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 2008年6月 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ ライブ観戦ツアーレポート
 

17th June 2008 :4日目 その2: トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ / マディソン・スクエア・ガーデン
 遠征同士集結 〜 ここはどこだ? 〜 オフィシャル・グッズ 〜 スティーヴ・ウィンウッド登場 〜 TP&HB登場 〜 
 曲目リスト 〜 こういう会場だった 〜 アメリカ人って… 〜 格好良い…

 ホテルで荷物を整理し、ライブのための身支度をする。ライブ会場に大荷物を持っていくわけには行かない。
 ID(パスポート)と、クレジットカード、チケットマスターで予約した際の打ち出し。とにかく、Will Callの窓口でチケットをちゃんと受け取れるかどうかが、一番の心配なのだ。これが上手く行かなかったら、はるばるやってきた甲斐がない。
 何度も口に出しながら確認する私に、Rさんは多少呆れている。

 4時50分。Mayuさん,Toshiさんと待ち合わせるべく、アフィニアのロビーへ向かう。無事に落ち合い、四人は腹ごしらえをしに、34thストリートの韓国料理屋へ。私は辛いものが苦手だが、チヂミや焼肉は好きだ。
 ところが、これがなんだか凄い韓国料理屋だった。ほとんど英語が通じなかったような気がする。呆然とする私達をよそに、あっという間にテーブルは大量の料理で埋め尽くされる。こうなると、食べることがノルマになり始める。
 雰囲気に飲まれたのか、あまり実際には食べなかったかも知れない。とにかく、追い出されるように店を出ると、Toshiさんの「ああ、アメリカに帰ってきた!って感じ」という言葉は、すべてを語っていた。

 99セントショップなどを冷やかしつつ、いよいよマディソン・スクエア・ガーデンに到着。7時少し前。だいぶ明るい。前回は真冬だったので、印象が異なる。
 ガーデンでの公演予定をディスプレイする電光掲示に今夜のTP&HBも映し出されるので、それを写真に収めようと躍起になるカメラを持った我々女性三人。かなり難しい。私のカメラは新しいので、中々良い結果を得られたようだ。



バンド名がばっちり!



トムさんゲット!!

 まずはチケット・ブースでチケットを受け取る。まだ心配なので、Mayuさんの後ろにくっついて行き、彼女のやりかたを観察する。そしてそのとおり真似してみると、ちゃんと私とRさんの分のチケットが出てきた。当たり前なのだが、こういうところが緊張する。

 心に余裕ができたところで、オフィシャル・グッズ売店をのぞく。
 Rさんは日本のコンサートを想像して買えるかどうか心配していたが、これがガラガラなのだ。まったく余裕。まぁまぁのデザインTシャツもあるのだが、大きさが合わない上に、なで肩ゆえに似合わないので購入しない。
 その代わり、キーホルダーを、お土産も含めて3つ購入。本来、キーホルダーにあるまじき金額だが、TP&HBのオフィシャル・グッズなので、気にしない。パンフレットが欲しいのだが、今回も無いらしい。
 オフィシャル・グッズ売り場は、チケットゲートを入ってからもいくつか設置してあり、日本に比べて格段に買い物はしやすい。



Hightway Companion をバックにキーホルダー。ちょっと自信作。

 アリーナ席のMayuさん,Toshiさんと分れ、スタンド席へ向かう。巨大な会場はまだガラガラ。各席には、マッドクラッチのライブ音源ダウンロードの案内カードが置いてある。

 すさまじくクーラーが利いている。しまった、上着を持ってくるべきだった。このまま1時間座っていたら冷凍マグロになってしまうので、歩き回る事にする。いつも思うのだが、信じられないほど大きな会場が、これから満員になるのだ。
 やがて8時が近づくと、席に戻る。オープニング・アクトのスティーヴ・ウィンウッドは時間どおりに出て来ると聞いているからだ。しかし、まだ席は半分も埋まっていない。60年代のロック・レジェンドのライブなのに、これで良いのだろうかと心配しつつも、ライトが落ちてスティーヴが登場した。

 こちらはスタンド席なので遠目だが、意外としっかりスティーヴの姿が見える。想像したとおりの、すっきりした印象のおにいさん(60歳)。白いシャツにジーパン。ちょっとジョン・ケージを彷彿とさせる(ケージはTシャツ)。
 私の中で、スティーヴ・ウィンウッドのイメージは、ブラインド・フェイスのハイドパーク・ライブ(当時21歳)で固定されてしまっている。あの白人離れしたヴォーカルに、嵐のようなハモンド・オルガン。60歳になった今も、それと大差のない若々しいパフォーマンスだった。
 これも私の固定観念だが、彼はレコーディングとライブに差が少ない。これもイメージどおりだった。知識ではスティーヴもギターを弾くとは知っていたが、オルガンのイメージが強すぎて実際に見ると新鮮だった。真に音楽的な人間というのは、こういうものだと思い知る。
 新しいアルバムの曲もあって知らないものもあるが、Higher Loveなどのヒット曲で、それなりに会場は盛り上がり、スティーヴのセットが終わる頃にはガーデンは満席になっていた。良かった…色々な意味で。

 初めてライブ観戦のために渡米したとき、前座が終わってからTP&HBが出てくるまでとてつもない時間、待たされたような気がする。その点、今回は時間が読みやすく助かった。スティーヴのステージが終わったのが9時少し過ぎ。それから約30分。ガーデンは満員になり、照明が落ちた。
 本命の登場だ。



右奥がステージ。ここが満員になる。

 ガーデンでは、席がスタンドだったので細かいビジュアルよりも、音の印象の方が強くなった。
 まずは、セット・リストを元に、各曲の感想から。

1. You Wreck Me
 この曲はこれまで、アンコールに登場する事が多かった。ライブの冒頭にもってきたのは、凄く格好良い。
 ツアー初日、ベンモントのピアノがズレるというハプニングが確認されたそうだが、今回も同じ事が起こった。後半でぐっとヴォリュームを下げた時のこと。かなり抑えたスティーヴの刻みに、三連符と付点を組み合わせたリズムをコードで鍵盤が刻むのはきつい。しかもマイクがスティーヴではなくてベンモントにあわせていたようなので、あれは難しい。ご愛嬌だ!
 オーディエンスも加わっての大合唱に、トムのヴォーカルも絶好調だった。振り向くと、Rさんが泣いていた。

2. Mary Jane's Last Dance
 2曲目にしてこんなにテンションが上がって良いのだろうか?前の席の太め4人組(控え目な表現)が、さっそくマリファナ(marijuana =Mary Jane)を吸い始めた。それにしてもおっぱじまるのが早い…

3. I Won't Back Down
 アメリカ人も大好きらしき、この曲。マイクのスライドが冴え渡っている。これまた大合唱が凄い。

4. Even The Losers
 照明があかるく、きらきらした感じで若かりし雰囲気が乱反射していた。
 このあたりから、トムとマイクが上着を脱ぎ始めるが…マイクがどうやらキテレツな柄物のシャツを着ているらしく、とても変。白っぽいボトムズも珍しい。
 トムの衣装も少々イケてない。ジョニー・キャッシュ風なのだろうか?こういう、衣装で外すところなども、彼ららしさか。

5. Free Fallin'
 私が最初に泣いたのはここ。やはり美しすぎる。メロディも、詞も、トムの声も。スタンドのそこかしこから、なにやら蛍光青の小さな物体が飛び交っている。スーパーボウルの時を思い出し、その美しい光景もあいまって、夢のような時間となった。

6. Cabin Down Below
7. Sweet William

 前者はベンモントのピアノがよく響いていた。ピアノの弦の間に消しゴムを挟んだような音がする。PAの影響なのか、そういう調整なのかは、良く分からないが面白い音で好きだ。
 後者では、ルーズに、ブルージーに流した後に、ギターブレイクが炸裂する様子が最高にクール。

8. End of the Line
 92年のボブ・フェスト以来おなじみのギターを持ったトムが、「ここでトラベリング・ウィルベリーズの曲をやろう!」と言えば、当然テンションが上がる。この曲の冒頭のギターはシンプルに見えて、実はかなり難しそう。マイクの丁寧なプレイが光る。
 Handle with careと比べて知名度的にどうかと心配したが、まったくの杞憂。会場全体がトムと一緒に “ But it’s alright…! “ の大合唱。トムとスコットがヴォーカルを分け合う姿に、ウィルベリーズの素晴らしさを再認識。
 スクリーンに映し出された、アイルランドの渦巻き模様のような造形が、どこかで必ずつながっている強い絆 ― ウィルベリー兄弟や、ハートブレイカーズの絆、そしてその永続性を表しているようで、絶妙だった。

9. Can't Find Way Back Home
10. Gimme Some Lovin'

 スティーヴ・ウィンウッド再登場。TP&HBとの夢の共演。前者では、スティーヴとマイクによるギターの掛け合いが素晴らしかった。ほとんどぶつかるんじゃないかと思うほど、二人が接近してサウンドを絡ませる音色は、ものすごくセクシー。
 後者では、ベンモントの城にスティーヴがお邪魔。超一流キーボーディストがあんな狭い所に二人も収まっている!スティーヴが「やぁ、どうもどうも。お邪魔します。」みたいに入っていく様子が面白い。
 一方、ベンモントは「俺、テンションあがっちゃうよー!エイッ!」とばかりに、ネクタイを外す。トムはバック・ヴォーカルに徹して、尊敬するスティーヴ・ウィンウッドのプレイを自ら楽しんでいるような様子だった。

11. Saving Grace
 最初、何の曲か分らなかったがやがて判明。この新しいイントロは素晴らしく格好良い。ぜひともライブ・アルバムに入れて欲しい。相変わらずマイクのスライドがイカしている。

12. Face in the Crowd
13. Honey Bee

 前者はおとなし目の曲で、会場も一息。そのなかトムがしっとり歌い上げる様子をゆっくり鑑賞。ベンモントによるピアノソロがゴージャスで素晴らしかった。繊細で哀愁を帯び、キラキラと音の粒が輝いている。
 後者はヘヴィな雰囲気でトムのヴォーカルが堪能できた。

14. Don't Come Around Here No More
 ライトが会場中をかけめぐり、かなりハイになる雰囲気。Hey!… Stop!と、会場全体で盛り上がっていく。やはり最後のマイクのギターソロが凄い。

15. You don’t know how it feels
 マリファナが好きだとしか思えないアメリカ人、多盛り上がり。後半の間奏部分で、トムが客席にお尻を向けてダンスを披露。スティーヴのアクセントに合わせて、手足を交差させたりしてクルクル、ビシッと決めていた。近くでじっくり見たい。
 これのためにスティーヴと個別練習していたらどうしよう。

16. Learning to Fly
 すっかりアコースティック・ヴァージョンが板についている。私が最高に好きな曲の一つで、かつ詞も最高だと思う。オーディエンスがトムに促されてサビを歌い、今日2回目の涙。

17. Refugee
18. Runnin' Down A Dream

 前者はとりあえず最後の曲。ほぼオリジナルどおりの演奏で、テンションがあがる。遠目からもマイクのオーバーアクションが確認できる。
 後者はアンコール1曲目。テンションが上がりなおす。ベンモントもネクタイを締めなおして出てきた。律儀。

19. Mystic Eyes
 この曲はデビュー30周年コンサートのDVDで見て以来、とても気に入っていたので、生で聴けて感激。 “ play the piano, play the piano! “ と言うトムに促されて、奏でられるベンモントのソロが伸びやか。

20. American Girl
 トムがオーディエンスに「準備は良いかーっ?!」と呼びかけると、盛り上がりは最高潮。爆発的なイントロとともに、一番好きな曲が始まる。この曲を聴かなきゃ帰れない。
 笑ったのが、歌詞が” American girl” のところで、照明が星条旗模様を映し出したところ。すさまじくダサいのだが、アメリカ人には大ウケらしい。

 こうしてライブは終わり、TP&HBは一列に並んで肩を組み、一礼。今回は、左からベンモント,マイク,トムと、オリジナル・ハートブレイカーズがかたまる配置だった。一同、舞台上手から退場。右手を広げてトムに先に降りるように促すマイクの仕草が、目に焼きついた。

その他、気が付いた事。

 まず、舞台設置。いつものことながら、必要最低限のものだけがある、シンプルなステージ。今回のスクリーンは少し形が凝っている分、あまり大きなものではなかった。スタンドで見ている方としては、もうすこし大きいほうが嬉しい。しかし、その一方でスクリーンよりも実際のTP&HBの姿を見ている時間の方が長い。

 正面後方のスタンド頭上には、細長い電光掲示がある。開演前、そこにちょっとしたクイズが出題される。「トム・ペティの曲で、ラスベガスが出てくるのは?(A)Swingin’. (B)Wildflowers, (C) Big weekend 答えはコンサートの後で!」






…との事だった、興奮のライブが終わった後は呆然としてすっかり忘れてしまった。答えはもちろん、(A)Swingin’。


会場を埋めた人々

 分ってはいたが、とにかくアメリカ人たちは良く飲む!すさまじく飲む!クジラのごとく飲む!ライブが終わってみると、ガーデンの床はこぼれたビールにまみれ、階段などは特に滑って危険。
 更に、アメリカ人はよくしゃべる!ひっきりなしに喋る!一体何をそれほど喋るのだというくらい、喋る!安くもないチケットを購入して、なぜライブの最中も大声で喋りつづけるのか?
 私の右隣の一団は、ひときわキンキン声で喋る女性が、スティーヴ・ウィンウッドの間じゅう喋りまくっていた。外で喋れば良いのに。
 さらに、私の右後方に居る金髪の若い女の子。TP&HBの後半になると、彼氏に向かって「ねぇ、アメリカン・ガールはぁ?あめりかん・がーるはぁ〜?」と、ずっとアホ声を発している。あと2回余計に言ったら、振り返って「最後だ!」と教えてやるところだった。

 Mayuさんも嘆いていたが、横にでかい体格も前に居ると困る。
 スタンド席なのだから段差があるのだが、前の男性四人が大柄で、ちょっと見えにくい。さらに太いので、横に隙間が出来ない。それでも、ビールを買いに行たり、マリファナで気分良くなって不在だったり、座る事も多かったので、許容範囲か。
 会場のすさまじい盛り上がりは、筆舌に尽くしがたい。あれだけの大人数が、 “ Petty! Petty! “ と口々に叫びながら大盛り上がりになっている。やはりTP&HBは超一流のロック・スターなのだと再認識した。

 Rさんの向こう側に座っていたおじさん。彼も仕事で大阪,東京などへ5回行ったことがあると言う。今回の旅の最中に会った中で、来日経験のある人は5人目だ。

 終演後。アリーナ席のMayuさん、Toshiさん、そしてM君と合流。さわやかに疲労しつつ、ガーデンのはす向かいにあるホテルに戻る。やはり会場に近いホテルは便利。

 興奮さめやらず、ベッドに突っ伏して「トムさん格好良い〜」とつぶやきつつ、ベンモントがいかにして “ You wreck me “ のパッセージを外さないようにするべきか、真剣に考える。まずメトロノームを使って…それからスティーヴとパート練習を…などと、どこかの吹奏楽部とはき違えてブツブツ言っていると、Rさんに呆れられる。
 しかし、そこは行動に無駄のない二人。手早く明日の準備や身支度をととのえ、就寝する。夜中に鐘の音を聞いたような気がするが、実際に鐘の音だったのか、コンサートの余韻が夢の中で鳴っていたのかは分からない。



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