2014年 9月 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ・ライブ ニューヨーク ツアーレポート
Part 2 エンターテインメント
スティーヴ・ウィンウッド 2014年9月10日 マディソン・スクェア・ガーデン/ニューヨーク
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのスペシャルゲストという名の前座として登場した、スティーヴ・ウィンウッド。60年代ロックレジェンドを前座で見られるとは、お得なことこの上ない。
マディソン・スクェア・ガーデン、19時30分。まだ観客席は3割程度しか埋まっていない。何気なくステージに登場したバンド・メンバー。スティーヴ・ウィンウッドもいつの間にか何気なくステージにいた。
かつての天才少年は白いシャツをラフに着込んで、何気なくオルガンの向こうに座ると、ジャジーな "I'm a Man" が始まる。私はこの曲は好きだが、あまりジャジーなイントロは好きではない。しかし、ヴォーカルが始まると、その張りに驚かされる。
以降、セットリストは以下の通り。観客達はすぐに集まり始める。
I'm a Man
Them Changes
Can't Find My Way Home
Medicated Goo
Low Spark of High Heeled Boys
Empty Pages
Higher Love
Dear Mr. Fantasy
Gimme Some Lovin'
やはり、"Can't Find My Way Home" や "Higher Love" のようなお馴染みの曲では大いに盛り上がる。
私にはちょっと耳慣れない "Medicated Goo" も格好良かった。
そして最後はもちろん、お馴染みの "Gimme Some Lovin'"。会場全体が大いに盛り上がり、大合唱。歓声の中引き上げるウィンウッドはまた何気なく、自然体で去って行った。
Motown: The Musical 2014年9月9日 ラント・フォンテーン・シアター,ニューヨーク
せっかくニューヨークに行くのならブロードウェイ・ミュージカルを見ようということになり、私のここ数年のブームを反映して、[Motown: The Musical] を見ることに即決。
場所はブロードウェイのラント・フォンテーン・シアター。古い劇場で、こぢんまりとしている。音響的にはやや冷房や野外の車の音が大きく難があるが、音楽が始まると気にならなくなる。今回は2階席だったが、舞台を見渡すのには問題無し。
さて、物語はモータウンの創始者であるベリー・ゴーティの脚本。モータウン創設25周年記念イベントからの回想で、ゴーティがデトロイトでの少年時代から、モータウンの創設、ヒット曲の連発、才能あるアーチスト達との出会い、そしてダイアナ・ロスとの恋と別れ、変わりゆく社会と、モータウン・レーベルの売却へと展開する。それでも希望あふれる素晴らしいモータウンを称え、25周年記念イベントのシーンで舞台は終わる。
ゴーティ自身の脚本なのでおめでたい内容だが、モータウンを楽しむならこれで十分だろう。
やはりメイン・ロールであるゴーティ役であるジョシュ・タワーと、ダイアナ・ロス役のクリスタル・ジョイ・ブラウンは歌唱力も、演技力も申し分なし。貫禄たっぷりに聞かせてくれる。
脚本上の役回りとしても、良い役なのがスモーキー・ロビンソン。モータウン創設時からのゴーティの親友であり、同士であり、アイディアマン、そして最高の歌手、ソングライター。演じるチャール・ブラウンの安心感のある、そしてスモーキーそっくりの歌声で再現してくれている。スモーキー贔屓の私としても嬉しい。
マーヴィン・ゲイ役のブライアン・テレック・クラークの歌唱力も文句なし。
会場が一気に盛り上がったのは、やはりジャクソン5の登場だった。ダブル・キャスト
子役で、私が見たのはサミュエル・ピッケンズ。彼が出てきただけで会場は大興奮。"I Want You Back" のイントロで5人が踊りだしただけで、泣きそうになるくらい胸がいっぱいになる。
その一方で、マーサ&ザ・ヴァンデラスのマーサ・ヴァンデラスにはやや不満。歌声はもちろん下手ではないが、ちょっと物足りなかった。マーサ・リーヴスがモータウンの事務員・秘書から歌手になったことを衣装替えで表現したのは面白かったが、もっと歌声はパワーのある人がよかった。
フォートップスや、フォー・シーズンズの滑らかなダンスと歌声も良かったし、コントゥアーズの激しいダンスも見応えがあった。エンディングの “Ain't No Mountain High Enough” はもう少し長く、大きく盛り上げ、原曲に近い演奏の方が良かった。
エド・サリバンのモノマネも含めて、一流のモノマネ大会とも言えなくないが、歌の半端の無い上手さと、華やかなダンスも相まって、モータウン好きにはたまらないミュージカルだった。
Alice's Adventures in Wonderland 2014年9月11日
デイヴィッド・コック・シアター /リンカーン・センター ニューヨーク
同行のRさんがバレエ好きということで、ぜひともニューヨークでバレエが見たかった。ニューヨーク・シティ・バレエか、アメリカン・バレエ・シアターを見たかったのだが、運悪くシーズンオフ。そこで、遠征に来ていたカナダ国立バレエの「不思議の国のアリス」を見ることにした。
4回目のニューヨークにして初めてのリンカーン・センターにテンションがあがる。メトロポリタン・オペラはオフシーズンなのでオペラ・ハウスは静かだった。
一方、バレエの公演が行われるデイヴィッド・コック・シアターは、こぢんまりとしていながらも、豪華な雰囲気もあり、とても素敵。
観客層は少し年齢が高め。意外とカジュアルな服装の人もいるが、いくらかドレスアップしている人も多い。私たちもこの時はワンピースにハイヒールで出かけた。
バレエ作品「不思議の国のアリス」は、イングランドの作曲家ジョビィ・タルボット2011年の作曲で、現代バレエにあたる。ちなみにタルボットは映画やテレビでも活躍しており、私の大好きな映画「銀河ヒッチハイクガイド」や、テレビの「リーグ・オブ・ジェントルメン」なども手がけているそうだ。
物語は、ほぼ原作をなぞっているのだが、人物設定が異なるのが、まずアリス。年齢が原作より少し上のハイティーン。ボーイフレンドらしき彼(ジャック)もいる。そして、冒頭の場面、リデル家のお茶会に呼ばれたルイス・キャロルも登場する。彼は白ウサギに変身し、アリスを不思議な国へと誘う。
バレエは、次から次へとカラフルで不思議な登場人物が楽しい踊りを披露する、華やかなもの。演出の腕の見せ所で、アリスが遭遇する様々に不思議な状況をいかに演出するか。いずれも楽しい展開で飽きさせない。
特にハートの女王や、公爵夫人などを中心としたコミカルな演出が面白かったし、会場も笑い声にあふれた。
不思議な国から戻ってきたアリスの演出が、とても面白い。
ダンサー達はどれも安定感のある、スマートな踊り。カナダ国立ともなれば当然なのだろうが、私はバレエに詳しくないので、善し悪しはよく分からない。どちらにせよ、人間というものがこれほど軽やかで、しなやかに動くものなのかと驚愕させられる。
音楽は現代物ということで、ちょっと物足りなさがある。やはりバレエとしてはクラシカルで、ドラマチックでロマンチックな作品が見たくなった。
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