、"Eternity"、"Forgive and Forget"といったところ。これまた入手は難しいと思いますが、手に入れる価値は絶対あり。直接問い合わせてもいいし、Not Lameでも扱っています。