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 2013年 11月 ボブ・ディラン ライブ観戦 & リチャード三世, ロンドン ツアーレポート
 

Part 1 ライブ ボブ・ディラン
          
2013年11月27日,28日 Roya Albert Hall, London, UK


Bob Dylan in Royal Albert Hall

 毎年、ライブを精力的に行い、世界中を駆け回るボブ・ディラン。
 前回2010年の日本公演ではスタンディングという観賞環境がストレスで、消化不良を起こしてしまったので、海外での公演が見たいと思っていた。
 そんな時に飛び込んできたのが、ヨーロッパツアーのニュース。ロンドンでは、ロイヤル・アルバート・ホールで三日間連続公演を行うという。ロイヤル・アルバート・ホールは去年トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの公演で見に行っている。ロンドンに行きたい、英国でまだまだ行きたいところもある、何と言ってもディランを伝説のロイヤル・アルバート・ホールで見たい…そのようなわけで、またもや英国まで足を運ぶこととなった。

 チケットは今回、ディランの公式ページから購入したため、Music Glueという初めて使うチケット販売会社だった。Ticketmasterほど手慣れていない感じであり、利用する私も慣れず手間取ったが、どうにかチケットをライブ当日チケット・オフィスで受け取る算段をつけた。
 席は、27日がストールの後方8列目。下手なアリーナよりよほど見やすくて良い。28日は最終日ということであまり良い席ではなく、サークルの後方6列目。それでも視界は良く、落ち着いて楽しむことが出来た。



 ロイヤル・アルバート・ホールに集まった人々は、やや年齢層が高め…ディランより20歳程度年下の人が多いように見えた。そんな中にも、一部には30代から40代のやや若い層も見られる。みんな大人しく座ったまま聞いていたが、拍手も歓声も盛大で、最後は盛り上がるとみんな立ち上がり、ホールが割れんばかりの雰囲気となった。
 27日は私の隣りに夫婦が座っており、休憩時間に奥さんが私に「楽しんでる?」と声を掛けてくれた。日本から来たのだと言うとびっくりしていたが、ディランの熱烈なファンだという旦那さん(ディランのTシャツ着用)には握手を求められた。旦那さんが言うことには、1日目には "Roll on John" を歌ったとのこと。



 驚いたのは、会場に入るときに、カメラの使用は禁止だと言われたこと。私はすっかりTP&HBのコンサートで使い放題だと認識していたため、びっくりした。なんでも、アーチスト側の意向なのだと言う。
 そのような訳で、コンサート中はフラッシュを使って写真を撮ろうとする観客と、それを止めようとする会場係員とのやりとりがそこかしこで見られた。28日は特に厳しく、中にはスマホを取り上げ上げられる人までいた。
 しかし、フラッシュをたかなければ咎められることもなく、さらにアンコール辺りになると大勢が写真を使い始めてしまい、手に負えない。私の画像,動画もそうした中で撮影したものである。
 ちなみに、コンサート会場での写真は、フラッシュを使用しないのが正解。夜景モードが一番よく撮れる。
 当初、"Special Guest" という名の前座があるような情報だったが、結局、前座はなし。開場は18時45分。開演19時30分。ディランは30分を数分過ぎた頃に現れた。

Set List

セットリストは、27日と28日、まったく同じ。

Things Have Changed
She Belongs To Me
Beyond Here Lies Nothin'
What Good Am I?
Duquesne Whistle
Waiting For You
Pay In Blood
Tangled Up In Blue
Love Sick
High Water (For Charley Patton)
Simple Twist Of Fate
Early Roman Kings
Forgetful Heart
Spirit On The Water
Scarlet Town
Soon After Midnight
Long And Wasted Years
All Along The Watchtower (11月28日動画あり)
Blowin' In The Wind



 徹底的に最近のアルバムからの選曲。
 まず、開場が暗くなるとアコースティック・ギターのリフが鳴り響く。やがて他のバンドメンバーが舞台に集まり、最後にディランが姿を現す。バンドは、ドラム、ベース(エレキと、ウッドベース兼任)、チャーリー・セクストンを含むギターが二人と、スライドギターや,フィドル担当という編成。ライトは6本のスポットライトがステージ上を照らすだけ。おそらくこの環境だと観客席からのフラッシュが気になるのだろう。
 ディランは最近お馴染みの、サイドにラインのあるパンツに、膝ぐらいまである長めのジャケット。27日は黒いジャケットだったが、28日はボディがブルーグレイのジャケットだった。帽子はかぶっていない。
 そして、ディランがギターを弾かないというスタイルもお馴染みになった。ハーモニカを吹くときは、ステージ中央のスタンドマイクに向かって立つ。28日の "Love Sick" の時はハーモニカを持ってくるのを忘れてしまった。ハーモニカソロのところになってから慌てて後ろから持ってきて、会場から笑いが起こった。
 前回の2010年の来日公演における、ディランのオルガンはお世辞にも上手いとは言えなかった。バンドワークの中で浮いてしまっているのだ。今回はオルガンではなく、ピアノを弾いていた。グランドとしては最小サイズで(たぶん、スタインウェイ)、これが意外と良かった。
 まず、ディランの腕が上がっているのだと思う。そしてアコースティック・ピアノの音が、バンドワークの中で浮き上がらないということも重要だろう。ギターを弾かないディランを敬遠する人もいるが、ピアノのディランもなかなか良い。
 ディランはほとんど喋らず、バンドメンバー紹介もなし。唯一喋ったのが、"Love Sick" の後の「ありがとう。休憩15分」だけ。そう、休憩があったのだ。

 

 各楽曲の中で特に印象に残ったのが、まず “Duquesne Whistle” 。最新アルバム [Tempest] の中でもノリの良い曲だが、ライブではさらにノリノリでロックな感じに仕上がっていた。そして何と言ってもディランが “Duquesne” と歌うときの節回しが最高だった。おそらくソングライティングの時点でディランは “Duquesne” という独特の響きのある言葉に魅力を感じたのだろう。「デュケェ〜ィン」と何度も音程を引き上げ、舞上げるように、勢いよく、気持ちよく歌うディランは、最高に格好良かった。
 そして、昔からお馴染みの曲であるはずの “Tangled up in Blue”。シンプルだけど美しいアコースティック・ギターのリフの中、淡々と歌い進めているうちに徐々に盛り上がり、”Tangled up in Blue” の詞の時には会場中が感動に包まれている。涙が出そうになるくらい、とても感動した。

Thank You Bob!

 去年のTP&HBは正真正銘のロック・コンサートだったの気付かなかったが、ロイヤル・アルバート・ホールは非常に音が良かった。もともとクラシック向けの音楽ホールである。建設当時は「(残響で)音が2回聞けるから、チケットを買うのはお得」と皮肉られたそうだが、その後改修を繰り返し、現在にいたる。小編成のバンドで、観客も大人しく座って聞いているコンサートで、その音の良さを実感した。

 コンサートが終わったのが、21時40分ごろ。最後はバンドメンバーとディランがステージに並び、立ったまま歓声を受け、そのまま下がってゆく。しかし、28日のディランはさらにノリが良かった。ライブ中もドラマーに両手を上げて盛り上げる仕草を見せたりもしていたし、コンサートの占めでは可愛らしく膝を折って感謝の気持ちを表す。さらに、ステージ前方に歩み寄ったかと思うと、最前列の観客と握手などしてとても楽しそうだった。
 ディランも、観客たちも、心温まる、楽しく、素敵なコンサートだった。
 今回、動画はカメラ使用規制のためなかなか撮れなかったが、27日は最後の締め、そして28日はアンコールの “All Along the Watchtower” を撮影。素晴らしい想い出の証拠。



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