雑談する写真 |(スウカイナ7 目次)| (午前零時のドライブ)|

雑談する写真



保坂奎と
もっとよく見せて
ワタクシの死んでいるところ
この写真では全体がつかめないかしら
野外の自然光で奇妙に優しい影ができて
肝心の表情がみえないものね

そう言えば
紫外線にあたると 青く光る
ワタクシの大事な ペンダント・ヘッド
この写真では もう
身につけていないでしょう
かん高い早口で話しかける
太陽を模した形だった
いつも心臓は一人立ちしたがったから
そのつもりで疑似体験ゲームをしてもみたの
急にサヨナラしなきゃいけないこと
ペンダント・ヘッドは知っていたらしいわ
ワタクシが顕微鏡でよく見てくれないのが
悲しかった と大声で叫びながら
折りよく開いた自動doorから飛んでいった
自動doorは白い石の強い臭いがして
ワタクシは突然 思いだしたのよ
あの六区の部屋
高い天井がくずれないように
毎日とり換えられた 白い石の窓枠
むこうに静止する真昼の河
午後三時の道路には日本人学校の子供の列
ある日 呼び鈴がなって
出てみると 子供の一人がいて
長いkissのあいさつ
その子が黙って走り去ると
舌の上に ペンダント・ヘッドが息づいていた
身につけるとそれはいつも首すじを傷つけた

もっとよく見せて
ワタクシの死んでいる写真
ワタクシはだんだん清潔な骨に戻っていくのに
野外の自然光で奇妙に優しい影ができて
肝心の表情がみえないのはね
身につけるたび傷口からまじりこんだ
ペンダント・ヘッドの青い闇 のせいなの
紫外線にあたると 青く光った
気まぐれで 意地悪な感触の青

今や ワタクシはもう 動けないから
恥ずかしいけど 紫外線に照らされて浮かびあがる
青い光が 身体の内側に
振り子のような
複数性をもってしまうの

ああペンダント・ヘッドが
かん高い早口でしゃべる声が
この写真の中まで聞こえてくるわ

白い石でできた 窓枠はひどく新しいせいで
振り子のような 複数性をもって むこうの河まで
つぎつぎと落ちていくのだが
白い石でできた窓枠はひどく新しくて
sportを右脳でする
テーブル・トーク・ゲームが好きな
強い臭いの男の子たちを 追い越してしまう
非連続をみて、みて、と大騒ぎしながら
白い石でできた窓枠たちはひどく新しいせいで
むこうの暖かな河の淀みに どんどんおちてゆく

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