3.プラリア パート
「帰りたいなんて言わない」
艶は農家の長女として生まれた。小さい頃から家
の手伝いに明け暮れていた気がする。畑仕事、食事
の支度、そして生まれてきた弟や妹たちの子守。小
学校もほとんど行かなかった。それは、近所のどこ
の家の子供も同じ、そして、親やその親が過ごした
のと同じ子供時代。だからあんまり考えた事はなか
った。将来について。
そんな昔からの暮らしの中に現れたちょっとした
変化。
「出稼ぎに行った者が、立派な家を建てたらしい。」
最近よく聞く噂。沿海の国々の噂。豊かで、無限の
可能性を秘めた夢の都。しかし、そこは衛の山奥か
らは遥か彼方、まさに夢の中にだけ存在する国々。
行くには、何日もかかる。そして、お金も。だから、
自分がそこに行けるとは思ってもいなかった。
そんなある日、親から言われた一言、
「行ってくれるか。」
いちもにもなく艶はうなずいた。
現金収入などほとんどないはずの家でどうやって
蓄ためたのか、クシャクシャで汚れた札の束をブロ
ーカーに払い、荷馬車に乗せられ、艶は村を出た。
小さな弟が、村はずれまで追いかけてきたっけ。
それから2年。3交替で働く紡績工場と寮の3段
ベッドとの往復だけの生活。想像していたのはこん
な暮らし?でも、艶は幻滅をしたりはしなかった。
だって、水漣の人から見ればわずかな金額でも、衛
の村では絶対に稼げない金額を貰えるのだから。稼
いだお金はほとんど家に送った。
そんな毎日も最近終わった。契約を更新して貰え
なかったから。もっと器用で若い娘はいくらでもい
るから。
「想回家(おうちにかえりたい)」
同僚がよく口にしていた言葉。でも艶はそう思った
事はなかった。はやく次の仕事を見つけて、もっと
稼いで豊かになって、家族のみんなに良い生活をさ
せたい。そして、それは必ず出来る。艶はそう楽観
していた。だってここは、無限の可能性を秘めた夢
の街、水漣なんだから。
(おしまい)
み:と、いうわけで、2年前洪艶が水漣に出稼ぎに
来た時のことを考えて今回は書きました。例に
よって、考証はしてません。本当の衛の国がど
んな所かは適当に想像してます。前回の大東和
帝国の末期のイメージも、第2回のリアを見る
とだいぶ違ったようだし。い〜んだい、プラリ
アだから。このキャラ、もともとイメージとし
て現代中国の沿海部の開発区で働く地方出身の
女の子をイメージして作りましたから。まあ、
これでキャラの紹介も2人分やったし、そろそ
ろ他のPCとも絡み始めたから、自分のキャラ
だけが登場するプラリアはもう書かないつもり
です。読んでてつまんないしね、こういうの。
あ:つまらんプラリアでも、無いと個人紙の穴が埋
まらんのではないか?
ハ:だからといって、アワれなギセイシャをフヤす
のもどうかな〜とオモうし。
af5k-myzw@asahi-net.or.jp 宮澤 克彦