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2005年3月7日

 本日銀座にて、レイ、Uボート/最後の決断、レオポルドブルームへの手紙。本日も飯を食う時間がありませんでした……。
 最近、感想が長過ぎるかな? 短くしようとは、思っているのですが……。

 レイ、『五線譜』でもそうでしたが、人生の重要な出来事の上に、ヒット曲を重ね合わせる作りで、秀逸でした。何よりジェイミーフォックスが良かったですね、『ブルースブラザーズ』にも出演していた在りし日のレイを思い出しました。演奏するシーンや、杖なしでスタスタ歩いて行く様子もそうですが、スタジオで身体を掻いている演技なども良かったですね。
 女性、麻薬、そして時々フラッシュバックする母と水死した弟の思い出を軸に、華やかなステージやスタジオでの収録シーンを折り込みながら、そしてお金の話やレコード会社を移る件、ゴスペルを歌う件、黒人差別問題の件などを絡めながら、進んでゆく展開で、見応えがありましたね。幻覚で水が出るシーンや、ハチ鳥のシーンなども面白かった。
 麻薬は、やると3倍早く書けるというのでサルトルが常用していたという話を聞いたことがありますが、芸術家が一度常用するようになると、中々抜け切れないものなのでしょうね……。抜く描写は、『フレンチコネクション2』の昔からあって、最近ではノルティの『ギャンブルプレイ』で酷い描写があったのを覚えています。視覚障害のある人は余り煙草を吸わないという話を聞いたことがありますが、彼の手元にはいつも火の付いた煙草がありましたね、これも麻薬をやっていたからなのかな。
 女性のお話も多かったですね、家庭生活が決して幸福とは言えない芸術家の方が、かえって家庭の大切さを描く作品が作れるような気がします。以前宮崎駿が、「モテる男に女性を描かせると酷い絵になる、いつも周りに女性が群がっているので、ちゃんと見たことがないからだろう」とどこかで言っていたのを覚えていますが、それと同じようなものがあるのでしょうね(^ ^)

 Uボート/最後の決断、なんと現代的な戦争映画であることよ! 当時、両軍ともにこんなに現代的なヒューマニストがいるはずがないのだけれど、「現在」の映画としてその部分を許して見ました――二次大戦の描き方も、時代とともに変化を続ける、ということでしょう。しかし、『ナヴァロンの要塞』が、初めて戦争映画にヒューマンな視点を持ち込んだと言われたのと比較すると、隔世の感がありますね。
 米潜水艦の乗り組み員がUボードを操縦しなければならなくなるのは、『U-571』を思い出す凝った作り。最後は敵味方入り乱れ、米軍の方が「味方」のUボートを救おうとし、独軍の方が沈めようとするお約束のような展開で、しかし言わばハッピーエンドになるのが分かっていたため、スリリングな展開を安心して見れて良かったです。Uボート対策が進みつつあるという背景や、敵方士官や上官への反発、伝染病というエピソードなども面白かったかな。しかし、最後にエニグマを沈めちゃうのは許せるとしても、捕虜のドイツへの移送まで希望していたとしたら少し無理があると思いますよ、戦時下にそれは無理でしょう、と……。
 主役は、この前の『セルラー』でいい役をやった人ですね、あちらではちょっとノホホンとして、薄っぺらな感じがしたけれど、本作は深みがあって良かったですね。『戦場のピアニスト』の大尉や、『オーシャンズ』のボンヤリした感じの彼(失礼)なども良かった。
 スカラ座2らしい、いい映画でした。予告編で知りましたが、スカラ座2という名称が変わって、新みゆき座か新日比谷映画かになるのですね、出来た時から通っている好きな映画館ですので、私としては少し残念かな……。

 レオポルドブルームへの手紙、ルシネマやシャンテシネで、時々こういう不思議な雰囲気の映画をやりますね。幸せな家族生活の風景から、一転して子供を愛せない母親の描写になり、片方で出所してからダイナーで働く主演男優の話がある。2つの物語がどんな風に交差するのか、お話が大きく動くラストまで、興味を抱きながら惹き付けられました。色んな形で、様々な思いを抱いて生きている人がいるんだな、と気付かされますので、時々こういう小品の秀作を見るのは良いものです。
 CM出身の監督さんなのだそうですね、それらしい色使いで、印象的なシーンが随所に見られました。不思議な雰囲気の主演男優、母親とウェイトレスという二人の女優、そしてホッパーが皆、ハマった演技で中々でした。「ユリシーズ」から取ったそうですが、正直に言えば、も少しいい題名を付けられなかったものか、と思いましたが……。