3.プラリア  パート

☆「自立に向けて」

  未佳は路地の軒先に座り込んでぼ〜っとしていた。
この数日はずっとこんな感じだった。そう、あの桜
崎市召喚の日から。市の宣伝カーによって、未佳は
桜崎市のフィア=メルト召喚という事実を知った。
そして、今は、その宣伝カーが、勇者の力に目覚め
た者の登録を呼びかけているのが聞こえる。
  登録は出来ない。そんな事をしたら、家出中だっ
てのがばれて、桜崎市が元の世界に戻ったら、家に
連れ戻されちゃう。
「これからどうしよう...。」
未佳は途方に暮れていた。
  親が決めたレールの上をたどるだけの人生を変え
たかった。そして、グレた。大学受験を放り出して
家出した。でも、その行動も所詮、世間一般が持っ
ている若者の世間への反抗の姿をなぞっただけ。ス
テレオタイプの不良を演じているだけ。自分自身で
考え、行動してるわけじゃなかった。
  従順でおとなしく、言われた事だけをやってきた
人生。自分が、自分で考えるってことが出来ない人
間だって事を、この家出先の桜崎市召喚という事件
で未佳は思い知った。こんな所に座り込んで途方に
暮れるしかできない自分。
「く〜ぅう。」
そんな未佳の困惑をさらに深める存在が、鳴き声を
あげて未佳の頬をぺろっとなめた。

  召喚されてすぐ、どこからともなく現れた空戦騎
獣。いくら追い払っても、後をついてくる。眠って
いる所を狙って逃げ出して、まいたと思っても、い
つのまにか未佳を見つけて戻ってくる。とうとう未
佳も根負けして、この騎獣を追い払うのをあきらめ
てしまった。
  そんな騎獣の姿は、未佳に、小さい頃飼っていた
小犬を思い出させた。未佳にまとわりついて、結局
家までついてきてしまった野良犬。
  そして、勇者に対してただ盲目についてくるこの
騎獣の姿に、未佳は、自分では何も考えられない自
分自身を重ね合わせていた。
「この子は、ちゃんと自立させてやらなきゃいけな
いね。あたいみたいな人間にくっついてなくたって
生きて行けるように。」
  そのためには何をすればいい?

  未佳は頭をひとつ振ると、立ち上がった。考え込
んでいても時間が過ぎるだけ。追々考えていけばい
い。まずは、そうだ、職を見つけなきゃ。
「行くよ、ちゃっぴい。」
昔小犬を呼んでいたのと同じ名前で未佳は騎獣に呼
びかけると、後ろも振り向かずに歩きだした。

  少しづつ、だけど確実に、未佳は変わり始めた。
                                    (おしまい)

み:と、いうわけで、桜崎市召喚当時の未佳の様子
    を考えて書いてみました。なにも考えずに作っ
    た山本正とは違って、未佳の方はいろいろ考え
    てたりするのです。パラメータも機転が低くて
    イメージ通りだし。唯一の失敗は年齢。高校生
    のつもりで、18歳にして、誕生日が4月。5
    月からの途中参加だからゲーム中はずっと18
    歳だなと思ってたら、19歳になってるじゃな
    いですか!きっと年齢って、参加時期に関係な
    く、ゲーム開始時の年齢だったんだ。初回のリ
    アは、出張中に家に届いたので(2回目のアクシ
    ョンは、出張先から知り合いにメールでアクシ
    ョンNoを聞いて、普通の紙と封筒で出した)、デ
    ータ変更の権利も行使できなかったのでした。
    しくしく...。それ以外に一人称が「その他」
    のはずが、「スポーツ刈り」などという、口調
    ですらないものになってたりするんですぅ。本
    当の一人称は「あたい」です。念の為。
    その後、こんな世間知らずな不良娘を、「桜崎
    総合警備」という会社が拾って下さいました。
    以後はご存知の通りです(ってほとんどリアに載
    ったことないけど)。
    しかし、こういう自分のキャラしか出てないプ
    ラリアは書きたくない、などと1号ではほざい
    ておきながら、また今回もそのような物を書い
    てしまいました。

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