離婚調停事件の管轄家庭裁判所に出頭するのが無理なら移送の申立
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2014.12.11mf
質問
私は、結婚して 8 年になり、夫と子ども 2 人で東京に住んでいました。夫とはうまく行かず、夫は東京家庭裁判所に離婚調停の申立てをしました。
私は、夫と一緒に住むことに耐えられず、子ども 2 人を連れ、宮崎の実家に帰りました。私は、宮崎から、わざわざ東京の家庭裁判所に行かねばならないのでしょうか。
相談者は、弁護士会で教えてもらった番号に電話して、弁護士会の 電話無料相談 を受けました。
答え
調停の管轄裁判所は、相手方の住所地を管轄する 家庭裁判所(一覧 )です(家事事件手続法245 条 1 項)。 離婚 調停もそうですが、これは離婚調停の申立時を基準にして決めます(家事審判手続法8条)。調停申立て時にあなたは東京に住んでいたので、管轄裁判所は東京家庭裁判所になったのです
しかし、あなたが東京の裁判所に出頭する経済的、時間的余裕はないと思います。そこで、東京家庭裁判所に対し理由を書いて、調停事件を宮崎家庭裁判所に移送するよう申立てをして下さい(家事事件手続法 9 条 2項 )。あなたから調停申立をする際も、同様に、特例として申立人の住所地の家庭裁判所に申立ることができます(自庁処理)
なお、 離婚裁判 は、2004年4月1日から、家庭裁判所が扱います。管轄家庭裁判所は、次の通りに決められています( 人事訴訟法 4 条 1 項)。- 夫、あるいは、妻の住所地の管轄家庭裁判所
- 一定の場合、離婚調停を行った家庭裁判所
未成年者の子供がいて親権が争われている場合は、家庭裁判所調査官が、子どもに面接し、養育環境を調査する必要があります。養育環境調査の便宜のため、人事
訴訟法31条は、離婚訴訟の管轄家庭裁判所を決める場合は、子の住所、居所に配慮するよう決めています。その関係で、離婚訴訟の管轄裁判所は、子供の住所地、居所
に、認定されやすいです。
その後
相談者は移送の申立てをし、東京家庭裁判所はこれを認め、事件を宮崎家庭裁判所へ移送しました。
宮崎家庭裁判所での第 1 回目の調停においての話合いの結果、離婚すること、夫は妻(相談者)に対し、 50 万円を財産分与する、養育費 として月額 7 万円を支払うことが決まりました。しかし、この夫は年収 700 万円ほどあり、預金も相当あると推測できるので、財産分与は極端に少ないです(夫婦の財産がなく、慰謝料支払い事由がない場合でも、100万円ほどの和解金を支払うことが普通です)。
1996 年の家庭裁判所において成立した調停での財産分与、慰謝料の平均は 405 万円です。
調停委員には、仕事として事件を早く終わらせたい気持ちがあります。相談者は、調停委員の説得にうっかり乗ってしまったのです。
弁護士を頼まず、自分で調停をする場合は、調停委員から提案されたら、すぐ決めずに、「大事なことですから、次回の調停期日に回答します」と、答えて、その間に冷静に考えればよかったのです。調停は、弁護士を頼まずに、自分で処理できます。弁護士がいないときは、自分で、慎重に判断する必要があります。離婚は、自分自身の問題です。調停委員を含め第三者の意見はどうしても無責任になります。
養育費の額は一度決めても、子どもが進学したとか、父親の収入が増加したなどの事情があれば、増額請求できます。
判例
- 東京家庭裁判所平成25年9月25日決定
第2 当裁判所の判断
1 一件記録によれば,@申立人(夫)と相手方(妻)は,平成6年5月9 日に婚姻し,平成
7年1 2月1 1 日に長男○○を,平成1 0年1 0月1 7 日に二男△△を,平成
1 3年1 0月5 日に三男□□をそれぞれもぅけたこと,A相手方は,現在,子
供たちとともに鹿児島市内で居住していること,B申立人は,株式会社○○○
に勤務し 現在は東京都内に単身赴任していること,D本件の争点が,離
婚事由の有無 (申立人の不貞や暴力等の有無) や,子供たちの親権等であるこ
とがそれぞれ認められる。
2 以上を前提に,本件を鹿児島家庭裁判所に移送すべきかについて検討するに,
本件では,申立人及び相手方の本人尋問が必要となる可能性が高いところ,一
方当事者である相手方は鹿児島市内に居住している上,もう一方の当事者であ
る申立人も鹿児島家庭裁判所での審理を望んでいるのであるから,当事者の衡
平及び訴訟遅滞を避ける観点からも,本件を鹿児島家庭裁判所で審理するのが
最も適切である。
また,上記のとおり,本件の主たる争点の一つが子供たちの親権であるとこ
ろ,親権の帰属について判断するためには,監護状況や子供たちの意向等につ
いて,家庭裁判所調査官による調査が必要全なる可能性がある。そして,子供
たちが,現在,相手方とともに鹿児島市内で居住していることに照らすと,訴
訟の著しい遅延を避けるためには,本件を鹿児島家庭裁判所で審理するのが最
も適切である。
さらに,人事訴訟法3I条は,当事者間に未成年の子がいる場合の離婚訴訟
において,同法7条に基づく移送について判断する場合には,子の住所又は居
所を考慮しなければならない旨規定しているところ,上記のとおり,子供たち
はいずれも鹿児島市内に居住しているのであるから,同法31条の趣旨からも,
本件を鹿児島家庭裁判所で審理するのが相当である。
3 なお,相手方は,鹿児島では弁護士を探すことができない旨主張しているが,
鹿児島市内に多数の弁護士がいることは顕著な事実であり,この点に関する相
手方の主張は理由がない。
また,相手方は,離婚調停が当庁で行われたので,本件も当庁で審理される
べきである旨主張しでいるが,上記2で検討したことに鑑みると,当庁で離婚
調停が行われたからといって,本件訴訟を当庁で審理すべきことにはならない。
4 以上によれば,本件を鹿児島家庭裁判所に移送するのが相当であるので,主
文のとおり決定する。
法律
人事訴訟法
第31条 家庭裁判所は、婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る婚姻の当事者間に成年に達しない子がある場合には、当該訴えに係る訴訟についての第六条及び第7条の規定の適用に当たっては、その子の住所又は居所を考慮しなければならない。
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