朱の花/ノウゼンカズラ

 ノウゼンカズラは八月の花、散歩の道を少し変えた家の庭に朱色のノウゼンカズ
ラが空中に伸ばした枝に沢山の花を咲かせ、風に揺れている。こんな光景に出会う
と、つい足を止めてしまいます。

 外側がオレンジ色、内側が朱色をした筒形の花は英名のトランペット・フラワー
の名の通りで、見る人、誰でもを引き付けるだけの魅力を持った八月の花でしょう。

 ノウゼンカズラは凌霄花、かずらの名が示すごとく蔓性の植物で他の植物や支柱に
まつわりついて登ってゆきます。 霄は空の意味で蔓が木にまつわりついて天空を凌
ぐほどに高く登ることから凌霄花の名が与えられたといわれています。

 また、神話では、凌霄花はもと地を這う花であったが、その美しい姿に見惚れた松
が秘かに言い寄ったところ、凌霄花は松に対して、その気持ちを感謝し、自分は弱い
ものだから、松の肩を借りたいと願い、それからそびえ立つ松に凌霄花は身を寄せる
ようになったといわれます。

      咲きのぼる梢たのもし凌霄花        盧山

 今日も運動のため近所の散策路を4キロ程歩いての帰り道、住宅地に入り植木の
ウォッチングをしましたが、目立った花はノウゼンカズラ、なかにはやや小型で色
もちょっと薄めのアメリカノウゼンカズラの姿もありで、多くの家々の庭を飾って
いたのが発見でした。

 子規の「家毎に凌霄咲ける温泉かな」の句ではありませんが、「家毎に凌霄咲け
る棲家かな」と詠み代えることが出来そうです。

    秋風の吹き初めしより日の高く
             凌霄花咲くさかりなり     岡 麓

ノウゼンカズラの咲く八月、日中は暑いと言っても朝夕の涼しさに秋の気配が濃く
なり、鳴く蝉もアブラゼミからホウシゼミへと秋を感じる時期でもあります。

                        うめだ よしはる


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