北欧語が英語に与えた語彙の「格好の」例

・もともと同じ意味を表していた語が、それぞれ別なものを表す、そんなことがあるでしょうか? そのような言葉をダブレット doublet(姉妹語、二重語)といいます。その最も有名な例の一つは古英語のscirtと古北欧語のskirtとのペアです。現代英語のshirt「シャツ」は古英語のscirtからの語。一方、現代英語の skirt 「スカート」は、古北欧語の skirt から来た語なのです。

スペリングを見ても二つの語の違いは大きなものではないことがわかるでしょうけれど、もともと 「シャツ」と「スカート」は同じものを表していた、と言われると、「なぜ?」と思ってしまうことでしょう(一瞬不思議に思うのも無理はない)。

次の絵を見て下さい。暖かいイングランドでの格好はどのようなものだったかを考えてみましょう。

おっと、失礼致しました。

これがアングロ・サクソン人の男の姿としましょう。
頭に乗っているのは金髪のおさげではなく
黄金のヘルメット(横垂れ付き)と思って下さい
なお、本物のアングロサクソン人のヘルメットに興味のある方
どうぞこちらにクリックなさって御覧下さいね。


一方、北欧の男の姿は、寒い北国から来たため

右の図のようになります。girlwithshirt2

つまり、北欧は寒いため、シャツが脚の方まですっぽり覆うようなものだった、と考えて下さい。

そこで、両者が重ね着をするとどのようになると思いますか?

これでおわかりですね。

古英語を話したアングロサクソン人の
シャツは短く、
古北欧語を話したヴァイキングたちの
シャツは長かっただけの話です。
けれど、二つを重ねると、
下の方にヴァイキングたちのskirtが
顔を出しているのですね。
そこで! そっちの方は現代英語の
skirt「スカート」に!
上の外にでている方は現代英語の
shirt「シャツ」に! なったわけです。

注意点 古英語のscirtと北欧語のskirtとを比べるとき、 語頭のスペリングに注目して下さい!

ここでわかるのは、古英語の sc- という綴りは sh- という 音を表していたのだろう、ということです!

このように、もともとは同じものを表していたはずの二つの語が、歴史的な要因から意味するものが異なるようになってしまう場合、その二つの語をダブレット=二重語(doublet)というのです。

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