<元 凶>
「さて、状況を説明するまでもなく、
2001年(21世紀)の初頭より、日本は、
まさに国家存立の危機に立たされています!
津田・編集長、私たちは一体どうすればいいのでしょうか?」
「ええ、まさに非常事態ですねえ...状況を益々混乱させているのは、自
民党の野中・前幹事長ではないでしょうか。
私はむろん、個人攻撃をする気は毛頭ありません。しかし、この野中氏
の政治的影響力が、大混乱の元凶と見ています。つい先日も、このような
状況下で、自分の所属する“橋本派の結束”が、最も大事な事だなどと言
っています。マスコミ報道の“切り口”というものもありますが、国家存亡の
折に、何故そんな派閥次元の概念が優先されるのか...冗談なのか、
何処まで本気なのか、国民には理解のしようがないわけです」
「なるほど...確かに問題発言ではありますね、」
「まあ、本人も、国民に不人気なのは承知しているようで、自分が首相に
なることは“200パーセント無い”と言い切っていますがね。しかし、そう言
いながら、本意が何処にあるか分らないというのが、益々国民に政治を
分らなくさせています。野中氏を称して、“密室政治の権化”と言った人が
いますが...うーん...まさに、そういうことなのでしょうか、」
「しかし、津田・編集長...」青木昌一は、タバコに火をつけ、煙をひとつ
吐いた。「野中氏は、何故これほど大きな政治的影響力をもっているので
しょうか。そこが、私には不思議なのです。非常に、古い体質の政治家の
ように見えますが、」
「うーむ...一言でいえば...“非常に高い変動指数”を持っているとい
うことでしょうかね...この我々の“参与”する、“人間原理空間”の、“ス
トーリイ”に対する“変動指数”です...」
「ははあ...その、高い変動指数というのは...つまり、影響力が大き
いということでしょうか?」
「ええ。一言でいえば、そういうことです。人によっては、西郷隆盛や坂本
竜馬のように、革命を引き起こすほどの変動指数を持つ人もいます...
ただし、私もそうした“人間原理空間”や、“ストーリイの変動性”の意味
を、深く研究してみたわけではありません。また、こうした考え方は、この
世の存立するデザインそのものに影響しますから、慎重にしないといけま
せんね...」
「ふーむ...」
「野中氏の並外れた変動指数が、このバブル経済崩壊という状況下で、
必ずしも良い方向へ向いていなかったことが、この現在の日本の政治的
大混乱を招いていますね。野中氏はその力を、“平成維新の大改革”の
方向へ向けていたなら、相当のことができたはずです。
しかし、やってきたことは、“加藤・元幹事長の改革の芽を潰す”という
ような仕事だったわけです。高い能力を持ちながら、器が小さすぎたとい
うことでしょうか。だから、現在の“国家存亡の危機”に至ってもなお、“橋
本派が大事だ”、などという視野の狭い発言が飛び出してくるわけです。
また、あの“加藤政局”において、加藤・元幹事長の改革の芽を潰し、
その上で一体何をやりたかったのか...このことに対する明確な答えも、
未だに国民の前には示されていないわけです。むろん、“予算を通すこと
を最優先した”などという言い訳は、通用しません。何故なら、改革の芽を
潰し、予算を最優先したにもかかわらず、この国は益々混乱に拍車をか
けているわけですから。つまり、改革の芽を潰したということは、結果的に
その判断が間違っていたということの証拠ですから...」
「すると...ただ潰しただけだったのでしょうか?国家が衰退していくのを
承知で?」
「うーむ...少なくとも、私たち国民に“納得のいく説明”は、一言もなされ
てはいませんね。しかも、屁理屈ですむ問題ではありません。これは、
旧・加藤派である宏池会を分断して出ていったグループについても、同じ
です。その行動は、我々国民にとっては、未だに“大きな謎”なのではな
いでしょうか。何故、彼等は加藤氏の改革を支持できなかったのか。何
故、彼等はむざむざ、この愛すべき日本の国を、大混乱に陥れていった
のでしょうか?
むろん、彼等は有力な政治家集団であり、頭脳集団です。それなりの、
十分な理由はあったと思うのです。したがって、このことについては、来る
参議員選挙の折に、地元選挙民に対し、膝を交えてしっかりと説明される
と思います。
しかし、それにしても、国民が圧倒的に支持した“加藤政局”における
改革の芽を
潰し、さらに国家を大混乱に陥れた“真意”とは、一体何だっ
たのでしょうか...その説明を、是非聞いてみたいものです。その納得
のいく説明がない限り、私たちはこの国の唯一の主権者として、彼らには
その責任を取ってもらわなければなりません!
...」
「まさに、そういうことですねえ...」
「“国民の大多数の意思に反し”、“改革の芽を潰し”、それが一体何にな
ったというのでしょうか? また、あの時の“与党3党”の動きも、私は本当
に、今でも分らんのですよ...」
「そうですねえ、」青木昌一は、タバコを吹かし、天井を見上げた。「...
そして、彼等は、その責任を取ろうともしない...」
「結局...野中さんの非常に強い影響力が、そうさせたのでしょうかね」
「なるほど...人間が持つ、“人類文明ストーリイ”に対する“変動指数”
ですか...実に、不思議な...面白い説明ですね」
「不思議な...ですか?」津田は苦笑した。「はっはっは...実は、この
“変動指数”の概念は、高杉・塾長の受け売りなんですよ」
「ははあ...なるほど、」青木は、タバコの煙を吐きながら笑った。「どう
も、津田さんの言葉とは思えないと思っていました。高杉・塾長なら有り得
ますね。最近は、ニュー・パラダイム仮説の“36億年の彼”の方は、執筆
していないようですが、」
「今は、“仏道”の方に力を入れているようですね」
「うーむ...そのうち、是非ここにも、ゲストとして来て欲しいのですが、」
「ああ、それなら、頼めば来てくれるでしょう」
「そうですか!」
「多分、」
<国家大改造の時!>
「さて、それで、どうするかということが重要です」青木が言った。「森首相
の後継は、森派・会長の小泉純一郎さんでいいのでしょうか?」
「いや、私はここは、議会制民主主義の原点に立ち返るべきだと思いま
す。野党は“力がない”、“まとまりがない”、“任せられない”と言います
が、我々国民が野党に力を与えるべき時ではないでしょうか。結局、この
ような状況を作ってしまったのも、我々国民が長年にわたって、“自民党
的体質”を助長してきたという、大きな責任があると思うのです。
議会制民主主義のルールにのっとって、この現在の状況を変えるとい
うことになると、ここはやはり“与野党逆転の政権交代”が最もふさわしい
姿ではないでしょうか。それ以外では、実質的な効果は非常に期待薄だ
と思いますね。
したがって、我々国民も、何もやってくれない政治をけなすだけではな
く、力強く拮抗する対抗勢力を、築き育て上げていかなければならないの
です」
「なるほど...やはり、ここは、政権交代が一番近道ですか?」
「はい...そのために、議会制民主主義というルールが確立されている
わけです。
それから、21世紀の、日本の“新・民主主義”というものは、特定の政
治家が叫び、特定の政党が組織していくというものではないということで
す。“新・民主主義”の本質は、まさに“私達国民一人一人”の、“真の民
主主義創造のプロセス”でなければならないのです。つまり、それは私達
一人一人の、“自覚”の内にこそあるのだということです」
「はい...ええ、まさに、そうだと思いますね」青木は、タバコを灰皿の中
でもみ潰した。「この日本の国を再生させるのは、首相の首をすげ替える
ことでもなければ、単に与野党を逆転させることでもないということです
ね。まさに、21世紀の日本の“新・民主主義”は、私たち国民一人一人の
“自覚”の内にあるのだと思います。
したがって、“平成維新”の本質もまた、国民が新・民主主義に目覚め
ることなのだと思います。ここがしっかりしていないと、どんな改革も失敗
に終わってしまいますね」
「そういうことです。また、こうした視点から眺めれば、自民党はいったん
下野すべきですね。そうしなければ、解党的な出直し、抜本的な党改革な
ど、できるはずがありません。そして一方、野党側には、一度政権を担当
させることが、最も良い薬になり、日本の国家再生の原動力になるのでは
ないでしょうか。むろんそれには、国民の支持と、野党各党の政権担当に
対する自覚が必要になります」
「はい、」
「特に、野党各党は、過去の一切の“しがらみ”を捨て、国家再建のため
に大結束することが必要です。そして、それをアピールすれば、国民は必
ずついて行きます。また、“支持政党ナシ”の過半数の国民も、まさにそ
れを期待し、待っているのです。その点では、野党は“国民の真”を信じ、
大きな旗印を掲げ、決戦の参議員選挙に突入していって欲しいものです。
それから、私たち国民一人一人もまた、何が真実かを見極め、何が国
家の大改造に必要かを見極め、真の決断をしていかなければなりませ
ん。単に、“私を見て、握手をしてくれた”だとか、“親の代から世話になっ
ている”とかで投票していては、日本はいつまでたっても変わってきませ
ん。
ともかく、ここは私たちの“国”であり、私たちの“時”なのです。この現
状を変えていくのは、まさに私たちであり、いよいよその“自覚”が必要な
時代に差しかかってきています。
繰り返しますが、今こそ議会制民主主義の原点に立ち返り、政権交代
の妙薬が必要な時ではないでしょうか。
...」
「ええ...ありがとうございます、津田・編集長!まさに、そのとおりだと
思います。また、自民党の大改造も、いったん下野して行うというのは、
的を得ていると思います。痛みを伴うものではありますが、そうでなければ
変わる筈もありません。さらに、また、自民党が下野しなければ、痛みの
伴う日本の“国家大改造”は、進むはずもないのが分ってきました」
「そうですね...やはり、政権交代が、最もスムーズに、平成維新の国家
大改造に至る道だと思います。まさに、現在の日本は、世界中が注目し
ている状況ですから」
「はい...ええ、津田・編集長、どうもありがとうございました。
さあ、21世紀における最初の全国選挙である参議員選挙を、日本の
“新・民主主義”の、出発点にしたいものです...」