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アヤシゲ翻訳 テレビシリーズ3 エピソード4 /
            ジャンキー・フォックスの奇妙なお話 / The Strange Tale of The Crack Fox


 夜の路地

(夜の通路に、売人とナブー、ボロが登場)

売人:よう、ナブー。金は持ってきたか?
(ナブー、金を見せる)
売人:よし、良い話があるんだ。いつも電話かけてただろ。「ライオンみたいに強くなれるクリームとか、
   未来が見通せるピーナッツとか、物体浮遊とかできるいかしたクスリとかないか?」ってな。
   じゃぁ、そいつが全部ひとつになってるのがあったらどうだ?
ナブー:いいね。なんて言うの?
売人:シャーマン・ジュースさ。
ナブー:効くの?
売人:効くよ。あんなのお目にかかったことないね。爆裂ドッカーンって感じだな。
   ただ、ちょっと効力出すのにひと手間かかるんだ。こいつを持ち上げて、月の光にかざすんだ。よし、試してみろよ。
(ナブーが薬を舐め、ボロに指をかざすと、ボロが空中に浮き上がる)
ボロー:わー!
ナブー:すごいね。
売人:だろ?
ナブー:もらうよ。
売人:400ユーロな。
(金を受け取る)よっしゃ。じゃぁな、ナブー。帰らないと。ママが夕飯つくってるからな。
   たらふくスパゲッティを食うんだ。スパゲッティ好きか?
ナブー:うん。
売人:旨いよな。さてと、ついでにポテトでもゲットしてくるか。じゃあな。
ナブー:じゃ。
(売人とナブー、立ち去る)
ボロ:あのー、おーい、ナブー?

(オープニング)


 ナブティック

(ハワードがゴミを出してから店内に戻ると、ヴィンスがファッション雑誌「デイズド&コンフューズド」を読んでいる)
ヴィンス:信じらんねぇ、ふんどしがまた流行るって言うんだぜ。
ハワード:そうか?試してみたらどうだ?
ヴィンス:想像できないな。デイズド&コンフューズドに載ってる連中がそんなの絞めてるなんてさ。
ハワード:お前がデイズド&コンフューズドに載ってるわけじゃないだろ。
     このダルストンの、リサイクル・ショップ店員なんだから。なんでもっとましなことが出来ないんだよ。
     お前が、ここの弱点
(ウィーク・リンク)なんだぞ。
ヴィンス:俺は重要人物だぞ。ナブーがそう言ってたもん。俺がこの店に色を添えてるってな。
ハワード:ナブーが?今はここに居ないし、俺がその代役だ。こんどは、お前が力仕事の番だ。
     この、俺が頑丈かつ衛生的に梱包し、縛り上げたゴミを出してこい。
ヴィンス:わかった、わかった。髪の毛でも手入れしてろ。やるよ。
(ヴィンス、ゴミ袋を裏口から中庭に放り出す。ハワード、びっくりしたような顔)
ヴィンス:なんだよ。
ハワード:お前、なにやってんだ。
ヴィンス:ゴミを放り出したの。お前が頼んだんだろ。
ハワード:裏口から放り出すなんて、ありえない。
ヴィンス:なんで?
ハワード:ここは廃棄許可地域(Designated Refuse Area)じゃないだろ。
ヴィンス:なんだって?
ハワード:DRAさ。
ヴィンス:それ、何の話だ?
ハワード:道に放り出したゴミはどうなると思う?
ヴィンス:知らん。雨に濡れたベロッカ(ビタミン・タブレット)みたいに、分解されるとか?
ハワード:違う。ビン・マン(ごみ箱マン)が持っていくんだ。
ヴィンス:誰だって?
ハワード:ビン・マンさ。
ヴィンス:おいおい、そんなの居るかよ。ユニコーンみたいな、伝説のたぐいだろ。
ハワード:お前が12時まで寝てるから彼らの存在を知らないんだ。
     彼らは、お前が目覚めの伸びをする前に働いているのさ。
ヴィンス:派手に立ち回ることはないわけ?
ハワード:それは無い。
ヴィンス:なんで?
ハワード:露地ではできないからさ。狭すぎて。
ヴィンス:よせよ。テキトーにやりゃいいだろ。
ハワード:お前、本当の男とは言えないな。おしゃれしたお人形だ。ビン・マンは本当の男だぞ。
     背が高く、懐が深くて、大きな手、太い首、そして大きな夢を持っている。
ヴィンス:最悪だな。
ハワード:モデルだの、バンドメンバーにとってはそうだろうよ、ヴィンス。まともな仕事をしている人もいるのさ。
     背が低くて、背中の広い人には何が起きていると思う?
ヴィンス:さぁ。悲しい音楽で落ち込んで、エレファント・マンみたいに死んじゃうとか?
ハワード:ビン・マンが居なくなったら、この世界はどうなってしまう?
ヴィンス:変わらないだろ、せいぜいキットカットの包み紙が床に落ちてる程度で。
ハワード:害虫が我が物顔ではびこり、都会のキツネどもが、近所でテロをしかける。
ヴィンス:都会のキツネっていいな。赤くてキュートなかんじで。
ハワード:あー、そういうんじゃなくて。連中はビン・マンを脅かす、危険な連中なんだ。宿敵とも言えるかもな。
ヴィンス:どうしてそんなにビン・マンの苦境を気にするんだよ。
ハワード:知りたいか?
ヴィンス:うん。
ハワード:かつては、俺もビン・マンだったからさ。
ヴィンス:あほぬかせ。まじかよ、そりゃすげぇな。
ハワード:別にウケるようなことじゃないと思うけど。
ヴィンス:わりぃ。こいつはマイ・スペースに書き込まなきゃ。
(二階に行こうとする)
ハワード:出かけじゃだめだぜ。
ヴィンス:なんで。
ハワード:ここに残ってこいつを片付けるんだ。
(ごみ袋を渡す)じゃあな。(カバンをもってドアに向かう)
ヴィンス:どこ行くんだ?
ハワード:どこ行くか?
(サングラスをかける)ジャザサイズ。(ジャズとエクササイズの合成語)
ヴィンス:はぁ?
ハワード:ホット・ビバップで運動さ。ジョン・コルトレーンで反復運動。
ヴィンス:あほらし。
ハワード:俺が戻って来るまでに、裏のゴミ山を廃棄許可地域に片付けておけよ。
ヴィンス:一晩かかるじゃないか。
ハワード:いくつごみ袋があるんだよ。
ヴィンス:三つか、四つ。
ハワード:じゃぁ、そんなにかからないだろ。
(ハワード、店から出ていく。ヴィンス、ゴミ袋を持って裏庭に出てみると、そこには何十というゴミ袋の巨大な山が出来ている。ヴィンス、その山の中へ分け入ってゆく)


 ゴミ山の中

(ヴィンスの背後に、ジャンキー・フォックスが現れる)
フォックス:ハロー!元気?
ヴィンス:あんた、誰?
フォックス:お狐さんさ。
(バンジョーを弾く)
ヴィンス:ああ…そう。あのさ、出て行ってくれるかな?俺、このゴミの山を全部片付けなきゃならないんだ。
フォックス:ゴミじゃないよ。ぼくのお家だもん。きみが潜り込んできた穴が、玄関。
     その古いスケボーが、ぼくの移動手段。この古くなった桃は…ええと、ぼくの帽子なの。ね?
ヴィンス:はぁ…
フォックス:ピーチ・ハット!うふふふ。ぼくの世界では、すべてのものが違っているのさ。説明してあげるよ。
     
(バンジョーを弾きながら歌い始める)♪おいらが見るものは、みんな違っってます!♪…きみって、王子様?
ヴィンス:俺はヴィンスっていうんだけど、プリンスじゃないよ。
フォックス:ヴィンシー・プリンシー!うふふふ。韻ふんじゃった!
ヴィンス:よく出来てるよ。
フォックス:そのゴブレットにワインがあるから、飲みなよ。
(ヴィンス、フォックスが示したゴミを取り上げる)
ヴィンス:これはゴブレットじゃないだろ。テニス・ボールを輪切りにしてある。
(一口飲む)これ何?ヴィント(ジュースの一種)
フォックス:猫の血。
(ヴィンス、噴き出す。フォックス、大受け)
ヴィンス:げぇー
フォックス:ぼくのジョーク、気に入った?
ヴィンス:イカれてるから、もう行くよ。
フォックス:いつもは、こんなイカれたジョーク、かまさないよ。
     ぼくの話を聞いてくれれば、ぼくをもっと理解してくれると思うんだ。
ヴィンス:お話とかは好きじゃないんだ。
フォックス:アニメーション映画になってるよ。
ヴィンス:アニメか。そりゃいいや。
フォックス:そのゴム長靴をどけて、座りなよ。
ヴィンス:ゴム長靴じゃなくて、あっちの方のゴムだろ。
フォックス:ぼくにとっては、グニャグニャ長靴なの。うふふ。♪おいらが見るものは、みんな違っってます!♪
    オーケー、楽しみましょう。
(フォックス、映写機を起動させるが、映写されるのはキツネ向けのアダルト映像)
フォックス:
(映写機を止める)見せたかったのはこれじゃなかったの。これは、寝るとき用の映画。
     コーフンしてムズムズしたとき用。
(改めて映写機を起動させると、アニメーションが始まる)


 アニメーション

フォックス:昔々、ジェロームというフォックスがおりました。彼は、エルダベリーの森に住んでいました。
     友達は、テニス選手ネズミのニコラス。それから、人種差別主義者のアナグマ、ダンテ。
(アナグマが発砲すると、木から人が落ちてくる)
フォックス:三人は、ケンブリッジの町を穏やかに流れる川で、ボート遊びをして過ごしていました。
     時折、キュウリのサンドイッチを食べ、ヤナギ君の下で休みました。
     ある日、フォックスがリラックスしていると、そこに雑誌「チークボーン」を見つけました。
     藪の中にあったんだ。彼はロンドン・ライフの記事を読みます。何度も何度も読みました。
     
(フォックス、徐々にスタイリッシュになっていく)そして、とうとうロンドンに行くことにしました。
     友達たちは言いました。「無理だよ。」でも、フォックスは頑固だったので、絶対に行くと決めていました。
     そして、町へと旅立ちました。(「電車乗ってまーす!」)
     3週間後、フォックスはゲイ・クラブに出入りするようになっていました。
     やっほー!なんて楽しいんだろう!でも、パーティ・ライフスタイルの代償は大きい。
     やがて、彼は通りへと身を落とし、ダルストンでチーズを恵んでもらうようになった。
     このフォックスと言うのが、そう他ならぬぼくというわけだよ。ジャンキー・フォックスさ。
(アニメーション、終わり)

ヴィンス:へぇ。どうして英国映画大賞を取らなかったのか、不思議だな。
フォックス:きみのお家に言っても良い?ぼくの家に来たんだから。
ヴィンス:そうは行かないな。じゃぁね。
(フォックス、ペンで自分の足を刺し、悲鳴を上げる)
ヴィンス:何やってんだ?ボールペンで自分の足を刺したりして。
フォックス:君が見てない間に、誰かが来て刺したんだ。
ヴィンス:俺は見てない。
フォックス:オカマ野郎め!
ヴィンス:あのなぁ。
フォックス:ナチスだよ!ナチス党員だった!何たる危険!このボールペン、取ってよ。
(ヴィンス、フォックスの足に刺さったボールペンを抜く)
フォックス:まるでアーサー王みたいだね。
ヴィンス:じゃぁね。バイ。
フォックス:ああ、うん。行くんだったら、もうひとつだけお願いしたいんだけど。
ヴィンス:なに?
フォックス:ぼくを殴り殺して。柔らかいパンみたいにぼくを八つ裂きにして。ボコボコにしてほしいんだ。
     ぼくを破壊し、首をねじ切り、きみのブーツの中で永久の眠りにつかせてよ、ミスター・ファンシー・マン。
ヴィンス:あのな、できるわけないだろ。こいつは新しいブーツで、高かったんだ。じゃぁな。
フォックス:自分で自分の首を切り裂いて、ここで血まみれになって死ぬしかないね。
     会えてよかったよ、ミスター・ご親切顔さん。
ヴィンス:わかったよ。5分だけおいで。絆創膏を貼ったら、あとはお茶だけだからな。
     ハワードが帰ってくるまえに出て行ってもらわなきゃ。あいつにはお前が理解できないだろうからな。
フォックス:
(声色が変って)入れてもらったとたんに、やっつけてやる。
ヴィンス:ん?
フォックス:何でもないよ。へん、へん、変な音がするな。


 ジャザサイズ教室

ハワード:ワン・トゥー、ワン、トゥー、スリー、アンド、サックス、上げて…下げて…
    熱くなって、ビバップ感じて、それから右、いいぞトニー。ステップに乗って!


 ナブティック

フォックス:素敵なところだね。
ヴィンス:そうだろ。
(フォックスのおならの音がする)
ヴィンス:うわぁ、ひでぇな。なんだよ、この臭いは。
フォックス:お腹にきちゃったみたい。
ヴィンス:ひどいもんだな。一体何をしたんだよ。
フォックス:ダイエットの一環。
ヴィンス:何食ったんだ?
フォックス:シャンプーとか。クソ歯磨きとか、でっかいクソとか。
ヴィンス:バランスの取れたダイエットとは言えないな。やめた方が良いよ。
フォックス:何か薬とかある?たとえば、あの戸棚にあるものとか…
(怪しげに扉のついた戸棚を指す)鍵とか持ってない?
ヴィンス:持ってるけど、使っちゃいけないんだ。
(鍵を見せる)あれはナブーの特別な薬棚なんだ。
     魔法の薬とかが入っているから、開けたらナブーが怒り狂うよ。そうだ、お茶が入ってるよ。
     それから、鎮痛剤を探そう。
フォックス:
(声が変って)それから、お前にはドレスを着せてやる。
ヴィンス:ん?
フォックス:手品、見たい?
ヴィンス:見たい。
フォックス:見て!
(フォックス、強烈なおならを噴射。ヴィンスが倒れ、ナブティックにフォックスの高笑いが響く)


 夜空
月:ダイエット・コークってあるでしょ。最近は、チェリーが入ってるのもあるよね。


 ナブティック

(ナブーとボロが帰ってくる)
ナブー:なにこれ?ヴィンス、ここで用足した?
ボロ:シャンプーと歯磨き粉みたいな臭いだな。
ヴィンス:
(起き上がる)すげぇ、頭が痛い。
ナブー:ぼくの戸棚に何かした?
ヴィンス:いや。どうして?
ナブー:誰かが持って行ったはずだ。ぼくはきちんとしておいたんだから。
ヴィンス:何を?
ナブー:フレスコに入ったシャーマン・ジュース。何があったの?
ヴィンス:知らない。裏庭のゴミ袋を片付けて、戻ってからフォックスと喋って…
ナブー:誰が裏にゴミ袋を置いたの?
ヴィンス:ハワード。あいつ、ベロッカみたいに、雨で分解されちゃうと思っているんだよ。アホだよな。
ナブー:よし、ハワードはクビだ。
ヴィンス:え?ちょっと厳しくない?
ナブー:ヴィンス、分かってないよ。これは深刻な事態なんだ。もしフォックスがジュースを使ったら、取り返しがつかない。
    ボロ、空飛ぶ絨毯を出して。なんとかしなきゃ。
ボロ:オーケー。
ナブー:ヴィンス、もうここは君の店だから。ハワードとはおしまいだ。
ヴィンス:おいおい、この店を一人で切り盛りなんて。無理だよ、俺とハワードはチームなんだぜ。
ナブー:このケープをあげると言ったら?
(派手なケープを差し出す)
ヴィンス:オーケー。クールだね。
(ケープを着てご機嫌)
(ハワードが帰ってくる)

ハワード:やぁ、みんな。ジャズ・リフレッシュしてきたよ。
ナブー:出て行け。クビだ。
ハワード:何だって?
ナブー:あんたが裏にゴミ袋を放置したせいで、フォックスに盗みに入られたんだ。
ハワード:俺はゴミを裏に放置したことなんてないよ。ちゃんと廃棄許可地域に捨ててる。そうだろ、ヴィンス。
(ヴィンス、話を聞いていない)
ナブー:もういいよ。極小目玉は嘘ばかり。
ハワード:ヴィンス、ナブーに本当の事を言えよ。俺じゃないって。
ヴィンス:なぁ、ナブー。これってドライ・クリーニングしか駄目?
ハワード:ヴィンス!
ナブー:ヴィンスを巻き込まないで。ハワード、最悪だよ。音楽にうつつを抜かして。どうするべきか分かっているだろう。
ハワード:違う、そんなはずない。
ナブー:ボロー、とっ捕まえて。
ハワード:ナブー、ナブー!ナブーリオ!
(ボロがハワードを羽交い締めにする)冗談だろう、良く考えろよナブー、ヴィンス!
ナブー:背を向けさせてもらうから。
ハワード:よせ。
(ナブーが背を向けると、ハワード絶叫)
ハワード:どうしょうもないんだな。居場所もないし。ほかにもっと良い仕事を見つける。
     手当たりしだいにやってみるさ。ヴィンス、今日の事は絶対に許さないからな。
ヴィンス:あっそ、水曜日に電話するから。
(ハワード、店を出ていく)


 森の中

(空飛ぶ絨毯でやってきたナブーとボロ。森ではシャーマン委員会が開かれている)
デニス:ナブー・ランドルフ・ロバーディ・ポバーディ・ジ・エニグマ。
    お前は、シャーマン・ジュース紛失のため、告発された。この世でもっともパワフルで、強力な薬だったはずだ。
    ナブー、何があったんだ?
ナブー:フォックスが現れ、そのおならでヴィンスが気絶させられたんです。
トニー:キツネが現れた?なんだそりゃ、ベアトリクス・ポターか?
サブー:お前がおとぎ話をするのは、毎度のことだな。今度こそ、ただちに厳刑だ。
デニス:サブー、幸運なことにまだ何も起こってはおらん。シャーマン・ジュースは、満月の光の下でのみ、効力を発揮する。
    この複雑な工程を、一般人が知っているはずがない。
ボロ:だからボトルに使用方法を書いておいたんだね。
ナブー:黙れ。
デニス:ああ、まいったな。
トニー:まじかよ!信じられねぇ!
サブー:お前ら、そろって砂糖漬けプラムか!
トニー:世代から次の世代へと引き継がれるべき、シャーマンの秘密だぞ。
ナブー:呪文を覚えるためのメモだって、たくさんあるじゃないか。月の下に持ち、処女の影に入り…
トニー:あほか!
ナブー:物覚えが悪いんだよ!
トニー:どうだかな。どうせヤクかなんかせのせいだろう。
ナブー:何とでも言えよ。こっちだって、おまえがグラストンベリーでマリファナ、ばくばくやりまくってるの見たからな。
トニー:ちょっといっちゃってただけさ。1回だけだよ。いや、年に2回かな。お前とお前のおサルは、毎晩ハッパやって、
    気分ドロンドロンだろうさ。
ナブー:少なくとも、ぼくは自分で自分のドラッグ量をコントロールできてる。
トニー:ぼくの方が上手いね。
デニス:誰が一番ドラッグをコントロール出来てるかを話し合うために、集まっているのではないぞ。
サブー:そうかな。
デニス:サブー、どういう意味だ?
サブー:あんたは、ヤクをほんのちょびっとやっただけで、チビっちゃうって話ですよ。俺、みましたよ。
     あんたが裸に靴下片方でホイッスル吹いてるの。「シャイニング」の世界にでも入ったと思ってたんでしょ。
デニス:抗生物質を服用していたんだ。
サブー:Changez le disc. (意味不明。このタイトルの映像がYouTubeにもあるが、意味不明。)
トニー:エスプレッソを3杯飲んだらどうなる?隅っこで泣きながら、自分をサツマ(=ミカン)みたいに皮むこうとしてたぞ。
デニス:かゆかったんだ。腕がかゆくて。洗濯洗剤を変えたから、あれが悪かったんだ。
サブー:黒い犬を見たとか言って、DIYで接着剤使ってたよな。「黒犬が出た!」
デニス:あれはドラッグを使ったときの症状だ。カークが私達を置き去りにして、あちにいっちゃってるのが分かるだろう。
(カーク、あらぬ方向を向いて恍惚としている)
トニー:何見てるの?
デニス:誰にも分からん。カークは星々の領域に達しているんだろう。
トニー:腑抜けじゃないの。
デニス:忘却の対岸に達したんだ。カーク、我々の声が聞こえているなら、頷くだけで良いぞ。カーキー?
(カーク、無反応)
サブー:Kマン?
トニー:カーク!
デニス:もう十分だろう。さあ、シャーマン裁判に戻ろう。
サブー:法律書に明記してあるとおり、判決は死刑だ。
ボロ:嫌な予感がする。
ナブー:そうかよ?ちょっと遅すぎるだろ、ボロ。委員長、なんとかできないんですか?
デニス:残念だ、ナブー。
トニー:ナブー、気の毒だけど処刑だよ。


 森の中の牢屋

(檻に閉じ込められるナブーとボロ)
ナブー:やれやれだな、ボロ。その時が近づいている。もうおしまいだ。
    ♪ぼくらは人生のいろんな道をさまよってきた 時として笑いもしたし、一緒に水キセルも吸ったよね 
     そしていま、ぼくらは最期を迎えようとしている すべてを終わりにしなきゃ あの世用の魔法の杖も必要だ♪
ボロ:♪ミニなマリファナも忘れないでよ♪
ナブー:♪最後の一本巻いて 空に向かってふかすのさ そうして高いところへと飛んでいくんだ♪
(ボロ、シンセサイザーでごきげん)
ナブ:ボロ、何やってんの。
ボロ:あ、ごめん。
(デニスがやってくる)
デニス:ナブー、ボロ。こんな事になるとはな。
ナブー:良いんだよ、デニス。最善を尽くしてくれた。
デニス:死に臨んでも、高潔さを保っているんだな。
ナブー:最後のリクエストにはこたえてもらえる?
デニス:ああ、そうだった。
(紙袋を渡す)「ピックルド・オニオン・モンスター・マンチ」と、「バンベイ・バッド・ボイ」だ。
ボロ:あの…
デニス:「マンドリル妻」はなかったよ。
(サル向けのエロ本を渡す)希望を持つんだぞ。
ナブー:ジュースを取り戻せば、自由になれるかな?
デニス:もちろんだ。私だって、こんなのはやりたくない。しかし、もう手遅れだろう。
    おまえがシャーマンになったときに私がお前に贈ったものを思い出せ。
(立ち去ろうとする)
ナブー:ええと、ラジオ時計だっけ?
デニス:違う。お前に授けた、精神的なものだ。
(立ち去りながら)ドアホが…


 ナブティック

(ヴィンス、友人を集めてパーティを開いている)
男性:なぁヴィンス、5ポンド貸してくれ。
ヴィンス:いいよ、自分で取って良いよ。キッシャーに入ってるから。
男性:もっと余計にもらっとくわ。来年返すから。
(お金を持って出ていく)
ヴィンス:どうぞご自由に。
(女の子に)このケープ、どう?仕事で手にいれたんだ。
女の子:わぁお、いいじゃん。
ヴィンス:だろ。来てくれてうれしいよ。ずっと声掛けてたじゃん。
(突然明かりが暗くなり、人々の動きが止まる。すると、女の子にナブーが憑依して話し始める)
女の子:
(ナブーの声で)ヴィンス。
ヴィンス:その声、どうしたの。みんなどうしたんだ?
女の子:ヴィンス、ぼくだよ。ナブーだ。この女の子を通して喋っているんだ。彼女を伝声管にしてね。
ヴィンス:ちょっと待てよ。どうやってお前がナブーだって信じることができるんだよ。悪戯かもしれないだろ。
     証明して見せろ。俺とお前だけが知っていること言ってみろ。
女の子:きみが、テリー・ナットキンズの写真を舐めてるところを、ぼくが捕まえた時の事、覚えてる?
ヴィンス:待った。この子に知らせることないだろ。
女の子:心配しないで、ヴィンス。時を止めたから。誰も何も聞こえていないよ。
     彼女への憑依が解けた時には、何も覚えていない。
ヴィンス:そりゃいいや。でも、言っておくが俺のお気に入りはミケーラ・シュトラッケンだからな。
     「リアリー・ワイルド・ショー・アニューアル」を持ってってさ。彼女にちょっとひと舐めしてあげようとしたんだよ。
     ちょっと目を離したすきに、風が吹いてページをめくってさ。気がついたら、ナットキンスを舐めてたんだ。ゲー!
女の子:まぁ、どうでも良いや。とにかく、ぼくはお陀仏まであとちょっとなんだ。きみだけが、最後の望みなんだよ。
     満月になるまえに、あのシャーマン・ジュースを取り戻さなけりゃ、ぼくは死刑だ。
ヴィンス:任せろよ、ナブー。どうにかしてやる。
(明かりがつき、人々が動き始める)
女の子:
(自分の声で)ああ…なんだっけ?
ヴィンス:気にすんなよ。こんどの金曜日、俺のDJイベント見に来ない?
女の子:ありえない。
ヴィンス:どうして?
女の子:テリー・ナットキンズに声掛けたら?
(店から客が続々と出ていく)
ヴィンス:
(独白)さて、どうすれば良いんだろう。ハワードならどうする?たぶん、何か作戦を立てるな。
     どうせしょうもない作戦だろうけど、とにかく立てるんだろ。そう、俺だって作戦を立てれば良い訳さ。そうさ!

(ヴィンス、しかつめらしい様子で、紙に書きながら作戦を立て始める。反故になった紙ばかりがたまっていく。最終的には、しょーもな馬の絵しか描けていない)
ヴィンス:うーん。どうやらハワードを探すべきみたいだな。


 下町

(ヴィンスがケープを羽織って町を歩いていると、ホームレスに声をかけられる)
ホームレス:よう、小銭もってないか?
ヴィンス:悪いね、持ってないんだ。
ホームレス:おいおい、そんなことないだろ。どっかに忘れた小銭が入ってるよ。
ヴィンス:実は、この服には全然ポケットがないんだ。
ホームレス:ペニー銅貨で良いのによ。
ヴィンス:これ、ジョーン・ジェットのジャンプ・スーツでさ。助けにはならないや。
ホームレス:やれやれ。
ヴィンス:カードは使える?
(クレジットカードを見せる)
ホームレス:大丈夫だよ。こういう事もあろうかとね。
ヴィンス:まじ?
ホームレス:ほらよ。
(カード読み取り機を渡す)
ヴィンス:やったね。どのくらい欲しい?
ホームレス:58ポンド30ペンスで。
ヴィンス:ずいぶん細かい金額だな。
ホームレス:明快な必要経費さ。
ヴィンス:なるほど。
(ヴィンス、キーを操作し始める)
ホームレス:あ!ちゃんと暗証番号は見えないようにしなきゃ駄目だぞ。誰かに使われたらどうするんだ。
ヴィンス:わかったよ。
ホームレス:なんだってこんな所に来たんだ?
ヴィンス:相棒を探しているんだ。
ホームレス:ここを通るやつなら、全員知っているぜ。
ヴィンス:見たんじゃないかな。背の高いあんちゃんで、くしゃくしゃ髪の…
ホームレス:さぁな…
ヴィンス:ジャズっぽくて、なんつーか、こーんな格好したりして…知らない?
ホームレス:知らないな。
ヴィンス:70年代風の髭。
ホームレス:ピンと来ねえな。
ヴィンス:エビみたいにちっちゃい目玉は?
ホームレス:ああ、あのエビ目にいちゃんか!あの路地の向こうに居るよ。
ヴィンス:やったね。
(レシートを出力する)これで良い?
ホームレス:ちょっと待って。これ、あんたの控えな。
(控えを渡す)
ヴィンス:どうも。
ホームレス:税金対策に、ちゃんと取っとけよ。ドニへの施しは控除対象なんだ。
ヴィンス:ご親切にどうも。
ホームレス:なんてことないさ。おい、ところで良いケープだな。
ヴィンス:良いだろ?
ホームレス:裾の処理とか良いじゃん。
ヴィンス:このエレクトリック・ブルーとかさ。
ホームレス:そうだな。ほんとうに綺麗なケープだ。
ヴィンス:じゃぁね。
(ヴィンス、教えられた路地へと進む)


 路地の向こう

(ハワードがビン・マンの格好でゴミ処理に精を出している)
ヴィンス:よう、ハワード。ゴミでまた食っていくことにしたのか?
ハワード:何か用か?
ヴィンス:調子はどう?
ハワード:最高さ、お気づかいどうも。
ヴィンス:なんでそんな物、着てるの?
ハワード:ビン・マンだからさ。彼らは両手を広げて、俺の帰りを歓迎してくれた。
ヴィンス:あいつら、誰?
ハワード:クルーのみんなさ。ストリートの兄弟たち。ヨウ!
(ハワードが合図をすると、仲間のビン・マンたちも返す)
ヴィンス:あの連中が何なわけ?
ハワード:彼らこそが、本当の人間であり、友人ってもんさ。ピカピカのケープのために、俺を投げ捨てたりはしない。
ヴィンス:悪かったよ、ハワード。俺が服に目がないことは知ってるだろ?
     俺のトップ・ショップ・クーポン券を踏ん付けていたからって、
     トラックの目の前の子供を突き飛ばしたこともあったじゃん。どうしょうもないんだよ。お前の助けは必要なんだ。
     それに、ナブーのためにも。
ハワード:手遅れだ。ナブーは俺をクビにしたんだ。しかも背中までむけて。お前はケープのために俺を裏切るし。
     もう二度とおまえがそんなことしないかどうか、知れたもんじゃない。
ヴィンス:謝ったじゃん。
ハワード:十分とは言えないな。行動(ジェスチャー)が必要だ。
(ヴィンス、しょうもないジェスチャーを見せる)
ハワード:まともなやつで。
ヴィンス:わかったよ。良い考えがある。見てろよ。
(路地の向こうに呼びかける)ドニ!(ホームレスのドニが顔を出す)
     よう、このケープ、気に入っただろう?欲しけりゃ、持って行って良いよ。
(ケープを外し始める)
ホームレス:本気か?
ヴィンス:ああ。ほらよ。
(ケープを渡す)
ホームレス:今までの人生、誰も何もくれなかったのに。あんたみたいな知らない人が現れて、
     世にも稀なケープをくれた。今日は、人生最良の日だ。
     本当は、あんたをヤって、ゴミ箱に放り込むつもりだったんだ。でも改心した。
     この親切には、いつの日か御返しをするよ。
ヴィンス:気にしないで良いよ。
ホームレス:ほんと、絶対にしなきゃ。しなきゃならないんだ。
ヴィンス:そりゃ結構。さてとハワード。どう?
ハワード:OK。でも、2週間以内にまたピカピカの帽子のために、俺をはめようものなら、もう容赦しないからな。
ヴィンス:OK。さぁ、元のチーム再結成ってわけだな。
ハワード:その通り。…触るな。


 ゴミ山の中

ハワード:居ないじゃないか。本当にここなのか?
ヴィンス:うん。
ハワード:どこに行ったんだ?
ヴィンス:作戦ポニーに聞いてみようぜ。
(さっきのしょーもない馬の絵に尋ねる)
     作戦ポニー、ジャンキー・フォックスはどこに行ったんだ?
作戦ポニー:自分の足元の下を探してみろよ。
ヴィンス:ありがとう、作戦ポニー。
作戦ポニー:どういたしまして。
(ヴィンス、マンホールの蓋を外す)
ハワード:下水管に居るんだな。


 下水管の中

ヴィンス:ひどい臭いだな。
ハワード:おなじみだろ。
ヴィンス:そうだな。…え?
ハワード:昔、こういうトンネルで働いていたんだ。ビン・マンの前は公衆衛生検査官だったから。
ヴィンス:初めて聞いた。
ハワード:お前が知らないこともたくさんあるんだ。いろいろな人生を送ってきたからな。
     「複数人生のムーン」って呼ばれたもんさ。
ヴィンス:その「いろいろの人生」、いつ送って来たのさ。
     俺達は学校も一緒、大学も一緒、それからずっと一緒に働いてきたんだぜ。
ハワード:「失われた年月」を忘れてるぜ。
ヴィンス:旅行も一緒。
ハワード:旅行に行く前だよ。
ヴィンス:え、あの週の話?
ハワード:そう、沢山のことをいっぺんにやってのけたのさ。
ヴィンス:おまえ、理想的な魔法瓶を探して、ずっとあれこれ探していたじゃないか。
     どの大陸でも大丈夫な魔法瓶とか言って…
ハワード:静にしろよ。何か聞こえるぞ。
フォックス:
(下水管の向こうから声がする)人間どもの掟など、お笑い草だ。
     我々の時代が到来し、征服するのだ。ふはははは!
(下水の動物たちが大賛成)
フォックス:いまや、我々に必要なのは満月だけだ。
(天窓から満月の光が差し込む)
月:ぼく、満月でーす。すべてのジュースの力を発動しまーす!
(月光を浴びたシャーマン・ジュースが沸き立ち始める)
フォックス:ふははは!よーし、いいぞ。良い泡立ち具合だ。さぁ、こいつを飲み干そう…
     
(指の注射器でジュースを吸い上げる)我こそは、ジャンキー・フォックス。我が力を見よ!
(フォックスの高笑いとともに、ゴミ服をがあたりを旋回し始める)
フォックス:さぁ、わが邪悪旋風に飲み込まれるが良い!
ハワード:
(物陰から)ヴィンス、いまだ!
(ヴィンス、背後から近づく。するとドブネズミに気づかれ、フォックスも気づく)
フォックス:あんたは、俺を見せに入れるという、大きな間違いを犯したよ。
     俺は人類を滅亡させてやる、手始めにあんだ、お嬢男!
(絶叫とともに、上からホームレスが飛び込んでくる)
ホームレス:良く聞けよ、このクソ犬野郎。
      このエビ目玉の奥さんに指一本触れてみろ、神に誓って、てめぇの顔をぶちのめしてやる。
フォックス:ひとつお忘れのようだな。俺はマジック・ジュースでパワー・アップしてるんだぜ。
ホームレス:そうかい、こっちも自前のジュースでパワー・アップしとるわ!おなじみのエレクトリック・スープでな!
      
(缶の飲み物を取り出す)そう、おいらこそエレクトリック・スープ・マン!
(ホームレス、フォックスに飛びかかる。二人が殴り合っている隙に、ヴィンスがジュースを持ち去る。フォックスが、ホームレスを組み敷く)
ホームレス:わー!注射嫌い!
フォックス:ニードル、ドルドルお構い無し!
(フォックス、ホームレスに注射。その間にハワードとヴィンスは下水を逃げる)
フォックス:ジュース返せ!
(ゴミ袋馬車で、フォックスが追って来る)
フォックス:さぁ走れ、ゴミ袋ども!
(ハワードとヴィンスが下水管の出口から外へ飛び出すと、ちょうどゴミ回収車がやってくる。飛び出してきたフォックスが回収車に吸い込まれ、ビン・マンがすかさず稼働させる。フォックス、丸丸に潰されて断末魔の声を上げる。ビン・マン、格好良く去って行く)


 森の処刑場

(シャーマンたちが集まる中、ナブーがギロチンにかけられようとしている)
デニス:エニグマのナブー。死刑執行の時が来た。我々としても、心苦しい。
    そこで、死刑執行者の身元は隠すために、フードを被ることになっている。
(フードは被っているけど正体バレバレのトニーが、処刑台の階段で難儀している)
トニー:この階段、登れないんですけど!どうなってんの?スロープ頼んでおいたじゃん!
ナブー:誰なんでしょうねぇ…
サブー:ちゃんと足のあるやつにやらせるべきだったと思うけどな。
(タクシーで、ヴィンスとハワードが駆け付ける)
ヴィンス:待った!ジュースを取り戻したぞ!
デニス:ナブーは救われたぞ!
ボロ:やった!
トニー:え?そりゃ良いや!信じらんない!一日中、死刑執行者の覚悟で居たんだから!
     電気のスイッチみたいに、簡単に切り替えは無理なんだよ。
デニス:出来るさ、ハリスン。
トニー:今夜は休みたくないな。なんとかしてこの気分から抜け出さなきゃ!かみさんが怒り狂うだろうな。
     な、まったく極悪非道ってもんだ!
デニス:我々の伝統にのっとった、地味なお祝いをするべきだ。
カーク:パーっと行こうぜ!
ボロ:ゴキゲン・ドラッグ祭りだ!
デニス:楽しそうだけど、その、私は頭が痛くてその…
ボロ:来いよ!
サブー:来いよ、デニス。ヤクなんてぶっちぎっちまえ。
デニス:いや、あの、じゃぁ、一粒くらいでどうかな。
サブー:良い子だ。

(二分後…デニス、完全にトリップ状態)
サブー:デニス。デニー?デンマン?ヴィタミンD!おーい、デン!デンゼル!デンゾーイド。スキッパー。
    おい、デン。おーい、委員長!
トニー:デニス。俺達、まだドラッグ飲んでないんだぞ。




(終)
 
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