その林檎は食べている者に若返りをもたらすものです。この木彫りは、その林檎をまるで世界樹ユグドラシルの上で栽培しているようにも見えますね。
トネリコの樹に林檎がなるというのもおかしなものですが・・・(笑)。
おまけに二人の女神がその林檎を育てています。してみると、林檎はイズン一人が育てていたのではないのですね。実際、イズンがロキとシャツィによって浚われるとき、イズンにロキは「イズンがほしがるような林檎を見つけたよ」と言って誘い出すのですから、イズンは「林檎を司る女神」というのではなかったようですね。さらに、フレイルの遣いとしてゲルズルに求婚したスキールニルは、彼女に十一個の林檎を差し出す約束をしていますから、林檎が神々の国のどこかで栽培されていたらしいことになります。
そんなことから、林檎は、この図のように、女神たちによって世話をされ、やがて実をつけるとイズンが摘んで、自分の筺に納めていたのではないかと思われます。
ちなみに、ワーグナーの楽劇で林檎を配って神々に若さをもたらすのは「フレイア」という女神です。これはイズンとフレイヤを合わせた性格を持っているので、もしかしたら、この彫刻に描かれている女神はイズンとフレイヤの二人かも知れません。
いずれにせよ、『エッダ』の中にはこのような場面はないので、あるいは彫刻家ダグフィン・ウェレンスキョルド氏の想像の産物かも知れません。
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