<巻頭言>

子どもたちをもう一度!

 季刊・東ティモールでは、しつこいくらいに、インドネシアに連れて行かれた子どもだちのことを記事にしている。本号でも、英字週刊誌タイムに掲載された記事を要約しているので、ぜひ読んでいただきたい。
 これは、実に、深刻な問題だ。
 大阪東ティモール協会では、この数年、インドネシアに連れて行かれた子どもたちのトレース(居場所追跡)を行っているインドネシアのNGOを支援してきた。そのNGOは、トレースだけでなく、国連やインドネシア政府、議会への働きかけも行ってきた。しかし、もう限界だという。
 それで、それまでひそかにやっていたトレースをおおやけにし、マスコミ取材を許したという。それがタイムの記事だった。オランダやオーストラリアのテレビ局も、すでに番組を作ったとのことだ。
 子どもたちを連れていった東ティモールの統合派組織は子どもたちを返したくない。預かっているカトリックの孤児院ですら、インドネシアにいた方がいい教育が受けられるなどと言っている。ましてや、本号で紹介しているイスラム教の寄宿舎は、「異教徒」の東ティモールとなど関係を絶ってしまえといわんばかりだ。国連難民高等弁務官事務所は、子どもの所在を確認しても、インドネシア政府に仲介を要請するだけ。インドネシア政府は、他にプライオリティがあるといって、動こうとしない。親を子どもと直接面会させることができれば、かなり解決しそうだ。しかし、親をインドネシアに連れていくのにはお金がかかる。
 むちゃくちゃな論理、官僚主義、無関心。大人の都合で、子どもたちは政治の波に翻弄されている。あれからもう4年になる。
 インドネシアのNGOからは、今必要なのはお金ではない、圧力だと言われた。今のインドネシアでは、バリ島での爆破事件、公共料金値上げ問題、来年に向けての過熱化する選挙戦などによって、東ティモール問題はまったく埋没してしまっている。国際的な圧力がなければ、インドネシア政府は動かない。
 さらに、東ティモール政府はどうかというと、かつてはラモス・ホルタ外相などもこの問題をインドネシアとの協議で取り上げた。しかし、その後が続かない。政治家は権力争いなどしているひまはないはずだ。
 なんとかならないのか。はがゆい思いがつのる。(ま)


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