
ドキュメント『JVA10周年記念“軽井沢の集い”』
2001年6月16日(土)朝。雨は降っていない。それどころか薄日が射している。前日から準備のために泊り込んだ実行委員は、眠い目をこすりながらも幸先の良さにホッとした。天気予報があたっている。気象庁の予報データどおりだと今日から3日間は大丈夫だ。
13時(午後1時)。軽井沢プリンスホテル西館・国際会議場「長野の間」が暗くなる。聞こえてくる蹄の音。ヨーシ、いいぞ! と思ったところで「追分馬子唄」が出てきた。「違う、違う」と言ったときは遅かった。ここは映像とナレーションだ。予定通りにスタートしたナレーションに馬子唄が重なる。演出グループ、技術グループは混乱状態となる。お互いの無線も通じない。ここで舞台監督の川野昌子さん(千葉)がハラを決めた。「起動修正しながら進行構成表どおりに進めよう」と。これが良かった。思わぬハプニングをかかえながらも、草笛演奏と千曲川の映像(+ナレーション)によってオープニングセレモニーは終わった。
このあと、10周年記念イベントは記念講演、パネルディスカッション、第2部のパーティは、女性太鼓の演奏、ジャケットコンテスト発表、そして「千曲川」の大合唱で閉じた。
これから記すのは、『JVA結成10周年全国交流会“軽井沢の集い”』の進行ドキュメントである。一つは、参加者が交流会の記録映像を作るときの参考資料に、今一つは、私たちJVAは、この「軽井沢の集い」で貴重な体験をした。ビデオマンとして、イベントをどこまで自力でできるのか。ミスもあった。しかし失敗談を隠さない。なぜなら、このイベントはJVAに結集するビデオマンの潜在的パワーを試すものであり、すべての取り組みは私たちの財産であり、かつ今後に生かしていくべきものだからである。
6月15日(金)、午後3時。千葉操実行委員長(長野・軽井沢)と演出班の松本豊美さん(埼玉)、川野昌子さん、堀切澄江さん(千葉)、木原喜美子さん(長野)らの第一陣が、軽井沢プリンスホテル西館の予定会場を見て回る。広い「長野の間」、高い天井……。舞台の配置を想定して、プロジェクターやカメラの位置を目測し、全体の動きを頭に描く。ホテルの事情に詳しい高橋房江さん(軽井沢)が演出スタッフに加わっているのが心強い。今回の集いの参加者は150名。全国と地元に分けるにしても受付対応は混雑するだろう。「寿子さん、よろしくね」の声に、知念寿子さん(東京)が黙ってうなづく。
午後5時。実行委員長千葉操さん宅
熊谷三之さん(埼玉)、中島啓さん(神奈川)、酒井弘雄さん(千葉)、城詰豊さん(軽井沢)ら、舞台技術陣が加わる。高橋房江さん、戸田光男さん(軽井沢)、知念寿子さんを中心に会場受付体制を確かめる。前泊実行委員会は、「構成進行表」にもとづいて打ち合わせに入る。この構成表も5回目の書き直しでできた「最終稿」である。
オープニングセレモニーをいかに演出するか、「追分馬子唄」の人たちは、12時到着で時間が少ないが、リハーサルだけはちゃんとやろう。大型スクリーンに映す映像(生カメラとVTR)、追分馬子唄と草笛演奏、ナレーションのタイミング、手の込んだ演出をすべて生でやることを確認する。
3人の司会者の役割分担をはっきりとさせた上で、司会コメントを1行づつ読み合わせる。事実関係に間違いはないか、チェックしていく。第2部のパーティではアドリブ対応も増えるだろう。といっても、その場限りのアドリブではろくなことはできない。「事前の進行案掌握が気の効いたアドリブを生む」。構成の松本さんから司会陣に厳しい注文が出る。
途中、千葉さんから心配の声がかかる
「食事を摂りに行きましょうか?」
松本さんが怪訝な顔をして言う。
「どうして? そんな時間はないですよ。おにぎりでもあれば十分だから……」
おにぎりが届く。「飲み物はどうですか? ビールの人はいますか」という気配りの千葉さんに、松本さんが答える。
「ビールはいりません。お茶でも水でもいい。飲みたい人が飲めばいいんです」。
こうして休憩なし、おにぎりを片手の作業が続く。和気藹々(わきあいあい)の打ち合わせと書きたいところだが、ろくに食事も摂らないミーティングになる。
夜12時
構成演出と技術打ち合わせを終える。この頃になるとビールも解禁。ホッとした空気が流れたとき、「再生VTRを確認しながらつなげるものはつなぎましょう」と松本さん。「えーっ?」と思ったとは、後で聞いたある実行委員の声。それでも大型スクリーンのタイトル画面を作る酒井弘雄さんの顔は楽しそうに見える。この人も夜型か。映像と音声を確かめる熊谷さんと中島啓さんは入念にチェック。
16日(土)、午前3時
やっとVTR(DVCAM)がつながる。現場で手に入る2本のテープはかけかえにする。演出グループと技術グループの細かい打ち合わせはできないまま。
「もう寝ましょうか。風呂に入る人はどうぞ。24時間OKだそうです。出発は8時、それまでは朝食と準備は済ませておいてください。いいですか?」の声が響く。
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