著作権・大阪東ティモール協会

東ティモールにおけるIMF

IMF in East Timor
The La'o Hamutuk Bulletin Vol.2, No.3, June 200

 前号ではIMF(国際通貨基金)の報告書を掲載したが、今回は東ティモール人から見たIMFを掲載したい。東ティモールでUNTAETを始めとする国際機関や海外NGOの活動をモニターしている東ティモールのNGO「ラオ・ハムトゥク(La'o Hamutuk:共に歩もう)」の会報からの抜粋である。



   IMFの東ティモールに対する直接的関与は、コフィ・アナン国連事務総長から(1)東ティモールへの使節団の派遣、(2)基金の専門領域での技術援助の提供、の要請を受け、IMFの理事会がそれを承認した1999年10月22日にさかのぼる。
 東ティモールはIMFのメンバーではない。IMFへの加盟権は独自の外交政策を遂行する国にのみ開かれているからである。東ティモールの外交政策は、公式にはUNTAETの責任においてなされており、現在のところ東ティモールはIMFに加盟する適格性をもたない。
 しかし、IMFは東ティモールに存在し、その政治経済の形成に役割を演じ、復興と開発に影響を及ぼしている。とくに経済制度と経済政策への関与は大きい。
 IMFの刊行物「東ティモール:健全なマクロ経済マネージメントの基盤の確立(2000年)」よると、1999年9月の余波の中にある東ティモールが適切な経済的枠組みを早急に確立することは欠くことのできないものとある。これは「すべての当事者に対し(援助国や援助機関に対しても)、東ティモールで利用される資金が効果的に用いられアカウンタビリティー(説明責任)が確保されるという相応な保証をする必要がある」ということである。この下で、IMFは「UNTAETに対する技術支援において、マクロ経済的枠組み、つまり経済の方向性を導くことと中心となる金融機関を確立することに焦点を当てることになった」とある。
 その例として、IMFは復興期間に米ドルを東ティモールの通貨とするよう導いた。たぶんこれは今までのところIMFが演じた最も議論の余地のある役割であろう。また、IMFは(東ティモールに供与された)資金を保護するためと決済を行うために中央決済機関と財務当局の設立を推奨している。東ティモール暫定行政(ETTA)の一部である財務当局は、生まれつつある新しい政府の財政戦略全般を立案する。その中には、東ティモールの総合的な予算の作成、税政策の明示、徴税の管理、現実の予算執行の調整がある。
 付け加えるに、IMFはコーヒー、ホテル、レストランの売り上げから徴税することを促している。また、IMFは東ティモール暫定行政(ETTA)の予算安定を確実にするため、東ティモール人公務員の賃金を低めに押さえるよう促している。さらに付け加えるに、IMFの2000年11月の報告書「東ティモール:最近の開発とマクロ経済アセスメント」で将来の歳出削減を予測し、賃金や給与に関し支払いの抑制が起こり、物やサービスの価格も同様に下がると予測している。例えば、IMFは次年度において賃金と給与は全体として6.5%削減する必要があり、物とサービスの価格は13%下落する必要があると予見している。
 IMFスタッフは公務員の数を相対的に少なくすること、公務員の初任給をインドネシア占領下での給与と同じレベル、おおよそ年収で1000米ドルあるいは月収で83米ドルくらいにするよう推奨している。(ちなみに現在、公務員の平均給与は月135米ドルであり、その幅は85〜361米ドルである。) IMFはティモール・ギャップの石油と天然ガス収入に関する分析と戦略的助言を提示している。また、IMFスタッフは国家統計局の設置を促しその計画を助けている。そこでは経済データを集めるのが、それだけではないにしても、主たる仕事である。
 基本的に、東ティモールには2つのIMFが存在する。一つは予算事項に関与するIMFであり、もう一つは(経済的な)技術援助を提供するIMFである。
 第一のIMFメンバーは自らを東ティモールに対するドナーの代表かつドナーへの提案者と考えている。彼らは賃金抑制に賛成である。もし彼らが財務当局の行っていることを良しとしなかったら、例えば財務当局が作成した予算が財政的に信頼できないと考えたなら、彼らはUNTAET/ETTA(東ティモール暫定行政)とドナーとの関係を難しくするポジションにいる。
 第二のIMFの技術援助の狙いは、東ティモールの新政府が予算の作成と実行、歳入の確保、決済の実行、適切な慣行や規制の作成を行うための財政基盤整備を助けることである。これに関して、IMFは財務省と中央決済機関を(当面)運営するのに必要な海外の専門家の認定と雇用を行うための手助けや、将来これらの機関を引き継ぎ運営する東ティモール人スタッフを雇用し訓練を施すための支援を行う。現在、IMFは次の地位の人々の給与の半分を負担している。財務担当閣僚(財務当局の長)、国税庁長官、中央決済機関総裁、同監督担当副総裁、同決済担当副総裁、そして同会計主任。
 東ティモールに関する2000年の刊行物の中で、IMFは東ティモールに対し、短期の財政政策を「中長期にわたって成長を維持し貧困を減少させる確固たる基盤を築くために一貫したものにするよう」促している。さらにIMFは、東ティモールが安定した長期のマクロ経済戦略を「その全プロセス、即ち計画、実施、監視、もし必要なら対象や政策の優先順位の見直しにおいても、東ティモール人の積極的参加を通して」進展させることができると論じている。しかし不幸なことに、IMFは世界銀行とは異なり、民主的に業務を行うとは思われていない。例えば、IMFは関与している国で市民社会と積極的に関わろうとはしない。願わくばであるが、この悪評にもかかわらず、(東ティモールで)IMFは自ら行ってきたアドバイスを真剣に考慮し、経済構造をつくりあげる上で東ティモール人の積極的参加を求めるようになってもらいたい。
 2000年3月15日のウォールストリート・ジャーナルによると、IMFは東ティモールに対し国際的ドナーへの依存を減少させることを支援の狙いの一つとしている。「東ティモール人は必要以上に長くチャリティーに頼りたいとは思っていない」という、IMF東ティモール派遣団特別代表のルイス・ヴァルディヴィエソの言葉を引用している。
 ラオ・ハムトゥクの会報Vol.1, No.2で、「チャリティー」という用語によって東ティモールへの国際的援助を特徴づけるのは問題だと論じた。すべての国がそうだったわけではないにせよ、多くの東ティモールのドナー国が、インドネシアに対して武器や資金、政治的支援を提供し、インドネシアの東ティモール侵略・占領を隠蔽しようとしてきたのであるから、「チャリティー」というよりそうした行為に対する「賠償」のスタートとでも言った方がいいのではないか。★

(訳・文珠幹夫)


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