著作権・大阪東ティモール協会

東ティモールの有権者意識調査

East Timor National Survey of Voter Knowledge (Preliminary Findings)


 アジア財団(Asia Foundation)が東ティモールNGOフォーラムの「有権者教育作業グループ」(KKPP)と共同し、東ティモールで全国的な有権者の意識調査を行った。調査会社「ニールセン」(AC Nielsen)がつくった質問票をもとに、21のNGOから69人が参加してつくった作業グループが1月かけて調査した。回答者は13県196村392地区にまたがり、1558人にのぼった。以下は今年5月にディリで発表されたその予備報告の要旨である。なお、末尾の提言は省略した。(訳・松野明久)

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1.国民的ムード

●75%が、国は正しい方向に向かっていると感じている。国が向かっている方向について悲観的な見方は若者にやや多く、ディリ、バウカウそして最近騒動があった地域(ビケケ)に集中している。
●国が正しい方向に向かっていると感じている人の63%が、そう思う理由として、状況が落ち着き暴力が終わったことをあげている。経済的復興をあげる人は2番目に多いが、はるかに少ない。
●女性の方が男性より、若者の方が年配者より、暴力の問題に言及する割合が高い。
●12%が国は悪い方向に向かって進んでいると感じているが、その主な理由は暴動と暴力で、次に経済問題、物価高、失業問題である。
●26%の回答者が何もよくなっていないと答えた。
●国が直面している問題として最大のものは何かという質問では、29%が暴力と政治的対立だと答えた。
●東ティモール国内や国境の治安について憂慮する人は多い。意外なことに、国境から遠いところに住む人びとの方がより心配している。また若者のあいだに治安について最も憂慮する者が多い。
●汚職、癒着、縁故主義が現在の暫定行政、将来の政府にはびこることについて憂慮する人が多い。しかも、より学歴が高い、情報へのアクセスをもつ人ほどこれらの心配をもっている。
●42%が物価高のため消費を控えていると回答した。変化なしと回答した人も27%いる。東部がもっとも物価高に打撃を受けている。
●大半が東ティモールの将来は幸福なものだとの自信をもっている。

2.市民教育

●54%が政治に関心をもっている。男性、若者、高学歴者が政治に関心が高い。
●民主主義の意味についてはっきりした認識はほとんどない。36%が民主主義とは表現の自由だと考え、11%が(倫理的な)訓戒のようなものだと考えている。誰も選挙のことだとは考えていない。
●大半が政府を家父長的な存在としてみている。ただ、東部では政府と国民は平等だとの意識が強い。
●81%が意見表明は自由だと言うものの、たったの51%しかすべての政党が地域で集会をもつことに賛成しない。ディリとバウカウでは政党活動に対する寛容さが低いという結果になっている。
●政党間の競争を悪いこととみなす人の64%が暴力・暴動の可能性を心配している。
●大半が、女性も男性同様、政治的に指導的立場につくべきだとの意見に賛成している。しかし、若い男性の方にむしろこうした意見をもつ人が少ないという傾向がみられ、また政治的リーダーシップにおける男女平等について男性より女性の方が積極的な唱道者だということは必ずしも言えない。
●56%が憲法についてまったく知らない。

3.有権者教育

●75%が選挙が今年あることを聞いているが、30%しかそれが8月30日だということを知らない。
●5%しかそれが制憲議会選挙であることを知らない。61%が大統領選挙だと思っている。
●94%が投票すると回答した。
●52%が(今回の)2001年の投票が変化をもたらすと考えている。男性、高学歴者がとくにそのことに自信をもっている。
●56%が、選挙監視員がいた方が選挙が自由で公正なものになると指摘している。大半が東ティモール人と外国人監視員の両方がいた方がいいと答えたが、外国人監視員の方が望ましいと答えた人も7%いた。

4.メディア

●ラジオは東ティモールでもっともアクセスされているメディアである。
●34%の非識字率があるにもかかわらず、テレビよりも新聞、雑誌などの方を見ている人が多い。若者、高学歴者の方が、年配者や学歴の低い人たちよりもより多くラジオを聴きテレビを見ている。
●東部の4県はとくにラジオを聴く人が少ない。
●Radio UNTAETはもっともよく聴かれているラジオ放送である。
●テレビ保有者、VCD保有者はディリに偏っている。
●テレビ・ラジオ視聴時間のピークは夕方5時から9時のあいだである。
●「スアラ・ティモール・ロロサエ」(東ティモールの声)はもっともよく読まれている新聞で、新聞を読む人の72%がこれをもっともよく読むと回答した。
●メディアにアクセスしている人たちの間でもっとも広く話され理解されている言語はテトゥン語である。
●インドネシア語はメディアで実用的な言語として使われている。

5.言語

●テトゥン語が一番理解できる言語だという人が91%、読み書きにおいてもテトゥン語が一番だという人が58%いる。
●選挙関連情報はテトゥン語でほしいという人が80%おり、17%が地域の言語でほしいと回答。インドネシア語でほしい人は3%だけである。
●地域の言語も広範に使われている。57%がテトゥン語以外の地域の言語を母語としている。一方、43%がテトゥン語を母語と回答。83%が少なくともひとつの地域の言語を理解し、16%が地域の言語で読み書きができる。
●ポルトガル語はジェンダー・バイアスが見られた唯一の言語だった。男性の21%がポルトガル語をしゃべり、19%が読めると回答したが、女性は12%しかしゃべれず、8%しか読めない。
●言語能力には世代差がみられる。若者はテトゥン語、インドネシア語、英語がよりできるが、年配者は比較的ポルトガル語ができる。25才以下の96%がテトゥン語をしゃべるが、55才以上だとこれが77%になる。25才以下の83%がインドネシア語をしゃべれるが、50才以上だと27%しかしゃべれない。35才から50才までのあいだでは、27%がポルトガル語をしゃべれるが、25才以下では11%しかしゃべれない。
●公教育をまったくかほとんど受けていない人たちはテトゥン語と地域の言語に依存する割合が高い。彼らのうち82%がテトゥン語、90%が地域の言語をしゃべる。彼らの6%だけがポルトガル語ができ、32%がインドネシア語がしゃべれる。
●非識字率は全国平均で34%、女性で41%、男性で31%。オイクシでもっとも高く(69%)、ディリ(20%)とマナトゥトゥ(18%)でもっとも低い。


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