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フンイキ翻訳 ライブ 2006 / The Mighty Boosh Live

はじめに
 「ザ・マイティ・ブーシュ・ライブ」のDVDには、残念ながら英語の字幕がついていません。よって、ここにアップした翻訳は、管理人の乏しいリスニング能力に頼っており、聞き取れずに翻訳不能の箇所がかなり沢山あります。ですから、ライブの翻訳に限っては、「アヤシゲ」というよりは、「フンイキ」がふさわしいと思います。
 聞き取れる単語や、話の脈絡などから、私のセンスで補完した箇所や、素直に「分りません」とした所もあります。「ここは、こうじゃない?こう言ってるよ」などのアドバイスがありましたら、ぜひとも掲示板やメールなどで、教えてください。
 少しでも、この「フンイキ翻訳」が、みなさんのブーシュ鑑賞の助けになりますように。

便宜的な目次 (読みたい部分をクリックすると、飛びます)
  パート1.スタンド・アップ

  パート2.ツンドラ 〜 ハックニー
 
 パート3.ヒッチャー登場
  パート4.ツンドラ 〜 スペイン
  パート5.ルディ登場
  パート6.ヒッチャー vs ルディ
  パート7.ライブ後のラブラブお楽しみ

  

 パート1.スタンド・アップ

デイヴ:レディース&ジェントルメン!盛大にお迎えください、ザ・マイティ・ブーシュ!
(ハワードとヴィンス、舞台に登場)
ヴィンス:
(しょっぱなから何言ってるかわからないが、客席の女性に関して、何かコメント)ヘイ、ブリクストン。
     来やがったな、タカビー野郎ども。
ハワード:
(2階席に向かって)トップ・ショップのみんな、元気?
(2階席から大歓声)
ハワード&ヴィンス:トップショップ!トップショーップ!
ヴィンス:
(1階席に向かって)ロワー・ショップの皆は?
(1階席から大歓声)
ヴィンス:
(客席の人を指差して)ほら、あんただよ。…なんてね。ジョークだよ。
ハワード:全員そろってる?
ヴィンス:みんな席に着いた?
ハワード:OK?ばっちり?完璧?
(客席に向かって)いい?
客席:うん!
ハワード:本当?ほかのショーと勘違いしていない?
ヴィンス:他のでも良いじゃん?よっしゃ。勢ぞろいらしいぞ。
ハワード:よし。
ヴィンス:
(客席に遅れて入ってきた観客に向かって)おーい、俺たち皆、おたくらを待ってたんだぞ。
ハワード:OK。
ヴィンス:彼女、ウザそうな顔してたな。準備いいか?
ハワード:いいよ。
ヴィンス:OK、はじめようぜ。
ハワード:まかせな。
(ハワードにスポットライトがあたり、ポーズを取る)
ヴィンス:ハワード・ムーン!ジャズ・マーヴェリック!小説家!自転車選手!
     ペニーファージング(19世紀の前輪が大きな自転車)にも乗っちゃう。切手コレクター!
     年齢、61歳。50?7歳?おなじみ、極小目玉のハワード・ムーン!
(歓声に応えるハワード)
ヴィンス:何やってんだ?
ハワード:歓声を食ってんの。
ヴィンス:普通そんなことするか?
ハワード:するの。なかなかの歯ごたえ。
ヴィンス:まじで?
ハワード:まじで。…ライトに入れよ。
(ヴィンスにスポットライトがあたり、ポーズを取る)
ハワード:ヴィンス・ノワー!エレクトロ…だけど、おかま!
(改めて歓声に応える二人)
ヴィンス:だから、何やってるんだ?歓声なんて食えないって。
ハワード:うーん、食いすぎた。フルーツケーキ並みに重いな。
ヴィンス:食い過ぎだってば。…おい、見ろよ。スピリット・オブ・ジャズのコスプレが居るぞ。
     
(スピリット・オブ・ジャズの声で)ヘイ、ベイビー。おれぁ、ちょっくらトイレに行ってくらぁ。
ハワード:その割りにゆっくり歩いてないか?
ヴィンス:そりゃそうだ!見せ場だからな。迅速行動なんてクソ食らえだ。何せDVD用のカメラが入ってんだからな。
     このチャンスを逃してたまるか。…
(声色を戻して)だろ?
ハワード:付き合ってられるか、さっさと行けよ。牛歩作戦のばーか!
ヴィンス:さーてと、俺ら、とびきりイカしたショーを見せてやっからな。な?
(ハワードに触る)
ハワード:もちろん…よせ、やめろ。触るな。
ヴィンス:は?
ハワード:俺に触るんじゃない。
ヴィンス:まただよ、いつものジョークな。
ハワード:ジョークじゃないぞ。
ヴィンス:は?
ハワード:ステージでも、袖でも、楽屋でも、買い物とか…ハンモック買いに行くときとか…とにかく触るんじゃない。いいな?
ヴィンス:ふん、いつものことじゃん?
ハワード&ヴィンス:ははぁ〜ん?!
(ヴィンス、再びハワードに触る)
ハワード:触るな!
ヴィンス:オッケー!…ジョークはともかく。なぁ、かなりファンレターをもらっているから、チェックしないか?
ハワード:そうしよう。
ヴィンス:俺、取ってくるから場をつないどいてくれよ。
ハワード:よし、任せろ。
ヴィンス:うごきもバッチリだぜ。そんで、俺はこうな。
(意味不明の歌と動きで、幕の後ろに退場)
ハワード:さーてと、やぁ、どっから来たの?え〜さて。
(ここでハワード、リズムカルな言葉遊びを挿入。翻訳不能)
     イェー!みんな元気?
(客席に向かって)ハロー、おチビさんたち。
     ショーの間はこうやって、耳を塞いでいてくれるかな。そうじゃなくて、こう!それか誰かに塞いでもらおう。
(ヴィンスが大きな袋と、一通の手紙を持って戻ってくる)
ハワード:ヘーイ!どこ行ってたんだ?
ヴィンス:そこにもうファンの人垣ができててさ、オッパイ丸出しが居たぞ
(翻訳困難につき想像台詞)
     さてと、見ろよこのファンレター。この袋が俺宛で、この一通がお前のな。…なーんちゃって。
ハワード:またまた…
ヴィンス:こっちも俺の。悪いね。ちょっと読んでみようか。ファンの皆は何て言ってるかな…
ファンレターの女の子:大好きなヴィンス。あなたって、まじで超最高。髪型なんてボリュームも高さもイカしてる。
     本当に、すっごい大好き!でも、一つ引っかかるのは…どうしていつショーでは、もお父さんと一緒なの?
ハワード:ははは…
ヴィンス:じゃぁ、こっちのも読んでみようぜ。
(ヴィンスが手紙を開くと、女の子の叫び声が響く。)
ヴィンス:叫び声しか書いてないや。でも要点は分かりやすいね。
ハワード:そうか。俺だってファンレターをもらっているぞ。
ヴィンス:まじで?
ハワード:まじで。ファンレターの量より、大なのはファンの質だ。これが俺の価値観だ。
ヴィンス:ふうん。
ハワード:
(ポケットから手紙を取り出す)これは俺宛に来たんだ。まさにコンチョウ届きけり。
     その…コンチョウってのは、『今朝』の古風な言い方な。まさにコンチョウ、ファンレターが届き候。
ヴィンス:はぁ、左様でござるか。
ハワード:いかにも、いかにも。よく聞けよ。
手紙の声:ハワード、次に私に連絡を取ろうとしたら、警察に通報します。
(ハワード、手紙を丸めて捨てる)
ハワード:はっはっはっは!これ、間違いね!手紙を取り違えちゃった!はははは…!
     こっち、こっちこそが本物の手紙。送り主は、トム・ポーリン。皆さん、トム・ポーリンですぞ!
ヴィンス:誰だ、それ。
ハワード:トム・ポーリンだってば。ほら、彼女は知ってるぞ。
ヴィンス:へぇ。
ハワード:そう、いつも応援してくれて、手紙をくれるんだ。
(翻訳困難)…とにかく、これはその彼からの手紙だ。
ヴィンス:なるほど。
ハワード:よく聞けよ。
(手紙を開く)
手紙の声:ええぇ〜親愛なるぅ〜は、ハワード・ムーン…貴方の演技は真にすばらしく…感嘆しきり…
      ザ・マイティ・ブーシュは珠玉の名作であります。トム・ポーリン
ハワード:トム・ポーリン!俺に来たんだぜ!
(ヴィンス、ハワードから手紙を取り上げて読む)
ヴィンス:ふぅん。良かったね。続きがあるじゃん。
ハワード:読むな。
ヴィンス:いいじゃん。
ハワード:読むなったら!
手紙の声:追伸。できれば、貴方のタマの写真を送ってね。
(ハワード、ヴィンスから手紙を取り戻す)
ヴィンス:あーあ、トムってのは余程の変態だな。
ハワード:うっかりトムめ!
ハワード&ヴィンス:うっかりトム!うっかりトムトム!
ヴィンス:ところでさ、テレビ番組の後はどうしてた?元気だった?
ハワード:なかなか充実していたよ。…テレビ番組?
ヴィンス:うん。
ハワード:お前、出てたっけ?
ヴィンス:出てたと…思う。
ハワード:テレビの後も、充実していたよ。仕事も忙しくてさ、舞台に出演して技術を磨き、今日に備えていたんだ。
     たとえば、パントマイムとか…ほら、
(パントマイムをしてみせる)…これ、煙突な。
    
(何か動物を扱っているようなしぐさが入るが、翻訳不能)…とにかく、忙しかった。
     舞台芸術を深く理解し、自分のものにしたと思う。
ヴィンス:ふうん。忙しそうだね。そういえばさ、俺カムデン・シアターのところを通ったとき、お前を見たぜ。
(ハワードの様子を何か言って会場を大うけ。翻訳不能)
ハワード:いつもは出ないシーンだったんだ。
ヴィンス:そうか?シャツは着ても、ズボン無しだったぞ。
ハワード:なかなかやるもんだろ?そうさ、一匹狼だからな、何でもやるさ。
ヴィンス:やりすぎじゃん?
(この後、ハワードがstreetとか、boxなどの言葉を交えて何事か言うが、完全に翻訳不能。最後にリズムカルな言葉遊びで締め…)
ヴィンス:機械みたいだな
ハワード:お前のほうこそ、どうだったんだ?
ヴィンス:うん、テレビの後、すげぇゲームを思いついたんだ。
     まず最初にそうだな、ゲームの名前は「白いデカ顔ウサギ攻撃」って言うんだ。な?
     名前からして天才的だろ!説明はこれからだぜ。まず、みんなここに居るだろう、どこに居たっていいや。
     風車小屋に居たって構わないんだから、な?そこに、巨大ウサギが来るんだよ。
     まじで馬鹿でかくて、顔もでかい。でさ、「うぉお〜!」とか、すげぇ怖いわけ、な?
     ウサギが走ってくるだろ?そしたらこっちは一目散に逃げるか、コインを投げつけるか、
     ブーツを脱いでそれでウサギの頭をぶん殴るかするんだ。でも、ウサギに捕まっちゃったとするだろ、
     そしたら床に叩きつけられて、ゴーカンされるってわけ。
(会場大うけ。ハワードとヴィンスの間には微妙な空気。)
ハワード:ええと…それって、全然ゲームじゃないよな?ただのドタバタの連続だ。恐怖のドタバタ連続ゴーカン攻撃。
ヴィンス:まぁな。でも、ただのゴーカンじゃいぜ。ウサギのゴーカン。恐怖のバニー・バッコンバッコン!
ハワード:それでも全然ゲームになってない。作戦ってものが無いじゃないか。
ヴィンス:でも考えても見ろよ。ウサギがいつ現れるのかは分からないんだぜ。ウサギが生きている間中なんだぞ。
     気長にやろうぜ。よくあるショーとは違うんだ。ウサギは10分以内に来るかも知れないし、1年以内かも知れない。
     それか、2週間だったり、14分以内に来るかも知れない。
ハワード:ウサギが病気の時は?
ヴィンス:そっくりな弟がいるの。
ハワード:はぁ。
ヴィンス:弟はもっと凶悪だぞ。兄貴よりは小さいけど、絶倫野郎だからな。弟に会ったら、座り込んで降参した方が良い。
     白旗あげてな。
ハワード:これ、ただのネタですから。ショーってのはこんなものでして。ショーはまさにこの幕の後ろで展開されるわけです。
(二人で幕の背後を探る)
ヴィンス:なぁ、ここ、何かやってれみたいだぞ。
ハワード&ヴィンス:じゃあ、ちょっと見てみようか。
(幕を開けてみると、内側ではお取り込み中。すぐに幕を閉める)
ハワード:ありゃ、幻覚だな。
ヴィンス:もう一回確認してみようぜ。
(再度幕を開けると、ますますお取り込み中)
ハワード:さーてと!スタンドアップでも披露しましょうかね!
ヴィンス:ははは、何か適当なものあるか?
ハワード:そうだな。いろいろあるけど…何かウォームアップになるようなのがいいな。
     たとえば、俺が書いた小さな舞台作品があるんだけど。
     小さいって言っても、別に舞台がこんな大きさって意味じゃなくて。
ヴィンス:ポーチぐらい?
ハワード:ポーチね。
ヴィンス:ポーチ劇場とか。
ハワード:最強ポーチとか?
ヴィンス:適当な名前つけても、どうにかなるだろう?
ハワード:まぁな。…これ、タイプの真似な。とにかく、良いウォームアップになるよ。
ヴィンス:よっしゃ、いかすね。
ハワード:実に観客に強く訴えかける作品で…
ヴィンス:
(客席に)あんた、目つきが変わったぞ。…それで、俺はどうすんの?
ハワード:お前にも参加してもらうさ。
ヴィンス:まじで?
ハワード:そうさ。演技できるか?
ヴィンス:演技?まさか。無理。…なぁ〜んて言って、これが演技だったりして〜
(再びハワードを触りに行く)
ハワード:やめろってば。
ヴィンス:いいじゃん!
ハワード:よせ、キッスのジャケットでキスすんな!とにかく、絶対触るな!
ヴィンス:いいよ、じゃぁ準備でもしてくるわ。
ハワード:さっさと行け。
ヴィンス:なぁ、こういう退場のしかたはどうだ?オオー!足はカチカチ!手はサルサル!
     カチカチ足とサルサルおテテ、究極の取り合わせアルよ!
(ヴィンス、一旦退場)
ハワード:オーケー。ええ…さて。この寸劇は、私自身が書きました。ええ、ペンで書いたんですよ。
     舞台は、ああ…ロシア、世紀の変わり目の頃です。ええ、皆さんがお考えの事はわかります。
     …そうは考えないでいただきたい。つまり…その、これは暗く、かつ胸を打つ作品なのです。
     それでは、私の作品をお楽しみ下さい。題はシンプルに…「パイ」。

(ハワード退場。重々しい音楽と共に、黒い布を頭から被ったヴィンスが出てくる。)
ヴィンス:すげぇバッカみてぇ…何がパントマイムだよ。
(ヴィンスがステージの定位置で座り込むと、コートに帽子のハワードが、パイを片手にやってくる)
ハワード:
(ロシア語風に)パイはいかが〜?
ヴィンス:いらな〜い。
ハワード:美味しいパイだよ〜?
ヴィンス:それでもいらない。前にあんたがパイを持ってきたとき、ちっさなパイ・カッターで切ったら、
     すげぇ数の鳥が飛び出してきて、目だのこめかみだのにバシバシあたって…イタズラ・パイじゃんか!
ハワード:なんで俺のパイが嫌なわけ?
ヴィンス:いま、言ったろ!
ハワード:なんで俺ののパイが嫌なんだよ〜?!
ヴィンス:わぁぁあ〜!
ハワード:なんで俺ののパイが嫌なんだよ〜?!愛の贈り物なのに〜?!
ヴィンス:いっつもパイばっか!
ハワード:なんで嫌なの〜?!
ヴィンス:いっつもパイば〜っか!
ハワード:なんで嫌なの〜?!
ヴィンス:なんでパイなんて持ってくんだよ!
ハワード:なんで嫌なの〜?!
ヴィンス;毎日、毎日、しょーもないパイパイばっかー!
ハワード&ヴィンス:わぁあぁぁあああああ〜!!
ハワード:
(帽子を取って)どうもありがとう。

(歓声と共に、ヴィンスも立ち上がる。ハワードが帽子をヴィンスの頭にのせる)
ハワード:感動的な作品で小。どうもありがとうございます。
ヴィンス:この帽子いいね。ピート・ドハーティみたいじゃん?あれぇ〜?俺のバンドはどこいったぁ〜?
     よう、あんたはフロントマンだろ?バンドは後ろに居るじゃんよ!あ、ほんとだ、サンキュ!
(ヴィンス、右手で左腕を叩きながら、道具を袖に持っていく)
ハワード:それ、なんだよ。
(右手で左腕を叩いてみせる)
ヴィンス:あ?ああ、ピートがジェスチャー・ゲームをしてるところ。
ハワード:なるほど。悪くない。
ヴィンス:うん、悪くない。
ハワード:さてと、今夜のショーも時間内に済ませなきゃならないわけだし。
     ここで、ゲストを皆さんに紹介し世と思うんだけど。すばらしいゲストたちだ。
ヴィンス:そうしようぜ。誰からはじめる?デイリー・トンプソンから?そのうち出てくるか。
     あいつ、計算機をノコギリで真っ二つにしてたぞ。どこに数字が入ってるのか見たいんだとよ。
ハワード:なるほど。あの髭をそってみると、実はあれが刺青だってのがバレるらしいぞ。
ヴィンス:デイリーな。
ハワード:デイリー。まぁ、それは置いておくとして…すばらしいゲストをご紹介しましょう。
     私も彼のファンだし、皆さんもファンでしょう。
(客席の一人に向かって)貴方はファンじゃありませんね。
     …と、言うか向こうもあんたが嫌いだし。大物はファンを選ぶって言うし。
     二人の間には嫌悪感のみが存在するわけで。それでは皆さん、ご紹介します。ナブー・ジ・エニグマです。
(ナブーが舞台に登場する)
ヴィンス:よく見ろよ、このターバンの中には、ピューマが居るんだぜ。
ハワード:彼の思考を理解するには、それなりの技術が必要なんだな。
     その深遠かつ広大な思想の宇宙を垣間見るには、こうすればいい。
(ハワード、ナブーの頭にマイクを押し付ける)
ナブーの声:
(翻訳不能。おそらく、あまり大したことを言っていないような…)
ハワード:
(マイクを離して)ナブー・ジ・エニグマでした。
(ナブー、退場しようとして途中で足を止め、先ほどの観客に話しかける)
ナブー:あんた、ここで何やってんだ?言っただろう?背中むけてやっからな。
(ナブー、音楽とともに背中を向け、また戻ってくる)
ナブー:おぼえてろよ。
(ナブー、退場)

ヴィンス:ナブー・ジ・エニグマでした!みんな、次のゲストを迎える準備は良いか?盛大な拍手でお迎えください、ボロです!
(ボロ、舞台に登場。ヴィンスと抱き合う)
ボロ:ヘーイ、ヴィンシー!やぁ、うれしいよ。
ハワード:ヘーイ。久しぶりだな。
(ボロ、ハワードを無視して客席に向かって呼びかける)
ボロ:ヘロー、トップショップ!もちろん、ボトムショップの皆も大好きだよ、ご心配なく。
ヴィンス:OK,今日も髪型、ばっちり決まってるじゃん。ルートブースター使った?
ボロ:うん。今夜のためにばっちち決めてきた。ムースとか、リキッドとか使って。
ヴィンス:ばっちりだよ。
ハワード:いいね。いかにもモッズな感じじゃん…
(ボロ、再びハワードを無視)
ヴィンス:ええと…ボロ、元気にしてたか?
ボロ:してたよ。
ヴィンス:仕事は?
ボロ:忙しくてね。テレビの後に、オーディションに挑戦したんだ。ピーター・ジャクソンのオーディションにな。
ヴィンス:まじかよ!ピーター・ジャクソン?
ボロ:そう!
ハワード:へぇ。最近、彼はどうなわけ?
ボロ:キング・コングのリメイクを考えているらしい。
(ハワードとヴィンス、少し考え込む。実はこの時点で、ピーター・ジャクソン監督のリメイク版「キング・コング」は完成・公開されている)
ハワード:リメイクの計画中だって?
ボロ:うん。
ハワード:そう。で、そのオーディションってのはいつ?
ボロ:それがやたらと延期されてさ、もう10回目だよ。
ハワード:だろうね。それで、問題ないわけ?
ボロ:大丈夫だよ。俺に電話してくれ、ってピーターに伝言してあるから。
ハワード:なるほどね。そりゃそうだ。もう映画はとっくに…
ヴィンス:よせ、よせ。黙ってようぜ。
ボロ:何?どうかしたか?
ハワード:いやその…今日はどちらから?
ボロ:ピーター、俺を気に入ってくれるかな?
ヴィンス:そりゃもちろんさ!
ボロ:ピーター、俺をじっくり見たいだろうから、今日もこの会場に来ているはずなんだ。
   誰かが、軽食ブースで、ピーターがケーキを食べてるの見たらしい。
ヴィンス:ケーキが好きなのかな。
ボロ:今から断っておくけどさ。俺、ここでお笑いをピーターに見せようと思うんだ。
ハワード:…お笑い?
ボロ:だってさ、オーディションとか言うとどうもシリアスになりすぎて、ピーターも俺の別の面が見られないだろう?
   スタンドアップなんてやってみたいんだけど。どう?
ハワード:じゃぁ俺、マイクを取ってくるよ。
ボロ:じゃぁ、ヴィンス俺を紹介してくれよ。
ヴィンス:よし、任せろ。プロっぽいね。
(ボロ、舞台左手に移動し、客席に見入る。そして袖を一瞬見てから、客席に向かって話しかける)
ボロ:あんた、そこに居ることナブーにバレてんぞ。
ヴィンス:さっきからそうなんだよ。
ボロ:こんなに席がたくさんあるのにな。
ヴィンス:馬鹿だろ?OK,ボロ、お前スタンドアップの経験は?
ボロ:なし。
ヴィンス:練習とかは?
ボロ:なし。
ヴィンス:オーライ。
(以下、ヴィンスの台詞はコックニー過ぎて聞き取れず)
     レディース&ジェントルメン、ボロのスタンドアップです!
(ヴィンス、幕の後ろに退場し、ボロが中央のマイクに進み出る)
ボロ:え〜あ〜…ん〜っと…お、俺、このあいだスーパーマーケットに行って、買い物カートを押していたんだ。
   どーんと長めに押しやって進んだら、カートが左にちょっと曲がった。前の女の人を追い越してやろうと、更に前進したら、
   どんどん左に曲がって行く。こりゃまずいやってんで、方向修正のために更に進むと、もっと左に曲がっちゃって、
   気がついたら円を描いて、元居た場所に戻ってた。
(ボロ、客席を見回すと大歓声)
ボロ:よし、ええっと、もう一つこんな話もあるぞ。すごいおかしな事があったんだ。そう、今夜のことさ。
   ある男が俺のところにやってきて言うんだ。「なぁ、ボロ。」その男は…ちょっと待てよ。
   あれ、男だったっけ?ん?待てよ。はっきりしないや。女のひとだったかなぁ。
   そのどっちかは判然とはしないけど…その…
(ハワードとヴィンスが登場。ヴィンス、舞台左手に向かって呼びかける)
ヴィンス:だめだこりゃ。ナブー!ナブーリオ!どかんと一発たのむよ!
(ナブー、吹き矢をボロに命中させる。ボロ、よろめきヴィンスの方へ倒れ掛かる。ハワード、すかさずボロからマイクを取り上げる)
ヴィンス:大丈夫?
ボロ:何が起きたんだ?
ヴィンス:すごかったぜ。3時間も喋ってた。もう、爆笑の嵐だ。
ボロ:本当?ピーターも笑ってた?
ヴィンス:うん、ケーキを噴き出して大笑いしてた。
ボロ:ああ、良かった。
(ボロ、退場)

ハワード:オーケー。以上かな。ナブーを紹介して、ボロを紹介して、いよいよショー本番と参りましょう。さて…
(ハンドマイクのサイレンが響く)
フォッシル:ちょっと待ったぁ!
(客席からフォッシル登場)
       みなさま、お待たせしました!ただ今参上!愛しております!みなさん愛しております!
       あんたもセクシーね!
(ステージに上がってくる)ステッピー、ステッピー、ステップ、ステップ!
       やぁみんな!ヘーイ!…ああ、これ要らないや。
(ハンドマイクをハワードに渡す)
フォッシル:ブルクストン!お待たせー!!
(ひとしきり雄たけびを上げて)こんなもんかな。
       足も伸ばさないと、大事な所が縮むからな。
ハワード:きたのは結構だけど、何かできるわけ?
フォッシル:まかせろ。
(フォッシル、謎のパフォーマンス。ハワード、無反応を装うが、噴き出してしまう)
ハワード:それで…ここんところ、どう?
フォッシル:ちょーっとばかし、タブロイド誌をにぎわしてたぞ。ほら、僕が妊娠中だってあの話。
ハワード:そりゃまたご苦労なことで。パパはどなた?
フォッシル:トム!あそこに居るだろ!野郎、恥を知りやがれ!
ハワード:他に何か?
フォッシル:ええっとね。水中語を話せるようになったよ。ほら。
(水中声で)僕ちゃん、ボビー・ボブボブ!お元気?
       何して遊ぶ?
(歓声に)どうも!どうもありがとう!
ヴィンス:
(水中声で)わぁお!
ハワード:脚本どおりの事はできないの?
フォッシル:で、できるよ。あの白い紙に黒い字で書いてあるやつでしょ?
ハワード:そう。台詞だよ。
フォッシル:読めば良いんだよね。大丈夫。僕、アメリカで探偵ドラマに出てたんだから。役名は『ビッグ・レッグ』。
ハワード:『ビッグ・レッグ』ねぇ。
フォッシル:そう、よくある探偵ドラマでさ、車椅子の人とかでてきて、老女が色情魔に殺されるわけ。
       犯人は誰だ?!俺―!!コトの真っ最中だ、邪魔すんな!
       で、コロンボみたいな刑事が出てきて、しみったれたコートで言うわけ。
       「あー、すいません、もう一つ…」
(ブー!)あー。失礼ハニー。このコート、クリーニングに出しておいて。
ヴィンス:自分で洗うんじゃん?
フォッシル:もう、どこでクソするか分かったもんじゃないからな。スプリンクラーみたいに。
(ご丁寧に再現)よろしくね、ハニー。
ヴィンス&ハワード:以上?
フォッシル:ブリクトン、乗ってる?!
ヴィンス:それで、あんたがビッグ・レッグなんだろ?
ハワード:そうだ、探偵モノなんかでどう活躍するんだ?
フォッシル:任しとけ。
ハワード:できりゃな。
フォッシル:ビッグ・レッグはチョー!足が長いんだ。こいつは警察署でふんぞり返って、でかい葉巻をふかし、
       股間が濡れれば丁寧にふき取り…いざとなれば、そのチョー!長い足がどんな遠くにでも繰り出して、
       ドーン!ならず者を一網打尽!おらぁ、強盗どもめ!ゴーン!この小悪党め!署まで一緒に来てもらおう!
       タイホ!白人は嫌いだ!…と、まぁこれが僕の決め台詞なわけ。
ハワード&ヴィンス:ふぅん。
フォッシル:白人は嫌いだ!
ヴィンス:みんなそうだろ。
ハワード:うん、まぁいいや。演技は後で見せてもらうよ。そろそろショーを始めようと思うんだけど…
フォッシル:待ちきれないね。僕、演技だぁ〜い好き!ほーら見て!ぼくちゃん演技派俳優〜!ばーっちり〜!
ハワード:とにかく。その演技力はあとで発揮してもらうことにして。楽屋にいったん引っ込んで…
フォッシル:あ、もう一ついいかな。ここは一つ、僕お客さんのがウォームアップなんてしてみようと思うんだけど。どうかな。
ヴィンス:みんな、どう?オーケー。ボブ・フォッシル!正真正銘元祖お家芸をどうぞ!
(ヴィンスとハワード、退場)
フォッシル:
(最初の台詞は聞き取れず)よし、ロック・オン準備はいいか、ブリクストン?!いくぜ!
(10CCの「ドレッドロック・ホリデイ」に会わせて、フォッシルのダンス開始)

音楽:♪俺がダウニング・ストリートを歩いていたら トラックのライトにさえ緊張してきて
     すぐ傍から暗い声がする おどおどしながら辺りを見回した
     四人の男の顔があって そのうち一人はスラムのにいちゃん
     俺を見たり、ながめたり、あたりをかぎまわり…
     だから言ってやった、「俺はクリケットが嫌いだ!」♪

(フォッシル退場,代わりにハワードとヴィンス再び登場)
ハワード:ボブ・フォッシルでした。
ヴィンス:チョーアホ野郎。
ハワード:オーケー。準備もできたし、ショー本番と行くか。
ヴィンス:いいね。行こうぜ。
ハワード:
(ヴィンスのTシャツをつまんで)いいな、着替えたのか。
ヴィンス:いいだろ?
ハワード:うん。
ヴィンス:シンプルなデザインでさ。
(客席からのチャチャに笑い出す)なんだあれ、50年代のアニメか?
     …な、いいだろ?ちょっと引っ張ってみ。
ハワード:伸縮素材?
ヴィンス:ぴったりフィット。
ハワード:高そう。どこで売ってるんだ?
ヴィンス:売店。安いよ。
ハワード:そうなんだ。
ヴィンス:買ってこいよ。イカしてるだろ。
ハワード:俺のもゲットするか。ヴィンス・ノワー・ブランドね。
ヴィンス:売店に取り揃えております。
ハワード:じゃぁ、ハワード・ムーン・ラインナップもそろえようかな。どう、買う?
(客席から歓声)
ヴィンス:よしなよ…
(このあと、ヴィンスとハワードの間で、ハワードの言う所の「トランペット・ソック」についての会話が展開。しかし、これがぜんぜん分らない!「トランペット・ソック」って何だ?舞台の最後の方にも出てくる言葉だが…?どうやらハワードはヴィンスに「トランペット・ソック」について何度も説明している。ハワードが提案する「編み物」のトランペット用のソックス?と思われる。ピクニックに行くのに、大きなハード・ケースを持つのは大変だから、この「トランペット・ソック」が役に立つ…という話?色なども色々コーディネイトできるらしい。ともあれ、ハワードのこの提案はキャンセルされる)
ヴィンス:とにかく、あれはキャンセルな。
ハワード:なんだよ…
ヴィンス:心配すんなよ。俺が売店でいいもん見っけたから。これをステージで使えば、効果覿面だぜ。
ハワード:なんだ?
ヴィンス:見ろよ、ハワード・ムーン。
(ポケットから、ピンクのパンツを取り出す)
     いいだろ、ハワード・ムーンのピンク・ファンキーパンツ!イカしてるだろ?こいつを使えよ。
     な、みんな。これを履いたハワード、見たいだろう?
(客席から大歓声が起きるが、ハワードの反応は中指)
ヴィンス:いいじゃん、ウケるぞ。
ハワード:俺の絶品脚線美にはそぐわないな。俺は、俺は…ふざけんな!この馬鹿ども!
     いいか、俺はアーチストだぞ、毒をはらんだ運命の力と心得ろ。
ヴィンス:そうなの?
ハワード:だから、そんなものは履かない。
ヴィンス:わかったよ。ドクドク運命力。
(パンツを頭に被る)よし、ショーを始めるか?
ハワード:オーケー。
ヴィンス:みんな、準備は良いか?トップ・ショップ!準備はいいか!ロワー・ショーップ!
     よし、ショーの始まりだ。タイトルは簡単。「ククンドゥのルビー」。
(ハワードとヴィンスが幕をあけると、ゴング係が出てきて、ショーの開始を告げる。ハワードとヴィンス、退場)


 
パート2.ツンドラ 〜 ハックニー

ナレーション:北極圏,ツンドラ ― シーツ多用。1万年前…
(三人のイエティがククンドゥのルビーを奉り、ダンス。軽い仲間割れなぞ起こしつつ場面転換)

ナレーション:1万年後、ハックニー。ちっちゃなリサイクル・ショップ…
(舞台下手からハワードが登場。歓声が起こるが…)
ハワード:もっかいやり直し。
(袖に戻り、もう一度登場。大歓声に満足するハワード)
ハワード:やったね。どうも、奥様。
(ハワード、パントマイムの技術を駆使しつつ、店内へ)
ハワード:見た?俺の熱演。ま、パントマイム博士と呼んでくれたまえ。
(電話が鳴り、ハワードが応答)
ハワード:はい、ナブー骨董店です。ええ、ただ今ナブーは外出しておりますが、
     この私ハワード・ムーンがご案内させていただきます。これまでにご利用いただいたことは?ない?
     ええ、当店ではレアもののジャズLPなどを扱っております…もしもし?
(電話が切れてる)海峡ケーブル不良か。
(下手からヴィンスが登場。店のドアを突き破って入ってくる)
ヴィンス:わぁ、なんだこりゃ!
ハワード:
(デッキブラシを渡しながら)掃除しろよ。
ヴィンス:掃除って何を?
ハワード:「あるつもり」のガラスさ。
ヴィンス:どこにあるの?
ハワード:そこらじゅうにあるだろ。
ヴィンス:そこらじゅう?
(ヴィンスがブラシを使うと、悲鳴があがる)
ヴィンス:気をつけろよ。怪我したら「あるつもり」病院に行きな。そんで、「いるつもり」医者に診てもらうんだ。よう、元気?
ハワード:元気だよ。
ヴィンス:ふうん。なんか面白いことあった?
ハワード:まだ。開店したばっかだからな。
ヴィンス:なに、ジャズ・レコードをディスプレイしたわけ?
ハワード:ああ。
ヴィンス:誰がこんなLP買うんだ?豚みたいな顔でさ。
ハワード:問題なし。ビバップの中でも最大の顔だからな。
ヴィンス:ピッグ顔の中で最大だろ。
ハワード:ノーマル顔でも一際でかいの。
ヴィンス:すげぇ。でか過ぎてバランス取れないだろ。なぁ、いいもん持って来たぜ。
(ヴィンス、持参した紙袋からウィッグを取り出す)
ヴィンス:ナブーも気に入るぞ、見ろ。ほら。
ハワード:なんだ、それ。
ヴィンス:俺の髪で作ったウィッグだよ。スタイリッシュだろ?
(ウィッグをマネキンに被せる)
     
あっという間にミック・ジャガーやけむくじゃらのスティッグに大変身!
ハワード:そうかい。
ヴィンス:あっという間に、ポップをゲット!これを被れば俺みたいなポップスターになれる。
ハワード:お前、ポップスターなんかじゃないだろ。俺とおなじくただの店員じゃないか。
ヴィンス:さぁ、それはどうかな?見ろよ。

(ヴィンス、コートを脱ぎ捨てミラーボールスーツを披露する。「エレクトロ・ボーイ」のイントロと共に照明がかわり、黒子からマイクを受け取る)
ヴィンス:♪プラスチックの夢に乗って ちっぽけなメカのように胸が高鳴る 
       俺はエレクトロ・ボーイ 私はエレクトロ・ガール♪

ハワード:ばっかじゃねぇの。まぁいいや、お前がそうくるなら、俺はこうだ。
(ハワード、コートを脱いで上手の袖に放り込む)
ハワード:よぉし、ばっちり!
(コートが戻ってくるが、それにめげずにシャドー・トランペットを披露)
ハワード:決まったね!

ハワード:さてと。ところでお前、コンチョウの遅刻の理由は?
ヴィンス:コンチョウ?
ハワード:そう、コンチョウ!
ヴィンス:へぇ、コンチョウねぇ。説明するとこうだ。夕べは普通にベッドに入ったんだよ。
     すぐに寝付いたはずなんだけど、馬鹿でかい魚が部屋に入ってきてさ。まじで馬鹿でかくてさ、
     人間みたいな二本の足があるんだ。しかもながーい口ばしまでついてて、俺の顔を覗き込んでさ、
     俺の眉間を突っついて来るんだよ。参ったよ、おかげで全然眠れなかった。
ハワード:…まぁいいや。もう十分だ。俺にはお前が遅刻した理由なんて先刻承知だ。
     まず起きるなり鏡の自分の顔に見入るだろ、それから家中の鏡に自分を映してみて、
     あっという間に時間が過ぎるわけだ。鏡の前にはりついたまま、動けないんだろ。
     お前はバジーか?!
(恐らくバジーという名前のインコのこと。鏡に映った自分の姿にフリーズするらしい)
ヴィンス:バジーなわけないだろ!
(ハワード、手鏡をヴィンスにかざして見せる。しばらくは無視するヴィンスだが、結局はバジーのように頭突きを食らわす)
ハワード:俺はお前と違って、着るものであれやこれやと迷ったりしないからな。
ヴィンス:どうするわけ?
ハワード:見てのとおりさ。ほら、こういうすっきりしたパンツに、ナイスなシャツ、無線マイク二本装着すれば準備完了!
     ほら、仕事だ。コンチョウは何か他に良いブツはゲットしてないのか?
ヴィンス:ああ、そうだ。見ろよ、今朝はこいつがあるんだ。
(紙袋からヘアドライヤーを取り出す)
     ほら、これ!6週間も探してて、やっと手に入れたんだ。
ハワード:なんだそりゃ。
ヴィンス:ヘアドライヤーだよ、ジャン・クロード・ジャケティーの新型だ。知ってる?ジャン・クロード・ジャケティー、
     フランスのデザイナーだよ。ほら、みんな知ってる。あの宣伝だよな、お前は見た?
ハワード:知らん。
ヴィンス:知ってるだろ。
(歌い始める)
     ♪ジャン・クロード・ジャケティー ジャケット着て出かけよう!
     ジャン・クロード・ジャケティー ジャケット着て出かけよう!♪
ハワード&ヴィンス:♪ジャケット ジャケット ジャケット ジャケット おお〜ぅスタイリッシュ!
              おお〜ぅ着心地満点!パリのまちを徘徊 背中にはリックサック 
              望遠鏡で未来を探してあっちやこっち 新たなデザイン 
              新たなポケット位置をさがし 世界中を飛び回る 
              あるときはミラノ、あるときは日本、その名はジャケティー!♪

ハワード:ああ、あれか。クソだな。
ヴィンス:そうも言っていられないぜ。見ろよ、このヘアドライヤーの威力を!
(ヴィンス、ハワードに向かってドライヤーを「発射」。ハワードの帽子が上手へ吹っ飛んでいく)
ヴィンス:まぁ、このためにアソコに立ってたわけだからな。凄いだろ?
ハワード:なるほど、大したものだ。あ、あそこ!
(背後からガンマンの的が現れ、ヴィンスが即座にドライヤーで撃つ。続いてお下げの女の子の的が現れる)
ハワード:あっ!
ヴィンス:
(撃つのをとどまる)おっとぉ〜危ない、危ない。最初は殺し屋、次は女の子か。
ハワード:いや実は…あの子も殺し屋なんだ。
ヴィンス:あのお下げの子が?
ハワード:そう。お下げのマッギンディ。
ヴィンス:お下げのマッギンティ!
ハワード:うん。殺し屋だ。
ヴィンス:どうやって殺すの?
ハワード:チュッパチャプスを使う。相手の目に一直線!エイ!
ヴィンス:わぁ…
ハワード:こんな具合。
ヴィンス:それにしたって、どうして俺が狙われるんだ?
ハワード:お前、モッドなんだろ?
(モッズのMODと、国防省[Ministry Of Defence]を掛けている)
ヴィンス:やってらんねぇ…こんな生活、もう嫌だ。ひと思いに…
(ヴィンス、銃口(?)を自分に向けるが、ハワードが取り上げる)
ハワード:よせ、ヴィンス。やめろ。悪いノーミソが吹っ飛ぶだけだ。
ヴィンス:
(翻訳不能!)

ハワード:まぁいいや。今度は俺の質問に答えてくれ。
     どうして俺らはこうやって来る日も、来る日も店番に費やしているんだ?
ヴィンス:パントマイムの練習時間が取れるからじゃないか?
ハワード:それもそうだな。お茶でも飲むか?
ヴィンス:うん。
(ハワード、パントマイムでお茶を入れ始める)
ハワード:お砂糖は?
ヴィンス:ふたつ。
(ハワード、お砂糖入りのお茶をヴィンスに渡す)
ハワード:熱いから気をつけろよ。
(ヴィンス、受け取り損ねてコップを落とす)
ハワード:わぁ!ほら、さっさと拭けよ。
ヴィンス:はいはい、気をつけてね…
ハワード:まった、忘れろ。お客が来たぞ。持ち場につけ!
(ヴィンス、意味不明のポーズを取る)
ハワード:そうじゃない!

(上手から、箱を持ち、考古学者に扮したフォッシルが登場)
考古学者:わぁーたくしは、ヘンリー・J・ヨッキュウフマンデ・イヌトヤリヤリマンである!
      そういう名前なの。多分、ドイツ人。わぁーたくしのお仕事は、考古学。
      考古学ってのは、ワンちゃんとヤるのと同じくらい楽しいのであります。
(考古学者、店に入ってくる)
考古学者:ごめんください。
ハワード:ハロー。
考古学者:ナブーはいらっしゃいますか?
ハワード:それが…
ヴィンス:ちょっと、俺のライトを遮らないでくれる?
(考古学者を押しのける)
考古学者:こりゃ失礼。
ハワード:おまえ自身がギラギラ・ライトだろうが!ええと…ナブーは不在なんです。
     商用で、そのうち戻ってきますが…しかし、私がお持ちの品物を拝見しましょう、
     考古学に詳しいし…
(箱を開けようとする)
考古学者:だめだめだめ…!
(蓋を閉める)この箱を開けてはいけません!
      この箱を開けても良いのは、ナブーだけであります!何が入っているのか、誰も知らないのです!
      きっと値の張る宝物か、もしくはきっと呪われた何かだ!おや?
(マネキンに目をやる)おお、素敵なウィッグ!
ヴィンス:いいだろ?俺の髪の毛で作ったんだ。
考古学者:素晴らしい!
ハワード:お気に召しましたか?こちらはいかがです?とても珍しいジャズのレコードですよ。
     ビバップがミュージックシーンで注目される前に、いち早く実践した素晴らしいトラッペッターの作品で…
(考古学者、レコードに唾を吐きかける)
考古学者:ええと…そのぉ…あんまり興味ないんで。さてと、ウィッグだけどね。
ヴィンス:いいだろ、そいつを被ればあっという間に、ポップスターに変身だぜ!
考古学者:私はずーっと、ポップスターになりたかったんだ!
ヴィンス:あっという間に、ポップをゲット!
(考古学者、ウィッグを被って歌い始める)

考古学者:♪安っぽいシャベルで 穴を掘り起こし 何か宝物がないか毎日物色 
        俺は考古学ボーイ 私は考古学ガール♪…三つ頂こう!
ヴィンス:70万ユーロね。
考古学者:はい、どうぞ。
ヴィンス:1枚で済むとはねぇ。
考古学者:と、言うわけで私は今日からポップスターですので。
ハワード:考古学はどうしたわけ?
考古学者:考古学なんてクソ食らえだ!では、ごきげんよう!
(退場しようとする)
ヴィンス:ちょっと、箱を忘れてるよ。
考古学者:ご・き・げ・ん・よ・う!
(退場)

ハワード:やれやれ。あれでも演技してるつもりかねぇ。さてと。
     この箱が置き去りにされたわけだけど…あのおっさんが言ったように、
     ナブーが帰ってくるまで、このままにしておく方が良いかな。
ヴィンス:そうだな。でもさお前、俺が席を外した隙にこっそり覗き見るつもりじゃないのか?
ハワード:そんなことする訳ないだろ。
(ライトが落ち、ハワードだけの声が響く)
     
…というのはもちろん嘘!こいつが消えたら、中を拝見していただくとするか。ハーッハッハッハッハ!
(ライトが戻る)
ヴィンス:うん、そう言うと思った。
ハワード:そうじゃなくて、今のは声に出して言ったんじゃないの。
ヴィンス:言ってたじゃん。
ハワード:心の中で言ってたの!頭の中の独白ってやつだってば!
ヴィンス:大声で言ってたじゃん。
ハワード:舞台演劇の手法だろうが!
ヴィンス:はぁ?!顔に赤いライトなんてあてて、なにやってんだ?どう見ても「さぁ聞け」って台詞だったじゃん。
ハワード:もういいよ。
ヴィンス:ばっかじゃねぇの。
ハワード:
(新聞を見ながら)あれ、トップショップがセールやってる。
(ヴィンス、走り去る。ライトが再度落ちて、ハワードのモノローグ)
ハワード:ふはははは!馬鹿め!トップショップのセールなんてやってるわけないだろ!
(ライトが戻ると同時に、ヴィンスも戻ってくる)
ハワード:セールです、まじでトップショップでセールやってるぞ。
(ヴィンス、再度退場。ハワード、いくらか躊躇しながらも箱の蓋を開ける)
ハワード:なんだ。何もないじゃないか。がっかり。しょうがない、地下室に在庫の確認でもしてくるか。
(ハワード、舞台表現技術を駆使して、「地下室」へ退場)


 パート3.ヒッチャー登場

(照明が変わり、煙が立ちこめ、箱からヒッチャーの手下たちが登場。更に、爆発と共にヒッチャーが登場)
ヒッチャー:♪箱に仕掛けたワナにはまった いかれコックニーの仕業だぞ
        ここでお茶でもどうだい お茶を一杯 
        俺はヒッチャー!記念撮影ヨッシャー!
        真夜中にあんたの部屋に侵入 ポロから覗き込んで視界良好♪
手下たち:♪いかしてるねー!♪
ヒッチャー:♪俺ぁいかれたコックニー この傷口見ろよ
        俺ぁ切り裂きジャックを知ってるぜ ヤツがジャリの頃からな
        俺が切り刻みを伝授したのさ ヤツを切り刻んでやった
        あんたバナナも粉砕してやれ!
手下たち:♪まっぷたつ〜!♪
ヒッチャー:♪そのメロンは14シリングでどうだ♪
手下たち:♪合点だ! おれたちゃ笛吹き兄弟 笛吹きジャックにジャッキーだ!
        フロントガラスのように 夜を切り裂いてやる
        お前なんぞ 雨粒みたいにふき取っちまう
        ほら、小僧を困らせるんじゃないよ♪
ヒッチャー:♪そら すっこんでろ!
       悪夢の怪物舞台で楽しもうじゃないか 踊るガイコツ 白 青 黄色
       猫のようにすばしっこく 影から影に飛び移りれ
       俺たちにはち合えば スパっといかせてもらうぜ
手下たち:♪そうさ こんなふうにな!♪
ヒッチャー:♪俺ぁ呪われているんだ 黒魔術だって使えるぜ
        悪魔の力を駆使して メチャメチャにしてやる
       パワーと ポロと 悪魔の磁力で あんたの魂を吸い取るのさ♪
手下たち:♪こんな風にな!♪

ヒッチャー:さぁ、おまえらとっとと失せな。ブリクストンなんかで油を売ってんじゃないぜ。
手下:オーライ、ボス。おいらはコックニー、おいらはコックニー…
(手下たち退場)
ヒッチャー:とっとと失せろや。
(これ以降、ヒッチャーの独壇場。殆ど何を言っているのか分らないので、至極テキトウな雰囲気でお楽しみ下さい)
ヒッチャー:よーし、ブリクストンのものども!まぁどいつもこいつも馬鹿ヅラぶらさげやがって。
       まったく生き返ったぜ、なにせ200年もこの箱に押し込められてたんだからな。
       200年だぞ、ブリクストン!基本的人権の侵害も良い所だ。
       まぁいいや、イルカと一発やりゃぁ気分も晴れる。あー、人を変態扱いすんじゃねーぞ。
       たいていは「ムリムリ」とか言いやがるが、あっちだって哺乳類だ。ヤリ方は同じだ。
       そのついでのお楽しみで、ペロペロキャンディーでも片手に、一緒に車でデートなんてイカスじゃねえか。
       助手席でイルカが色っぽくこう言うぞ。
       「いいじゃなぁ〜い、ダーリン。アタシをどの海でも良いから連れてって〜」
       まぁいいとこで川に放りだして、勝手にオーストラリアにでも帰ってもらうがな。
       さぁてと、ブリクストン!えーっと…ああ、何だっけ?
       そうだ、先週ちょーっとイケてないイルカをひっかけちゃってさ。
       こりゃまじいやってかなりジタバタした挙句に、オキアミをばら撒いた隙に逃げ出しておいた。
(この後、フンイキ創造翻訳も不能な台詞。なにやらケーキを蹴ったりしたり。誰か分ったら教えてください)

ヒッチャー:ここいらでちょっと失礼するぜ。何せ200年も箱に閉じ込められていたから、全然用足しができてないんだ。
       ああ、トイレはここだ。それでは失敬。小便タイムだ!
(ヒッチャー、用足しをはじめる)
ヒッチャー:大量だね!黄色いケーブルとはこれのことだ!イェイ!さぁ、おすそ分けだ!
(ヒッチャー、ボトルから水をまきながら客席に乱入)
ヒッチャー:食らえ!コックニーオシッコ攻撃!そら、ブーシュ・ファン!BBCの思う壺だ!たーんと召し上がれ!
       これが掛かると、いいことあるぞ。さーてと。どうやってステージに戻るかな。ちと高すぎらぁ。
       なぁ、そこのにーちゃん、手伝ってくれ。来いよ。
(客席の男性が進み出る)
ヒッチャー:ちょっとここに膝をついて、手を貸してくれ。
(お下品な一発ギャグ)イェー!!ジョークだってば。もう一回。
(ヒッチャー、男性の助けを借りてステージに戻る)
ヒッチャー:よう、サンキュー。じゃあな。さぁてと!盛大に用足しして、すっかりスッキリ!
(ヒッチャーがボトルを上手に投げ込むと)

(ナブーが店に入ってくる)

ナブー:何かお探しですか?
ヒッチャー:うんにゃ。ただの冷やかしだ。あんた、誰だ?
ナブー:お答えしよう、ぼくはナブー。
(歓声に応えるナブー。でも相変わらず例の客が気に入らない)
ナブー:あんたは?
ヒッチャー:ひとは俺を…ヒッチャーと呼ぶ。
(BGMとライトが盛り上がるが、中途半端に終了)
ナブー:まだ続ける?
ヒッチャー:いや、結構。
(コントロール・ルームにガンを飛ばす)おい、音声係!
       どうしてくれるんだよ、このマウケけな間は!
(しばらく音声さんに悪態をつくが、翻訳不能)
       お前にゃイルカがお似合いだ!
ナブー:このナブーのお店で、なにやってんの?
ヒッチャー:なんだって?
ナブー:ナブーのお店!
ヒッチャー:はぁ、このナブーのお店で何をやっているかと申しますとね、…こいつさ。
(ヒッチャー、ナイフを取り出し、ナブーを刺す)
ナブー:ああっ!クソっ!
(客席からブーイング)
ヒッチャー:よう、ブーイングかい!いいとも、もっとしろよ!はっはー!
       ブーイングすればするほど、こっちゃパワーアップだからな!いまさら止めたって遅いぞ!
       さぁってとぉ!店の売上金でも頂戴するか!
(ヒッチャー、カウンターに向かう途中で、ジャズ・レコードを見直す)
ヒッチャー:いや、俺の顔じゃないや。やったね、70万ユーロだ!大漁、大漁!さっさとずらかるとするか!
       おいらはコックニー、おいらはコックニー…おっと間違えた、こっちはオフィスのドアだ!
(ヒッチャー退場)

(お月様登場)

月:ハロー、みんな!出演できて嬉しいよ、おなじみ月でございます。
(残念ながら一体何の話をしているやら、皆目検討もつきません。ダン・ブラウンが出てきて、お茶がどうとかこうとか…?お分かりになる方、教えてください。)

(横たわったナブーと、聴診器で診察するボロ登場)

ボロ:嫌な予感がする。ナブー!
ナブー:最期の時が来たようだよ、ボロ。いよいよ旅立つんだ。
ボロ:何も怖がることはないんだよ、ナブー。ぼくらはきっと、次の人生でまた会えるよ。
ナブー:それはどうかな。僕は天国に行くだろうから。
ボロ:動物は天国には行けないの?
ナブー:そういう訳じゃないけど。お前、昔男の子を一人殺してるだろ。
ボロ:うん…すっかり忘れてた。
ナブー:ううッ!
(ボロ、布をナブーの顔にかける)
ナブー:何やってんの?
ボロ:あ、ごめん。死んじゃったかと思った。
ナブー:逆だよ。あ、いよいよだ!
(ボロ、布をかける)
ナブー:まだだった。
(ボロ、布をはずす)
ナブー:今だ!
(ナブー、中々死なず、その度に布をかけなおすボロはウンザリ。面倒なので、ボロがナブーに一撃を加える。ヴィンスとハワード、歌いながら登場)

ヴィンス:♪ナブーリオ! いったいどうしたって言うんだい?♪
ハワード:♪ ナブーリオ! 俺たちみんな、お前のことを愛してるよ♪
ハワード&ヴィンス:♪みんなお前の声が大好き ほかには何もいらない
              ナブーリオ いったいどうしたんだい? 一体どこへ行ってしまうんだい?
ボロ:♪フーリオ、ブーリオ どうしてがっかりさせるのさ?さぁ元気出せよブーリオ!♪
(ボロ、ノリノリだが、場にふさわしくなかったことに気付く)
ヴィンス:何やってんだ?
ボロ:ごめん。ちょっと我を忘れてた。
(客席に向かって合図)ピーター!
   ナブーは死んでしまった。しかし、唯一つだけ、シャーマンの命を取り戻す方法がある。
   それには、神秘なるククンドゥのルビーを手に入れなければ。
   それがあると言い伝えられているのは、北極圏、ツンドラの奥地…
ハワード:行くぞ。
ボロ:…か、スペイン。
ハワード:北極圏のツンドラか、スペイン?
ボロ:ごめん、どっちがどっちだか思い出せないんだ。
ハワード:ぜんぜん違う所じゃないか、ボロ。意味ないぞ。
ボロ:どうかな。
(ボロの退場と共に、幕が閉まり、ハワードとヴィンスが前方に残る)

ハワード:さーてと、ショーの半分くらいまで来たかな?
ヴィンス:ナブーが死んで。
ハワード:うん。ショック?ボロは悲しみのあまりイカれちまったし。
     で、俺たちが後半でルビーを探索しに出掛けて、発見しに派遣されて派遣されて発見するかもしれないし、
     派遣されるから発見できるとは限らないけど、派遣されるからには発見する…かもね。
     まぁ、とにかく探しに行く。それで…俺がスペインで、お前がツンドラに行くってとこでどうだ?
ヴィンス:俺がスペインに行ったって構わないんだぜ。
ハワード:いやいや、俺がスペインに行くよ。俺はスペイン人だし、だからお前は北極圏の方が向いて…
ヴィンス:お前がスペイン人だって?
ハワード:そうだよ。足とかスペインっぽいじゃん。骨の髄までスペインっぽいだろ。
ヴィンス:はぁ?
ハワード:そうだってば。
ヴィンス:スペイン人とか言って、ただのモノマネだろ。
ハワード:ふん、チャビオラだぞ!
ヴィンス:俺たちチャビオラ!あのな、スペイン人なんかじゃないだろ。
ハワード:そうだってば。
ヴィンス:どっからどう見てもリーズ出身じゃん!
(客席に)何か言った?!無しか。リーズは手遅れ!
     ええと…とにかく、お前はスペイン人なんかじゃないの!
ハワード:そうだってば!
ヴィンス:違うよ、リーズだろ?ほら、お前の女の口説き方!
     よーう、イケてる牝牛ねぇちゃん!俺の手押し車に乗ってかなーい?
ハワード:よせ、その話はするな。
ヴィンス:へーイ、いいじゃん!手押し車ってのはイカすぜ、来いよ!
ハワード:酔ってたんだ。
ヴィンス:だろうね。結局俺が手押し車に乗ったんだから。
ハワード:とにかく、どっちがどっちに行くか決めなきゃ。コインで決めるか。持ってる?
ヴィンス:この服、ポケットないんだ。
ハワード:任しとけ。
(ハワード、パントマイムでコインをトスする)
ハワード:オーケー、表?裏?
ヴィンス:うーんと、裏!
(ハワード、コインを見る)
ハワード:あ、クソッ!
(憤然としながら退場)
ヴィンス:イェー!「あるつもり」コインなんだから、自分でどうにでも出来るのにな。バーカ。
     …おっと。さてと、ショーはここまでで半分。休憩に入るから、どうぞお好きに飲み物とか、トイレとか…
(警告音が鳴り響き、巨大ウサギが登場。)
音楽:♪白いデカ顔ウサギ攻撃!攻撃!攻撃!ウサギ攻撃、ウサギ攻撃!♪
(ヴィンス、客席へ逃げ出す。途中で女性客にからみつつ、二人はステージへ。ウサギの変なゲームが現実のものになって、前半終了)


 パート4.ツンドラ 〜 スペイン

(ツンドラの空に、月が登場)

月:お月様ってやつをやっていると、一つだけ問題がありましてね。…つまり、私と同じ立場の人、って意味ですよ。
  それはチョークみたいに顔が真っ白だってことなんです。顔が白すぎて歯が黄色く見えちゃうんですよ。
  ある日、歯医者に行きましたら歯医者が「わぁ〜!歯がまっ黄色だ!」って言いやがるんです。
  だから言い返しました。「違うよ、顔が真っ白だから黄色に見えるだけだったば!
  あんた見たいな顔色なら、歯だって黄色くは見えないさ。」
(ゴロゴロゴロ〜)
  その時はあんまり持ち合わせがなかったのに、診療代金は500ポンドだって言うんですよ。
  だから言ってやりました。「そんなん、払っていられるか!おいらはお月様だもんね!
  診療台からこっそり逃げ出して、伝票を隠してやった。へへんだ。あんなクソ歯医者になんて、びた一文払うもんか!
(月退場)

(ツンドラにハワードのテント。出番だというのに、なかなか出て来れないハワード。やっとの思いで出てくる。大歓声)

ハワード:そういう目で見るんじゃない。
(ヴォイスレコーダーに)ハワード・ムーン・ジャーナル、37日目。
     未だにククンドゥのルビーは見当たらない。北極圏は孤独な土地だ。風だけが友達…
風:お前なんて嫌いだ!
ハワード:黙れ。北極圏は特殊な環境だ。昼間は非常に短く…夜に至ってはもっと短い。ハッ。
     …今日はどちらから?38日目。地平線から、不思議な人影が、私の宿営地に向かって近づいてきた。
(パーカ男が登場)
パーカ男:パーカの奥深くを見よ!
ハワード:…はぁ?
パーカ男:パーカの奥深くを見よ!
ハワード:なんで?
パーカ男:多くのものを目撃するであろう。お前が夢の中でさえも見たこともない物をな。
ハワード:例えば?
パーカ男:オムレツとか。
ハワード:オムレツはお馴染みだな。夢にもよく出てくるし。オムレツ・ドリーマーって呼んでくれてもいいよ。
パーカ男:あれま。そうか。じゃぁ、いいや。ユニコーンはどう?エイズだけど。
(ハワード絶句)
パーカ男:お馴染み?
ハワード:全然!
パーカ男:はっはー。さぁ、パーカの奥深くを見るのだ。早く、パーカの奥深くを見るのだ。
      夢にさえ見たこともないものを、見届けるのだ!
(ハワード、パーカに手を突っ込んで、なにやら球状の物を引っ張り出してしまう)
パーカ男:わぁああ!馬鹿、何すんだよ!俺の目玉じゃないか!
ハワード:ごめん。
パーカ男:どうすんだよ、これ!最悪!
ハワード:ほんと、ごめん。
(ハワード、目玉を戻そうとするが、すぐに外れてしまう)
パーカ男:あほ、元に戻るわけないだろ!
(ハワード、ふき出す。パーカ男、目玉をブンブン振り回し始める)
パーカ男:見て見て。スイングボールだ!
(ハワード、ラケットを取り出して、目玉を打ち始める)
パーカ男:やめ!馬鹿はたくさんだ!
ハワード:ごめん。じゃぁ…これ、ポケットに入れておこう。
パーカ男:まぁいっか。さてと、もう一回パーカの奥深くを見るのだ。ちょっと場所を間違えたみたい。
(ハワード、もう一度パーカに手を入れる)
パーカ男:反対側。
(ハワード、黄色い紙を取り出す)
ハワード:なんだ、これ。
パーカ男:電報。
ハワード:ああ、ありがとう。
(パーカ男、立ち去ろうとする)
ハワード:ちょっと待って、どこ行くの?ヤカンのお湯も沸きそうだから、お茶でも飲みながらお喋りでもしていきなよ。
パーカ男:いや、結構。
ハワード:どこ行くんだ?
パーカ男:目医者。
(パーカ男退場)
ハワード:まぁいいか、いい展開だぞ。きっと、ククンドゥのルビーに関する情報だろう。
(ハワード、電報を読み始めると、トム・ポーリンの声が響く)
ポーリン:やぁ、ハワード。アソコの写真を送ってくれて、ありがとうね!
(ハワード、あわてて電報を捨てる)
ハワード:送ってないってば!
(ヴォイスレコーダーに)ハワード・ムーン・ジャーナル、38日目。
      わが人生は孤独のうちに取り残され、雪がしんしんと降り積もる…(歌い始める)
     ♪出会ったこともない 味わったことも無い 
      俺に残された物といえば この無限の孤独 
      意義ある人生という名の祝祭パレード それがこんなものだとは思いもしない 
      こんな境遇に追いやられるなんて この無限の孤独 
      我が希望は思い出の彼方 我が人生に残された物といえば この無限の孤独♪
(客席から大歓声)
ハワード:サプライズ演出、ご満足いただけました?さて、その頃スペインでは…?!

(ヴィンスが楽しい音楽に乗りながら、三人のスペイン人と共に登場)
ヴィンス:イェイ!最高!スペインって最高だな!ああ、そうだ。ところで皆、ククンドゥのルビーって知ってる?
(突然音楽が止み、三人のスペイン人がそれぞれに憤りを表現する。ところが、フォッシルが演じるスペイン人がヴィンスに唾を大胆に引っ掛けすぎてしまう)
スペイン人:えぇ〜あぁ〜…あ、あの…
(水中声で)すみません…ええと…
(ヴィンスが顔を拭き立ち直ってから、スペイン人が演技を続行する)
スペイン人:あんたが悪いんだからな!
ヴィンス:ショーが終わったら、ぶっ殺してやるからな。
スペイン人:脚本にそう書いてあることを守っただけなんだから。
ヴィンス:皮肉だな、俺は唾をかけられても、自分を守ることも出来ないわけだ。
スペイン人:いや、その…
(ナブーが演じるスペイン人が笑いだしているのを、ヴィンスがみつける)
ヴィンス:何笑ってるんだよ。こいつ、今度のツアーで初めて笑ったぞ。
スペイン人:笑うんじゃない!俺はこの人と二人っきりで話すから、二人ともあっち行ってろ。
      そのクズギターもさっさと片付けるんだ。こっちは仕事だからな。(ヴィンスに向かって)とにかく、あんたが悪いんだ。
ヴィンス:俺が悪いって?
スペイン人:そう。
ヴィンス:馬鹿ぬかせ。
スペイン人:しょうがないでしょ、言われたとおりにするしかないだから。とにかく、悪かったよ。…どうすりゃ良いの?
       進めるよ。いいか、聴けよ。お前が悪いんだぞ。ククンドゥのルビーの話をしただろう。
ヴィンス:だから?
スペイン人:多くのものたちがククンドゥのルビーの話をもちだし、そして彼らは死んでいったのだ。
ヴィンス:ふうん。どんな色だった?
スペイン人:俺は死にたくないの。自己防衛しなきゃ。
ヴィンス:自己防衛ねえ。
スペイン人:いいか?
(帽子のつばがあたる)
ヴィンス:あのな、帽子の分離れろよ。
スペイン人:ごめん、でかすぎたね。
ヴィンス:もうちょっとましなの選べよ。サル並みの頭だな。
(ボロが出てくる)
ヴィンス:ただの言葉のアヤだよ、ボロ。
ボロ:オッケー。
(ボロ退場)
スペイン人:じゃあね!さて、俺はある男を知っているんだ。あの山の向こうに…
(また帽子のつばがぶつかる)
ヴィンス:もう!なぁ、同時に同じ方向に動くようにしようぜ。
スペイン人:オーケー。いいか、向こうにある男が居る。その男は、呪いの森のむこうに住んでいるのだ。
ヴィンス:鈍い森じゃないよな。
スペイン人:ないよ。あの売店の向こうにあるのだ。その男が、ルビーについて語ってくれるだろう。
ヴィンス:そうなんだ。何してくれんの?唾をかけてくるとか?
スペイン人:馬鹿言わないで。演技中とかいうのは話しちゃだめだよ。ね?
ヴィンス:オーケー。じゃあな。
スペイン人:じゃあね、うまく行くといいね。
ヴィンス:バイバイ。
スペイン人:バイバイ!
ヴィンス:さっさと失せな。
(スペイン人、退場しようとして足を止める)
スペイン人:ああ、そうだ。この話は誰にもするなよ。
ヴィンス:え?
スペイン人:ぼくがあんたに、この話をしたこと、誰にも言っちゃ駄目だぞ。ばれたら、殺されちゃうんだよ。
ヴィンス:わかった。じゃあな。
(スペイン人退場)
ヴィンス:頭の良い人も居たもんだな、呪いの森の事を教えてくれたんだから。
(銃声が響き渡る)
スペイン人の声:この大バカヤロー!!!!
ヴィンス:忘れてた。

(ヴィンスの呪いの森への旅へと舞台転換)
ナレーター:かくして、ヴィンス・ノワーは呪いの森への困難の旅立った。
       ここからは、私のナレーションにしたがって進行させてもらう。まずは、ムーンウォークで進む。
ヴィンス:ブーツじゃ無理だってば。
ナレーター:役立たずめ。
ヴィンス:こっちでも良いじゃん?
(ヴィンスがダンス)
ナレーター:そんないい加減な動きで誤魔化すんじゃない。さらに、旅は続く。何マイルも、何マイルも歩き続けて…
(ボロとナブーが「呪いの森まで」のマイル数を表示するが、順番が逆)
ナレーション:逆だってば。
ヴィンス:
(ボロに)ほら、順番を間違えているんだよ。
ナレーション:やがて、吹き荒れるハリケーンが襲ってきた。
(どうやらフォッシルが「ハリケーン」らしい)
ナレーション:ハリケーンは…ヴィンスの頭をなーでなで…
ヴィンス:冗談だろ。
ナレーション:やるの。
(フォッシルはしぶしぶヴィンスに手を伸ばす)
ヴィンス:やめろってば!
フォッシル:あいつがやれって言うから!
(退場)
ナレーション:この舞台は、私が仕切るんだから、従ってもらうぞ。
        さて、ハリケーンが過ぎ去り、とうとう旅は終わりに近づき、いよいよ呪いの森へ到着したのであった。
(舞台演出を駆使した転換)
ナレーション:おおーぅ、シアター!!!


 パート5.ルディ登場

(フクロウがヴィンスにいくらかちょっかいを出した後、ルディが登場する)
ヴィンス:あんたは?
ルディ:私は様々な名で呼ばれてきた。
ヴィンス:例えば?
ルディ:それはもう、随分たくさんあるが。その一部を披露しよう。
(しばらく、ルディによる奇怪な名前の披露が続く。「ある者は…と呼ぶ」の連続。サード・ネームがある場合もあり。発音に難がある上に、元ネタが分らないことが殆どなので、降参。お分かりになる方、教えてください。)

ルディ:でもきみは…私をルディと呼んでくれたまえ。きみはこの森に何かを捜し求めに来たのではないかね、お嬢ちゃん。
ヴィンス:まぁね、どうして知ってるんだ?
ルディ:私はあらゆることを知っているのだ。
ヴィンス:あんた、魔法使い?
ルディ:はははは…はい。まぁ、椅子に座りたまえ。ゆっくり森の話でもしよう。
ヴィンス:椅子なんてないんだけど。
ルディ:心配無用。私は森の精を自由自在に操れるのだ。カラマルー!!カラカラカラマルー!椅子をもてーい!
(森の精が椅子を持ってやってくる。ヴィンスにちょっかいを出して退場)
ルディ:今夜の森は悪戯好きだな。
ヴィンス:嫌がらせ好きだろ。
ルディ:さてと。マッシュルームはどんな具合だ。…やぁ、今日はどちらから?
ヴィンス:ちょっと高いね。
(ルディが麻薬のマッシュルームを示唆したのに対して、「ハイ」と返している…らしい。以下管理人の想像翻訳につき、注意)
ルディ:私なら歯磨き粉で十分ハイだね。どういうわけか自分でも分らないけど。
    まぁ、サイケ伝道者としての務めだ。こんな所で告白するのもなんだけど…色々ためしてて。
    こいつに関しては、自分の家庭菜園で作ったのだ。
ヴィンス:俺がちくっても良いんだけど。
ルディ:眠れなるからよせ。きみは、何かをここに捜し求めてきたのだろう?何を求めているのだ?
ヴィンス:実は、ククンドゥのルビーを探しているんだ。
(BGMと共に、二人で大げさ反応)
ルディ:ククンドゥのルビー?
(BGMと共に、二人で大げさ反応)
ヴィンス:そう、ククンドゥのルビー。
(BGMと共に、二人で大げさ反応)
ルディ:ククンドゥのルビー?
(BGMと共に、二人で大げさ…になりかけて、ルディが遮る)
ルディ:やめ!楽しいけど、いい加減にしないと。よし、私はククンドゥのルビーについて、知っているぞ、
    そう知っていること自体を知っているから、ちゃんと自分で知っているということを分っているということ。
    ルビーを手に入れるには、いくらかの関門があるのだ。それは真に慈愛を持ち高潔な魂を持っているのか。そ
    れを照明するには、テストを受けなければならない。
ヴィンス:なるほど。どんなテスト?
ルディ:自転車競技のプロテスト。これは難しいぞ!
ヴィンス:うん。実は、随分前に学校でパスしちゃってんだよね。簡単だったよ。
ルディ:おおう!おやおや、おーやおやおやおや、おーやおや。ああ、そうかい。すごいね、すごいね。
    凄いのはきみであって、凄いがきみというわけじゃなくて、きみは凄いすごすごというわけ。
    よろしい。第一段階はパスということで、いい気になってないか、他のテストが必要だ。
    そう、ブラック・ライダーとの対決だ。
(ガーン!)世にも危険なガンマンだ。
    今すぐ対決せねば、この森で、この真夜中に!
(教会の鐘が一つだけ鳴り響く)
ヴィンス:ええと…ルディ、どうやら1時らしい。話している間に、随分時間がたっちゃったみたい。
ルディ:時間が経つのは早いものだな。失礼。
(電話をかけながら、スキャットで歌いだす)スキャット・フォンだよ。
(電話の呼び出し音が鳴り、ブラック・ライダーが出る)
ブラック・ライダー:もしもし?
ルディ:こんな夜遅くに悪いんだけど、大急ぎでお願いできるかな。
ブラック・ライダー:場所はどこ?
ルディ:のーろーいーのもーり…
ブラック・ライダー:どこだって?!
ルディ:ブリクストン。
ブラック・ライダー:オーケー。直ぐ行くから待ってろ。
ルディ:ありがとう。ああ、所でおいくらになる?
ブラック・ライダー:特急料金だな。
ルディ:いたた…どうもありがとう。よろしく。
ブラック・ライダー:死んじまえ。
(電話が切れる)
ルディ:さぁ、準備したまえ。ブラック・ライダーが来るぞ。

(ブラック・ライダー登場。ヴィンスとの対決となる。多少の出入りの後、ヴィンスが勝利する)

ルディ:きみはテストをパスしたぞ!さぁ、ククンドゥのルビーを受け取る時が訪れたぞ。
(ルディ頭部のククンドゥのドアが開き、手が出てきてヴィンスに丸いものを渡す)
ルディ:さぁ、ルビーを受け取るが良い、可愛いお姫様。
ヴィンス:なぁ、ルディ。こりゃキンダー・エッグだよ。
ルディ:キンダー・エッグ?キンダー・エッグって何?
ヴィンス:卵形のチョコレートだよ。中におもちゃが入っている。
ルディ:あれま。ごめんよ、そいつがルビーだと思ってた。きみの長く苦しい旅路は無駄だったわけだね。
観客:チョコレートでも食って勉強しな!
ルディ:うっさい!お前のキンタマを唐揚げにしちまうぞ。
ヴィンス:それで、彼女のアソコにのっけてテーブルに出してやるよ。良いコンビだろ?
ルディ:それで、キンダー・エッグってなんだっけ?
ヴィンス:チョコレートさ。中に小さなおもちゃが入ってて…ホバークラフトとか。
ルディ:ホバ…ホバークラフトって何?
ヴィンス:どうも説明が良くなかったみたいだな。
(翻訳不能コックニー野郎め!)
ルディ:なんだか難しそうだな。
ヴィンス:これ、どうぞ。
(ルディにキンダー・エッグを差し出す)
ルディ:私に?
ヴィンス:そうさ。とっときなよ。
ルディ:ありがとう。
ヴィンス:じゃあね、色々ありがとうルディ。バァイ!
(ヴィンス、いくらか歩き出し、立ち止まる)
ルディ:待て!きみはテストをパスしたぞ。
ヴィンス:何のテスト?
ルディ:キンダー・テストさ。大体はみんな、チョコレートを食べてしまうが、しかしきみの場合、これを私にくれた。
    それはきみが、真に慈愛に満ちた心を持っているからだ。
    よし、今度こそ私がククンドゥのルビーのありかを教えてやろう。遠く、遠く、ここから遠く…いや、こっち。
    遠く離れた、北極圏のツンドラにあるのだ。きみ、ちょっと場所を間違えたみたいだね。
ヴィンス:よかった、分かったよ。今すぐいかなきゃ。ありがとう。じゃあね、ルディ。
(ヴィンス、歩き出す)
ルディ:いいんだよ。ただ、私のタマを舐めてくれさえすれば良い。
ヴィンス:しません。
ルディ:きみはテストにパスしたぞ!
ヴィンス:何のテスト?
ルディ:タマテストさ。
ヴィンス:タマテスト?
ルディ:そう!たいていの人は、私のタマを舐めて…
ヴィンス:じゃあね!
ルディ:バイバイ!
(ヴィンスとルディ、退場)

(月登場)

月:ゲーップ。失礼。ああ、ゲップしちゃった。お月ゲップね。木星がすげーやな顔してる。
  私は木星のこと、大好き。火星も好きだよ。でもね、冥王星は私にぜったい話しかけないんですよ。
  まるで私なんて居ないみたいなそぶりでね。私が「ハロー、冥王星君」って言っても、無視。
  どうしてなんだか、検討もつきません。土製はクレイジーだね!まじでクレイジー!
  いっつも飲んだくれて、どこででもオシッコしちゃうんです。魚のフライ片手に、いっつもフラフラしてる。
  ある時会ったら、かなりオモロイことになってましたよ。
(月退場)

(ツンドラに、ヴィンスが犬ぞりで登場。音楽をリモコンで止めて、降りてくる)

ヴィンス:
(犬に)お前、何やってんの?仕事してないじゃん。これ、ハワードのテントだよな。俺への伝言があるぞ。
(ヴィンス、テントに残されていたメモを読み始める)
ハワードの声:私、ハワード・ムーンは…
ヴィンス:まだ読み始めてないよ!
ハワードの声:このツンドラに来た全ての人々に、助言しようと思う。
         ククンドゥのルビーを探しに来た者は、この助言をよく聞くのだ。北極圏は危険な所だ。
         そして謎の生物がうごめいている。そのうなり声を、何度も聴いた。夜、守りを固めるのだ。
         そして、決して眠ってはいけない。
(ヴィンス、手紙を捨てると、座ってあたりを見回す。しかし、すぐに寝込んでしまう。そこに、イエティが登場。夢の中のヴィンスと共に踊り始める。かなり良い雰囲気でお姫様だっこまでしてくれるが、その後の始末がかなりケッタイ。)
ヴィンス:ああ…なんだこりゃ…
(イエティ、いったん姿を消す)
ヴィンス:待ってよ!すごく良かったじゃん、電話番号教えてよ!
(イエティがルビーを持って戻ってくる。それをヴィンスに手渡し、そして去ってゆく。ヴィンスはルビーを箱にしまおうとする。そこで、蓋の位置とBGMの関係に気付く。しばらく音声さんとの勝負)
ヴィンス:やるね、音声さん!

(再びヴィンスが眠り込むと、下手からハワードが登場。大歓声が起こるが…)
ハワード:もっかいやり直し。
(ハワード、再度登場。ヴィンスを起こす)
ハワード:ヴィンス?おい、ヴィンス!
ヴィンス:ああ、イエティ!戻ってきたんだ!
(ハワードに抱きつく)おっと、失礼。間違えた。やぁ、ハワード。上手く行ってる?
ハワード:まぁまぁ。
ヴィンス:よし、今すぐ帰ろうぜ。
ハワード:いいや。
ヴィンス:え?
ハワード:俺はここを離れないぞ、ヴィンス。
ヴィンス:どうして?
ハワード:俺には使命があるんだ。ククンドゥのルビーを見つけるまでは、決して、決して戻らない、
     俺の使命は、探すことなのだ、ルビー…!
(ヴィンス、箱から取り出したルビーを見せる)
ヴィンス:これだろ?
ハワード:うん。
ヴィンス:帰るぞ。
ハワード:うん。



 パート6.ヒッチャー vs ルディ

(月登場)

月:ええと…それでですね。ヴィンス・ノワーるはトップ・ショップに行っちゃいました。
  ハワードは、ルビーをボロに預けたらしいです。ええと。それから何か起こるんだっけ?見てなかったから。
  馬鹿が見るものは見ないの。
(月退場)

(舞台奥にナブーが横たわり、ボロがルビーを持って登場)

ボロ:さぁ、いよいよその時がやってきた。そう、シャーマンの命を取り戻すのだ。
(そこにヒッチャーが現れる)
ヒッチャー:ちょっと待った、おサルさんよ。良いもの持ってるじゃないか。そいつを俺によこしてもらおうか。
ボロ:駄目だ。これはナブーの命を取り戻すために必要なんだ。
ヒッチャー:ああ、そうかい。じゃぁ、実力行使しかないな。
(ヒッチャー、ナイフでボロを刺す)
ボロ:うぁあああ…!
(ルビーをヒッチャーに渡す)うぉおおお…!見てる?ピーター!ピーター、
   見て見て、俺のこの演技!よーく見て!
(ボロ、「キングコング」のオーディションのために迫真の演技&演出)
ボロ:ピーター、どう?バッチリだろ?
ヒッチャー:あのな、馬鹿じゃねぇの?もうDVDになってるから、出来上がりでも見てな!
(ヒッチャー、ボロを銃で撃ち殺す)
ヒッチャー:はっはー!死体がまたひとつ、ボロに棺桶も用意してないだろうな!
(フォッシル登場)
フォッシル:こらーー!よくも友達のボロを殺したな!
ヒッチャー:知ってるぞ。おめーは、せいぜい、人の顔に唾をひっかけるくらいしか出来ないんだろ?
(ヒッチャー、フォッシルを撃ち倒す)
フォッシル:ああッ!!タマが!…皆さんさようなら…!
(フォッシル、ボロに倒れこんで怪しい動きになるが、ボロが立ち上がって激怒)
ボロ:ふざけんな、この変態!おめーとだけはごめんだって、言っただろ!
(ボロ退場)
フォッシル:あー、えー、死んでます!私は死体です!
(フォッシル退場)
ヒッチャー:なんだありゃ。

ヒッチャー:さーてと、ブリクストン!もうショーは終わりだからな。一巻の終わり!
       ナブー!自称エニグマとやらはとっくのとおにおっ死んでいる。ボロとか言うおサルも死んじまったし、
       あの青い服のダサい野郎もあの世行きだ。なんだ、何か不満でも?
       ははぁ、お前らが考えてることなんてお見通しだぞ、ブリクストン!
       お前らはあのジャズ野郎のお出ましを待っているんだろう?
       あの髭にーちゃんはどこに居るんだ、って顔だなぁ?
観客:イェー!!
ヒッチャー:ああ、そうかい。じゃぁこりゃ何だ?
(紙袋からハワードの首を掴み出す)こいつは楽屋で見つけたぞ、
       しかもトランペット・ソックスにつっこまれていた。トランペット・ソックスかい、この馬鹿!
       そんな物売れるわけないだろ!
(ハワードの首を落とす)
       もちろん、片割れのことを考えていることもお見通しだからな、あの女の子みたいな服着た野郎だ。
       こいつだろ!
(ヴィンスの首を掴み出す)こっちは、トップショップでお買い上げだ!
       こんなケッタイな野郎、何の役にも立たねぇからな!せいぜい、生首とヤってやろうか!
       
(ハワードの首も拾い上げる)ふむ、悪くないだろ、お集まりの皆さん、生首フ**カー!
       ようこそ、生首フ**カー・クラブへ!ダブルでどうぞだ!おい、そこのあんた!
       そういうノーマルなプレイはそこまでだ!いいか、この生首フ**キングの信条は、
       BBCのうるせぇ規制にゃ縛られないってことだ!
       と、言うわけで新番組のタイトルは、「マイティ・生首ふ**ッカーズ!」さぁ、とっとと帰って実践だ!
       これ以上欲求不満がどうとうかこうとか、ぬかすんじゃねぇぞ、あとはてめーで自分の面倒でも見てな!
       さぁ、ショーはおしまいだ!
(二つの首を、袖に向かって放り込む)さぁ、とっとと帰れ!
ルディ:ちょっと待った!
(ルディ、自転車に乗って登場)

ヒッチャー:なにぃ?!
ルディ:うろうろすんな、ひき殺すぞ!
ヒッチャー:なんだこりゃ!ツール・ド・フランスをウッドストックで開催か?!
(ルディ、自転車を乗り捨てる。客席からルディ・コール)
ヒッチャー:誰だ、おまえ。
ルディ:私は様々な呼ばれ方をしてきた。
ヒッチャー:かったりいから、楽屋でくれ。
ルディ:黙れ。
(この後で、誰かのお母さんと、彼女にキスするという台詞があるが、よく聞き取れません)
ヒッチャー:ふん。じゃぁ、どうする?何で勝負をつけるんだ?
ルディ:こいつで勝負だ。
(剣を取り出す)
ヒッチャー:
(全然何言ってるかわかりません!)まぁ、いっか。
(ヒッチャー、剣を抜くが効果音がずれている)
ヒッチャー:
(音声さんに)オラ、もう忘れたのか、このわんぱくフリッパー!
ルディ:いざ、勝負!
(ヒッチャーが滅茶苦茶に剣を振り回すと、わき腹を押えて苦しみ始める)
ヒッチャー:いててて…あぁ、すい臓がずれてしまったぁあ〜
ルディ:大丈夫か?
ヒッチャー:体の中をゴロゴロ動き回ってる。
ルディ:診てやろうか?
(ルディが近づいてきたところで、ヒッチャーが打ちかかる。何度か剣を交わし、二人は距離をとる)
ルディ:中々やるな。このジミー・サーヴィルのそっくりさんよ。
ヒッチャー:
(大うけする観客に)やかましい。ぶっ飛ばすぞ、お前も、お前も、お前も!
       
(ルディに)何とでも言え、それで勝てると思ってるのか?紫のドレスなんて着て。
ルディ:これはドレスではない。サイケデリック不況者の聖衣なのさ。まぁ、お前にはジョークにしか聞こえないだろうがな。
ヒッチャー:自転車漕ぎには向いてるかもしれないがな。
ルディ:ああ、そうかい。
(再度、打ちあう)
ルディ:まだまだ!
ヒッチャー:ジミーもまだまだだ。
ルディ:分かっているだろう?俺には絶対に勝てないぜ。
ヒッチャー:そうかい。なんでだ?
ルディ:お前が知っている事は、俺が全て教えてやったからさ。
ヒッチャー:俺が知ってる事は全て、お前が教えてくれたんだろうけど、
     お前が知っている事を全て、俺に教えたわけじゃないだろう?
(互いに、暫し考え込む)
ルディ:そりゃどういう意味だ?
ヒッチャー:知らん。
(再度打ちあい。ヒッチャーが下手に姿を消すと同時に、身代わりの人形がルディに襲い掛かる。ルディが上手に人形を放り込むと、ヒッチャーが飛び込んでくる)
ルディ:何がしたかったんだっけ?舞台上では不思議なことがおこるもんだ。
ヒッチャー:さぁ、もう一回だ。
ルディ:白旗でも用意しろ。
(打ちあい。ルディがヒッチャーの剣を叩き落とす)
ヒッチャー:クソー!やりやがったな!でも、まだ手が残っているぜ。ほらよ!
(ヒッチャー、ルディの股間に一発お見舞いし、ルディは座り込んでしまう)
ヒッチャー:コックニーの股間パンチ!
ルディ:ああ〜大事なビスケットがー!
ヒッチャー:さぁて、皆さん勝負アリだな!このコックニー股間パンチで!
       あっちにもこっちにも、どこにも無敵のコックニー股間パンチ!さてと、とどめと参りますか!
(ヒッチャーが剣をルディに向けて振り上げると、サイレンが鳴り響いて、下手からビッグ・レッグが現れる)
ヒッチャー:な、何だ?!くそ!
(ルディ、ヒッチャーを放り出す。ヒッチャー、ビッグ・レッグに絡め取られて退場。ルディ、ビッグ・レッグからルビーを受け取る)
ルディ:サンキュー、ビッグ・レッグ!
(ルディ、横たわるナブーの枕元に立つ)
ルディ:さぁ、最後にやるべきことは…この小さなシャーマンの命を取り戻すことだ。
(ルディ、ルビーをナブーの口の中に入れる)
ルディ:さぁ、魔法の力をご覧あれ。
(ルディ、退場。ナブーが起き上がる)
ナブー:生きてる!
(音楽スタート)
ナレーション:そう、ルビーの魔力によって、ナブーが生き返った。その力は夜の空にあまねく広がり、
        フォッシルとボロも命を取り戻した!更にその力がハワードとヴィンスをも呼び戻す!
(空飛ぶブーシュ・ボーイズが縦横無尽に踊って幕)


 パート7.ライブ後のラブラブお楽しみ

(観客の歓声に応える5人。ひとしきり歓声に応えると、ヴィンスがフォッシルと小さな声で打ち合わせる)
ヴィンス:よう、ボビー・ボブボブ、先に行ってるぞ!何人?あと3人な!
(ヴィンス退場)
ハワード:ヴィンス、どこに行ったんだ?
フォッシル:いや、その…ほら、打ち上げの準備だよ。超ゴキゲン、ヤリ放題だぞ。
ハワード:いいね、行こうぜ。お楽しみ、お楽しみ!
フォッシル:いや、それなんだけど…あと3人分しか席がないんだよね。
ナブー:この3人、悪いね!
(ナブーとボロ、退場)
フォッシル:なぇ、あのさ、もう二度と話せないかもしれないから言うけど…
(フォッシル、ハワードに唾を吐きかけて退場。ハワード、すっかり落ち込んで袖に下がっていく。しかし、引き止める歓声に応えて、トランペットを片手に戻ってくる)
ハワード:あ…あ。ハワード・ムーン。また一人ぼっちか。
観客:こっち来いよ!
ハワード:それほど孤独でもないか。だって、完全に一人ってことはないだろ?
     お空に輝く、神秘のお月様だって、古い友達さ。
月:えーっと…悪いんだけどさ、ハワード。そういうわけにも行かないんだよね。
ハワード:なんで?
月:正直言ってさ…お前さんって、アホじゃん?私はお月様。アホとは付き合わないの。

(ハワードが下手に退場しようとすると、上手から大きな箱を引き連れたベインブリッジが登場)
ハワード:あの、これは…
ベインブリッジ:サインしてくれるかね?
ハワード:ああ、はい。ペンありますか?
ベインブリッジ:持ってないよ。
ハワード:じゃぁ、これで。
(パントマイムでサインする)
ベインブリッジ:どうも。
ハワード:あの…こういうのもなんですが…今夜はこれからいかがするんです?
     私はちょっと暇にしているんだけど…もしよければ、ご一緒に夕食でも…
ベインブリッジ:食事?きみと?ハワード・ムーンと?
ハワード:ええ、いかがです?
ベインブリッジ:冗談だろう?
(しばらくベインブリッジの台詞が続きますが、よく分かりません。要するに、ハワードの申し出は断られた模様)
ベインブリッジ:それじゃ、アディオス!ごきげんよう!
(ベインブリッジ退場)

ハワード:やれやれ。贈り物か。誰か俺を愛してる人からってことだよな…
(箱からオールド・グレッグ登場)
グレッグ:アタシはオールド・グレーッグ!ハァイ、ブリクストン!アタシはオールド・グレッグ!
     ああ、しこたまベイリーズ飲んできちゃった。頭のあから浴びるほど!アタシは赤ちゃんも産める体だかんね!
     後でみせてあげちゃう。アタシはオールド・グレッグ。ハァイ、ハワード。
ハワード:最低。…やぁ…グレッグ。元気?よく来たね。どうしてここが分ったんだ?
グレッグ:ポスターであなたの顔を見つけたの。極小目玉を見逃すわけないもんね。
     色々調べたら、DVD用に撮影するっていうから、すかさずあのサイコロに入ってここに来た訳。
     アタシはオールド・グレッグ。
ハワード:だろうね。みんな知ってる。もう何千回も聞いてるから…
グレッグ:アタシとヤっちゃいたい?
ハワード:グレゴリー…グレゴリー、昔のことだろ。そりゃ無理やりっぽい雰囲気だったけど…
グレッグ:昔のこと?
ハワード:そう、時は過ぎ去り、それぞれが、それぞれの人生を生きている。
グレッグ:だから?
ハワード:つまり…
グレッグ:グレゴリーのこと愛してる?
ハワード:いいや。言ったろ。終わったんだ。
グレッグ:グレゴリーのこと、愛しているはず。
ハワード:愛してない。
グレッグ:愛してなきゃ駄目。アタシはハワードのこと愛してるんだから。そうでしょ?
(この後、グレッグが何かかなり下品っぽい事を言うが、半魚人語につき翻訳不能)
ハワード:だからさ、色々誤解とか、行き違いとかがあって、人間関係は難しいんだよ、
     つまり、あーだこーだ言っても、結局ゲームをしているだけだったのさ。
グレッグ:ゲーム?アタシとラブゲームをしてたってこと?
ハワード:そのとおり!
(ラブ・ゲームの音楽スタート)
グレッグ:♪アタシのこと、愛してる?アタシとラブ・ゲームを演じてるつもり?
       アナタなの愛が一杯欲しいから どうすれば良いのか教えてよ さぁ、早く♪
ハワード:♪そんなに急がないで レースじゃないんだから ベイビー気を楽にしてペースを落とさなきゃ
       ゆっくりやらせてよ そんなに接近しないで 急ぎすぎだよ レースじゃないんだから♪
グレッグ:♪アタシはオールド・グレッグ♪
ハワード:♪分かってるよ 言うと思った♪
グレッグ:♪ねぇ アタシにおねだりなんてさせないでしょ アタシはあなたにとって ただの男じゃないんだから 恥ずかしがらないで ねぇ、アタシのこと愛してる?♪
(フォッシル、ナブー、ボロも加わってエンディング)

グレッグ:ブリクストンの皆、最後にひとち大サービス!
(箱の上に乗る)今日はノーパンで来たからね。ババーンと行くよ!
(グレッグの股間発光で、「おしまい」サインを投影して幕)

(大歓声の中、再度幕が開くと、ハワードとグレッグが熱烈キスの最中。すかさず逃げるハワード)

グレッグ:ハワード・ムーン、完全にトリコにしちゃったもんね。完璧。
(ハワード、手押し車を押して戻ってくる)
ハワード:さぁ、行くぞ。本番はこれからだろ。
グレッグ:やっとヤる気になったね!
(グレッグ、手押し車に乗り込む)
ハワード:こいつにアソコがあるっていうなら、こっちにだってオトコってもんがあるんだ。お楽しみはこれからさ!
(ハワードとグレッグ退場)

(ブーシュ・ボーイズ一同、バンに乗り込んで劇場を後にする。ツアー終了の乾杯と共にクレジット)


(終)
 
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