Related Discography 解説 (渡辺睦夫)


▼Ric Ocasek  "Beatitude" 1982

言わずと知れたカ−ズのリーダー、初のソロ・アルバムである。意外といえば意外な取り合わせだけれども、ジュールズはこの頃ボストンに移ったばかりだし、エリオット(カーズのギタリスト)との交流を考えれば納得ほできる。確かカ−ズ風エレクトリック・ポップ「Something to Grab for(俺だって夢中)」が1stシングルだったと思うが、そちらに比べて、この曲は随分と地味な感じで、あまり印象に残らない。ヴォーカルのみの参加ということもあってジュールズ度は低く、よほどのファン以外聴く価値はないと断言できる。なお、盟友スティーヴン・ヘイグ(元ポーラー・べアーズ/スロー・チルドレン)もキーボードで8曲参加している。

▼Cyndi Lauper  "She's So Unusual" 1983

 「ハイスクールはダンス・テリア」や「タイム・アフター・タイム」が収録された大ヒット・デビュー・アルバム。シンディー・ローパーについては説明の必要はないだろう。ジュールズ・ファンには「オール・スルー・ザ・ナイト」のカヴァーで有名なこのアルバムだが、井作が1曲収められているというのは、つい最近までぼくも知らなかった。「シー・バップ」を連想させるこの「I'll Kiss You」は、シンセ・ビートの効いた割と実験的な作りで、大した作品ではない。

▼Elliot Easton  "Change No Change" 1985

 ジュールズ度極めて高し! エリオットが「Watch Dog」に参加してくれたことへのお返しの意味合いもあったのだろう。全曲を共作しており、はっきりいってジュールズ・ファンには見逃せない一枚だ(キーボードもステイーヴン・へイグだし)。カーズでは全く曲作りにタッチしていない人なので、ここでのポップ色がどの程度エリオットのものなのかは判断しにくいけれど、A8やB5等随所で聞けるフックのきいた甘いメロディー・ラインはまさしくジュールズのもの。エリオットには悪いが、全曲ジュールズのヴォーカルだったらと思わせるほど出来はよい。

▼Original Sound Track  "The Goonies" 1985

 シンディー・ローパーの歌う「グーニーズはグッド・イナフ」がヒットしたサントラ。スピルバーグも登場した前後編のビデオ・クリップが懐かしい。シンディーの他にはバングルス、REOスピードワゴン、フィリップ・ベイリーなどが参加している。この曲はバングルスのスザンナ・ホフス、ヴィッキー・ピーターソンとの共作で、もちろん演奏はバングルスである。出来としては中の上だが、いかにもバンクルスらしいポップ・ソングに仕上がっており、悪くはない。

▼Matthew Sweet  "Inside" 1986

 新作も好評のマシュー・スウィート。この記念すべき1stは豪華なゲスト陣でも話題を呼んだ。クリス・ステイミーやドン・ディクソンを筆頭に、ジュールズ関連では、3曲をバル・シェイザーと共作、2曲をスティーサン・ヘイグがプロデュース、1曲バッキング・ヴォーカルでエイミー・マンが参加、といった具合である。現在の渋さからはちょっと連想しづらいほどのみすみずしいポップ・ソングがぎっしりつまっており、どれも捨て難い魅力を持っているが、どれか1曲と言われれば、僕は迷わずにこの曲を選ぶだろう。両者の長所がうまくミックスされた名曲である

▼Williams Brothers  "Two Stories" 1987

 LAの双子デュオ。今までに2枚のアルバムを発表していて、こちらが1st(2ndは91年の「Williams Brothers」)。キャリアは古く、80年代初期にはあのプリムソウルズのバックをやっていたこともあるという(ピーター・ケイスとの共作もあり)。そうした豊富な人脈を裏付けるかのように、ゲスト陣は非常に豪華で、マイク・キャンベル、ビル・ペインなどが参加している。曲調は4(トム・ペティ作)や2のようなサザン・ロック風の曲と、1や5のようにAOR風の曲が半々といった感じ。この曲はどちらかといえば後者で、ジュールズらしさはあるものの、それほど出来はよくない。

▼'Til Tuesday  "Everything's Different Now" 1988

つい最近初ソロ・アルバムを出したばかりのエイミー・マンが在籍していたボストンのバンド。デビュー曲「Voices Carry」(85)のヒットで知られている。3枚のアルバムを残して解散してしまったようだが、ジュールズが絡んでいるのはこの3dのみ。当時ジュールズはエイミーの新しい恋人として紹介されており、2人の親密な交際ぶりは、エイミー作の4「J for Jules」というそのものずばりのタイトルからもうかがい知ることができる。1、5は共作ながら、それぞれジュールズらしい佳曲である。

▼Tommy Conwell & The Young Rumblers  "Rumble" 1988

フーターズとも親交のある、フィラデルフィア出身の熱血ロックン・ローラー。メジャー・デビュー作の本作はジュールズの「If We Never Meet Again」をカヴァー・ヒットさせたことで知られているが、実は1曲だけジュールズとの共作が収録されている。曲調はアルバムの他の作品同様、ストレートなロックンロール。やや一本調子なところもあるが、パワフルでよい。このトミー・コーンウェルと次に紹介するトミー・キーンの2人について、ジュールズは後に「実にうまく仕事ができた」と語っている。

▼Tommy Keene  "Based on Happy Times" 1989

元気のいいギター・ポップを聴かせるワシントンDCのSSW。84年に今は亡きドルフインから2枚のミニ・アルバムを発表(1枚目は国内盤も出た)、その後ゲフインに移って2枚のアルバムを出すが、全く売れず、現在はマタドールに移籍、92年の暮れに5曲入りEPをリリースしている。これはゲフィンに移ってからの2枚目。デビュー時から一貫しているポップでハード・エッジなギター・サウンドは、これで売れないなんて信じられないほどよい。1、5、9以外も全部名曲。ジュールズの参加云々はこの際関係ない。もともと好みなのだ。

▼Marshall Crenshaw  "Life's Too Short" 1991

ジュールズ同様、日本では冷遇されているNYのシンガー・ソング・ライター。ただし過去5作がすべてCD化されているだけましかもしれない。これは6枚目で、国内盤も出ている。スミザリーンズやラモーンズ、Cavedogsなどを手掛けたエド・ステイシアムがプロデュースを担当、今までに比べ、ギターを前面に出したハードな音作りになっている。1の疾走感、4や6の甘いメロディ、10の雄大なスケール等、マーシャルならではの持ち味が存分に生かされた傑作だと思う。そうした名曲に挟まれた9は勢いはあるものの、曲自体の出来がもう一つで、正直いって期待はずれ。しかしアルバム自体は最高の出来なので、誤解のないように。

▼Pal Shazar  "Cowbeat of My Heart" 1991

スロー・チルドレン以来のつきあいであり、現夫人でもあるパルのソロ・デビュー作を全面的にバック・アップ。他のメンバーもスチュワート・リ一マン(G。B)、デヴィッド・ビービ(k)など、ほとんど「Great Puzzle」と同じ布陣である。曲は全部パルが書いているが、シンセを多用した、いかにもニューウェイヴ風のスロー・チルドレン時代に比べ、ジュールズの影響が強いほのぼのとしたギター・ポップへと作風は変化しており、1曲目などジュールズの曲だといっても十分通用するほどだ。というわけで、曲作りにはタッチしていないけれど、ジュールズ度はかなり高いので、ファンは必聴の1枚。

▼Richard Barone  "Clouds Over Eden" 1992

しかしこうして並べてみると、この人の共作の相手は渋いね。マーシャル・クレンショウといい、トミー・キーンといい、マシュー・スウイートといい、80年代アメリカ裏ポップ史を編集するとしたら欠かせないアーティストには絶対からんでいるのだから凄い。このリチャード・バロンもその一人。dB'sやフィーリーズなどホボーケン・ポップの系譜に連なるボンゴスのリーダーで、解散後はソロを3枚発表、これが3枚目になる。傑作と言われた2ndよりスローな曲が多い(中でも5は名曲)が、これがまた渋くてよい。7もしっとり聴かせる佳曲である。ちなみに他のゲスト陣も豪華で、1、3、5を旧友ジョ−ジ・アッシャー(2本の自主製作カセットはジュールズ・ファン必聴!)と共作、2、4をマーク・ジョンソンと共作している。

▼Pursuit of Happiness  "The Downward Road" 1993

これまでの2枚はトッド・ラングレンがプロデュースしていたカナダのハード・ポップ・バンド。3年ぶりの本作は、エド・ステイシアム・プロデュースでますますパワー・アップ。例によってギターを前面に押し出したストレートな音作りだが、メロディがしっかりしているので安心して聞ける。いや、正直こんなにいいとは思ってなかった。僕のお気に入りは2なのだけど、この15も最近のジュールズ件品にしては珍しく、ごりごりギターが楽しめるポップな逸品。ライナーによるとレコード会社が、ニューヨークで曲を作るならジュールズと共作せよ、と条件を出したらしい。何だかよくわからないが、マーキュリーが立派な会社だということは確かだ。

▼Aimee Mann "Whatever" 1993

「たおれちゃった」(笑)というキャッチで国内盤が出たばかりのエイミー・マン。ジュールズとの仲はまだ続いているらしいが、本作では新しいパートナーとしでジェリ−フィッシュの新作にも参加したマルチ・アーティスト、ジョン・ブライオンを起用。ほとんどのプロデュースと演奏およぴ共作(3曲)を担当している。彼は60年代ロックに造詣が深く、マーテイ・ウィルソン・パイパー、ジュールズ、エイミーの3人による4にもメロトロンやオプティガンなどを使用し、60年代を彷彿とさせる音作りをしている。話題のロジャー・マッギンの起用(2、4に参加)もおそらく彼のアイディアに違いない。

▼The Waterboys "Dream Harder" 1993

このところ完全にトラッドしていたウォーターボーイズ、久々の新作はロックに戻って来たと評判は上々だ。個人的にはそんなに思い入れのないバンドなので、ロックしようがラップしようが別にどうでもいいのだが、移った先がニューヨークというのでは捨て置けない。案の定ジャケットはバルが描いているし、2人してヴォーカルで参加しているし、インタビューを読むと、ジミ・ヘンの夢を題材にした11以外にもまだビートルズの夢をネタにした未発表曲(題は「ビートルズ・ブルース」!)があり、それが何とジュールズとの共作で、ジュールズがレコーディングするかもしれない(!)というのだ(「クロスビート」7月号より)。…おいおい、マイク。何でジミ・ヘンよりそっちをレコーディングしなかったんだよ。悔しいけど、ジュールズの次作なんて、いつ出るかわかんないんだからさ。シングルのB面でもいいからリリ−スしてくれないかな。ねえ、聞きたいでしょ?  (以上1号より)


追加

▼The Band  "Jericho" 1993

同じウッドストックに住む縁で、何とあのザ・バンド復活作に1曲共作を提供している。共作の相手はホークスのピアニスト、Stan Szelestという人物(ザ・バンドには86年に自殺してしまったリチャード・マニュエルの後任として参加していた)。もともとリチャード・マニュエルに捧げるために作り始めたところ、作業中に今度はStanが心臓発作で急逝してしまう、という2重の悲しみに彩られたエピソードを持つバラード。

▼Joan Jett & The Blackhearts  "Flashback" 1994

もとはファン・クラブ向けのカセットに収録されていたレアな作品。ヘヴィーなギター・リフにのせたハード・ロック風の異色作で、大した出来ではないが、日本盤CDのみに収録されたボーナス・トラックで、米盤には未収録。

▼Pal Shazar  "There's A Wild Thing in the House" 1994

ジュールズの「Healing Bones」に先行して発売されていた2枚目。11曲中7曲をJulesがプロデュース(残りはPal自身)。今回の売りはやはりマイク・スコットの全面参加だろう。ギター、ピアノ以外にもPalとのデュエット曲(2)で印象的なVoを披露。対抗するかのように(笑)ジュールズも6で歌声を聞かせてくれている。その他のサポート陣は1stとほぼ同じだが、新顔も何人かいて、レックレス・スリーパーズのBrian Stanleyもその一人。

▼Kristin Hall  "Be Careful What You Wish for" 1994

ジョン・ホールの娘という噂もある女性アーティストの2枚目にヴォーカルで参加。ハスキーな声でのびのびと歌われる佳曲ぞろいで、リズム隊はジュールズの新作と同じく、ジェリー・マロッタとトニー・レヴィン。他にもマシュー・スウィート、インディゴ・ガールズのエミリー、J・セバスチャンなど豪華ゲストあり。

▼V.A.  "Borrowed Tunes" 1994

 Blue Rodeo、Cowboy Jankies、 Crash Vegasなどカナダのアーティストによるニール・ヤング・トリビュート盤。2枚組。ベアズヴィル録音が数曲あり、ジュールズはリック・ダンコらと共に2曲Voで参加している。問題の曲は1-9 ロリ・イェイツ “Helpless”と2-7 コリン・リンデン“Tonight's The Night”の2つ。“Helpless”でJulesの声が聞けるなんて!(といってもコーラスだけだが) 僕のように両者のファンにとっては実にうれしい企画だ。

▼Marshall Crenshaw "Live...My Truck Is My Home" 1994

 通算7枚目、初のライブ・アルバム。ジュールズは92年NYのライブにおいて、"Julie"1曲にヴォーカルとシェイカーでゲスト参加している。他にも参加した音源はありそうに思えるが、収録されているのは残念ながらこれ1曲だけ。

▼V.A.  "Columbia Records Radio Hour Vol。1" 1995

コロンビア系アーティストのスタジオ・ライブを収めた企画盤。ジュールズは、先日3枚目のソロを出したばかりの優良SSWジェイムズ・マクマートリーのトラック1曲にヴォーカル(とシェイカー)で友情出演している。他にブルース・コバーン、ダーデン・スミス、ピーター・ヒメルマン、レナード・コーエン等を収録。

▼Chuck Prophet  "Feast of Hearts" 1995

国内盤未発売にも関わらず、クロスビートでは95年のベスト・アルバム第9位に食い込んでいてびっくりしてしまったが、それだけ傑作なのだ。皆さんわかっていらっしゃるようで嬉しい(でもPeterCaseSon VoltBlue Mountainは影も形もなくて悲しい)。元グリーン・オン・レッドで、今まで2枚ソロを出しているチャックの3作目。Steve BerlinLos Lobos)プロデュースで、ゲストはGreg LeiszPhil Parlapiano(ex-Brothers Figaro)など。

▼Julian Dawson  "Travel On" 1995

ドイツでかなりの数のソロ・アルバムがリリースされているイギリス出身のSSW。90年にWatermelonから「Live On The Radio」を発売し、その後イアン・マシューズとの交流を深め、新生プレインソングに参加。「And That's That」「Dark Side of The Room」の後、再びソロ活動に戻っての本作ということになる。ウッドストック録音で、プロデューサーがStewart LermanとくればJulesの参加も当然か。他にNicky Hopkins、Bill Payneが参加。

▼Mike Scott  "Bring'em All In" 1995

この曲は93年の「Dream Harder」制作時にMikeがJulesと共作したもので、同アルバム収録のジミヘンの夢を題材にした作品と同じく、Mikeの見たビートルズ再結成の夢に関する歌と言われている。当時のインタビューでその存在は知られており、いつかJulesが発表するだろうと言われていた、いわくつきの作品がやっと陽の目を見たわけだ。EPのみに収録されており同題のアルバムには未収録なので、Julesファンは注意。

▼Lowen & Navarro  "Pendurum" 1995

LAのアコースティック・ポップ・デュオによる新作。これは3枚目で、Susanna Hoffs(ex-Bangles)、Phil Parlapiano、Eddie Munoz(ex-Plimsouls)らが参加した2枚目も結構良かったのだが、新作はそれを上回る出来。ゲストにGreg Leiszがいるので、おそらくは彼の紹介で共作が実現したのでは。

▼Tha Band  "High on the Hog" 1996

復帰第2作にもまたまた故Stan Szelestとの共作を1曲提供。スワンプ風の粘っこいリズムを持つ曲で、あまりジュールズらしさは感じられない。

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