第4話 〜三部会開催決定(前編)
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教授
「遂に革命が動き出すぞ。良かったな。
人生
「ばんざーい。
教授
「財政が圧迫しているのは前回触れたな?
人生
「国の収入の4倍の借金があるんだよな。
教授
「そうだ。ルイ14世と15世が残した負の遺産、借金に手を打たざるを得なくなった。
(14世、15世の金遣いに関しては第三話参照)
助手
「財政窮迫のエピソードですが、ルイ16世の召使たちは、酷い時には3年間1銭も貰えなかったそうです。
彼らは夜な夜なベルサイユの町に繰り出し、乞食をして歩いていたとか。
ルイ16世自身も、ブドウ酒の商人に約79万、魚と肉の商人には約340万フランの借金をしてました。
人生
「国王自身が借金ってのも情けないな。
教授
「しかしルイ16世自身は政治に全く無関心だった。毎日、狩りや乗馬や錠前造りに没頭していたんだな。
人生
「狩り、乗馬ときて「錠前作り」ってのが偉い個性的ですね。
教授
「ブルボン家の特技の一つだったらしい。その特技を受け継いでいたとかいないとか。
助手
「ブルボン家というのは王家の一つで、ルイさんのシリーズもこの血筋の一つです。
ここではあまり関係がないので省略しますが、ハプスブルク家と仲が悪かった事だけは頭に留めておいて下さい。
人生
「シリーズって、また怖い物知らずな表現ですね。。
教授
「興味はないけど財政はマズい、何かしないと。そこでルイ16世は、テュルゴーという人物を財務総監に任命した。
財務総監というのは・・・まあ日本で言う総理大臣+財務大臣みたいな役職だな。
助手
「ちなみにテュルゴーさんはリモージュという地域の知事(第1話参照)として勤めていました。
人生
「第1話じゃ、「知事は民衆を苦しめた役職だったよ」って言わなかった?
教授
「大事な一語を抜かすな。“大抵は”だ。全員が全員そういう訳ではない。
テュルゴーの主張は多岐に渡ったが、その中に「貴族らの特権を制限し、農民の負担を軽くする」というのがあった。
経費の削減によって歳入不足を補おうとした訳だな。
人生
「まあ、どう考えても一番でかい原因はそこにあるしなぁ。
教授
「で、これは成功したと思うか?
人生
「「お前らの特権を制限するから」と言って「はい、そうですか」と受け入れる気がしないんですけど。
教授
「まあ、当たり前だな。この改革に、非改革派としてパリの高等法院が横槍を入れてきた。
助手
「高等法院というのはパリを初めとして主要12都市にある機関で、
国王や大臣が出す命令や法律も、ここで登録されない限りその効力を発揮しないという、強力な権力を持つ機関でした。
ちなみに主要メンバーは官僚貴族(法服貴族)。言わずもがな、王権維持派です。
人生
「“官僚”貴族? 貴族なら何でもいいんじゃないの。
助手
「いえ、貴族間の軋轢は第二話で触れましたが、この官僚貴族も古い貴族(帯剣貴族)たちと対立しています。
人生
「めんどくさ。
助手
「絶対王政には統一した、もっときっちりした多くの機関が必要でした。行政に関しても、司法に関してもですね。
その機関を運営していくには古い貴族ではダメで、もっと教養や技術を持った貴族が必要だったんです。
そこで出てきたのが法服貴族。従来の貴族ではなく、国王が“売る”官職を買って貴族に任ぜられた人たちの事です。
人生
「金で位を買うのか。
助手
「金で成り上がってきた人たちにいきなり主要な官職を奪われたんです。古くからいる貴族がよく思う訳がありませんね。
教授
「この高等法院がテュルゴーを敵に回すと、それ(高等法院)に同調したのはどんな人たちだ?
人生
「まあ、そりゃ特権身分の人たちだろうな。自分たちの特権剥奪されそうなんだし。
教授
「正解。ルイ16世の王妃(マリー=アントワネット)やら僧侶身分から猛反発に遭い、計画は頓挫。
結局テュルゴーは辞めさせられた。
人生
「なんかいきなり見知った名前が出てきたな。
助手
「男らしい男の一人も居なかった(ルイ16世も心優しく、悪く言えば「なよなよ」していました)ベルサイユの宮廷において、
彼女はわがままに、勝手気ままに行動していたそうで。
「彼女は王をとりまく人間のうちでただ一人の男子である」とミラボーという人物が言ったというお話もあります。
教授
「テュルゴーの続いて出てきたのはクリュニー、
その後に就任(就任したのは、正確には財務総監という役職ではないんだがな)したのはネッケルだ。
この人はあろうことか、公債の募集に乗り出してしまった。
人生
「ここで公債の意味が分からないダメ日本人は俺だけかな?
助手
「公債の募集というのは、要するに「誰か金を貸してくれー」と募集する事です。
教授
「これに対しては特権身分も喜んだ。借金とはいえ、一時的に金で潤う訳だしな。
ではどうして私は“乗り出してしまった”等と否定的なニュアンスで言ったか分かるか?
人生
「ていうか、返すあて無いだろ。
教授
「そういう事だ。当時はともかく、この借金は後に余計に大きな遺恨を残す事になった。
借金はするものではないし、連帯保証人にはなるものではないな(蛇足)。
人生
「まあ、それでもネッケルは特権身分に喜ばれたんだから続けられたのか。
教授
「と言いたい所だが、同じくネッケルも特権身分から税を徴収しようとして一斉非難を浴び、辞めさせられた。
いくら金を集めようが、財政再建はそこが肝だからな。どうしてもそこに手を出さざるを得ないのだ。
人生
「腐りきってるな特権身分。
助手
「その分、この時期ではありませんが、ブルボン家の全盛期だった14世の頃の特権身分の暮らしは華やかだったそうですよ。
「革命後に生まれた者に、この世の真の快楽は永遠に分からない」なんて革命後の、ある貴族が言っていたぐらいです。
教授
「その後はジョリ、ドルメソン、カロンヌ──次々に就任者は変わっていた。
いずれも特権身分の豊潤な暮らしにメスを入れようとして辞めさせられた。というか再び公債を募集した者までいた。
人生
「まあ、要するに解決出来た人は居なかったってことか。
教授
「そして、続いてロメニーという人物が就任した時、ついに状況は一変した。
取り組んだ事は大して前任者と変わらなかった(というか、そうするしかなかった)んだが、
その中でも彼は「印紙税の導入」を訴えた。
助手
「印紙税というのは元々アメリカの植民地が取り入れていた事で、
領収書や通告状や新聞その他もろもろに「印紙」というものをはる事を命じるものです。
今風に言えば「手紙に限らず印刷物のほとんどに切手を貼らせる法律」ですね。その切手代が国庫を潤します。
教授
「先に述べたとおり、高等法院がコレを認めなければ印紙税は適用されない。
当然反対したが、これにはなんと民衆も高等法院を支持してきた。さて、何故だ?
人生
「その法令は民衆にとっても痛いから。
教授
「そういう事。しかし、ここで高等法院は更にこんな表明をしてしまった。
「我が高等法院は課税法令を登録(承認)する権利はない。この幾世紀の間、間違って行われてきた。
このような行為に対してはただ一つの権威がその権利を持つ。それは全王国の身分会議である」
どういう事だ?
人生
「今まで俺らが認める認めない決めてたけど、実は俺らにはそんな事決める権利が有りませんでした。
権利があるのは、実は全王国の身分会議だったのです!!
教授
「分かり易いな。ここで突然、高等法院は責任を身分会議に丸投げしてしまった。
この身分会議を三部会と言う。キーワードだな、死んでも忘れるな。忘れる位なら死ね。
人生
「タイトルの奴か。
教授
「再三再四に渡る国家の政策(特権身分の特権を奪おうとする政策)を打破する為に、舞台を三部会に移そうとした訳だ。
漠然と何とかなる見通しがあったのかどうかは知らないが、これが正に、正にパンドラの箱を開ける結果となった。
人生
「NO PLANだったのか。
教授
「言ってしまえばそうだな。長くなるので一旦ココで切ろう。
人生
「え、何、まだ開催決まってはいないの?
教授
「前編だしな。
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