第1話 政治体制
←人生
←教授
←助手
人生
「早速読者が敬遠しそうな話題を持ってきましたね。
教授
「自覚はある。現に、ぜんっぜん、面白くない。
ココは自己満足の世界だからな。所謂レポートで言う「裏表紙付けるか付けないか」みたいな次元だから、
「フランスの政治体制をアンシャン=レジーム(旧体制)と言うんですよー」っていうのだけ覚えて貰えれば
第2話行ってもいいとは正直思う。
人生
「そうぶっちゃけられると困るんですけど…。
助手
「そう言いつつ野次馬根性が発動した方のみ、以下を御覧下さい。
人生
「で、先生。早速出てきたそのアンシャン何とかっていう横文字は何ですか。
教授
「一言ではなかなか言いにくいんだが、まあ「主権が在民(国民)にない体制」とでも言えばいいか、絶対王政とかな。
「主権」なんてのは大分漠然とした表現だが、まあ要するに「主な権利」だな。何となく分かるだろ? イメージで。イメージ。
助手
「フランスに限って言うワードではないんですけどね。
それよりもむしろ重要な事は、16世紀〜18世紀のヨーロッパではこれ(旧体制)が当たり前だったという事実です。
人生
「えーと、すいません、絶対王政って何でしたっけ?
助手
「ぶっきらぼうに言えば、王(国によって呼び方は違うぞ)が好き勝手に政治をする形態です。
当然、好き勝手にやるんですから、憲法、法律、貴族、議会、そういったものより権限は強い、
もしくはそれ自体が存在しない事もあります。
教授
「そして革命前のフランスもまさにコレだ。
ルイ14世以来、王権神授説によって絶対王政が成り立っていたんだな。
助手
「今回出てくる「ルイ○世」さんは全部で3人。ルイ14世、15世、16世です。
本当はだいぶ後にもう少しだけ出てきますけどね。
イメージとして「16世、14世と15世の尻拭い」とだけ覚えておいて下さい。
人生
「14と15が贅沢こいて、16の時に革命が起きたって事?
助手
「そう考えてもらっても構いません。
いかにも16世に非が無いような言い方になっていますけどね(そんな事ありませんよ)。
教授
「ちなみにサラリと流してしまったが、王権神授説って何だか分かるか?
人生
「王権を神から授かったという説?
教授
「字面通りだからな。
「王様の権力ってのは神から授かったんだから、
オレのやる事は人民に縛られないし、オレのやる事に人民は反抗できないどうだ分かったか」って事。
…で、お前はこれを信じるか?
人生
「いやだなぁ、神なんて居る訳無いじゃないですか、はははは(笑)
助手
「神秘的なまでに若者ですね。
教授
「とまあ日本人はこう考えるが、当時はそう言われたらそう信じる人が居なくもない。が、ほとんど居ない、かもしれない。
どうだろう、どうなんだろうな。
人生
「分かんねえのかよ。
教授
「いや、そんな事はどうでもいいんだ。
人生
「どういう事よ。
教授
「そこは大して重要ではないからな。重要なのはもっと俗っぽい事。
王が王権神授説を唱えると喜ぶ人達がいる。それはどんな人達だ?
人生
「仏をインドだと思ってた俺に対するムチャ振りですか。
教授
「大丈夫、期待はしていないから。
正解はローマ教皇。あー…もっと簡単に言えば教会の人たち。
人生
「……なんで?
教授
「自分たちが神に仕えてるのに、王様が「私は神から王権を貰いました」と言ったらそりゃ嬉しいだろう。
助手
「ローマ教皇というのはキリスト教一派「カトリック」のボスみたいなものです。
当時のフランスのキリスト教も「カトリック」。そう言われたらローマ教皇にも嬉しい話ですね。
教授
「「フランス国王は神から王権を貰ったんだぞ? そして我々は神に仕えているのだ、どうだ偉いだろうははは」
こんな感じでふんぞり返られる。要するに王がそう言ってくれると、こちらとしても権威が保てるんだな。
こうして宗教界も王の味方をしてくれる、国王の権力もまた、宗教の権威が支えてくれるという訳だ。
助手
「何せキリスト教の最大一派、心強いのは間違いありませんね。
いざこざが全く無かったという訳ではなかったんですが、これで宗教界からは表立って対立する事はありませんでした。
教授
「ルイ14世は「朕(我)は国家なり」と豪語したし、ルイ16世も「自分がそれを望むのだからそれは適法だ」と言いのけた。
王が発布する白紙の逮捕状さえ持ってれば、誰でもいつまでも裁判無しで監禁出来たというエピソードもある。
白紙の逮捕状突きつけられて「じゃお前逮捕」って言われてみろ。どう思う。
人生
「いや、どう思うって。
教授
「まぁ、その位、王権というのは強固なモノだったという事だ。
人生
「かわいそー。
教授
「さて、具体的な政治体制というか構造について少しだけ触れておく。
この辺の名前については全く覚える必要が無いから、どんなものだったか、軽く触っておくだけにしておこう。
助手
「「1話は飛ばしていいんじゃないの」疑惑の所以です。
人生
「でもボクはついていくよ。
教授
「国王の諮問に答える枢密会議の指導の下、中央では総監、地方において、各管区(ジェネラリテ)には知事、
その下にある小管区(エレクシオン)には副知事が控えていた。
それと枢密会議とは独立した形で地方には40の県があり、内32の古くからある地方の長官は総督といって、
この人達が地方政治を行っていくという形“では”あった。ここまで大丈夫か?
人生
「限界です。
助手
「という訳で図示しました。

人生
「これ“図示”って言うんですか。
助手
「矢印引っ張ってありますし。
人生
「いや、そうだけどさ…。確かに分からなくもないけどさ…。
教授
「…先進めていいか?
人生
「あ、はい…。
…………えーっと、総監が地方政治やってんのね。
枢密会議の指導の下にある総監やら知事やらは具体的に何やってんの?
教授
「それなんだが、まず総督っていうのは、まあいわゆるお偉いさん(=位の高い貴族)が居座る地位みたいなものだ。
この地位を使って贅沢三昧をしていた訳だな。
助手
「ですので、実際にやっていたのは知事の方です。
その地域に住む住民の生殺与奪は知事が握っていました。知事の実権は結構大きかったんですね。
人生
「で、何、知事はしっかりと政務やってたの?
教授
「まあ何となく予想はつくだろうが、“大抵の”知事は悪政で市民を苦しめた。
当時各管区が36区あった事から、「36人の暴君」と批判されていたそうだ。
助手
「無理もありません。元々「各管区」や「小管区」といちいち地域を分けてる目的は、
税金を集めたりや賦役(労働など)を課す為に分けていただけ。
神奈川から20億円、埼玉から12億円、千葉から8億円、といった感じですね。
端から「市民の為に頑張ります!」という訳ではなかったんでしょう。勿論、一概にそうだったとは言い切れませんが。
人生
「なるほどねー。
教授
「今回はこんな所だ。読まなくていいと言っておきながら、ついてきてくれた人には感謝。
とにかく、王権が強い(絶対王政の気色が非常に強かった)事と、全国民の為の政治体制と言うには程遠かった事だけ覚えて貰えれば十分だ。
助手
「次回は、その“全国民”の間にのさばる“階級制度”について触れます。
前置きの中では一番重要です。是非ご覧下さい。
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