本日新宿にて、アレキサンダー、呪怨、セルラー、オーシャンズ12。新宿で、上映時間の長いものを含めて4本見れたのは良いのですが、時間の接続が良すぎて、また飯を食いっぱぐれちまいました……。
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アレキサンダー、「アジア兵」という言葉がありましたが、長い遠征を重ねるに連れ軍隊が変化を重ね、略奪集団のようになっていく様子など、史実を踏まえながら想像を膨らませて描いていた部分と、息子を権力の座に付かせようとする母の影響、若い時に虐げられ近付き難かった偉大な父の影という、作り込まれた人間物語としての描写を交差させ、壮大な絵巻物に仕上がっていました。
やっぱり一番面白かったのは、売春婦なども内包する、数万人規模の集団として移動していたという、遠征軍の描写です。故郷の政治家を暗殺しに部下を派遣したり、腹心の部下を殺してしまったり、途中で古参兵が求めたのに帰るのを拒むところや、アレキサンドリアの夢を語るところなども印象に残りました。
ホプキンスが語り部となり、父が暗殺されるシーンを後半に残すなど工夫した構成も良かったですね。鷲だとか壁画だとか、象徴的な描写も効果的でしたし、象の軍隊が現れる演出なども面白かった。男色にしたのは賛否両論あるでしょうが、私は良かったと思いますね、そのお陰で、ハーレムの中に男色のお相手がいるという、ユニークな描写が実現出来た訳ですから。
ファレルは『フォーンブース』の困った顔が印象的で、人間的確執を抱えた本作のアレキサンダーの役柄にもピッタリはまってたでしょうか。途中、母を疎む余り離れたくて遠征を続けていたとも取れる描写がありましたが、その母のアンジェリーナちゃんも、暗殺が日常茶飯という頃の人間を良く演じていたように思います。
槍を持って行進するシーン、戦場で相手を前にして整列するところなど戦闘シーン全般、暴れ馬の件りなど、影武者の影響が露に見られましたね。色使いなどもそうですし、アレキサンダーが象にやられて楯の上に寝かされて運ばれるところは、『七人の侍』で槍を並べた上に乗せられた五郎兵衛なども連想しました。オリバーストーンは黒澤のファンでしょうね。
どうでもいいですが、『アマデウス』や『マリーアントワネットの首飾り』など、英語を喋る歴史物語を見ている時、あれ、こんな英語使っていいの、と思うことが時々あります。本作では、SchoolBoyとかSchoolChildとかいう台詞があって、あれ、っと一寸違和感を感じたのだけれど、普通はどの程度許容されるのでしょうね?
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呪怨、うーん、これだとただ英語にしただけじゃないかなあ、何でもそうですが、オリジナルの方が良かった印象ですね。でも多分、『リング』などと比較しても、オリジナルが良いとリメイクの方が落ちるのは確実ですから、出来るだけオリジナルの恐さを再現しよう、ということなのでしょう。お陰で、日本家屋の中に入った時の光りの具合、暗さという、独特の味わいが残っていました。私の家にもありますが、古い日本家屋の硝子の引き戸は、ぼんやりと何かいるような気がして、それだけで恐いですよね(^ ^) 時間軸の使い方は、オリジナルの方が自由度が高かった印象です、『2』を見ているからかも知れませんが……。久々のプルマン、顔が見れた、という程度だったけど、まあ良かったですね。
私は、オリジナルの呪怨の予告編を劇場で見ていた頃、これってホントに怖がる人がいるの、ひょっとして冗談なの? と思っていたのですが(^ ^)、大きくなって良かったですね。しかし、最後の剥き出しの目は、呪怨じゃなくって、オリジナルのリングの貞子の目ですよね、思わず突っ込んでしまいました(^ ^)
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セルラー、久し振りの巻き込まれ型サスペンスかな? 思わずヒッチコックを連想しましたが、最近妙に、単純な巻き込まれ型サスペンスが恋しくなる時があります。本作は、主人公もそうですが、ベイシンガー、そして旦那さんという、二重、三重に巻き込まれている構造が面白かった。最近のハリウッドの中級サスペンスは猟奇殺人ネタが多くって、最初の内は本作もそうかと思ったけれど、そうじゃなかったのは嬉しかったですね。
また、背景に国際的な陰謀などがあるのじゃなくって、単なる汚職警官の汚職隠しだというのもかえって良かったし、汚職嫌いの警官が最後に勝つ勧善懲悪になっているのも、単純に楽しめて良かったです。この善玉警官を含め、キャラクターも皆そこそこハマっていましたね。しかし、銃を発射して充電器を買ったり、車を奪ったり、それを言わば「受け出す」ところでまた取っていっちゃったり、そこまでやるかと思ったけれど……。家族全員で助からなきゃ意味がないとか、黒澤の『隠し砦』みたいに、色々ハードルを設けてそれを苦心して突破して行く、というホンの作り方だったのでしょう。でも、検問で銃が引っ掛かったところ、悪役はおかしいと思うはずだがなあ(^ ^)
しかしあれだけ自動車で走り回って切れないのは、かえって不自然かなあ? それと、私はPHSですから分からないですが、携帯って、ホントにあんな風に混線するの? 昔はよく、固定の回線でも、あ、混線してる、とかありましたけどね。奪った車に、音声で話せる仕組みがあるのも面白かった。あんなのがあるんですね、知りませんでした……。
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オーシャンズ12、相変わらずの豪華出演陣で、二重三重のオチ、シャレた会話や話の進め方、それに今回はアムステルダムにローマにパリにコモ湖に……というヨーロッパロケの魅力も加わって、まずまず楽しませて貰いました。前のセルラーでヒッチコックを連想して、そのついでではないですが(^ ^)、例えば『北北西』の頃に観光映画が流行ったという話を聞いたことがあるけれど、最近のアメリカ映画は結構その傾向が強いように思いますね。ちょっと前だけど『ミニミニ大作戦』などもそうでしたし、アメリカ資本で国外で撮るような映画も、最近何本か見ています(『呪怨』もそうですね)。風景を眺めるだけで、もう満足してしまいますね(^ ^)
内容は、色んなモチーフを目一杯詰め込んで、小さなオチやユーモラスな展開をちりばめて、「あ、そうなんだ」とか「そういうことね」とか、見ている人をニヤニヤさせながら引き込んでしまう、という造り。キャラクターの設定も、特徴的になるようにわざとユニークな台詞を吐かせたりして、飽きさせないように工夫してあります。しかし個人的に正直に言えば、オーシャンズ7ぐらいにして貰って、もうちょっと筋の主軸が一本通るような造りにして貰った方が嬉しいかなあ、何せ『スティング』のどんでん返しが理想の人ですから(^ ^) ソダーバーグは、前作の『11』や『フルフロンタル』などもそうだったけど、わざと話をスッキリまとめないようなところがありますね、まあそれが良いのでしょうが……。
クルーニーとブラピの、それぞれの女性を巡るやり取りや、デイモンの相変わらず頑張ってます見習いモードの役柄とかは、面白かったかな。勝ち気な感じのゼタジョーンズもまずまずでした。しかし、ジュリアロバーツが本人に化けるのは、ちょいと無理があると思いますぜ、だって本人なんですから……(^ ^) スパイバウンドで見たばかりのカッセルはいい役でしたね、ハリウッドでも頑張って貰いたいものです。体操しながらセンサーをくぐり抜けるところなど、無理無理なんだけど、面白かったですね。しかし、ブルースウィリスまで出てくるとは……。
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