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           〔人間の巣〕              

 
       ・・・ 意識/情報革命時代の遠望 ・・・

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プロローグ    <小休止.....TEA-TIME >

         感染症対策の汎用性 ・・・ タミフルの1本槍は...?

               経済グローバル化/覇権主義 ・・・ その限界と逆流

                     日本の若者が ・・・ まさに、“世界の要石”の位置に 

2007. 5.10
No.1 〔1〕 文明の第3ステージ/意識・情報革命時代の遠望・・・・・ 2007. 5.15
No.2      テクノロジーから眺める/〔人間の巣〕 の座標・・・・・ 2007. 5.15
No.3      <fMRI とは・・・・・> 2007. 5.15
No.4      <異なるパラダイムの統合・・・・・> 2007. 5.15
No.5      < 新しい人間像 ・・・・・> 2007. 5.15
No.6 〔2〕 技術革新のベクトル・・・ 2007. 6. 5
No.7      <高杉・塾長・・・に聞く> 2007. 6. 5
No.8        【“物の領域”の時代から・・・“心の領域”の時代へ、】 2007. 6. 5
No.9        技術革新ベクトルは・・・・・ 2007. 6. 5
No.10        【人間性の回復】 【命の賛歌】 存在の覚醒〕 2007. 6. 5

   

 

  <小休止...TEA-TIME >      

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シンクタンク=赤い彗星事務担当 の、二宮江里香です...  

  このページは、前回の“巣”過疎地に集合から続いています...」

 

                                

   感染症対策の汎用性 ・・・ タミフル・1本槍は...?

     経済グローバル化/覇権主義 ・・・ その限界と逆流

       日本の若者が ・・・ まさに、“世界の要石”の位置に

                  

  小休止をしていると、高杉・塾長がインターネット・オープンルームに姿を見せた。手に

紙袋を下げていた。塾長はみんなに詫びを入れ、その代りに土産を持ってきたと、それを

持ち上げた。紙袋を、二宮江里香の事務机の上に置いた。

「待ったかな?」高杉が言った。

「いえ、」支折が、さっそく紙袋を開けながら言った。「ちょうど、小休止に入っていた所で

すわ。塾長が《危機管理センター》に居ることは、江里香さんがインフォメーション・スクリ

ーンで見ていました」

「うむ...《危機管理センター》の方も、だいぶ改装が進んでだと言うのでね。ちょっと立

ち寄ってみた」

「はい。ずいぶん機能強化されているでしょう。それに、センター内部も、整理され、すっ

かりきれいになりましたわ」

「そうだな...響子は、なかなかセンスがいい。どうも、そういう方面も得意なようだなあ」

「はい。さすがに、響子さんですわ」

  高杉は、片倉の横へ行き、自分の席に座ついた。江里香が、高杉のコーヒーを運んで

きた。支折と夏美が、小皿を出して並べ、高杉の持ってきたお菓子を分けている。

「ああ...」高杉が手を上げた。「私は、コーヒーだけでいい。お菓子は、《危機管理セン

ター》の方で食べてきた」

「はい、」夏美が、振り返った。

「そういえば...」津田が、コーヒーカップを持ち上げながら、モニター越しに高杉に言っ

た。「今年も、新型インフルエンザの発生は、無かったわけですねえ...」

「うむ...」高杉は、キイボードに暗証番号を打ち込み、Enterを叩いた。「響子は、まだ

警戒を緩めるわけにはいかないと言っているがね...」

  高杉は、自分専用のネットワーク回線を開いた。それから、モニター上の幾つかのアイ

コンをクリックし、データをアクティブにした。江里香と夏美が、菓子皿を配って回った。

「その、」津田が、菓子皿を前に寄せながら言った。「【H5N1型】鳥インフルエンザウイル

ですが...本当に、パンでミック(世界的大流行)を引き起こすんでしょうかねえ...」

「待ちくたびれた観はありますが、」片倉が、笑みを浮かべながら言った。「状況としては

いつヒト新型インフルエンザに変異しても、おかしくはありません...嵐の前の静けさ

ですよ」

「うーむ...」高杉が、ゆっくりと片倉の方を向いた。「そうなのですが...ここは、じっくり

と構えた方が、いいのかも知れません...

  私は、“新型肺炎・SARS”が発生した時点から、的を限定的に絞るのではなく...他

も、しっかりと監視すべきだと考えています。まあ、状況は、確かに【H5N1型】なのです

が、自遺然界の伝子変異を相手にして、人間の予測というものが、やすやすと当たるとも

思えんのです...」

「しかし...」片倉が、腕組みをした。「万全の態勢を、取っておくことは必要でしょう。必

ず、新型インフルエンザは発生します」

「むろん、そうなのでしょう...そのことは、否定しません...

  しかし...他の状況にも備え...感染症対策全般に対し、一般化した社会整備の方

も、整えておくべきでしょう。保健所医療機関、それから警察・消防自衛隊がタイアッ

プして...緊急時の機能拡充をはかっておくべきです。

  ただ一本槍で、抗インフルエンザ薬の、“タミフル”備蓄量を増やすだけではなく、

用性のある対策へシフトしていくべきです。その方が、新型インフルエンザ対策としても、

汎用性があり、全体として、防御指数が高まるということもあります...」

「なるほど...」津田が言った。「それは、確かに炯眼(けいがん/眼力の鋭いこと)でしょう...

  “ミサイル防衛構想”よりも、その方がはるかに国家・国民の防御になりますねえ。我々

としては、そうした意味でも、〔人間の巣〕の展開を急ぎたいところです。それが、究極的

な対策になりますから...」

「確かに...」片倉が、慎重に言った。「それは、理想的です。しかし、【H5N1型】は、す

でに巷にあふれています...そうである以上は、万全の対策は必要です。このまま、【H

5N1型】が、引き下がるはずもありません...」

「まあ...」津田が、コーヒーカップをカチャリと置いた。「それは、行政当局の、戦略の立

て方ですね...

  両方とも一気にできれば、それに越したことはないわけです。しかし、その両方と言う

のは、無理でしょう。ともかく、日本の行政は、戦略の立て方が下手ですねえ...薬事行

でも、しばしば問題を引き起こしていますからねえ」

新型インフルエンザは...」高杉が言った。「一度、発生してしまえば、それで真性

効薬・ワクチンが製造できます。勝負は、それが製造・流通するまでの6ヶ月間です。“タ

ミフル”副作用もあるようですし、その膨大な備蓄量が、無駄になる可能性もあります。

  しかし、まあ...そのために備蓄しておくわけですから...保険的な意味でも、それ

は間違いではありません。しかし、今後は、“感染症対策の汎用性の充実”の方に、もっ

予算配分をシフトしてはどうかと思います。

  “地球温暖化”で、日本にも“西ナイル熱”や、熱帯伝染病“デング熱”などが迫って

来ています」

「うーむ...」片倉が、うなった。「“西ナイル熱”は、もう差し迫った問題ですね、」

「そうです、」津田が言った。「しっかりとした、長期展望の、戦略的対応が欲しいですね。

そして、それを国民に開示し、“国民同意”を得て欲しいですね。それで、被害が出たとし

ても、国民は納得するわけですから...」

「まさに、」高杉が、うなづいた。「今の日本には、その“国民同意”が欲しいですね...そ

れは、厚生行政に限ったことではありません。全てにおいてです。それがないために、社

会がモラルハザードに陥り、未曾有の大混乱となっています。そしてその状況は、最近、

特に加速しています...

  日本復元のカギは、〔国民主権の発動/国民同意〕にあります...そのためのシス

テム構築のために、“公共放送・NHK”解体・再編成が必要なのです」

「そうですね、」津田が言った。

 

「塾長...」関が、モニター越しに言った。「経済のグローバル化は、止まるところを知り

ませんが...あと、どくらい続くでしょうか?」

「うーむ...」高杉は、飲み干したコーヒー・カップを脇にどけた。「我々のスタッフには、

経済専門家はいないわけですが...どうですか...片倉さんが、最も詳しい方でしょう

か?」

「はっはっ...」片倉が笑った。「私も、金銭経済には、とんと無縁の方です...

  しかし、関君の言う、“反・グローバル化の波”は、意外と早く来ると確信しています。

ローバル化は今、“経済原理の惰性”突き進んでいる状況ですねえ...闇雲に突き進

んでいます。後先のことを考えず、利益の追求に明け暮れています」

「そうですね、」津田が言った。「この状況は、いずれ“地球温暖化対策”と激突します。そ

して、我々は、“文明の選択”というものを、しなくてはならなくなるでしょう。“文明折り返

し”という選択です。それなくしては、人類文明に、未来はありません」

「はい、」片倉がうなづいた。「経済のグローバル化は...

  豊かに発色した民族文化の多様性を...経済原理というトラクターで引っ繰り返、根

こそぎ耕しています。熱帯密林アマゾンの開発と同じですね。根こそぎ焼き払ってしま

い、そこ大豆バイオ燃料サトウキビなどが栽培されています...目先の利益しか

考えていません...

  いずれ、“文明の選択”というものを、しなくてはならなくなるでしょう...」

「うーむ...」高杉がうなづいた。「そうですねえ...

  経済原理は、文化面でも、同じことをやっているわけですね...ともかく、利益を上げ

るためには、何でもやれということです。長年育んできた民族的文化多様性を、経済

いうトラクターで耕し...プランテーション(植民地下で行われた、単一作物の大規模農業)に変えている

わけです」

「そういうことが、」片倉が言った。「文化面で進んでいますね」

「しかも...」津田が、口を押さえた。「繊細なものは失われ...単調なものだけが残っ

ていますねえ...

  日本も、日本文化の普及と輸出に明け暮れています...それで、国威発揚というので

しょうか...馬鹿な話です...世界民族・世界文化多様性こそ、貴重なのです...そ

れが、分かっていないですねえ...」

「その通りです」片倉が、うなづいた。「地球表面有限であり...しかも人口爆発の

況下で...すでにダイナミックな経済原理というのも、袋小路に入っています。その中

で、投機マネーが荒れ狂い、“巨大な悪さ”をしています...

  私は、資本主義経済は、まさにパンク寸前の状況だと思っています...各所で、経済

原理の限界が、急速に顕在化して来ているのではないでしょうか...世界中の人々が、

息が詰まって来ています。

  もう、“終わりのないマラソン競争”は、終わりにしたいと願っています」

「うーむ...」津田がうなった。「ちょうど、“ベルリンの壁”崩壊する前夜のような状況か

も知れませんね...

  核戦略体制下で...東西冷戦構造の象徴となっていた“ベルリンの壁”が...たった

1本のハンマーで、打ち砕かれて行く光景を思い出しますねえ...あれは、1989年11

月9日のことです...その記念すべき日の光景が、目に浮かびます...ええと、何年前

になりますか...」

「およそ、18年前ですわ...」数字に強い夏美が、椅子に座りながら言った。

「あれから、18年ですか....」片倉が言った。「それで、イデオロギー対立の時代は、

一気に瓦解していったわけですね...そして、冷戦構造が終息し...アメリカの一人勝

ちの状況が到来し...資本主義経済原理が、世界を席巻したわけですねえ...

  そして今...その“市場経済・万能主義”も、あの“ベルリンの壁”崩壊する前夜のよ

うにな状況というわけですね...壮大な矛盾をはらみ...閉鎖空間の中で、内圧が高ま

り、パンク寸前の状況というわけですね、」

「あの...」津田が言った。「核戦略下の冷戦構造さえも...時が満ち、崩壊する時が来

たわけです。今、資本主義経済体制が、同じ道を歩んでいます...“歴史は繰り返す”

は、よく言ったものです」

[確かに...」高杉が言った。「“覇権主義”パワー表示のスタイルも、もう長くは続かな

いでしょう。

  車社会に象徴される、大量生産・大量消費社会というのも、発展途上国大挙参入

て来れば、地球はたちまち限界に達します。もちろん、地球をパンクさせるわけにはいき

ません」

「その...」関が、指をかざした。「“文明の折り返し/反・グローバル化”まで、どのぐ

らいの時間がかかるでしょうか?」

「難しい...ポイントです...」高杉が言った。「時間的余裕は、無いでしょう。まず、日本

の若者が、〔自給自足社会/人間の巣〕の建設に向って、行動を起こして欲しいと思い

ます」

「はい、」関が、うなづいた。

「その上で、言いますが...」高杉が言った。「どうですか津田さん...

  阿部・政権は、憲法改正して日本戦争のできる国に変えて...その日本の軍事力

が、何かの役に立つような世界状況というのは...そこに存在しているのでしょうか?」

「無いですね。無用の長物でしょう。“壮大な時代錯誤”です。何の意味も持ちません。

  そんなことをしていては、そもそも、“地球温暖化対策”にはなりません。“少子化対策”

も同様ですが、そんなことをやっていては、地球環境が崩壊してしまいます。指導者は、

大局的な大戦略というものを、絶対に間違ってはいけません...

  理論研究員秋月茜さんが...《OPINION/文明の選択・第2弾》で、世界中

の軍産複合体のを提唱していますが...まさにそうした逼迫した状況です...

日本の軍事力が、世界貢献できる状況は、そこには存在しないということです...」

「せいぜい...」高杉が、関の方を向いて言った。「5年か10年ですねえ...

  もし、そのような、覇権競争の状況が到来したとしてもです...それで、否応なく、状

況はガラリと変わって来ます。ならば、世界が、ここで“大きく舵を切るべき”だということで

す。今年を、“文明の折り返し”起点にしたいものです」

5年か10年ですか...」関が言った。「すると...“覇権主義”も、5年か10年の寿命

ですね、」

「いや...」津田が言った。「それが、間違った方向へ行くということもあるわけです。

としては、“地球温暖化対策”ですが...核兵器の拡散という、混乱が拡大する方向

無いとは言えません。だから、私たちも、それを訴えているわけです」

「そうですね...」高杉が言った。「“今”が...まさに、一番大事な時です...

  核兵器が拡散し、再び覇権競争に突入するかどうかの、“入口”にあります。世界構造

安定できるか、未曾有の大混乱が到来するのかの、まさに“分れ道/分岐点”です。

  核兵器が拡散して行くとなれば...《軍事・担当》大川慶三郎は、今度は、“核兵

器は必ず使用される”断言しています」

  津田が、うなづいた。

「私は...この今...“世界のキーストーン/要石(かなめいし)は、日本にあると考えて

います。また、それは、日本の若者双肩にかかっていると思っています。つまり...

 

********************************************

〔自衛隊〕が、アメリカ軍と共に、覇権競争に参加するのかどうか...

  もう1つは、日本の若者が、〔人間の巣〕創出に動き、“地球温暖化対

策”加速させるのかどうか...そこが“文明の分れ道”になります。

********************************************

 

  ...日本の若者は、まさに“要石”の位置にいます。自分たちの未来社会を、そして

文明の未来を、しっかりと検討し、果敢に、切り開いていって欲しいと思います...

  “地球温暖化対策”は、世界中で多角的に進められていますが、〔自給自足社会/人

間の巣〕パラダイムが具体的に動き出せば、非常に大きなインパクトを持ちます。その

小さな炎は、“燎原の火”のように、世界中に広がっていく可能性があります。その小さな

“文明史的な第1歩”を、日本の若者は、大胆に進めて行くべきです!」

「はい!」関が、うなづいた。

「ええ...」支折が、言った。「それでは、本題の方に入りましょうか...」

 

 

  〔1〕 文明の第3ステージ

      意識・情報革命時代の遠望・・・・・

              wpe4F.jpg (12230 バイト)house5.114.2.jpg (1340 バイト)   

テクノロジーから眺める〔人間の巣〕の座標・・・・・>

                     

「ええと...」支折が、作業テーブルを見まわした。「しばらくは、高杉・塾長にお聞きする

ことになりますが、お願いします...」

「はい...」津田・編集長が、椅子の背に体を引き、窓の方を見た。「ひと荒れ来るのか

な?」

  全員が、窓の方を眺めた。新しい広い窓から、新緑の萌える草原がくっきりと見渡せ

た。急速に雲が流れている。雲の裂け目から、幾筋かの陽光が降り注ぎ、草原の1部を

眩しく輝かせている。

「そのようですね...」関が言った。「我々としては...この草原の中に、〔人間の巣〕

作りたいですね、」

「そうだねえ...」津田が言った。「去年は、いっぱいに野イチゴを摘んだが、今年もそん

な季節になりましたねえ...」

「ああ...」高杉がうなづいた。「また、みんなで行こう...」

「はい、」夏美がうなづいた。

 

「では、高杉・塾長...」支折が、窓から視線を戻し、高杉の方に体を向けた。「お願いし

ます」

「はい...」高杉が、ゆっくりとマウスを動かし、クリックした。

「ええ...突然、ブラリと、」支折が言った。「“意識・情報革命時代”テクノロジーと言わ

れても...まるで、雲をつかむような話ですわ...

  そこで...〔人間の巣〕を展開する中での...未来社会における、テクノロジーの展

というテーマで、考えてみたいと思います...そうした中で、キーポイントになるテクノ

ロジーがあると思うのですが、それは、どのようなのもでしょうか?」

「そうですね...

  現在あるものや、その延長線上に見えているものは、あえて言う必要はないと思いま

す。その先の、まだ見えていないテクノロジーということになりますね。その中に、“意識・

情報革命のステージ”を、本格化させて行くものがあると考えています」

パラダイムシフトが起こるということは...これまでの、延長線上には無い、ということで

しょうか?」

「いえ...

  これまでのものを、全て捨てるわけではありません。別の大きな舞台へ、シフトするとい

うことです。いい例が、ニュートン力学/古典力学から、相対性理論へのパラダイムシフト

でしょう...この様子は、私たちはまさにその時代の中を生きてきたわけで、よく分ると

思います。

  大変な変化でしょう...ニュートン力学では、今日の科学技術時代の展開はなかった

わけです...それが良かったか悪かったかは別として...」

「はい...その威力というものも、分りますわ」

「そうですね...

  しかし、ここで想定しているのは、“文明の第3ステージへの...文明全体のパラダイ

ムシフトということです...私が想像している可能性の1つは...デカルトリアリティー

の分割で生まれた、“物の領域”“心の領域”の、再統合です...」

「はい、」

「そこへ、“意識・情報革命時代”は、深く切込んで行くものと思います。そこには、全く新

しい、広大なフロンティアが広がっています。おそらく、その本格化は、22世紀に入っ

からになると思います」

「うーん...はるか遠い話ですね、」

「いえ...

  “すぐそこまで”来ています。ただ、そこにたどり着くまでには、大きな障害があるという

ことでしょう...“文明の折り返し/文明の大艱難”という、大きな山があるということで

す...平坦な平原ではなく、幾重もの山波を踏破しなければならないということで、ひどく

遠く感じるのではないでしょうか、」

「視界が、開けないわけですね。その山を越えて行く...」

「そうですね...その先には、おそらく、〔極楽浄土〕があります...その、再びやって来

文明の安定期に、“意識・情報革命時代”は、本格化して行くだろうと思います」

「はい...」支折が、両手をそろえ、高杉の次の言葉を待った。

「長い...」高杉が、言った。「数千年に及ぶ...

  “文明の第1ステージ/農耕・文明の曙時代”に次いで...18世紀に、“文明の第2

テージ/エネルギー・産業革命”が起りました...蒸気機関などの発明で、動力による

機械化が始まったのです。動力機械は、社会構成戦争形態を、劇的に変えました」

20世紀は、世界戦争の世紀でもありましたね、」

「そうですねえ...現在もまだ、“覇権主義”核兵器の脅威を引きずっています...

  しかし、21世紀がスタートした現在...“文明の第3ステージ/意識・情報革命”も、

すでに始まっています。まだ、その本当の姿は見えて来ていないということですね。本当

の姿が見えて来るのは...つまり、それが本格化するのは、おそらく22世紀に入ってか

らだろうと言うことです」

「はい...」

“文明の第2ステージ”は、18世紀19世紀20世紀と続いたわけですが、文明に大

変化をもたらしました...

  デカルトが、リアリティーを分割したうちの、“物の領域”.../唯物主義/科学主義/

還元主義的・機械主義が、大いに進展しました...まあ、現在もそのパラダイムの中に

あり、科学技術文明が大々的に展開しています...

  そして、それが行き詰まってもいます。先が、見えなくなっているわけですね。それで、

50年後100年後の姿が見えなくなっているのです。つまり、“文明の折り返し/反・グ

ローバル化”という、山が立ちふさがっているわけです...」

「はい...」

「その、“物質主義・機械主義”行き過ぎた部分が...地球規模の大戦争を引き起こ

し、核爆弾を作り出し...“覇権主義”を増長させて来ました...地球生態系激変させ

るほどの、環境破壊は、依然として続いています...」

「そうですね...」

「くり返しますが...これはひとえに...

  分割されたリアリティーの、表裏の関係にあるもう1つの面...つまり、“心の領域”

が、き去りにさて来たからです...あまりにも、物質主義に傾き、精神性がないがしろ

にされ、科学技術文明の大展開の中で、放置されてきました。精神性エキスの部分

が、類文明から、ごっそりと抜け落ちて来てしまったのです...

  詩情豊かな大文学は、共通して、世界中から失われてしまいました...その代わりと

なったのが、ハードボイルド・ミステリーであり、アニメーションです...そして、それは

々単純化される傾向にあります。単調な風景は、生態系から文化にまで波及してきてい

ます...

  世界の文化は、ゴージャスフルコース料理からファーストフードスナック菓子ばか

りになり、それが経済のグローバル化の波に乗って、世界中津波のように広がってい

ます...」

「日本の、マンガ文化もそうですよね、」

「そうです...」高杉がうなづいた。「マンガ文化は面白いものですが、それが世界共通

なり、それしか無いというのは、果たしてどうなのでしょうか...文化の多様性という面か

ら、今後は問題になると思います...」

「うーん...そうなるのでしょうか...」

「なりますね...世界中の子供が、ドラえもんでは困ります...

  ともかく、人間の感性/精神がないがしろにされてきたために、人類文明片肺飛

となり...非常に多くのものを失ってきました...その最大のものは、“感動”を失って

しまったことでしょう...人々の心から、魂を揺さぶるような感動”というもの...その“共

感”というものが失われてしまいました...」

私たちの心が...」支折が言った。「機械のようになってしまったのでしょうか?」

「まあ...そういうことでしょうねえ...

  少なくとも、それに、“非常に感化された”ということです...今でも、素朴な生活をして

いる人々の所へ行くと、確かにそれはまだ残っているわけです。歌が心に響きます...

それが、何よりの証拠ですね...」

「あ...それはありますよね、」支折が、うなずいた。

「つまり...

  私たちは、“心の領域”を、置き去りにして来てしまったということです。電子機械に執

着し過ぎて...心もまるで機械のようになり...無味乾燥したものに変化してきたという

ことでしょうか...

  こう話ている私も、例外ではないのです...私自身、それを強く感じているから、あえ

てそれを指摘しているわけです。私も、詩情豊かな大文学に読みふけるような、心のゆと

をなくしているのを感じています...」

「はい...」

 

「さて...」高杉が言った。「“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の話に移りましょ

う...その“心の領域”...“意識/認識形式・ストーリイ発現・永遠の現在”...そし

て、“物の領域と心領域の統合では...あらためて、非常に多くの課題に切り込んでい

くものと思います...

  その未知のフロンティアは、物理空間宇宙をも、大きく呑み込んで行くことになります。

“意識/認識”こそ...そして、“私という認識主体”こそが...“この世/リアリティー”

最も基本的なものだからです...“意識/認識”が無ければ、物理空間さえも認識

れないわけですから...」

「そうですね...」

 

「さて...

  最近の、脳活動の解明では...“MRI(磁気共鳴画像)というものが導入され、研究が活

発化しています。かつてのように、“神”の存在や、“信仰”から入って行くのではなく、エレ

クトロニクスの時代にふさわしく、“MRI”から入って行くというのが、何とも面白いですね

え...

  私は、“宗教”というものは、“文明の第3ステージ”においては、非常に大きな意味

持ってくると考えています。しかし、それがどんなものかは、現段階では、皆目見当がが

つきません。

  まあ...私は宗教家ではありませんから...あえてそれを知ろうとも思わないわけで

すが...」

「はい、」支折が、口をすぼめ、微笑した。

“MRI”から入って行くというのであれば...それも、いいと思います...

  脳活動の解明では、“fMRI”と言うそうですが...まず、これについて、簡単に説明し

ておきましょう...私も、説明書を読んだだけの知識しかありませんが、とりあえず、それ

がどういうものかを、説明しておきましょう」

「はい。最近、よく耳にしますね、」

 

fMRI とは・・・・・>

            =functional (機能的)   MRI = Magnetic Resonance Imaging (磁気共鳴画像)

             

“fMRI”とは...」高杉が、モニターをのぞきながら言った。「磁気共鳴画像装置を用い

機能研究...特に脳機能についての研究を意味する装置です...

  まず“MRI”装置の中で、被験者が所定のタスク(仕事)を行うわけですね。そのタスク

遂行中の脳を、高速撮影を用いて計測するわけです...」

「はい、」

「そうすることで、タスクと関連した脳の部位を推定できます...脳の活動状態を撮像

るためには...脳神経細胞活動と関連した、生理現象を利用します。“BOLD法”とい

うのが最も有名らしいのですが...これは血液酸素飽和度と、緩和時間の関係を利

用したものです」

「うーん...」支折が、頭をかしげた。「難しい話ですね、」

「まあ...」高杉は、マウスを使い、モニター画像を操作した。「今後、よく耳にすると思い

ますので...参考のために、もう少し説明しておきましょう。一応、聞き流しておいて下さ

い...概略ぐらいは、掴んでおいて欲しいと思います...」

「あ、はい...」支折が、胸に手をやった。

「ええと...まず...

  脳の活動に伴い...活発領域においては、血流が20〜40%増加します...神経細

においては、血液中酸化ヘモグロビン還元され、還元ヘモグロビンとなります...

しかし、血流の増加に対し、酸素消費量5%しか増えないようです...つまり、静脈中

酸化ヘモグロビン量は...相対的に増加するわけです...」

「はい...」

「さて...

  酸化ヘモグロビンは、還元ヘモグロビンに比べ、磁化されにくいということがあります。

このために、脳の活性領域では、磁化率が減少し...磁気共鳴信号強度が変化する

のです...

  そこで、タスクを実行している時と、安静にしている時の、画像を比較するわけです。こ

うしたことをして...磁気共鳴信号の変化を、統計的に解析することにより... 脳の活

動部位を推定できる...と、言うことです...

  まあ、詳しい事は、その方面のホームページを参照してください。ここでは、概略的なこ

とが分かれば、それで十分でしょう」

「はい、」支折が、うなづいた。

「私も、それ以上のことは知りません...

  ともかく、脳の活動状態を、撮像できるようになったのは、大きな進歩でしょう...しか

し、“心”というものに、直接触れているわけではありません。しいて言えば、“心”というも

のに関して、間接的に表示のできる、“1つの道具”を手に入れたということです...つま

り、“fMRI”のことを説明したのは...“この1言”を言いたかったからです。

  精神活動や、認識/ストーリイ性の発現...その人間的なバイアス(偏向)については、

ちょうど可視光が...何故、色空間に対応した、膨大な色彩に対応しているのか...そ

本質部分は分らないのと同じです。それは、おそらく、認識領域の問題だからです」

「うーん...」支折が、前髪を耳の後ろへ流した。「“情報革命時代に突入し...ともか

く、情報機器の触手は、“脳の解明にも到達した”というわけですね、」

まあ...そういう意味ですかね...

  ともかく、必要な基礎研究です...意識の解明には、はるかに遠い道程でしょう。しか

し、他の総合的な研究成果と、有機的に結合すれば、しだいに大きな全体像が描かれて

行くのではないでしょうか...」

「はい...そういう、脳活動の解明が、開始されているということですね、」

「そうです...

  まあ、私も“fMRI”は、その存在を知っているだけですが、今後は注意深く見守って行

きたいと思います...」

「はい、」

 

異なるパラダイムの統合・・・・・>

            wpeA.jpg (48333 バイト)     

「さて...」高杉が、やや上を見ながら言った。「この、眼前する世界...不可分のリアリ

ティー...1つの巨大な全体世界を...要素に分解し...名前を与え...解明していく

手法を、“要素還元主義”と言います。

  大昔は...地・水・火・風などとされていた世界の構成要素は...やがて、元素

と呼ばれるようになり...さらに、陽子・中性子・電子、それから中間子(π粒子)などと呼

ぶ、素粒子物理学が確立され...さらに核子(原子核を構成する素粒子/陽子と中性子)クォーク

にまで分解されて来ました...

  素粒子物理学において...自然界における素粒子の振るまいを...現在もっとも正

確に記している理論が...標準モデル”と呼ばれているものです。ここでは、“電磁気

力”“強い相互作用の力”“弱い相互作用の力”が説明されていますが...“重力”

ついては、まだ統合されていません...」

「はい、」

重力理論の代表格は、一般相対性理論です...よく、知られているものですね。そし

て、現代物理学の基盤は...量子力学と、この一般相対性理論の、ダブルスタンダード

となっています...

  ミクロの世界では、量子力学威力を発揮し...マクロの世界では、主に一般相対性

理論が支配的です。そして、その競合領域が...現在、ナノ(10億分の1)技術で話題にな

っている、ナノ・スケールの世界だと言われています...」

「はい...量子力学重力の統合は、それほど難しいのでしょうか?」

量子力学一般相対性理論では、その背景となっているパラダイムが違うのです。量子

力学に対し、一般相対性理論古典的と呼ばれます。つまり、それほど、違うのです。

  量子力学は、粒子“相補性”や、“不確定性原理”や、“主体性/参与者”の導

入や...新しいところでは、“量子もつれ”というように...ともかく、革新的なのです」

「水と油のように、うまく結びつかないわけですね、」

「そうですね...

  ダブルスタンダードなどというのは...本来は、あってはならない否定的な言葉です。

いずれにしても、それは“文明の第3ステージ”では、超えて行かなければならない、“山

の1つ”でしょう」

「はい...」

 

「さて...

  量子力学一般相対性理論基本原理を、注意深く組み合わせることで、生まれたも

が...《ループ量子重力理論》と呼ばれるものです...観測されている4つの力を、

全て統合したものです...」

「あ、塾長...

  自然界にあるのは、“強い相互作用の力”“電磁気力”“弱い相互作用の力”、そし

“重力”ですね...この4種類の力だけなのでしょうか?」

「そうです...自然界で観測されているのは、その4種類の力だけです...現代物理学

で扱われている全ての現象は、この4種類の力によって記述されます...

  これらの4種類の力は...全部統一されたビッグバン宇宙の状態から...順次に、

力の種類枝分かれして、出現してきたと考えられています。まだ、他の種類の力が存

在するのか...今後、さらに新しい力に枝分かれして行くのかは、正確なところは、まだ

分らないのでしょう...

  それから、ビッグバンを引き起こしたとされる、巨大な斥力ですが...これは磁石の

N極反発する、あの斥力ですね...この巨大な斥力は、マイナスの重力となるわ

けでが、まだ謎が多くあります...

  アインシュタインが迷ったところの、“宇宙定数”も関係してきますし“真空のエネルギ

ー”とも言われますし...今後の、宇宙論の動向に注目してほしいと思います...」

「はい...」

「ええと...《ループ量子重力理論》の話でしたか、そうですね...」

「はい、」

「では、最初の話に戻りますが...

  この《ループ量子重力理論》では、時間空間さえも...要素に還元されて行くとい

うことですね...時間空間というような概念さえも、最小スケールの、合体した集合体

ということになるようです...まあ、素粒子論から来ていることでしょう...相対論的な時

空間とは、異なりますから...」

「つまり、無限に細分化される...パラメーター(媒介変数)としての、時間空間はないと

いうことなのでしょうか?」

「そうらしいですね...

  例えば...エネルギーというものが...実は、無限に滑らかにカウントされるものでは

なく...最小のエネルギー単位というものが存在しているのに似ています。何万ボルト

いう電気も、細かく見て行くと、最後には1個1個の電子で、整数でカウントされるものの

集合体になるわけです。時間空間というものも、そのように最小スケールがあるという

ことでしょう...そうした概念が、理論的に、導き出されるということですね...」

「はい...ええ、詳しいことは、《ループ量子重力理論》のページをご覧ください...」

「この“ループ量子重力理論”というのは...先ほども言ったように、量子力学一般相

対性理論基本原理を、注意深く組み合わせることで、生まれたものです。これによると、

空間時間も、最小単位を持ち...離散的なものになるということです...これから、そ

うした概念が、広がるのでしょうか...」

「うーん...なんとなく、疑わしいですよね、」支折が、微笑した。

「まあ...」高杉も、微笑した。「これまでの、私たちの感性から言えば、そうですね...

  長さの単位に、最小のスケールがあるというのは、そもそも言葉の定義からいっても、

おかしな感じです。しかし、電気エネルギーなども、今でこそ1個1個の電子カウント

るということは当たり前になっていますが、当初は、こんな感じだったのでしょう...

  それに、標準モデル”と呼ばれているものは、ほぼ完璧なものであり、“それが覆(くつ

がえ)ることはないだろう”とも言われます...」

「はい...」

「ええと...

  参考までに言うとですね...最小スケールは、“ループ量子重力理論”によれば、次

のようになっています...

 

【1プランク長】 :10のマイナス33乗/cm 

        そこから導かれる、

    最小の面積 :10のマイナス66乗/平方cm (“プランク長”の2乗)

    最小の体積 :10のマイナス99乗/立法cm (“プランク長”の3乗)

【1プランク時間】 :10のマイナス43乗/秒 

 

  これが、“最小の長さ”“最小の面積”“最小の体積”“最小の時間”ということになり

ます。それ以上は、分割できません...いずれにしても、計測できないほどの、極微の

世界でのことですね...こうした概念が、今後どのようになっていくのか、注目して行きた

いと思います」

「はい...」

「ええ、何故、こういうことを長々と話したかというと、次のことを言いたかったわけです。

  “物の領域”と、“心の領域”統合となると...量子力学のパラダイムと、一般相対

性理論のパラダイムという...その程度の差異ではないということです。このパラダイム

の異なる2つの理論を統合するのさえ、なかなかうまくいかないわけです。

  ところが、“文明の第3ステージ”では...“この世/眼前するリアリティー”の、表と裏

の理論的統合であり...“存在と認識の深淵”における、“最も基本的なもの”に触れる、

統合となります...その困難さは、理解してほしいと思います...」

「はい...

  でも...“この世/リアリティー”というものは...まさに、私たちの目の前に、眼前

ているわけですよね。遠くにあるものでもなく、手の届かないものでもなく...あまりにも

近すぎて、それが分からないという...」

「そうです...禅における“悟り”の風景と、似た所があります...」

「はい...」

「まあ、犬や猫なら...」高杉は、微笑を浮かべた。「こんなことを考えるという、苦労もな

いわけです...しかし、“人間は考える葦(あし)である”(パスカルの言葉)と言いますからね、」

「塾長...“物の領域”“心の領域”統合とは...そもそも、どんな風景になのでしょ

うか?」

「それは、まさに、眼前している光景です...しかし、学問的に説明するとなると、非常に

難しいですね..まあ、1つ、具体例を考えてみましょうか...」

「はい、」

 

新しい人間像 ・・・・・>

                 

「ええ...」高杉は、モニターのタスク・バーのアイコンをクリックした。「具体例として、“新

しい人間像”というものを、考えてみましょう...1つの、飛躍のための考察です...」

「はい...」

科学的パラダイムにおける、人間とは...

  人体・生物体として...医学的・生物学的・解剖学的に、解明が進められてきたわけ

です...そこに、心理学や、サイコセラピー(精神療法)が、わずかながら、手探りで始まって

来ています...科学的手法においてですね...これからは、それに“心の領域”が統合

され、“新しい人間像”が模索されて行くことになります...」

「はい...」支折が、体を乗り出した。

“霊性”や、“心の領域”は、これまで私たちのごく身近に存在しながらも、科学的なアプ

ローチを拒み続けてきたものです。神秘主義などとも言われ、非常に科学的アプローチ

困難な領域です。その試みは、非科学的とされ、退けられてきたわけですね...

  精神科学が萌芽してきたのは、ごく近代になってからのことです。私は詳しいわけでは

ありませんが...行動主義心理学”や、精神分析学”人間性心理学”、そして“トラ

ンスパーソナル心理学”などがありますね...」

フロイトや、ユングなどの心理学ですね、」

「彼等は、精神分析学です。ユングは、もともとフロイトの弟子です。精神分析学体系を

拡大して、前進させた人物ですね、」

「はい、」

 

「まず...“新しい人間像”に関連した、【私の生命観】を述べてみましょう...実は、こ

れは私の進めている...思考実験のうちの1つ、です...」

「はい、お願いします...」

「ええ...これまでも、しばしば言ってきていることですが...

  人体の、60兆個に及ぶ膨大な数量の細胞の...統合調整は...そもそも、並列コン

ピューターのような、デジタル的処理では不可能です。これは、誰もが認めるところだと思

います。処理が膨大となり、スーパー・コンピューターがいくらあったとしても、不足してし

まいます...

  またそれが、人体何処に存在しているかということも、問題です...“心”が、何所

にあるかも問題なうえに、スーパー・コンピューターが何所にあるかとなると、さあ、ますま

す分らなくなってしまいます...

  そもそも、のような小さな生物でさえも、飛行能力を持ち、鋭敏なセンサーを備え、

断能力を持ち、さらに喧嘩をしているような感情も、何故か伝わって来ます。私はよく、刺

しあい、叩きあいの、チャンバラをしています。一体、あの小さな体の蚊に、何処にスー

パー・コンピューターがあるというのでしょうか。“本能”とは、よく言われる言葉ですが、そ

の一言で一件落着したのでは、解明にはなりません...

  そこで、私は以前から、そうした生命現象を統合調整しているものは、無意識も含めた

“意識”ではないかと提唱してきました...“意識”の持つ、コンピューター的能力ではな

く...その情報ネットワークによる生命の全体性...その全体性から来る処理能力の方

に、カギがあるのではないかと考えています。

  リンク・階層性から来る、関係性の処理能力が考えられます。それが、生態系食物

連鎖であり、淘汰圧力であり、恒常性/ホメオスタシスをも、統括しているのかも知れま

せん。別の言い方をすれば、“意識”通信能力であり、その全体性の波及です。

  膨大な種類昆虫や、何百万種・何千万種という生命の階層性も...それは生態系

にとっては、人体における細胞のような関係なのかも知れません。またそれは、1個の人

の中で起こっていることと、非常に似ているのかも知れません...

  そして、そうしたものを統括しているのは、まさに“意識”ではないかと、私は考えてい

るわけです。そして、その全てを統括しているのは、最上位“36億年の彼”いう人格

す...こうした考えは、【新しい生命観】かも知れません。“36億年の彼”のページを、

《ニューパラダイム仮説》として副題を付けているのは、このためです...

  ええ...ともかく、こうした自然界における、広域レベル・上位レベルの情報系の解明

が、“文明の第3ステージ/意識・情報革命”では、本格化していくものと考えています、」

「うーん...」支折が、うなづいた。

 

「話が複雑になり...前後してしまいますが、話を戻しましょう...」

「はい、」

“意識を持つ”こと...」高杉が、言った。「それが...生物と、無生物の違いだろうと、

私は考えています...

  単に、思念エネルギーがとりついたり、宿るのではなく...“意識を生み出し得る”

“そうした全体性とリンクしている”ということが、生命体特徴の1つと...私は考えて

います...」

「うーん...」支折が言った。「何かが宿るというのは、ありますよね...“お守り”なんか

でも、そうですけど、」

「そうですね...ま、そうした話は、話がややこしくなるので、また別の機会にしましょう」

「はい、」

「ともかく...生物体は、よく言われているように、3つの特徴があります....

  “呼吸・新陳代謝”することと、“再生・自己修復能力”があること、そして、“コピー・自

己増殖能力”があることです。そして、その全てを統括している、4つ目の特徴“意識”

です。それは、“36億年の彼”とも一体化している、情報ネットワークを形成している、と

私は考えています...」

地球の全生命は、“1つに繋がっている”ということでしょうか?」

「そういう側面も持ちます...

  時間的にも、空間的にも、全てが繋がっている1つの全体です。例えば、1本の木のよ

うな全体です...1個1個の生命体は、そののようなものかも知れません。すさまじい

速度で毎年新陳代謝して行きます。しかし、木そのものは、死ぬわけではありません。ま

た、全てが繋がっているという意味では、人間も、も、全て平等な生命体です...」

「はい...」

「そうした世界が...

  “この世/リアリティー”という、“認識形式のストーリイ性”と、どのように公式化されて

いるのかということが...“意識・情報革命時代”では、解明されて行くものと考えるわけ

です...」

「うーん...意識こそが...“この世”の、最も基本的なものですよね...それと、生命

とは、関係があるのかしら...」

重要なポイントだと思います...生命こそが...そして“私という認識形式/主体性の

発現”こそが、最大の謎なのです...ともかく、話しを進めましょう...」

「はい、」

         

 

生命の最小単位は...」高杉が言った。「細胞と言われますが...

  もちろん、細胞はそのすべてを備えています。4つ目の特徴とカウントする所の“意識”

も...細胞には、明らかにあるように観測されています...単細胞細菌でも、人が気

にかけて、いつも見ている細菌は、元気がいと聞いたことがあります...

  そして、人体においても...60兆個の細胞の持つ情報ネットワークは、膨大なもの

のでしょう。まさに、その情報力階層的・多重性のネットワークが、60兆個の細胞で発

揮されているのではないでしょうか...」

「はい...」

「そうした...全細胞を統括していると思われる、私たちのボンヤリとした意識は...

位レベル種の共同意識体と、明らかにリンクしていると思われます...

  まず、雌雄の関係性があり...種としての生き残り戦略もあります...また、食物連

の中で、生態系ともリンクし...相克を展開し...さらに最上位“36億年の彼”

リンクし、全体として1つと、私は考えています...」

「はい...それが、リアリティーとも重なりますね...」

「そうです...したがって、“新しい人間像”というものは...

  “リアリティーの布に織り込まれた花模様”のように、全関係性の中で存在しているので

しょう...私たちが“睡眠”をとるのは、まさにそうした広域レベル・上位レベルとの、情報

ネットワークに関係したタスク領域と、リンクしていると考えています...

  そうした、自然情報系濃密なネットワークというものが存在し...“文明の第3ステ

ージ”が本格化する22世紀には、その一端が見えてくるのかも知れません...想像を絶

した、“新しい文明のステージ”本格化することになります...」

「はい...ものすごいものが、そこには、あるということですね...」

生命潮流の...真の姿の一端が、垣間見えてくるのかも知れません...

  まあ...私の“こうした考え方”が、正しいのかどうかは分りません。ともかく...“意

識・情報革命の時代”には、こうした未踏領域への切り込みが、開始されて行くものと思

われます。人類文明が、大自然へ回帰し、停滞していくだけではないのです。人間の好

奇心は、尽きることがありません...」

「うーん...」支折が、髪を揺らした。「もう少し、お聞きしたいのですが...“布に織り込

まれた花模様のような人間像”とは...どのようなものなのでしょうか?」

「そうですねえ...

  例えば...そうした“新しい人間像”というのは...“リアリティーに織り込まれた布模

様”のように、そうした関係性の中で表現されていくのかも知れないということです...

“孤立した機械のような人間像”ではなくて...」

「うーん...」

“この世”という...壮大な宇宙意識の布に...縦糸横糸時間軸で織れこまれてい

る...“草原の花のように描かれている人間像”です...

  また、その関係性の糸によって、ストーリイ性に対して、それぞれ固有の変動指数や、

固有の安定指数を持って、人々が、歴史を推し進めて行く、ということでしょうか...」

「ふーん...」支折が、口に手を当てた。

「私たちは...

  そのようなリアリティー永遠性に...しっかりと織り込まれた存在という側面を持ちま

す。そうした中を、有機物無機物エネルギーが流れ...認識意識が通り過

ぎて行きます...

  本来、そこに客観的な意味というものは存在しなく...草原の草花そのものが、それ

主観的に認識し...そして、その中で、それ自身が枯れて行く...そういう事なのかも

知れません...しかし、一点を押せば、それが全体に響く布模様でもある、ということで

す...」

「うーん...うーん...」支折が、体を揺らした。「私たちは...そのような存在なのかし

ら...」

「さて、実際は、どうでしょうか...想像性を広げるために、私は、1つの可能性を示した

までです...

  “文明の第3ステージ”が本格化していけば...“新しい人間像”というものが、そのよ

うに認識されるのかも知れないということです...“意識・情報革命の時代”というのは、

それほどの、意識の変革があるだろうということです...」

「はい...」支折が、うなづいた。

人類は、“言語的・亜空間”に、壮大な人類文明の構築して来ました...そして、今後

は、医療様々なセラピー(薬品や手術を用いない治療)なども...そうした“新しい人間像”をもと

に...改めて再構成されて行くのかも知れません...」

人間意識の面でも、大変革があるということですね、」

「そうです...

  私は、そういうことだと思っています...まあ、どんなものになるかは、想像を絶してい

ますね。そして、それが本格化するのは、“大艱難の時代”を越えた、22世紀に入って

からだろうということです...」

「はい...」

  〔2〕 技術革新ベクトル・・・ index.1102.1.jpg (3137 バイト) 

          wpe4F.jpg (12230 バイト)

 

  外は、いつの間にか大雨の様相になって来ていた。それに加え、滝のような雨が、ザ

ーッ、ザーッ、と新築ビルの窓に吹き付けて来る。草原は雨に霞み、台風のような荒れ模

様になって来ていた。外の騒音が、頑丈なビルの内部にも伝わって来る。

  江里香が、部屋の明かりをつけた。

「ええ...」支折が、声を大きくして窓の方を見た。「とにかく...すごい雨ですね...」

「うーん...、」夏美も、窓の方を見た。「最近の雨は、ものすごいですわ。洪水になるん

じゃないかしら...」

「東の方の小川ですね...」関が、雨糸に霞む草原を、肩越しに振り返った。「ヤマメは、

大丈夫かな...」

「洪水でも、ヤマメは大丈夫でしょう」津田が、ほくそ笑みながら言った。

「ヤマメも大変でしょう」

「そりゃ、そうだ...」

「あの、」江里香が、言った。「《危機管理センター》を、映してみましょうか?」

「うむ、」津田がうなずいた。「そうしてくれ」

「はい!」」江里香が素早く動いた。

  インフォメーション・スクリーンへ行き、そこのコンソールで、《危機管理センター》の様

子を映し出した。響子と、アンと、それから、椅子にかけているバイオハザード担当の夏

川清一の背中が見えた。

  センターのメイン・スクリーンは、4分割されていた。ヘッドラインに、赤い警報ランプが

点灯している。右上の画像が、気象情報になっていた。関東地方に、大雨洪水警報が多

発している。

  響子が、こちらの操作に気付いた。

「先ほど...」と、響子の声が聞こえて来た。「大雨洪水警報がでました...」

「はい!」江里香が答えた。

  江里香が、画像をセンターのメイン・スクリーンに切り替えた。さらに、気象情報の画像

を選択し、拡大した。その画像を、室内の壁面の大スクリーンに転送した。大雨洪水警報

の赤いドットが、西から関東平野にかかっている。スポットで、非常に強い雨領域が表示

されていた。

「さあ...」津田が言った。「続きを始めよう」

「はい!」支折が、椅子を回転させた。「それでは、始めます...」

 

                                               wpe44.jpg (7720 バイト)

<高杉・塾長・・・に聞く>

              wpe4F.jpg (12230 バイト)

「ええと...」支折が言った。「次に...

  〔人間の巣〕における、“技術革新の動向”ですが...これも、まず、高杉・塾長からお

聞きしましょうか、」

「はい...」高杉が、ゆっくりとうなづいた。

技術革新というものの、ベクトル/力と方向は...“文明の折り返し”...人間の

巣〕では...果たして、どのようになっているかということです...

  現在の文明スタイルは...“開発型/発達型”ベクトル上にあります...また、“欲

望達成型”...“経済至上主義のパラダイム”上です...人間の巣のパラダイム〕

基本的には、これとは異なって来ると思います...

  でも、塾長...社会維持するするには、前進することが必要ですよね、」

「そうですね...」高杉が、マウスに手をかけた。「しかし、現在のように、常に“猛ダッシ

ュ”したり、“終わりのないマラソン”を継続していることはないでしょう...私たちは、生態

からの、淘汰圧力を抜け出しているのです。また、そのためにこそ、文明社会を形成

ているのです。

  人類は、豊かに生きて行くための、実力英知を、すでに十分に備えている知的生命

です。無駄に、人間社会の中で、生存競争をする必要はないのです...つまり、“覇

権”のための争いは、“本来・不要”なものだと言うことです...これが、非常に重要な点

です。それさえ無くなれば、〔極楽浄土〕を実現できるのです...」

「はい、」

「これは...

  現在、“唯一の覇権国家”となっている、アメリカに特に言いたいですね。そして、核兵

を保有し、“新たな覇権競争の枠組み”を形成しようとしている、中国に、強く言いたい

と思います。

  そして、こうした動きに追随している、日本もまた、まさに“文明の折り返し”で、キース

トーン/要石の位置にいます...日本の動向が、まさにキャスティングボード(決裁投票)

握っているからです...」

「はい...

「まあ...こうしたことは、軍事》の大川慶三郎さんや、 My Weekly Journal》の津

田・編集長の担当分野ですが...」

「はい...」支折は、ひときわ大きな突風の音で、窓の方を見上げた。「ともかく...そう

した無益な争い事をしなくても...人類文明は、平和に豊かに楽に、暮らして行ける

と言うことですね。

  特に今は、“地球温暖化”で、“覇権競争”なんかを、やっている時ではないですね。

界のリーダーは、人類文明“舵取り”を、十分に自覚してほしいですね。今なお、“覇権

競争”をしているのは、あまりにも幼稚ですわ」

「その通りです...

  “覇権競争”などは、必要のないものです。核兵器も同様です。世界のリーダーは、しっ

かりと“舵取り”を切って欲しいと思います」

「はい!」

“物の領域”の時代から・・・“心の領域”の時代へ、】  

  “物質・エネルギー”のステージから・・・“意識・情報”のステージへ  

             wpe44.jpg (7720 バイト)      wpe4F.jpg (12230 バイト) 

「周囲の...」高杉が、言った。「動物や、昆虫や、植物...生態系全体の姿を見れば、

おのずと分ると思います...私たちは、再び、そうした“生態系と協調した文明スタイル”

へ、回帰して行かなければなりません...

  のどかな昔に帰るということです...難しいことではありません...手本となるもの

は、過去の歴史の中に存在しています...それらを学び、知的生命体として、謙虚な、

未来社会を建設していくことです...ともかく、(むさぼ)ということは、良くありません」

「はい、」

脱・競争社会...スローフード・スローライフ...自然との共生は...響子さんが言っ

たといわれる...【存在の覚醒】であり...いわば【命の賛歌】スタイルでしょう。お

のずと、“欲望達成型”/“経済至上主義”とは、価値観が異なってきます」

「そうですね、」

21世紀が...

  “文明の第2ステージ/...物の領域の時代”から、“文明の第3ステージ/...心の

領域の時代”へシフトしていくのと...まさにシンクロナイズ(同時に動く)しているのではない

でしょうか...」

「はい...」支折がうなづいた。「20世紀/“物質・エネルギーの時代”から...21世紀

“意識・情報の時代”へ、ということですね...意識・情報革命の時代”ということです

よね...」

「そうです」

「ええ、それから...

  【命の賛歌】ですか...いい言葉ですね。これも、カウントしておきますわ。【存在の

覚醒】...そして、【命の賛歌】スタイルということですね...」

  支折は、その言葉を、キイボードでメモした。

“文明の折り返し”では...」高杉が言った。「そうした、【人間性の回復】が、至上命

となると思われます...そうした、はるかな高みから、“欲望の原理”で汚された文明

のステージを、浄化して行かなければなりません...」

「あ...【人間性の回復】も、いい標語ですね...カウントしておきます...」

  支折は、キイボードで打ち込んだ。

「こうした浄化は...」高杉が、支折の手元を見ながら言った。「“経済原理/覇権主義”

延長線上では、解決のできないものです」

“欲望の原理/経済原理”の...

  まさに、大暴走の結果ですね...原理そのものが活動の目的化して、必要以上の経

済活動をして...それが、人々社会のためになっていないということですね。むしろ、

社会秩序や、世界秩序を、混乱させているということですね、」

「そうですね...

  その典型的なものが、巨大投機マネーでしょう。それが、社会秩序世界経済混乱

させ、貧困飢餓を招いています。つまり...資本の暴走...資本主義の暴走なので

す...」

「はい...」支折が、顔を上げ、髪を揺らした。

「珍しく、経済の話になってしまいましたねえ...

  経済は、専門ではないので、あまり首を突っ込みたくはないのですがね、」

「はい...」支折が、微笑した。「でも、そうした巨大な投機マネーほどでなくても...

本主義には、少なからず、そうした傾向はあると言うことでしょうか?」

「そうです...大いにありますね...

  資本の蓄積も、間違ったものではなかったでしょう...私は、それまで否定するつもり

はありません。時代的な役割を、立派に果たしてきたと思っています。ただ、それが、ここ

に来て、大暴走をはじめたことが、まさに大問題なのです」

「はい、」

“純粋な資本”というものには...そもそも、人間社会に必要な、“倫理性が欠如”して

いたということです。かつてはあったのですが、還元主義的・機械主義進展で、それが

失われて行ったということです。社会に、人の心が失われて行ったのと同期しています。

  こうした矛盾が...いま介護保険で問題となっている、“コムスン”のような、倫理観の

欠如した会社を作ってしまったのでしょう...“ライブドア”“村上ファンド”の事件も同様

だと思います。

  まあ、経済に関しては、あまり詳しい事は分らないので、これ以上の言及は避けること

にしましょう...彼らもまた、時代が生み出してしまったものなのでしょう...」

「あまりにも、ドライだということですね...」

「それに、法律も犯していました」

「はい...

  いわゆる“悪銭”も...お金に色が付いていないということですね...悪事で儲けたお

金も、マネーロンダリング(資金洗浄)してしまえば、それが経済原理に乗ってしまうことが問

題ですよね...だから、犯罪が増えてしまうわけでしょうか?」

「そうですねえ...

  犯罪学はともかく...資本主義血液である、資本・資金に、本質的に“倫理性は不

要”だったということでしょう。それが、資本主義社会の限界を作ってしまったのかも知れ

ません。

  そうしたものが、“富の寡占化”を招き、“人為的な貧困”を作り出し...差別を生み、

人類文明の社会に、暗い影を作って来たことは確かです...」

「はい...」

文明の第3ステージ”では、これは、修正していかなければなりません...

  本来、“社会システムが生み出した果実”は、公平に再配分されるべきものです。一部

の人たちが、独占していいわけがありません。“資本のシステム”は、修正されなければ

なりません...

  まあ、そうした価値観というものは、それぞれの〔人間の巣〕が、独自にデザインして

いけばいいことですが、現在のグローバル化の状況は、いずれにしても、行き過ぎでしょ

う。地球が壊れてしまいます...」

「そうですね...

  塾長...現在、日本では、教育・社会福祉・経済格差等が、矛盾が限界に達していま

す。私たちは、その究極的・解決も、〔人間の巣〕の展開によって、根本解決できるものと

考えているのですが...」

「はい...目先の言い分けではなく、根本解決となると、〔人間の巣〕の展開が必要だと

思います。

  現在、日本が抱えている複雑な社会問題は、〔人間の巣のパラダイム〕で...アイデ

ンティティーの強い社会単位の形成で、完全保証できるでしょう...〔高機能・半地下都

市空間/人間の巣〕では、その全てを保証しても、十分にお釣りが来る“高度な安定

社会”だからです...」

「だから...〔極楽浄土〕が、視野に入ってくるわけですね?」

「そうです」

 

「ええ、次に、塾長...

  ドイツにおける、2007年サミット/先進国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)では、“地球温

暖化”がテーマになりましたが...今後世界は、〔人間の巣のパラダイム〕の方向へ動

いて行くのでしょうか...」

「基本的には、“その方向/文明形態をシフトしていく方向”へ動いて行くと思います...

  2050年に、CO排出量を半減させるということですが...それで十分かどうかは

ともかく、それを実現させるのは、容易なことではありません。“省エネ”を進めるぐらいで

は、どうにもなりません。“脱エネ”を進めなくてはならないでしょう。“文明の折り返し”

必要になって来ます。それには、〔人間の巣のパラダイム〕が必要なのです...」

「はい、」

「ともかく...資本主義経済による世界支配は、終息に向かうと考えます...

  経済のグローバル化は、まさに醜態というべきでしょう...経済学を学んできた経済

学者は、経済原理から脱皮することができません...また、商業主義で、最前線で戦っ

ている人々は、その戦いの手を緩めるわけにはいかないのでしょう...」

「そうですね、」

「が...しかし...

  “地球温暖化”で、明確に、グローバル化の限界が迫ってきています。では、どうすれ

ばいいかというと...まず世界貿易の姿を、100年前200年前の姿に、戻すべきだと

いうことです... “反・グローバル化/文明の折り返し”です...それしか、人類文明

が生き残っていく道はありません...」

「この状況に、覚醒しているのは...日本では、“負け組”ということでしょうか?」

「身にしみて、それが分かっているのは、いわゆる、“負け組”なのでしょう」

「はい、」

「したがって、この“サイレント・マジョリティー(声なき多数)が、日本を動かしていく原動力

と考えています...この人たちが、声を上げて行くことが、“文明の舵を切って行く”こと

にもなると、考えています...

  “日本の若者”が、かつての学生運動のように、その中核になって欲しいと思っていま

すね。いずれ、自分たちの時代がやってくるわけです。真剣に取り組んでほしいと思いま

す」

「はい!」支折が、コクリとうなづいた。

 

技術革新ベクトルは・・・・・      wpe44.jpg (7720 バイト)

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「ええ...」支折が言った。「話が、ずいぶんとそれてしまいましたが...“技術革新のベ

クトル”ということに、話を戻したいと思います」

「ああ、そうですね...」高杉は、モニターをのぞきこんだ。「技術革新は...

  “経済原理による技術革新”という...これまでのような、スピード感/ダイナミックなも

のではなくなると思います。価値観も、評価スケールも、非常に多様になるからです...

経済原理による、一元的価値観/一元的支配ではなくなるからです。

  例えば...存在の覚醒〕スタイルをとっている人々にとっては...技術革新は、

必ずしも、それを必要としてはいません。たとえは、“アーミッシュ”のような人たちには、

自動車携帯電話技術革新など、全く関係のないものなのです...おそらく、大多数

の人々にとって、そんな感覚になっているのではないでしょうか...」

「はい...」支折が、作業テーブルの上で、手を握った。「豊かな、“自給自足社会”があ

るわけですよね...新しい技術は、いらないわけですね...」

「まあ、そうは言っても...

  新たな事態は、次々と降って湧いてくるものです。実際には、そのための監視対策

必要です。しかし、人間の巣〕そのものが、非常に安定した千年都市です。食糧を備蓄

し、幾つかの人間の巣〕連携していれば、“気候変動”があっても、心配はありませ

ん。それなりに、対処していけると思います...」

「はい...あ、塾長、脱線しないようにお願いします」

「そうですね...」高杉が、うなづいた。「くり返しになりますが...

  私たちは、そうした社会での価値観の1つとして...存在の覚醒〕という、超越的

意識パラダイム”を提示しているわけです。そうした社会風景中では、これまでの常識

となってきた、“便利・早い・快適”という価値観は、相対的に比重が下がりますね...」

「つまり...」支折が言った。「技術開発/技術革新というもののベクトルが、小さくなると

いうことですね。人間生活重視型になるわけですね、」

「そうです...

  そうした社会では、人間は存在の覚醒〕価値を置き...生態系に溶け込んで生活

しています。例えば...人間には、“死”というものが、必ず訪れるわけですが、そうした

課題でも...“自然死”を受け入れる人々も、増えてくるということでしょう」

「うーん...すると、医療での技術革新も、そうなるのでしょうか?」

「そうですね...行き過ぎた医療技術ということが、問題になると思います...

  こうした人間的な価値観に目覚めると、人間的修行というものは求めても、技術革新

方は、必ずしも必要としないわけです...例えば、経済原理での付加価値の高い、臓器

移植を求めるのではなく...人間的に、自然に生きるという選択肢もあるわけです...

  いずれにしろ、価値観多様になります。先ほど説明した、“新しい人間像”というよう

なものも、当然、そうした生き方というものに、関係してくるものと思います...」

「うーん...自然のままに生きて行くということですね...“アーミッシュ”のように...」

「そういう傾向は、強く出てくると思います...

  せせこましく、“追い詰められて迎える死”ではなく...大自然の中で迎える、“大いな

る死”です...“大きな喜び”と、“大きな悲しみ”と、“大きな感動”の中で迎える、命の終

です」

「はい、」

「つまり、そうした社会では...

  技術革新の、価値・評価というものは...“文明の余力/好奇心の対象”としての

にとどまります。そうした意味で、技術はより純粋に進化していくのかも知れません。

済原理/欲望の原理/人間的洗練という推進力は...ベクトルが小さくなります。実利

よりも、知的好奇心・追求型になります。

  現状では、天文学がそれに最も近いでしょうか...現在でも、様々な天体観測技術

太陽系探査技術は、知的好奇心・追求型です。実利的な側面は、ほとんどありません。く

だけた言い方をすれば、儲(もう)からない、純粋な学問ということです...」

「はい、」

天文学に関して、1つ、直接的な実利があるとすれば...地球近傍天体の監視でしょう

か...小惑星彗星地球に衝突した場合、大災害になりますね。そうした太陽系内

無数の小天体を監視し、リスクを回避することは、今後、人類文明重要なミッション

発展していくでしょう...それが、実は、文明種族の実力になるわけです...」

「ふーん...他でも、そんなことになるのかしら、」

「そうですね...そうしたスタンスになると思います...

  洗練された機能美や...小型化というものは...推進力が落ちると思います。しか

し、だからと言って、それが社会にとってマイナスというわけではありません...大量生

産・大量消費/新製品という、一般化したスタイルがなくなり、“個性的な自分の持ち物”

が、貴重になるのではないでしょうか...かつて、そういう時代はあったわけです...」

「はい...個人的な、持ち物道具というものに、非常に愛着をもった時代ですね、」

「そうです...

  かつて、文明の第2ステージ/パワー表示のステージ”に変わり...大量生産・大量

消費の時代になり、そうしたものが次第に失われて来たわけですね...そして、“文明

の第3ステージ”では、孤立的な多様な価値観の中で、再び“個性的な自分の持ち物”

が、貴重になるのではないでしょうか...

  そうした過程で、古くなった価値観は、必然的に捨てられていくことになります...」

「はい、」

“生態系と協調”していくためには、それなりに、失うものはあるということですね、」

「そうです...

  したがって、科学技術に関しても、技術革新加速度は落ちると思います。しかし、

間の好奇心というものもまた、尽きることはないでしょう。全ては、文明のグランドデザイン

の中で行われて行くでしょう。ともかく、あえて急ぐこともない...多様な価値観の世界

なると思います」

「はい!」

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   【人間性の回復・・・】 【命の賛歌・・・】 存在の覚醒・・・〕  

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「野山を跋渉(ばっしょう)していると...」高杉は、ニッコリと笑って言った。「草むらや、藪の

中に...素晴らしい宝物が、ひっそりとをつけていることがあります。また、美しい花

が、静かに咲き誇っていることがあります...

  そうした人間的な感動というものが、人間社会でも、再び取り戻すことができるでしょ

う。グローバル化や、経済至上主義の中で、すっかり色あせてしまっていたものです。

かな人間的な感情です。失われるものがある反面、蘇って来るものがあるわけです」

「そうですね!

  その一方で、同じ好奇心もつ人たちが集まって、そうした多様な価値観をもつ、特殊

人間の巣〕が形成されて行くのかも知れませんね。学問都市や、芸術都市のような、」

「そうです、」高杉が、うなづいた。「文明全体を、グランドデザインし、演出していくというこ

とも必要です...

  それが、“世界政府/地球政府”の仕事になるでしょう。全体を、ゆるく管理・調整し、

紛争を回避し、必要なものを供給し、大災害に陥った所などを援助します。しかし、過保

過干渉にならない程度にします。その一環として、そうした〔特異的な人間の巣〕

を、文明の余力で支えて行く...そういう姿になると思います...

  そして、その成果が、社会へ還元されて行くという形がいいですね。それが、天文学

ようなものなら、純粋な学問となりますし...材料科学なら、〔人間の巣〕を強化できるで

しょう。また、医学生物学ならば、私たちの生活や、生命の謎に迫ることができます。

  競争社会ではないわけですから、それぞれ“自分の好きな一生”を送ればいいわけで

す。取り立てて急ぐ必要はありません。基本的には、響子さんの言うように、“静かに参加

しているスタイル”がいいでしょう...存在の覚醒〕とは、確かに正鵠を射た言葉でしょ

う」

「はい...

  存在の覚醒〕と...塾長の言われた【命の賛歌】と、【人間性の回復】ですね...

うーん...順序が逆の気もしますが...現在、この3つの標語を、〔人間の巣〕価値

観を象徴しる言葉として、カウントしておきます...」

「まあ、それは支折さんに任せましょう」

「はい...逆に並べると、【人間性の回復】【命の賛歌】存在の覚醒〕ですね...」

「なるほど...支折さんは、こういうことがうまいですね」

「私は、」支折は、顎に手を当て、首をかしげて見せた。「本来は、《文芸》・担当ですわ」

「そうでした...」高杉が、顔をなごませた。「こちらの方が忙しくて、《文芸》の方は疎遠

になっていますね。申し訳なく思っています」

「仕方がありませんわ。まさに、激動の時代ですから、」

「そうですね...」高杉が、頭を下げた。

 

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「ええと、塾長...

  塾長には、あまりお聞きする機会がないので、今回はずいぶんと聞いてしまいました

が...それで、活気のない停滞社会..ということには、ならないのでしょうか?」

「まあ、その心配はありません...

  好きなことをしているわけです。その中から、活気秩序も、自然発生的に形成されま

す。私たちは、昭和初期モデルとしていますが...昭和の時代や、江戸時代や、明治

時代は、活気のない社会だったのでしょうか。

  現代と比べれば、日常生活におけるダイナミックさはありませんが、全てがゆっくりと、

豊かに流れていたと思います。私たちは、そうした時代への回帰を求めているわけです。

そして、【人間性の回復】【命の賛歌】存在の覚醒〕となるわけでしょう...それ

が、新しいステージの、文明スタイルということになります」

「はい...

  それぞれに、独立性の高い、アイデンティティーの強い〔人間の巣〕では、自給自足型

の、安定した、楽な生活ができるということですね。そうした意味では、労働の意味も、

要な要素になりますが、」

「そうですね...

  動力機械を使うのではなく、人間的な労働がいいでしょう...どの程度が良いかという

ことが、1つの社会テーマになりますが...まあ、それはそれぞれの〔人間の巣〕で、

自にデザインすればいいでしょう」

“アーミッシュ”は、テレビ電話自動車も使わないようですが、貴重な参考になると思

いますわ」

「そうですね。大いに、参考にできるわけです...

  まあ...私たちも、自給自足農作業ということでは、昭和初期の、のどかな田園風景

を描いています。テクノロジーと、労働をミックスした、非常に面白い社会風景になると思

います...」

「そうした、労働の形態を演出していくのも、それぞれの〔人間の巣〕が、独自にデザイン

して行くわけですね...競争社会ではないわけですし、安定した〔千年都市/人間の

巣〕があるわけですから...そうした、余裕遊びのある社会が演出できますわ」

「そして、そうした社会を支えるのは、しっかりとした“慣習法”ということですね...

  かつて、そうした豊かな文化を、それこそ世界中の社会が、それぞれに持っていたわ

けです。ただ、そこに暗雲が立ち込めて行ったのは、戦争があったからです。そこに、

間どうしの相克があったからです。〔人間の巣のパラダイム〕では、それを克服していく

必要があります。

  そのために...21世紀においては、世界政府/地球政府必須でしょう。人間

どうしの覇権争いがなければ...人類は、平和に豊かに、暮らしていけるのです」

「はい...そこで、〔極楽浄土/パラダイス〕が、視野に入ってくるのですね...

  〔安定した千年都市/人間の巣〕が展開されていれば、環境破壊もないですね...

森林を伐採し、住宅を作り続けることもないですね。そして、個人的なあらゆる福祉は、

〔人間の巣〕の単位で、完全保証できますね...ゆとりがあれば、それが出来ますよね」

「そうです...

  人類文明は、〔極楽浄土〕を実現する実力は、すでに十分にあったのです。それを、

“覇権競争”をすることにより...《人間原理空間ストーリイ》を、“戦争の歴史・人類救

済史ストーリイ”にして来てしまったのです...

  また、現在でも...そうしたの“覇権競争”を望んでいる国家や、企業や、人々が存在

しています...」

「はい...

  日本でも、“平和憲法”を変えてまでも、あえて“覇権競争”迷路へ入り込もうとしてい

る人たちがいますよね...民族主義を叫び、右傾化し...そうした対立構造の中で、

争のロマンを求める人たちが、いますよね...

  本当に、それを望んでいるのかは別として...全体として、おかしな方向へ流れて行

こうとしていますわ」

「うーむ...そうですねえ...

  しかし、その先にあるのは、《軍事》・担当の大川慶三郎の言う通り...核戦争の大

混乱でしょう。さらに、遺伝子兵器まで、使用されるかも知れません。遺伝子兵器が使わ

れれば、生態系がさらに大攪乱されてしまいます。そうなっては、地球生態系は二度と元

の姿には戻らないでしょう...

  それでなくても、すでに“地球温暖化”が待ち受けているわけです...“人口爆発”と、

“飢餓”が待ち受けているわけです...いずれにしても、文明史的な“大艱難の時代”

やってくるのわけです...」

「はい...本当に、どうしたらいいのでしょうか?」

「そうですねえ...

  理論研究員の、秋月茜さんが...“地球温暖化対策”<第2弾>で提唱しています

が...まず、《世界中の軍産複合体を昇華!》し、地球上から戦争の道具を一掃してし

まうことでしょう。それが、急務です...」

「はい!」

「もちろん...

  【クラスター爆弾の完全禁止条約】批准は、“平和憲法”を持つ日本としては、当然

の責務です。小さな“戦術”面での、“自分勝手な論理”を並べている時ではありません」

「はい!

  “クラスター爆弾”を、全部、地球上からなくしてしまうわけですから、そもそも、平等

わけですよね。自分だけが、不利だということではないのですわ...こんなことができな

くて、地球上から核兵器を無くしてしまうことなんか、できませんわ!」

「その通りです」

日本は、ここでも、キーストーン/要石の位置にいますよね、」

「まさに、その通りです」

「日本は...

  文明が、〔人間の巣〕を展開するか、“覇権競争”迷路へ突入するか、キーストーン

の位置にいるのですね。“日本の舵取り”が、本当に重要になって来たと思います...」

「そうですね...

  まあ...その上で、世界政府/地球政府を創設したいわけですが...それが、

実現したとしても...多分、様々な問題が起こって来るでしょう。かつての国際連盟や、

現在の国際連合のように...理想社会のほころびは、様々な形で起こります。

  したがって、それで終わりということではありませんしかし、それはまた、その時代の

人々の仕事だということでしょう」

「はい!」

「今、私たちが、この時代でやるべきことは...

  “文明の折り返し”遂行することです。そして、より高い“文明の第3ステージ”シフ

して行くことです...〔人間の巣〕/〔極楽浄土〕器を創出し、その社会基盤/文明

基盤を、次の世代に残していくことです...次の世代に、確かな遺産を残して行くことで

す。そして、それが、十分に可能だということです」

「はい!」支折が、うなづいた。

 

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「ええ、支折です。ありがとうございました...

  このページは、ここで終わります。長くなってしまったので、さらにページを改めることに

します。次のページは、《新パラダイムの提示と実践》です。どうぞ、ご期待下さい」

 

 

 

 

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