最新レビュー


7/23

Steve Almaas / Bridge Songs (Lonesome Whippoorwill/Ingy-003)

昨年の暮れに出ているという話は聞いたものの、スウェーデン盤のためなかなか見つからず、結局直接レーベルに問い合わせて入手。80年代にカントリー風ポップ・ロック・バンド、Beat Rodeoで活躍したスティーヴ・アルマースのソロ2枚目。1枚目「East River Blues」(Rock Hard/92年)同様バンド時代より穏やかなサウンドを聞かせてくれる。ミディアム・テンポのバラードには相変わらず非凡なセンスを感じさせ、派手さはないが、聞いていると心の和むアルバムだ。プロデュースは前作と同じくMark Sidgwick(ex-Holly & the Italians/House of Usher)で、ミックスを旧友ミッチ・イースターが手がけている。マーシャル・クレンショウやニック・ロウ(初期じゃなくて最近の渋いニック)のファンにお薦め。

George Usher / Miracle School (Lonesome Whippoorwill/Ingy-004)

ついに出たジョージ・アッシャーの初CD! ジョージ・アッシャーと言っても知らない人が多いだろうが、80年代にはBongos、Beat Rodeoに参加、前述のスティーヴ・アルマースと組んだGornack Brothers、自らのバンド、House of Usherなどを経て、最近はSchrammsでキーボードを弾いている、という才能あふれるマルチ・プレイヤーである。ソング・ライターとしても優れており、リチャード・バロン(ex-Bongos)のアルバムにも多数共作あり。さて、このアルバムには全12曲の素晴らしいポップ・ソングが収録されている。その内9曲は94年と95年に自主制作したカセットで発表済みのものだが(「jem」4号でレビュー済み)、ようやくCDで聞けるようになったことをまずは素直に喜びたい。ゆったりとしたテンポの中にメロディアスなセンスの光る"Miracle School", 独特の哀愁を漂わせたアップ・テンポのR&R "Railroaded", "Alexandra", フレンチ・ホルンの牧歌的な導入で始まり、途中でいきなりレノン/マッカートニー風に転調するマジカルなポップ・ソング"The Gospel According to Joe", 共作者リチャード・バロンがヴォーカルで参加した美しいバラード"Don't Be Afraid to Love", バーズ調フォーク・ロック"Not the Tremblin' Kind"等とにかく名曲満載。参加メンバーはDoug Larcey, Mark Sidgwick(2人ともHouse of Usherメンバー), Brian Doherty(ex-Silos/現They Might Be Giants), Doug Wygal(ex-Wygals)など。プロデュースはBongos時代の仲間で現Health & Happiness Showのジェイムズ・マストロ。エンジニアリングの一部をジーン・ホルダーが手がけている。マーシャルの新作もそろそろ出ている頃だし、東海岸勢が今年は頑張ってますね。


ちなみに、この2枚を出している"Lonesome Whippoorwill"は、スウェーデンのIngemar Magnusson(今年34才、スウェーデンでレコード屋「Folk a Rock」を経営)が運営する個人レーベルで、以前のRock Hard Productionsを改名したもの。ハンク・ウィリアムスの曲から取ったそうです。最近住所が変わったようで、新住所は以下の通り。同封の手紙には「"Miracle School"は好意的にレビューされているけど、あまり売れてないんだ。スウェーデンではこの手の音を受け入れるマーケットがなくてね。」なんて悲しいことが書いてありました。何だか身につまされますね。元気を出すんだ、Ingemar。日本でも状況は全然変わらないぞ(笑)。「jem」読者の皆様だけが頼りです。どうか興味のある人は下記へ連絡してみて下さい。

Ingemar Magnusson

Major SG 8A 78445

Borlange, Sweden


7/20

Kevin Salem / Glimmer (Roadrunner Japan/RRCY1011)

待望の2枚目。サン・ヴォルト、ウィルコ、ジェイホークス、ブルー・マウンテン、ボトル・ロケット等を指して「ニール・ヤングの息子達」と看破したのはビル・ロイドだけれども、このケヴィン・セイラムも同じくヤングの影響を抜きには語れない一人である。1枚目「ソーマ・シティ」(94年個人的ベスト1)でも顕著だったラフでアーシーなサウンドにはますます磨きがかかり、今回はクレイジー・ホースのフランク・サンペドロがギターで4曲参加というおまけつき。他のゲストにはESDからソロを出したばかりのシェリ・ナイト(ex-Blood Oranges)、元アルファ・バンドのデヴィッド・マンスフィールドらの名前も。メロディの切れという点では前作の方が上だったような気がするものの、ケヴィンの熱いパッションは全曲に横溢しており、張りつめた緊張感は前作を上回っている。これが日本先行発売なんだから、まだ日本も捨てたもんじゃない。あとは売れてくれればいいんだけど...(最後は弱気)。


7/10

Buzz Zeemer/ Play Thing (Record Celler/RCP057)

今年初めに出ていたアルバムだが、どこを探しても見つからないため、結局レーベルに手紙を書いて、直接入手。これがまた、なかなかの出来だったので紹介したい。以前某氏から教えてもらったバンドの概略もついでに説明しておこう。フィラデルフィアの3人組ギター・ポップ・バンド、Flight of Mavis(LPとCDを各1枚出している。ジーン・ホルダーのプロデュースでも有名)解散後、ドラムのKen Buonoは一時テキサスに移住したものの94年末に帰郷、リーダーだったFrank Brownと新バンドBuzz Zeemerを結成する。最初はWishniaksメンバーだったMarcelo Romeo、ローカル・バンドで活動していたKevin Kargを含む4人組だったが、やがてフィラデルフィアの熱血ロックンローラー、トミー・コーンウェルがKevinと入れ替わって参加(トミー側からアプローチしてきたらしい)、続いてMarceloがDave McElroy(Flight of Mavisメンバー)とチェンジして今のライン・ナップ(結局Flight of Mavis+トミーという陣容)が完成し、今年本作でデビューということになる。内容はFlight of Mavis直系のギター・ポップで、若干ルーツ色も加わって、ますます好みの音になっている。大体トミー・コーンウェルなんて本来フロントにいるべき人がサイドマンに徹していることからも、フランクの才能とバンドの充実がわかろうというもの。プロデュースはAdam Lasus(Matt Keating, Barnabys等を手がける)。ゲストでケヴィン・セイラム(!)が1曲ギターを弾いているのもうれしい。

(ホームページで音が聞けます。興味のある人はこちらへ。)


7/6

Pete Droge & The Sinners/ Find A Door (American/9 43085-2)

オレゴン州出身の優良SSWによる2枚目。プロデュースは前作同様ブレンダン・オブライエンで、聞かせてくれるのはこれまた前作同様地に足のついたネオ・ルーツ・ロック。今回結成されたSinnersはElaine Summers (back vo/Percussion), Peter Stroud (Slide guitar), David Hull (b), Dan McCarroll (ds)による5人組のバンド(Elaineのみ前作にも参加)。前作と比較して、若干南部っぽい粘っこさが出てきている。録音はアトランタとシアトル。ゲストにはJeff Calder(ex-Swimming Pool Q's/現Supreme Court)の名前も。

V.A./ Rock Live from Mountain Stage (Blue Plate/BPM-307CD)

おなじみライブ集のロック編。"I Must Be High"(Wilco), "Blue" (Jayhawks), "Welfare Music" (Bottle Rockets)、この3曲だけでも買う価値は十分ある。

Phil Seymour/ Precious to Me (The Right Stuff/Shelter/72438-37519-2-1)

ドワイト・トゥイリー・バンド出身のドラマー。解散後はソロで活躍し、「Phil Seymour」(Epic/80年)、「2」(Boardwalk/82年)の2枚を残したほか、ムーン・マーティン、20/20、テックストーンズなど数々のバンドにも参加する。最近ではビー・ジーズのトリビュート盤で名前を見ることが出来たが、93年の8月に他界している。これは1stからの3曲に未発表曲を多数加えた編集盤。キャッチーなポップ・ソングがずらりと並び、今聞くと新鮮とは言い難いが、パワー・ポップの原点を探るにはもってこいの1枚。

Disappear Fear/ Seed in the Sahara (Philo/CD1180)

もともとはソニアとシンディの女性デュオだったのが、本作からシンディが抜けてソニアを中心としたバンド編成に。プロデュースはEストリート・バンドのロイ・ビタン。以前あったような素人っぽい魅力はもう感じられず、彼女の成長が如実にうかがえる出来である。9と10で盛り上がる後半がよい。