[ リード ] 噴煙たなびく浅間山を間近に控えた秋の中軽井沢で、「ビデオ愛好 者交流会」が開催された。長野県のサークルが音頭をとって、関東甲 信越静の同好の志を集めたこの交流会には、講師としてNHKのディ レクターやエンジニアが参加し、集まった人たちから質問責めにされ ていた。その日の懇親会は深更におよび、午前2時すぎまで交歓が行 なわれていたという。 [ 本 文 ]16W×L 交流会のプログラムは、セミナー、懇親会、撮影会、評価と2日間 にわたり精密なタイムスケジュールに従って運営された。50人にも のぼる参加者の取り纏めをした、地元・主催者の苦労はひとしおであ ったとか… 以下はそのレポートである。 秋晴れの10月20日午後3時、軽井沢中央公民館で「ビデオ技術 セミナー」の幕が切って落とされた。参加者はNHK土曜朝の番組 「列島ネットワーク」の投稿者が多い。春にNHK放送センターで投 稿者の全国規模の集まりがあったが(本誌5月号)、この時以来のお 馴染みメンバーが数多く参加している。 長野県はもともと熱心なビデオサークル活動のあったところで、N HK長野局が核となり、県内組織が横に広がってきたという経緯があ る。こんどは全国規模に交流を広めようというのがその狙いのようだ。 セミナーは「よい映像を撮るには」というテーマで、講師がそれぞ れの立場から後援をおこなった。耳に残った話を2〜3紹介しよう。 ビデオ専門店「しらくら」の廣島氏いわく、 「新しい物を買っていただけるのはお店としてはうれしいんですが、 でも飾っておくのではなく使いこなしてもらいたいですね。」 逸話を2〜3 セミナーは17時30分に終了し、会場を移動してこんどは交流会 ・懇親会だ。セミナーよりこちらが目当てという人もいたくらいで交 流会はずいぶんと盛り上がりをみせた。本誌執筆の下山幸一先生も途 中から参加して会に花を添えることになった。 自己紹介のあと個別の交流がはじまった。 静岡県島田市在住の柴田さんは郵便局に勤務している。釣りのサー クルにも所属している多趣味人間だ。撮影したビデオはなんどかテレ ビでも放送されているという。いままで印象に残ったシーンはガス爆 発をとらえたものだそうだ。これは日本テレビ系で放送されたとか。 島田さんによると静岡のサークルは東部・中部・西武と3つのブロッ クに分けて組織され、月に1度の例会が開かれているそうだ。構成員 は100名を数えるというかなり大きなサークルである。 茨城県日立市の関さんは大手家電のチェーン店を経営している。い まは店を息子さんに任せて趣味のビデオに入れ込んでいるそうだ。現 在カメラは何を購入すべきかで迷っているという。狙っているのはク ォリティを考えて、業務用カメラということである。載せるVTRは Hi8にしようと思っているそうだ。 長野県上田の秋山さんは、高い機材を使わずに工夫をすることで、 機材が本来持っていない機能を引き出すのが生きがいという方である。 ハーフミラーでオーバーラップをかけたり、HiFiトラックに音だ け入れておいて、映像信号のみ、あとからインサートする方法とかア イディアのかたまりのようだ。出身がエンジニアということを聞いて 納得。 翌朝、軽井沢は霧。予報では今日はよい天気のはずだがと、ぼんや りとした空を眺めていると地元軽井沢の会員が、「なあに軽井沢は朝 はいつもこうなんですよ。9時半ころには晴れますよ」と慰めていた。 午前9時、再び中央公民館に集合した。オリエンテーションの時、 今朝早く撮影予定地にロケハンに行ってきた人の映像を見たら晴れて いる。 「ほら、山の上にいけば大丈夫。」との力強い言葉に励まされ、一行 はロケ地、雲場の池に重い機材を抱え移動を開始した。 撮影会が始まった。あいにく今日は「もみじまつり」の行事で、ス チル写真の撮影会も重なっている。池のまわりはビデオカメラマン、 スチルカメラマンで溢れんばかりだ。モデルがいる場所は団子状態で 身動きもとれない。「目せん下さ〜い」の声やら罵声やらが飛びかう 修羅場だ。おまけに今年はいつもの年より紅葉が1週間ばかり遅いそ うで、わずかなもみじに人がわっと群がるというありさま。しかしこ ういう場ではキャリアの差が歴然とでてくる。ベテランはさっさとポ ジションを決め、撮影を始めている。撮影した映像は、あとで試写を して講師の評を仰ぐことになっている。 1時間くらいで次のロケ地、碓氷峠の見晴らし台に移動した。 碓氷峠は旧中仙道の難所で、旅人は峠の茶屋でひとときの休憩をと ったという。そのせいか茶屋が多く軒を並べている。 団子がうまい、蕎がうまい。きれいな景色にひたりながら、参加者 は重い機材で疲れた体を食べ物で癒している。 天気はときどき太陽が雲の切れ間から出たり入ったりしている。そ の都度ホワイトバランスを取り直しながらぼやいている人もいた。色 温度が変わってしまっては画がつながらなくなってしまうのである。 撮影は佳境にはいり、思い通りの画が撮れて満足した人、しない人 さまざまの様子であった。午後2時頃からまた公民館に戻り、2グル ープに別れて試写と講評が始まった。撮影意図をはじめに話してもら い、そののち講師が講評する。主にカメラを振った場合の注意が多か ったようだ。いわく、このようにカメラを動かしたのはどのような理 由かなどと言うものである。カメラワークはフィックスが基本だが、 ショット毎にカメラを振ってしまう傾向を指摘されていた人が多かっ た。 交流会のプログラムは午後4時ですべて終了した。今回は第1回目 の交流会だったが、次回は静岡ビデオクラブが主催で2回目を行なう という。次期開催地を決定して閉会するというオリンピックのような 幕切れでこの交流会は終了した。 |