難民支援

西ティモール難民を訪れて

シルベスター・アサ

 日本の教会につとめる二人のインドネシア人神父、シルベスター・アサ神父とバンバン・ルディヤント神父が8月14-26日、難民たちの支援活動のため西ティモールを訪れた。アサ神父は自身が西ティモール出身だ。以下はアサ神父の報告。(原文英語)


 私たちは日本に住むインドネシア人宣教師として、日本の友人そしてキリスト教信徒のみなさんとティモールに関する問題を議論し分かち合う場が必要だと強く思っていました。それはティモールにいる私たちの兄弟たちを援助するネットワークをつくることができる場となると考えました。
 ティモールで起きていることを正しく理解するために、そして教会として効果的な戦略をつくるために、私とジャカルタ生まれのイエズス会宣教師バンバン・ルディヤント神父は西ティモールのアタンブアを訪れました。
 東ティモールの独立を求めた政治闘争は東ティモール人の生活にはかり知れないインパクトをもたらしました。1999年8月の独立派の地滑り的勝利のあと、インドネシア軍の支援をうけたインドネシア派民兵は略奪、財産の破壊、罪もない市民の殺害、そしてほとんど全住民のインドネシア領西ティモールへの追い出しといった行為に出ました。
 西ティモールのベル県(県庁所在地はアタンブア)は東ティモールと国境を直接に接する県ですが、自身の社会経済的問題の負担に苦しんでいるところに、東ティモールからの何万人もの難民を受け入れなければなりませんでした。
 問題はいくつかあります。

社会経済的問題

 まず、物価の上昇が著しい。これに対する「インドネシア政府のサンタクロース的態度」は問題です。政府は毎月2キロの米と難民1人当たり50円の現金を援助しています。しかしこれは応急措置にすぎず、むしろ将来においては問題をつくり出すものです。政府は難民に対してずっと補助金を与えられるのか。いつまでできるのか。もしできないのなら、何をすべきか。
 次ぎに2000年9月以降、外国NGOも西ティモールでは活動していません。3人のUNHCR職員が殺されたあと逃げ出してしまったのです。東ティモールに関心が集中し、西ティモールにいる難民たちは忘れ去られてしまっています。
 また、西ティモールの平和と秩序はまだまだ弱いものです。
 そして、失業率が非常に高いため、犯罪が増えています。県内にはまだ暴力がはびこっており、ひどい貧困と不安な状況の下で、感情や緊張は容易に爆発してしまうのです。小さな誤解が大きな喧嘩に発展してしまいます。

環境問題

 難民の多くは農民です。ベトゥン郡やベシカマ郡のようなかなり豊かな地域に避難した人たちはまだ幸運です。しかし彼らは伝統的な焼き畑農業によって、難民たちは地方の条例で保護されているはずの処女林の中の土地を開拓してしまっています。先祖代々伝えられた(処女)林が畑になってしまいました。これが続けば、地域全体が環境災害を引き起こしかねません。森は多くの野生希少種の住処だと考えられています。


社会的羨望

 非常にわずかな量とはいえ、難民たちは政府や教会から援助を受けとっています。一方、西ティモールの地元の人びとは、彼ら自身非常に貧しいにもかかわらず、何ももらっていません。時にこれが社会的羨望を生み出しています。

若者たちの喧嘩

 騒乱の最中に避難してきた若者たちは西ティモールで学校教育を続けることができていません。それにはいくつか理由があります。必要な書類(卒業証明など)が紛失ないしは焼失している、両親が働くことができずお金がない、西ティモールの学校環境に適応できずやる気をなくしているといったことです。こうした若者たちの多くは西ティモールに同じような境遇の仲間を見いだします。つまり、西でも学校に行けない子どもたちは多いのです。インドネシアの義務教育は6年までですが、この6年が終わると勉強をやめてしまう子も多い。その6年すら、貧困によって終えることができない子もたくさんいます。

考察、そしてやったこと

 ティモールでは全体的なアプローチをとりながら、草の根の人びとを巻き込まないといけないと思います。つまり、いかなる措置をとるときも、人びとの完全な参加を考慮しないといけないということです。そして現地で調達できるものを考慮に入れることも大切です。
 私たちの支援は東ティモール、西ティモール両方に存在する多くの問題の解決の部分となるべきです。こうした観点から、援助は特定の民族グループに対してではなく社会全体に対してなされるべきだと考えます。
 西ティモールにはまだ数万の難民がいます。この問題の簡単な解決法はないことを認めなければなりません。これまで、力点は難民の緊急のニーズに応えるというものでした。一時的なシェルターや食糧、薬などです。しかし、もっと大きな問題があり、まともな再定住政策が必要で、それには難民のエンパワーメントを行って彼らが自立し、地域社会にとけ込めるようにしなければなりません。

若者の支援

 日本の友人、キリスト教信者、支援者の方々の援助で、ふたつのサテライト・プロジェクトを立ち上げました。それはアタンブア教区のステラ・マリス地区にあるファトゥアラとファトゥメタンでの収入向上プロジェクトです。
 将来は、奨学金を設け、ジャワにある職業訓練校との共同プロジェクトをやろうと考えています。つまり高校卒業後、優秀な生徒はジャワに進学し職業訓練を受けるのです。
 私たちは平和と和解と癒しのために働かなければなりません。傷や憎しみがあふれているところでは、私たちからの励ましのことばやなぐさめが何にもまして力あるものなのです。★



難民支援にご協力ください


西ティモールにいる難民支援活動へのカンパ
 人道支援、情報支援、帰還支援を行っている人びとに送られます。「難民支援」とお書き下さい。
 郵便振替口座:東ティモール基金
 番号:00990-4-133358

インドネシアにいる東ティモール人の子どもたちをさがす活動へのカンパ
 インドネシアに連れて行かれた東ティモール人の子どもたち約1000人を捜して両親との再会、帰還を可能にする活動に送られます。「子ども支援」とお書き下さい。
 郵便振替口座:大阪東ティモール協会
 番号:00940-6-307692


情報活動販売ホーム5号の目次