第7話 〜国民議会成立

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←教授

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人生
「前回はしょっぱいEndを迎えましたが。

助手
「まだだ、まだ終わらんよ。

教授
「ではそのまま第三身分の反撃を見ていこう。
 彼らは州毎に集って、今後の行動に関して協議した。当然、憤慨しながらな。
 ココでアベ=シェイエスが「いよいよ網を断ち切る時が来た」と言い出した。
 彼は第三身分の議員だけで独立し、自らを「
コミューン(下院)」と名乗って独自の議会を作ろうじゃないかと言い出した。

助手
「この“下院”という表現ですが、イギリス議会の下院が由来だそうです。
 余談ですが、当時のイギリスはどの国より早く産業革命を迎え、どの国よりも超が付くほどの先進国。

人生
「いいね、さすが大胆だな安倍シェイエス。

教授
「変換はきっちりやれ。
 ・・・しかしココでシェイエスはさっさと自分たちだけで作るのではなく、
 「全身分のプーヴォワール(権限)、要するに委任状を審査し、これが終わるまでは組まない」と決めたんだ。

助手
「委任状・・・つまり、議員になる為に必要な書類ですね。コレが本当に適切なものか全議員調べ、
 これが終わるまでは別になにもしませんよ としたんですね。

人生
「へぇ。

教授
「何故だ?

人生
「え?

教授
「そんな事せずに、さっさとコミューン作ってしまえばいいじゃないか。
 何故こんな時間稼ぎ紛いの事をやる必要があったんだ?

人生
「あれか、説得だろ。特権身分に。
 「王室がやる三部会なんかより、俺らの側に来ないか」みたいな。

教授
「その通り。
 別に委任状を審査する事に目的などない、なんとか特権身分もこちらに引き込めないか模索したんだな。
 ここから五週間、第三身分の議員は必死に“交渉”をした。しかし、特権身分もなかなか折れなかったんだ。

人生
「そりゃ警戒もするわな。

教授
「しかしその一方で、パリの民衆はどんどん過激になっていった。
 アーサー=ヤングが「今日は13冊、昨日は16冊、先週は92冊。これらの作品の内20分の19は自由を謳歌している」と語るように、
 再びパンフレットが舞いに舞い、人々はますます鼓舞していった。
 例のごとく街頭では誰かしらが何かしらの演説を行い、ベルサイユでは民衆が三部会議場の入り口で貴族らを罵ってたとか。
 さて、この後ろ盾を感じた第三身分の議員はどう出る?

人生
「嬉しいし、力強いだろうな。

教授
「そう、そしてやる事が大胆になっていく。第三身分が痺れを切らした形だな。
 自分たちだけで点呼を行い、それに答え、審査に応じ、通過した者だけで議会を作る事を宣言した。

人生
「特権身分から点呼に応じる人は居たのだろうか!

教授
「来たぞ。その翌日、ルセーヴ、バラール、ジャレ、以上3人の司祭(つまり第三身分寄りの第一身分)が来て、点呼に応じた。
 更に続く数日間に、16人の司祭がこれに応じた。

人生
「おお、さすが司祭。まああんだけ司祭居て全部で19人ってはちょっと寂しいけど。

教授
「まあ焦るな。
 こうしてシェイエスの発案は90対491の圧倒的多数で可決、自分たちの“下院”を
国民議会と称した。重要単語だぞ。
 議長は当時天文学者だった
バイイだ。以前に取り上げたな。覚えていたか?

人生
「バイイだもの。忘れるわけないじゃないか。

教授
「すかさず国民議会は「
解散を強制するなら税を納めない」事と、
 「
現在の国債(国の借金)は、国民議会が存在する限りは有効である」事を決めた。
 前者ですかさず緒を締めた形になるが、後者がなかなかうまい。どうしてこんな決議をしたか分かるか?

人生
「国債の貸し手が安心するから・・・だな? ・・・あれ、貸し手って誰や。

教授
「後一歩という所だ。第2話で触れたが、国相手に金を貸せる金持ちなんて“上層の”ブルジョワジーしか居ない。

助手
「これも前にお話しましたが、そのお陰で上層ブルジョワジーは第三身分に対して否定的…というより、
 王室に足並みを揃えざるを得なくなっています。この人たちを持ち上げないと、お金が返してもらえなくなりますからね。

人生
「ああそうだそうだ、だからこいつらは第三身分からいかに金を搾り上げるかを考えてたんだっけ。

教授
「その通り。
 加えて第3話で話したが、ネッケルなりカロンヌなりは、あろう事か、返す宛ても微妙なまま、更に公債を募集してしまった。
 上層ブルジョワジーの貸した額は相当な額にまで膨れあがった。
 そんな中で第三身分が近頃王室を打ち倒しそうな、おっそろしい動きを見せている。

人生
「おい待てよ! お前らが倒そうとしている人たちに俺らはカネ貸してんだよ!!

教授
「そこで「国民議会が存在する限りは国債(=お前たちが貸してる借金)は有効だ」なんて言われたらどう思う?

人生
「なんだおまえら、分かってくれてんじゃねえか、いらん心配かけさせやがってよ…(笑

教授
「そういう事。という訳で上層ブルジョワジーも安心させる、うまい作戦だった訳だ。

人生
「すげーな。そこまで頭回らんよ。

教授
「波に乗る国民議会にとうとう第一身分も我慢が出来なくなった。
 「第一身分全体で国民議会に合流しようじゃないか」という発案がなされたんだ。
 激論のすえ、137対149でコレが可決された。

人生
「そうかそうか、第一身分の議員は司祭が多かったんだっけ。

助手
「とは言え、反対に票を投じた137人(もちろん、ほぼ全てが僧正といった上級身分)は合流しようとしませんでした。
 いずれにせよ、すぐ後でお話しますが、どの道この人たちも合流する事になりますけどね。

教授
「水面下でどんどん勢いを増す第三身分(というよりはむしろ、国民議会と言う方が正しくなってきた)に、
 ルイ16世もさすがに黙っていられなくなった…と格好付けた表現をしたい所だが、
 実は王妃や王弟や特権身分の上層から“そそのかされた”というしょっぱ過ぎる引き金に過ぎない。
 ともあれ一応第三身分の審議をぶっ壊そうとする決意をした。

人生
「きっかけはともかくルイ16世ココで本気を出す訳だな! 遂に眠れる獅子が火を吹くのか?

教授
「えっと…具体的には、彼らの議会を“修理という名目で”封鎖し、
王室親衛隊(ガルド・フランセーズ)に守らせた。
 僅差で合流する事に決めた僧侶身分と合流させるのを防ごうとしたんだな。

人生
「うわー、さすがルイ16世。なんかやる事がしょっぱいぜ。

教授
「後日、第三身分の議員が訪れると、門が閉まっている、兵隊が守っている、中で大工が仕事をしている。
 もちろんそんな事で「あぁ修理ならショウガナイですよね」と言って引き下がる彼らではない。
 ムーニエ(誰だか覚えているか?)が「近くにあるテニスコートでやろうじゃないか」と提案し、それに皆が乗った。

人生
「ムーニエは覚えてないけど、それってもしかしてテニスコートの誓い?

助手
「ムーニエはほら、バルナーヴの同志ですよ! (第4話参照)

教授
「お、さすがに噛ませ犬でもココまで有名だと知っているのか。
 その通り、ココで行われたのが
球戯場の誓い(テニスコートの誓い)だ。
 「フランスで憲法が制定されて、新しい、旧制度に代わる体制が建てられるまでは決してお互い離れるものか!」
 このように誓い合ったんだな。

助手
「ダヴィドの絵「球戯場の誓い」を見ていただければ分かりますが(wikipediaにもあります)、
 中央で“誓い”を読んでいるのがバイイです。この“誓い”を書いたのはもうココではお馴染みのメンバーですね。
 バルナーヴ、ミラボー、ロベスピエール、シェイエス、etc...
 この誓い(誓約書)に署名したのは、その場に居た、一人を除いて全員である577人。

人生
「一人を除いて?

教授
「完全に余談ですが、
マルタン=ドーシュという方は署名を拒んだそうです。元々、彼は変人として皆から軽くあしらわれたそうですが・・・。
 それと……これもまた脱線しますが、球戯場とテニスコートは、厳密に言うと違います。
 当時の“球戯”はラケットの他にも手で打ったりもする、テニスの原型ともいえるスポーツでした。

教授
「この誓いから二日後、149名の高級僧侶と司祭、そして2名の貴族が合流し、国民議会のメンバーに加わった。
 149名というのはまさに、先に話した「第一身分全体で合流しないか」という発案に賛成票を投じた人数だな。

人生
「もう だれにも とめられない!

教授
「次の日、遂にルイ16世は親臨会議という場で姿を現した。

助手
「この親臨会議というのは、テニスコートの誓いより前に王が開催を決めていた会議です。
 目的は、これも同じく第三身分の審議を壊す事。
 ですが「テニスコートの誓い」や151名の特権身分の合流を経た彼ら(国民議会メンバー)の勢いを止める事は出来ませんでした。

教授
「王は「明日からは決められた議場で、身分別に別れて審議を行え」「王の承認なしに一切の議決は無効だ」と強い口調で言った。
 そして最後にこう言い放った。
 「これほどまで良い事をしているのに余を見捨てるなら、余は、我一人を国民の代表と見なし、我一人で国民の幸福をはかろう」

人生
「グータラしてたクセによく言うわ。

教授
「こうして王と貴族階級と僧侶階級(合流しなかった分)は退場した。
 しかし残った第三身分+僧侶約半分+貴族2名は、頑としてそこに居座り続けた。

人生
「居残り戦術か。

教授
「しばらくして儀典長のド=ブレゼ候が戻ってきた。三部会の時も仕切っていた奴だな。
 彼は「王の命令通り解散しろ」と言ったが、議長のバイイが丁重にお断りした。

人生
「バイイイイイイイイイイイイイイイ

教授
「すると座席の間から一人の男──
ミラボーという人物だが、ブレゼに向かってこう叫んだ。
 「行ってお前の主人に伝えとけ、俺達は人民の意志に基づいてココにいる。銃や剣の力でなければ断じてここは去らん」とな。
 これを聞いたルイ16世は、「彼らが居たいと言うなら放っておけ」と言ったそうだ。

人生
「クールに見えてダサいなルイ16世。

教授
「この勢いからか、次の日には残った僧侶の内の多数と、その次の日には47人の貴族が、
 それを見た“僧侶身分の残り全て”が、そしてとうとう“貴族身分も折れ、彼ら全て”が、国民議会に合流する事に決めた。

人生
「え、それってパーフェクト達成って事?

教授
「そう、パーフェクト達成だ。
 遂に国民議会は、三部会のメンバーをそっくりそのまま国民議会に移し変える事に成功した。
 もちろん、「王室(ネッケルやルイ16世やブレゼといった人物ら)が関与していない」という非常に大きな点を除いてな。

人生
「やるねぇ。

教授
「国民議会は名実ともに万全。三部会開会から約2ヶ月を経て、正式に成立を宣言した。
 ベルサイユのあちこちでは人々が夜通しお祭り騒ぎだったそうだ。

人生
「ちょっと、なんかエンディング迎えそうな雰囲気になってるけど。

教授
「ココでキリが良いので一応切っておくが、革命はまだまだこれからだぞ?
 革命のスタート、ココでは「バスティーユ監獄襲撃からブリュメール18日のクーデターまで」と定義しただろう。

人生
「つまり、スタート地点にも立ってないって事ですか。

教授
「さすがにそこまでは言わない。革命の範囲を決めろと言われればこう答えるしかないが、
 革命が動き出す原因から辿れば、旧制度から説明しなければいけないのは当然だからな。まあ、ココで5分の2位だろう。

人生
「半分行ってない\(^o^)/

教授
「まだまだこれから。
 次回はバスティーユ襲撃まで。少しずつ、血生臭くなってくるぞ。

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