back next list random home back next list random home back next list random home

                                                            

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

 2012年 6月 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ ライブ観戦 & ロンドン ツアーレポート
 

Part 1 ライブ Tom Petty & The Heartbreakers
          2012年6月18日,20日 ロンドン,ロイヤル・アルバート・ホール


 TP&HBにとって、大規模なヨーロッパツアーは20年ぶり。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでTP&HBを見るというのは夢だったので、今回これが叶った。

 Royal Albert Hall

 今回のコンサートはまず、会場が良い。私が好きな分野では、ボブ・ディラン1966年の有名なコンサートや、感動的な [Concert for George] も、このRAH。収容人数は7000人ほどと、さほど大きくもないが、伝統と格式を備え、豪華な装飾と、すばらしい雰囲気。開演前の見学ツアーにも参加したが、会場そのものにとても大きな価値がある。

 席は、6月18日がStalls O Row2。円形スタンドの前から2列目で、ステージのすぐ右脇にあたり、バンドメンバーたちとはとても距離が近かった。前回のニュージャージーで、これ以上良い席はないだろうと思ったが、今回はそれ以上だった。マイクがちょっと遠いのが残念だが。
 6月20日は、Arena C Row21。アリーナなので視界ゼロも覚悟したが、ブロックの最前列(つまり目の前が通路)だったため、かなり良く見えた。
 カメラの持ち込みはアメリカと同じく全く規制がなく、みんなこぞって撮影をしていた。チケットにも「カメラ持ち込み禁止」とは書いていない。ロンドンという場所の特性なのか、アーチストの方針なのかは、ほかを見ていないので、判然としない。

 

秋の「プロムス」の時には、大きな幕などが出る            窓にツアーグッズのディスプレイ


 ロンドンのオーディエンス

 ロンドンの観客たちは、年齢がほどほどに高いひとたちが多い。しかし、中には若者連れや、男の子のグループもいる。本当にロックンロールが大好きな人たち、という印象が強かった。
 アメリカの観客に比べると、お行儀が良い。ライブが始まる前から一応ビールは飲んでいるが、完全に出来上がっているようなヨッパライは見られない。アメリカではどこからともなく臭ってきたヤバそうな煙も、もちろん無し。

 TP&HBが出てきても、しばらくはほとんどの人が着席して鑑賞していた。かといって盛り上がっていないのではない。食い入るようにステージに集中し、五感を働かせようとしている。もしくは、自分の頭の中にあるTP&HBの楽曲を、ライブ演奏とともに追っているようだ。これは、モンティ・パイソンのライブ・ショーの上演中、「観客席は水を打ったように静かだったが、いざスケッチが終わると、すさまじい歓声が沸きあがった」というジョン・クリーズのコメントを思い起こさせた。
 思い切って大雑把に分類すれば、自らも興奮の中に放り込み、我を忘れる形で楽しむアメリカ人に対し、どこか冷静で客観的に「良いポイント」を見逃すまいとするUK人という図式になるだろう。

 とはいえ、演奏が進むにつれてだんだん興奮が高まってきて、曲が終わるたびに立ち上がって拍手と歓声を送り、後半は多くの人が立って盛り上がっていた。こうなると背の低い私は視界が悪くなり、写真・動画の撮影不能。ジャンプと背伸びで巨大UK人との格闘となった。
 面白かったのは、”Good Enough” や、”It's Good To Be King” のような、ややスロウでヘヴィな曲に対する反応が、アメリカとはいくらか違ったこと。アメリカでは「休憩時間」と認識して、席を立つ人も多いのだが、ロンドンはけっこう熱心に聞き込んでいるという印象が強い。私は単純に、「さすが、British Blues Rockの国だ」と感じたが、あながち間違ってはいないだろう。

 
これぞ、まさにRAHの眺め!                        Welcome Back


 TP&HB 登場

 
18日はステージのすぐ脇の席だったため、機材などもよく見えた

 登場した、Tom Petty & The Heartbreakers。おなじみの衣装。ベンモントは帽子なし。トムの6月18日はストライプの入った上下揃いのスーツだったが、20日はボトムズだけ黒いストレッチ素材だった。
 2年前に比べると、特にトムの顔の皺が増えたな…という印象。おなかの突き出し具合も増幅している。しかし、動きはあいかわらず活発で、元気そのもの。髪が綺麗なのは相変わらずで、ステージ上で輝いている。声も調子も良く、高音を張り上げるというよりは、絶妙な高さで長く、滑らかに、伸びやかに歌い上げるのが印象的だった。MCも、UKリスナーを意識したものが多い。

 



 SET LIST (青文字は動画アリ)

SET LIST 6/18/2012
                 SET LIST 6/20/2012 
Listen to Her Heart                     Listen to Her Heart
You Wreck Me                        You Wreck Me
I Won't Back Down                     I Won't Back Down
Here Comes My Girl                    Here Comes My Girl
Handle with Care                       Handle with Care
Good Enough                         Good Enough
Oh Well                             Oh Well
Something Big                        Something Big
Don't Come Around Here No More            Don't Come Around Here No More
Band intro                          
Band & Steve Winwood Intro
Free Fallin'                          
Can't Find My Way Home
It's Good To Be King                    
Gimme Some Lovin'
Something Good Coming                 Free Fallin'
Learning to Fly                       It's Good To Be King
Yer So Bad                          Something Good Coming
I Should Have Known It                  Learning to Fly
Refugee                            Yer So Bad
Runnin' Down A Dream                  I Should Have Known It
                                 Refugee
ENCORE:                           Runnin' Down A Dream
Mary Jane’s Last Dance
American Girl                        ENCORE:
                                 Mary Jane’s Last Dance
                                 American Girl

 6月18日は、コンサート終了後に、ステージ上のスタッフの撤収作業を少し見ていたのだが、ギター・テクのアラン・ローガンの姿があった。私が思わず、「アラーン!」と声をかけると、当人には聞こえなかったようだが、そばで作業していたお兄さんが気付いてくれて、セットリストを一枚、渡してくれた。ありがとう。
 それによると、アンコールには "Saving Grace" もあり得たようだが、実際には演奏されていない。18日のTP&HBは夜の9時開始、11時に終了。20日は、ゲストの演奏があった分純増したので、11時15分に終了した。




 動画

6月18日

 
“You Wreck Me” 大合唱。

 
”Something Big” トムとマイクの掛け合いが向こう側で展開したのが残念。それを見ているベンモントが凄く嬉しそう。

 “ご挨拶” すでに総立ちになっているので、画面が悪い。最近はベンモント-マイク-トム という並びが定着しているようだ。ロンが一生懸命ピックを拾って配ってくれている。マイクなど、前列の可愛い女の子に、リストバンドをプレゼントしていた。うらやましい。


6月20日の動画
 
“Handle with Care” 18日はじっくり堪能したが、曲の最後にマイクが天国のジョージにその演奏と愛情をささげるべく、天を仰ぎ見る姿に感動したので、動画におさめることに。やっぱりウィルベリーズは感動する。

 18日と同じようにバンド紹介を始めるので、これを納めようと動画をセット。しかし、18日よりすこしコメントが短い。特にベンモントへのコメントが一部割愛されていたし、長大だったマイクへの拍手タイムもすこし短くなったような気がする。
 「ぼくらがギターやドラムを始めたのは、テレビでブリティッシュのロッカーを見たからなんだ。あちらのやり方や、こちらのやり方はそれぞれあるにしても…」
 急に何を言い出すのか。これはどうやらビートルズか、ストーンズか、ジョージの曲をカバーするな…という予感がする。
「そんなロックレジェンドをご紹介できて、嬉しいよ。Ladies and gentlemen, ぼくらの友人、スティーヴ・ウィンウッドです。」

 登場したのは、青いチェックのパーカーを着た、スティーヴ・ウィンウッド。私にとっては、彼が2008年にTP&HBのオープニングアクトをつとめて以来。心の中に、「あ〜あ…。やられたよ…」という思いがよぎる。
 周囲は大興奮。代表曲である、”Can’t Find My Way Home” と、”Gimme Some Lovin’” を、ハートブレイカーズと競演。
 動画はまず、バンドイントロから、スティーヴ登場、”Can’t Find My Way Home”

  ”Can’t Find My Way Home” まではどうにか録ったが、
”Gimme Some Lovin’” になると総立ちになってしまい、途中で放棄した。
 スティーヴ・ウィンウッド、2008年にくらべてかなり老いた容姿の割りに、声は若い。マイクやベンモントがうれしくてたまらないという様子が伝わってくる。

  “Learning to Fly” UK人も大好きらしいこの曲、観客とのやりとりを、楽しんでいる。オーディエンスが歌い出すと、トムがバンドに「音おとして!」…という合図をするが、これは二日間とも同じ。つまり、別に合図をしなくてもハートブレイカーズはちゃんと分かっているが、オーディエンスへのアピールとしてやっているらしい。


 また会いましょう

 両日とも、”King’s Highway” がなかったのが少し残念だが、おおむね満足な曲目だった。最後の “American Girl” になると、毎度の事ながら、本当に TP&HBのファンでよかったと思う。

 今回、2回のコンサートを見て感じたこと。まず、やはり彼らは徹底的にロックンローラ―だということ。これくらいキャリアを積み重ねてきた大ベテランともなると、「それ以外もできる」という主張をしたがるアーチストも、ちらほら存在する。下手なジャズやら、懐メロやら、バンドサウンドから離れるやら…私はそういう傾向が好きではない。その意味で、やはりTP&HBは、「俺たちは、これだ、ロックンロールだ!」という、明快で気負いがなく、とてつもなく格好良い。そういう彼らでいてほしいと、心から思う。
 
 さすがにトムも61歳とあって、昔のように高音を叩きつけるようにシャウトすることもできなくなった。しかし、彼は体が楽器であることを、よく理解していると思う。今、出る声、その声で表現できることをわきまえ、考え、上手くパフォーマンスに反映させる。"I Won't Back Down" のサビは張りを持ち、"Learning to Fly" では伸びやかに。昔出来ていたことが今できないからと言って、そのファンをやめるほど私のTP&HBへの愛情は浅くない。むしろ、息が長く、マイナーな点での変化を恐れず、その時できる最高のロックをきかせてくれる姿勢に、賞賛をおくりたい。
 一方で、トムのギターソロの増加は嬉しい。マイクに任せっきりで、"Mary Jane" の時だけソロを取っていたトムが、最近は積極的にソロを増やし、マイクとの濃厚な絡みを聴かせてくれるのはとても楽しい。これはおそらく、マイクがけしかけているのだろう…

 今回のツアーには巨大ディスプレイを持ってきていないので、離れた席の人はそこが残念かもしれない。それでも、素敵なロックレジェントを堪能したのではないだろうか。

 ありがとう、ハートブレイカーズ。また会いましょう。

 


→ レポート Part 2. へ
→ 2012 ロンドン ツアーレポート目次へ