2014年 9月 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ・ライブ ニューヨーク ツアーレポート
 

Part 1 ライブ トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ
          
2014年9月10日 Madison Square Garden, New York USA


奇妙なチケット入手

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズが、夏の全米ツアーを行うと告知したのが5月末。6月からチケット争奪戦が始まった。
 ニューヨーク公演のみ見るつもりでチケット購入に挑んだのだが、当然ファンクラブ特典である先行・最前列から15列目まで保証のプレミアム・チケットを狙う。お値段は300ドルほどだったと思う。
 「思う」というのは、確かなことを覚えていないから。ファンクラブ先行発売日、パソコン相手に大汗かいて大激闘を繰り返すこと約40分。― 私は負けた。あえなくプレミアム・チケットは Sold Out となってしまった。

 未練タラタラ、泣きたい気分で、翌日も往生際悪くチケット・マスターのサイトに再アクセスしてみると、不思議な事が起きた。フロアー・セクションC(ステージに対して右より)の6列目が取れる。
 どういうことなのか、皆目分からない。一般発売前とは言え、どうしたことか。しかも、136ドル。6列目なのにプレミア価格にあらず。狐につままれつつも、この席を購入。
 かくして、2014年9月10日ニューヨークのマディソン・スクェア・ガーデンで、TP&HBのライブを楽しむこととなった。

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ登場

 マディソン・スクウェア・ガーデンは3回目。毎度の事ながら、冷房のきつさに驚く。寒いであろう事は予想して上着を多めに着込んで出かけても、それでも寒い。
 ツアーグッズ売り場も覗いてみる。Tシャツなどは品質に期待が持てないので買わないことにする。キーホルダーのデザインは悪くないので、自分用とお土産用に購入。



 スペシャル・ゲストという名の前座であるスティーヴ・ウィンウッドが時間通り19時30分から開始で、約1時間。30分ほどの休憩をはさみ、21時ちょうどにTP&HBが登場。
 トムさんは紫のシャツに茶色いカジュアルなジャケット、ダメージ・ジーンズ姿。髪は相変わらず輝くような金髪(染めている)で、耳の下辺りまで伸ばしている。足下の、カワイイと評判の(?)ブーツは位置の問題で見えなかった。
 マイクはサングラスをかけたまま登場。青い柄物シャツに、ストールを巻くいつものスタイル。サングラスは数曲たつころには外していた。
 セットリストは以下の通り。最後の3曲はアンコール。

So You Want To Be A Rock ‘n Roll Star
Mary Jane's Last Dance
American Dream Plan B
Into The Great Wide Open
Forgotten Man
I Won't Back Down
Free Fallin'
A Woman In Love (It’s Not Me)
U Get Me High
Rebels
Two Gunslingers
Yer So Bad
Learning to Fly
Shadow People
I Should Have Known It
Refugee
Runnin' Down A Dream
You Wreck Me
(I'm Not Your) Steppin' Stone
American Girl

 まず冒頭に念願かなっての1曲。私が最初にハートブレイカーズに惚れ込んだのがこの曲のビデオだったので、本当に嬉しい。
 80年代よりも、さらに去年のライブよりもさらにテンポを抑え気味に、重々しく、でも格好良かった。

 3曲目にして早くも新譜 [Hypnotic Eye] の曲が登場。合計4曲が新曲だったのだが、これがまた格好良かった。全て長いコーダ無しで短く、潔い演奏。
 以前のライブだと新曲はどうしても人気がなく、トイレに立つ人も多かったのだが、今回はそういうこともなくみんな熱心に聞いているように見えた。さすが、全米1位の実力。
 みんな席を立たないので、今回は写真,動画の撮影チャンスにあまり恵まれなかった。この動画 "U Get Me High" の断片。トムさん・マイクを諦めてロン,スコットにフォーカスしようと思っても、なかなかうまく行っていない。



  私が個人的に嬉しかったのは "I Should Have Known It"。[Mojo] の収録曲でかなり好きなのだ。バスドラムとベースの音が迫力満点。リッケンバッカーの軽快なロックとはまた違うハートブレイカーズの魅力が満喫できる。
 トムさんのマラカス&タンバリン・パフォーマンスも健在。いよいよマラカスは後方へ放り投げるためだけのアイテムになりつつある。

 

 カバー曲としては、冒頭の1曲と、やはり "(I'm Not Your) Steppin' Stone"の格好良さは筆舌に尽くしがたい。歌い出す前に「ロックンロールは決して負けない、ロックンロールは決してくじけない、ロックンロールは断じてあんたの踏み石にはならない!」とトムさんがシャウトして始まる。
 ベンモントやスコットのコーラスも力強く、去年から引き続き新たなコーラスワークの充実が見られる。

  

 バンドワークはスムーズ、かつ意思疎通が完全にはかれている、完璧な仕事だったと思う。音に対して、演奏技術に対して、演奏の出来に関して、「アレッ?」と思う瞬間はほぼ無かった。(実は、私は時々ベンモントのミスタッチを気にすることがある。)

 トムさんのあごひげはもう少し短く揃えた方が良いけど、あいかわらずのステージに立つとキラキラと輝く、女優ぶり。
 スコットが帽子とスーツでビシッと決め、両足を開いてギターを弾く姿もスターっぽくて格好良かった。

 

 そしてやはり、女子の口から出るのは、「マイク格好良いね…」の言葉。あの格好良さは一体何なのだ。静かな佇まいで、控えめで、派手なことはしないのに、とてつもなく格好良い。確かな演奏と、音楽に対する自信が、彼の姿の魅力を際立たせているのだろうか。
 最初、サングラスをかけて登場したマイク、数曲で外したのだが、何故か "Learning to Fly" でもう一度かけ、そして外す。彼なりのこだわりがあるらしい。



 フロアの前の方にいたので、大モニターはほとんど目に入らず。ステージの背後には大きなカーテンのような布がかかっており、ここにライティングがあたるのだが、ほとんど印象に残っていない。あれはイマイチではないだろうか。

 最後の "American Girl" はもちろんウルウルしながら見ていた。
 今回のエンディングは、全ての楽器のノイズをワーン!と響かせたまましばし放置し、最後の最後にトムさんがスイッチを切ることでお終いという、斬新な演出だった。うん、まぁ面白いけど。続けなくても良いかな。
  演奏が終わって直ぐにサングラスをかけたマイクが、何かトムさんの耳元で言いながら二人で笑っている。あれは一体何を話しているのだろうか。ご丁寧に2回も話していた。
 最後の挨拶も動画に撮ろうと必死だが…やはり難しい。



 消化不良の原因

 今回はNY滞在中ただ1回のTP&HBライブだったのだが、やや消化不良の面もある。彼らの演奏には満足。しかし、今回は「前の列の人運」に恵まれなかった。
 これまでの私は比較的恵まれていた方なのかも知れない。

 今回は私の前に大柄な中年男性が立ってしまい、まず邪魔。まぁ、アメリカ人なのだし、私が極端に小柄なのだから視界が悪いのは仕方がない。これくらいは予想の範囲内。
 しかし、この男性、やっかいなことに「鬱陶しい男」だった。5列目に居るくらいだからハートブレイカーズの大ファンなのだろうが、自分のテンションを上げるだけでは飽き足らず、やたらと周囲の人に大声で話しかけ、喋りまくり、大騒ぎしている。自分の両隣の連れにはしゃべり通しだし、後ろを向いて私たちの列の人にも楽しくちょっかいを出しまくる。
 実は、私の列は私とRさんの他にも、女性連れが何組かあり、ハートブレイカーズに集中してステージを見つめていたのだ。そこにこの鬱陶しい男がワァワァと一緒に騒ぎたがり、コミュニケーションを求めるのだから、邪魔でしょうがない。ええい、うるさい!私はハートブレイカーズを見に来たんだ、お前じゃない!!
 しかも、この男性は連れの男性(大柄)の肩を抱いては耳元でずっと喋る。これも視界をふさぎ、邪魔!神がなぜ人の頭を肩幅より小さく作ったのか、まったく理解していない!頭と頭の間からステージを見るためにきまっているではないか!
友人のMさんとTさんは以前、目の前に立った肥満体型のカップルが、ずっとイチャついていてステージが見えなかったと嘆いていたが、あの気持ちが良く分かった。

 私がこの2年、ロンドンのおとなしい観客に慣れていたせいもあるかも知れない。ともあれ、アメリカ流のコンサートの楽しみ方には、轟音のような盛り上がりの一方で、やっかいな所があることを思い知らされた。
 こればかりは運に左右される。今までの幸運をここでイーブンに戻されたと思うとする。 とにかく、今すぐにでも、またTP&HBのライブが見たくて仕方がない、そういう消化不良感が残った。


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