レースの花に赤い果実

 秋も深まり周囲の木の葉が徐々に色を変える時になって来て、真っ赤に熟した
カラスウリの実が3つ4つ、枯れた葉を付けた蔓にぶら下がっているのを見つけ
ると、何か大発見をしたような気持ちになります。

       蔓枯れて赤(アケ)目立ちたる烏瓜
            夕の風のとみに冷えける    安田 稔郎

でも意外に知られていないのがカラスウリの花です。 カラスウリは毎年同じ場
所に蔓を伸ばし、木をすっぽりと覆い、夏の夜には幻想的な花を咲かせてくれま
す。 まさかこんなレースで編んだような花が真っ赤な果実を結ぼうとは想像も
出来ませんが、夜に花を咲かせるカラスウリは人目に立たず、もっぱら赤い果実
が青空を背景にぶらさがっているのが話題の中心です。

      烏瓜かれなんとして朱を深む        松本 澄江

子どもの頃、近所の薮へ入り、カラスウリの果実を見つけると中の種子を取り出
し、その形が大黒様に似ているので縁起が良いと信じて、がまぐちの中に大切に
しまい込んだものです。 今でも家内と散歩していてカラスウリの赤い果実を見
つけると「ほら、大黒様に似ているだろう」と黒い種子を取り出して当時を思い
出して見せたりしています。 しかし、最近読んだ書物に「カラスウリの別名は
玉章(タマズサ)と言い、それは種子の形が結んだ恋文、すなわち玉章に似てい
るからだ」とありました。 

御岳の川合玉堂美術館の脇のスギに木にからむキカラスウリを家内と歩いて見つ
けましたが、果実の大きさはカラスウリの倍はあろうという立派なものでした。
キカラスウリの花はカラスウリの花が朝には閉じてしまうのに対して、山歩きを
始める10時頃でも開いていますので比較的花との出会いの機会があります。

年配の方にはおなじみのてんかふん(天瓜粉)はこのキカラスウリの根に含まれ
る澱粉が用いられたもので、夏の湯上がりにあせも防止にてんかふんをパタパタ
と身体中にふりかけられた懐かしい思い出をお持ちの方も多いと思います。

                         うめだ よしはる

  
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