季刊・東ティモール No. 2, January 2001

<ヒューマン・ライツ・ウォッチ報告>

東ティモールの人権
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の年次報告書から(要約)

Human Rights Watch World Report 2001: East Timor


UNTAETの司法

 国連の警察はある時から犯罪容疑者を逮捕することをやめた。1999年の暴力の容疑者も含めてだ。それは拘置所が国全体でひとつしかなくすぐにいっぱいになってしまったからだ。
 警察官は質も低く、ほとんどが3ヶ月の勤務であるため現地の事情を理解しない。東ティモール人に理解できることばをしゃべれる警官はほとんど皆無で、通訳もほとんどいない。結局CNRTの非公式の警備隊に依存しているが、警察にその行動をモニターし、監督する能力はない。また刑事手続きについて警官は指導を受けていないため、自分の国の手続きにしたがって行動していた。
 重大犯罪を捜査する警官は2000年6月になるまで人道に対する罪の捜査訓練を受けていなかった。その結果、警官たちは通常の殺人事件のように扱い、インドネシアの国家、軍の役割にはまったく注意を払おうとしなかった。
 捜査当局も何度もかわった。1999年の11月末、国連人権高等弁務官が指名した5人の委員がやってきて100人以上の証言者に面接した。11月から3月までは警察だけが捜査を担当した。しかし警察はすべての犯罪を担当しなければならなかった。そこで3月22日に戦争犯罪・人権侵害捜査チームが警察内に設けられ、人権部の捜査官が指揮することになった。しかしそれは書類上のことで、新しいチームといっても結局は警官だけ。6月にUNTAETの司法部のもとに検察がおかれ、8月には司法省が設立され、捜査権限はそこに移された。
 一方、同じ証言者に対して同じ捜査が何度も行われ、証言者たちは結果がでないこうした重複したやり方に嫌気がさすようになった。レイプ事件についての捜査はほとんどないといっていい。レイプについては7月にやっと取り組みが始まった。女性の警官は4%しかおらず、性的犯罪の捜査を行う訓練を受けていたのはたったの1人だけだ。

帰還者へのハラスメント

 帰還者へのハラスメントがおきた背景に、UNHCRやIOM(国際移住機構)が事前に帰還プログラムを帰還先の村人に伝えていないという問題がある。
 ある場合には、ディリ以外にいる警官はCNRTやファリンティルに帰還者のスクリーニングをやらせている。2月には、リキサのCNRTの「捜査チーム」が帰還した元民兵を殴り刺すという事件がおきた。4月にはティバルで民兵と疑われた人が5日間拘束されたのち(これすら違法)蹴られるなどして死亡した。またアイレウでは、ファリンティルが拘留「再教育」センターを運営しており、UNTAETはこれに介入しようとしない。

マイノリティー

 CNRTの指導者たちはマイノリティーのハラスメントに責任がある。ディリのモスクには265人がほとんど囚人のように暮らしている。エルメラとアイレウのプロテスタント教会3つが6月9日に放火にあい、牧師たちは民兵組織に関係していたと非難された。商売をしている中国系インドネシア人は、CNRTが掌握しているらしいギャングによってゆすられている。中国系ティモール人は地方の有力者とむすびついたギャングに保護料を払うことを強制されている。★

[ヒューマン・ライツ・ウォッチは米国の人権団体で事務局長のシドニー・ジョーンズは昨年夏までUNTAETの人権部長だった。]


情報活動販売ホーム