環境.資源.未来工学環境・生態系(高杉・海洋研究所)地球温暖化の考察

            地球温暖化の考察             index.1102.1.jpg (3137 バイト)


 
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 トップページHot SpotMenu最新のアップロード          担当 : 堀内 秀雄 / 高杉・海洋研究所  

      INDEX                         

プロローグ   2006. 8.25
No.1 〔1〕 加速するCOの現状 2006. 8.25
No.2      ≪質問を少し・・・・・≫ 2006. 8.25
No.3 〔2〕 5500万年前/暁新世/始新世/温暖化極大”の考察 2006. 8.25
No.4      ≪方策はある!≫ 2006. 8.25

  

      参考文献   日経サイエンス /2006 - 06   

                     海洋酸性化の脅威 S.C.ドニー  (ウッズホール海洋学研究所)                                  

 

    プロローグ       index.1102.1.jpg (3137 バイト) wpe3A.jpg (13810 バイト) 

「白石夏美です。暑い日が続いていますね...

  ここは、ここは、“高杉・海洋研究所”...“ビーチハウス”です...今日も朝か

ら晴れ上がり、水平線に入道雲が沸き立っています。私たちは、早朝の海水浴を終

え、ベランダで朝食をとりました。ポンちゃんは、まだ薄暗いうちから、釣りに出かけて

います。今日は、何を釣って来るでしょうか...

  ええ...このページは、前回の“海洋の激変”の、続編となります...長くなり、

かつ重要なテーマですので、分割しました。新しいページを立ち上げ、2日間の作業

になりました。それで、より理解しやすくしたつもりです...どうぞ、よろしく...」

 

  夏美は、今日は肩がリボン結びになった、淡い黄色のワンピースを着ていた。日が

昇ると、今日もジリジリと暑くなって来た...夏美は、ガーゼのハンカチで、腕ににじ

んだ汗をおさえた。かすかな微風が、時々、テトラポッドを越え、砂浜を渡ってやって

来る...が、まだ秋の気配はなかった。

  これなら、崖上の研究所の方が、よほど涼しいと夏美は思った。しかし、今日は場

所をかえ、ビーチハウスにしようと主張したのは、彼女自身だった。

  うーん、失敗ね...夏美は思った...せめて、昨日ほどの、海風があればいいの

に...でも、それも、仕方がないわねえ...

  夏美は、角氷をたっぷりと入れて、オレンジジュースを作って飲んだ。そうやって、

磯場の研究施設を見回りに行った、高杉と堀内が帰って来るのを待った。釣りに行っ

たポンちゃんも、そろそろ帰って来る時間だ。ポンちゃんは、べつに当てにはしていな

かったが、やはりいてくれた方が良かった...

〔1〕 加速するCOの現状   index.1102.1.jpg (3137 バイト)    

                        

  全員がそろうと、夏美はインターネット正面のカメラをスタートさせた。すぐにカウント

ダウンになり、ランプが“赤”、“黄”、“青”と変わった。

「ええ...いいかしら?」夏美が言った。「始めます...」

「はい」堀内が言った。

  高杉も、椅子を引いて、作業テーブルについた。

「ええと...≪地球温暖化の考察≫...ですね...まず、私の方でまとめたもの

を、レポートします... ええと、ポンちゃん、」

「おう、」ポン助が、壁面スクリーンの横で言った。 

「No.29を選択し、自動スクロールにして下さい」

「No.29...」ポン助が言い、コンソールのキーボードを叩いた。壁面スクリーンを

見上げた。「よし、自動スクロールにしたぞ、」

「はい、ご苦労様です」夏美が、唇を結び、うなづいた。「ええ...これは、シミュレー

ションのデータを、私がプレゼンテーション用に加工したものです...」

  夏美は、壁面スクリーンで動くモザイク画像を眺めた。多彩なグラフや画像が、ゆっ

くりと下へ流れて行く...モザイクの1つ1つも、ゆっくりと拡大し、再び元の位置へも

どって行く。スクリーン全体が、非常にゆっくりと、読みやすく流れていく...夏美は、小

さくうなづいた。

 

「ええ...」夏美が、壁面スクリーンを見ながら言った。「人類の“化石燃料の消費”

によって...“大気圏に放出したCOの総量”ですね...これは、炭素量に換算

して、次のような次のようになっています。膨大な量ですから、その絶対値よりも、

代による増加の変異を比較してください。

 

      1980年代には、年間/ 5.4 ± (プラス・マイナス) 0.3Gt(ギガトン/ギガは10の9乗)

1990年代には、年間/ 6.3 ± 0.4Gt (ギガトン)

    2000年代現在は、年間推定/Gt (ギガトン)

 

  このうち、海洋中の炭素濃度の変化などから、“海に吸収された総量”は、次のよ

うな数値です...

 

1980年代には、年間/ 1.9 ± 0.6Gt(ギガトン)

1990年代には年間/ 1.7 ± 0.5Gt(ギガトン)

 

  また、文明由来のCOの、“大気圏の残留量”や、“陸の植生による吸収量”

それから“海による吸収量”なども、分析されています...

 

大気圏に残留するCOは、全放出量の40%

陸の植生・森林に吸収されるCOは、放出量の30%

海・海洋性植物プランクトンに吸収されるCOは、放出量の30%

 

  ...と...このようになっています...」

人類文明によって...」堀内が、顎にコブシを当てながら言った。「大気中に放出さ

れたCO40%は...大気中にそのまま残留するということですね。そして、残り

はそれぞれ、海洋と、陸の植生によって吸収されます。

  現在の、人類文明由来CO循環の姿は、おおよそこのような姿です。ただ、こ

のバランスは、今後の“地球温暖化”によって変化して行きます。それは、後で説明し

ましょう...」

「はい...ええと、それから...大気中のCO濃度”は...

  

“産業革命”以前は...280ppm(/大気の0.028%)

“現在     は......380ppm(/大気の0.038%)

 

  ...堀内さん、この大気中の濃度変化は、どう読めばいいのでしょうか?」

「まあ...はっきり言って、微妙な数字です...

  人類文明由来のCO濃度の変化は、実際には、大自然のサイクルの中に、吸収

されてしまう程度のものです...そこが、難しい所です...

  仮に、地球全体で造山活動が激しくなれば、当然、火山性のCOが大量に大気圏

に放出されるわけです。そして、そうしたものの影響は、様々です...また、実際にそ

うした諸条件で、地球は温暖化寒冷化をくり返しているわけです。極端な温暖化もあ

り、“全球凍結”というような、極端な寒冷化もあるわけです」

「それで、色々なことを言う人がいるわけですね...人類の小さな努力などは、大噴

では、チャラになる程度のものだと、」

「そうですね...確かにそういうことはあります...」

「でも、それは間違っていると?」

「そうです!

  例えば、ゴミ問題/環境問題と似ていますね。ゴミも、自然のサイクルの中に吸収

されますし、浄化もされます。しかし、100年余りもたてば、エベレストの山頂付近

ら、日本海溝マリアナ海溝という深海底まで、人類のゴミが散らかっていると言い

ます。世界中の、こうしたゴミ・化学物質の汚染が、徐々に地球環境を蝕んでいるの

です...」

COも、同じだというわけですね。ゴミのように、蓄積すると、」

「そうです...

  火山性のCOは、元々自然界に存在するものです。しかし、文明由来のCOは、

そうしたものとは違うのです。文明活動の中で、日々・年々着実に蓄積していくCO

なのです...まさにゴミと同じですね...

  また、文明による物理的な生態系の破壊も...現在、私たちが感じているように、

生態系の風景を激変させています。かっては、そんなものは、気にするほどのことも

なかったのです。しかし、それが積み重なり、地球表面全体が、文明の爪痕だらけに

なってしまいました。

  そうしたことが、今度はCOであり、“地球温暖化”というわけです...目には見え

ない大気圏や、海洋、そして深海底を汚染し、壮大な“地球の炭素循環のサイクル”

狂わせ始めていると言うことです」

「はい...

  地球には、相当量の炭素/があるわけですね?それが、循環サイクルになって

いるわけですね?」

「そうです...“自然界の炭素循環のサイクル”...におけるやりとりは、次のよう

にな数値が公表されています。

 

大気圏との間で..... 年間/120Gt(ギガトン)

大気圏陸の植生との間で、年間/90Gt(ギガトン)

         “文明由来のCOに限っては

              大気圏との間で.....年間/2Gt(ギガトン)

              大気圏陸の植生との間で、年間/2Gt(ギガトン)

 

  ...まあ、文明が吐き出すCOの量は、自然界の循環に比べれば、およそ2桁も

小さいものです。しかし、文明が吐き出すCOは、年々蓄積して行くので、100年間

溜まれば、自然界で循環しているレベルに達するわけです...つまりゴミと同じです

ね。蓄積するわけです...

  それが、ちょうど、100年ぐらいの単位で進むというのも、現実の“地球温暖化/

海洋の酸性化”と、妙に符号します...

  ああ、ポン助君...その画像でストップしてくれ、」

「おう、」ポン助が、ホップアップした画像を、急いで止めた。

「ああ、ありがとう...ええと、これは...“陸と海の全炭素の存在量”の推計です

ね...

 

陸の炭素の存在量......約2000Gt(ギガトン)(植生500Gt、土壌1500Gt) 

海底・海中の炭素の存在量.約38000Gt(ギガトン) 

 

  ...まあ、非常に大雑把な見積りでしょう...」

「うーん...」夏美が、両手を腹の上で組んだ。「海の方が、一桁違いますね...そう

なんでしょうか?」

「そうです...まあ、面積容積も、まるで違いますからねえ...

  莫大な海洋性プランクトン...それに支えられた豊富な海洋生物...海底には

リン・スノーが大量に堆積しています...さらに、深海底下に眠る莫大な量のメタン

ハイドレートがありますし、石油天然ガスもあります...」

「はい...」

「それに、海底火山の熱水鉱床や、メタンハイドレートには、それぞれ“独立した地下

生物圏”が存在しているようですねえ...他にも、まだあるのかも知れませんが、そう

した全体量が、大雑把に推計された数字でしょう...」

「うーん...はい、」

「こうした、莫大な炭素の全体量の中で...年間/2Gt(ギガトン)素の移動を、そ

れぞれ陸と海で追跡するのは...相当に難しく、精妙な作業になります...

  “エルニーニョ(数年に1度、ペルー沖から中部太平洋赤道域にかけて、海面水温が平年に比べて、1〜2度高くな

る現象)のような気候変動に伴う年々の変動も、人類文明由来のCOの放出量に匹

敵すると言われます...常に、こうした中での、人類文明由来のCOの計測になる

わけです」

「そうですね...」

「前にも説明しましたが...

  人類文明由来のCOは、ほとんどが、石炭・石油・天然ガスといった化石燃料

占めています。特に産業革命・エネルギー革命以降は、工場や動力に使われるのは、

薪”“炭”ではなく、全てが火力の強い“石炭”に変わりました。そして、次に“石油”

“天然ガス”に替わってきたのです...

  したがって、人類文明由来のCOは、ほとんどが化石燃料と考えていいのです」

「はい」

「さて...化石燃料には、放射性・炭素同位体/C14が含まれていない(含まれていても、

ごくわずか)とか、安定・炭素同位体/C12、C13“比率”がどうとか言いますが...

人類文明由来のCOの足跡を、高精度で把握するのは、非常に難しい作業なので

す」

地球という、非常にダイナミックな生命圏...全容量を相手の作業...という感

じがしてきますね、」

「まさに、夏美さんの通りです...

  しかも、炭素の全体量から見れば、文明由来のCOは、ごくわずかです...そし

て、その40%が、温暖化ガスとして“大気圏に蓄積”されていくと言うことですね...

しかも、年々蓄積していきますし、地球生態系への影響は、COなどの温暖化ガス

だけではないわけです...それは、1つの要素でしかないと言うことです」

「はい、そうですね...」

“科学技術文明による生態系の破壊”“様々なレベルでの環境汚染”が、

乗効果として、ドッシリと加わってくるのです...くり返しになりますが、COだけを取

り上げて、“自然の変動幅に吸収される”と言っていられる段階は、とうに過ぎ去って

います。影響を、“トータルで評価”すると、まさに危機的状況なのです...」

「これは、食品の“残留農薬基準”と似ていますね...

  残留農薬基準”は、旧来の“ネガティブ・リスト制度”から、新制度の“ポジティブ・

リスト制度”に変更になりました。つまり、“個別規制”から、“総量規制”になったわけ

です。地球環境も同じと言うわけですね?」

「その通りです...

  まあ、開発・発展型の企業などが、“個別規制”にしがみ付いているのでしょう。し

かし、消費者が敏感な食品では、すでに新制度の“総量規制”になっているわけで

す。地球環境でも、当然“総量規制”でなければなりません...」

「はい」

「総合的に考えて...」高杉が口を開いた。「生態系“単調な風景”になっていく事

が、1つのバロメーターになっている気がします...自然の風景から受ける“感動”

いうものが、最近ではすっかりなくなって来ています...

  例えそれが、人の手による農作物であろうと...かってはそこに感動があったも

のです...そこに生命の“多様性”“意外性”“ミスマッチの感動”などという...

バイオリズムの側面が、ありありと見えたものです...それが、最近では、失われて

きていますね」

「うーむ...」堀内が、うなった。「そうですねえ...歌をうたっても...何というか、

空間に感動の反響がないですねえ...生命力が無いというか...」

「特に、日本では...という気がします、」高杉が言った。

「はい...」夏美が大きくうなづき、砂浜の向こうの水平線を眺めた。

「意識面での、感受性の問題もありますし、」高杉が言った。「文化の衰退の問題もあ

るでしょう...それほど単純な問題ではないかも知れませんが、日本では生態系か

ら受けるバイオリズムが、非常に低下してきているのを、感じます...」

「そういう意味で、」堀内が、言った。「地球生態系は、非常に重傷だと思いますね。

“絶滅”した生物種が、異常に増加していることでも、それは分ると思います。“絶滅・

危惧種”も、増加しています」

「それが、“人間に近い種”になって来ると、」夏美が、言った。「“人類も危ない”わけ

ですね」

「そうです、」高杉が、うなづいた。「また、人間社会の身近な動物が消えて行くようだ

と、環境への、1つの警告になるでしょう...

  例えば、ホタルだとか、ドジョウだとか、トンボもそうです...オタマジャクシもそ

うですね。都会ではこうしたものが、すっかりいなくなってしまいました」

「はい、」

   ≪ 質問を、少し・・・・・ ≫      

                  

「ええと...話を戻します」夏美が、メモを読みながら言った。「1つ、聞きたいことが

あるのですが...

  どうして、地球の両極域の海洋で、酸性化が進むのでしょうか?極域の方が、海洋

の酸性度が、高いですよね?」

「うーむ...」堀内が、難しい顔で自分のパソコン端末を操作した。「そうですねえ...

  後で詳しく調べてみますが...南極と北極の両極域では、大気中のCO濃度

高いからでしょう...大気中のCO濃度/600ppmぐらいから、海水のpHの低下

にともなう、“炭酸カルシウムの未飽和海域”が広がっているようです...」

「それは、地球の自転と関係するのかしら?」

「さて...メカニズムについては、ここにはデータがありません...より突っ込んだ議

論は、今後の課題としましょう...」

「はい」

「ともかく、今回は、全体の状況説明を進めておくことにしましょう」

「はい...そうですね...では、素朴な質問があるのですが、」

「どうぞ」

「ええ...

  “京都議定書”でも話題になっていますが、”文明によるCO放出量”を、どの程度

まで抑え込めば...大気中のCO濃度が一定となり、地球大気が安定化するので

しょうか?一番、肝心な所ですけど...」

「そうですね...これは、状況が劇的に改善されず...こんな状態のままで、推移

すればと言うことですが...」

「はい、」

「うーむ...そうですねえ...

  今回は細かな数字よりも、大枠について説明しましょう。まず“温暖化”で、平均気

温が上昇します...すると、当然、壌中の有機物が分解されやすくなります...

機物が分解されると、メタン/CHが大気圏に放出されますね...

  沼地などでは、メタンの泡が出ているので、そうした現象がよく観察できます。何度

も言いますが、このメタンCHは、COの20倍温暖化効果ガスです。そして、

実は、この“温暖化”によるこの悪循環というものは、膨大なものになると推計されて

います...これが、まさに、大問題なのです」

「はい...どれぐらい、大問題なのでしょうか?」

「うーむ...

  この“温暖化”により、土壌の有機物からのメタンの放出によって...おそらく今世

紀中には、陸の植生によるCOの吸収分は、ゼロになると言われています。つまり、

文明が排出したCOは、森林が吸収する余裕はなくなると言うことです...」

「うーん...」夏美が、首をかしげた。「つまり、こういうことかしら...

  文明が放出するCOは...大気中の残留が40%陸の森林の吸収が30%

海の吸収が30%ですよね...

  そのうち、“温暖化”が進むことで...陸の森林の30%の吸収分は、土壌中の有

機物の分解が促進されることにより、相殺されると言うことでしょうか?」

「その通りです!

  “ゼロになる”か、“放出が上回る”ということです...したがって、それだけ地球の

浄化能力が後退し、CO汚染が加速すると言うことになります」

「はい、」

“反・グローバル化/脱・車社会”によって、劇的な抑制が実現されず...一方、

“熱帯雨の伐採/道路建設/冷暖房の普及”が、発展途上国等で飛躍的に進め

ば...どういう結果になるかは、明らかです」

「はい...“温暖化”は、単にそれだけでなく、悪循環を生むということですね...

結局それは、“海洋の酸性化”を、より急激に加速するということですね、」

「そういうことです...

  数百年後には、“過去3億年でも経験しなかった海洋の酸性化”も、確かにあると

いうことでしょう。文明の側でも、得意の科学技術を駆使し、様々な“炭素管理技術”

開発しています。

  しかし、それよりも、“開発・発展型の文明形態”が、限界にきていることを知るべき

です。つまり、“文明のターニング・ポイント”こそ、急務と言うことです。ここを、科学技

術という“戦術”に頼るのではなく、“文明の折り返し”という“大戦略”不可欠と言

うことです...」

「はい!」

 

「人間の幸せとは、何かということを、」高杉が言った。「立ち止まって、しっかりと考え

てみることです。私たちは、この生態系の中で、“生かされている”のです。決して、生

態系そのものを、創出している存在ではないのです...

  この地球生態系の中で、心豊かに充実した生涯を送ればそれでいいのです。そ

れが、“人としての幸せ”であり、そのための“極楽浄土”が、“人間の巣”であれば

いいと、私は思っています」

「はい...」堀内が、うなづいた。「現在...文明が排出するCOは、【年間/8Gt

  (ギガトン)ほどです。しかし、“人間の巣”を展開できれば、急速に【年間/2Gt (ギガト

ン)に引き下げていくことも、可能と考えています...」

「そうですか...」高杉は、深く頭を下げた。「そうなればいいのですが...」

「はい...」

 

  〔2〕 5500万年前・・・ index.1102.1.jpg (3137 バイト)     

     暁新世始新世“温暖化極大”の考察 

                    <現在の急速な温暖化と同じ状況・・・・・> 

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  夏美が、高杉の方を見た。高杉は、キーボードを叩いて、何かをやっていた。高杉

は、ふと顔を上げた。

「ええと、高杉・塾長...何か言うことはあるでしょうか?」

「うーむ...そうですねえ...」高杉が、水平線を眺める。「ともかく、現在起こっている

“海洋の酸性化”ですが...これは、文明によって“急激”に引き起こされているわけ

です...

  産業革命以来pH0.1下がり、今世紀中にはさらに、0.3下がると言います。

この急激な酸性化に、珊瑚などの炭酸カルシウムが溶けると言う話ばかりでなく、

洋生物全般が、はたして何処まで適応できるのでしょうか?」

「そうですね...」堀内が、うなづいた。「それは、まさに、多くの科学者が懸念してい

る所です...このまま行けば、“海洋環境の劇変は不可避”、と科学者は考えてい

ます...心配ですねえ、」

「うーむ...

  @“珊瑚”と、“A南極海・表層域の翼足類”の他に、特に注目して行くべき点は

あるのでしょうか?」

「それは、無数にあります...

  しかし、注目すべきということでは、B“ガラパゴ諸島”がありますね」

「あ...」夏美が、顔を輝かせた。「ウミイグアナのいる島ですね?」

「そうです...」堀内も、微笑してうなづいた。「南米・エクアドルから、西方1000km

の太平洋上の...まあ、火山島ですがね...」

「はい、」

ダーウィンの進化論で有名な島です...そういう意味では、アフリカ大陸近くの“マ

ダガスカル島”と似た島ですね...特異な生物相を形成しています」

「うーん、堀内さん...そこは、エルニーニョの発生する海域でしょうか?」

「うーむ...そうですねえ...

  エルニーニョはふつう、ペルー沖と表現されますから、やや南の方でしょう...しか

し、まさにそのあたりの、南米大陸の太平洋側海域ですね...そのあたりの表層海

は、世界でも酸性度の高い海になっています。

  ガラパゴス諸島というのは、そうした酸性度の強い海の真只中にあります。もともと

COの多い海水に囲まれていて、長い間 pHの低い状態にさらされた島です。こうし

た海域で、海洋生物がどのように生息しているのか...これを研究することは、問題

対処へのヒントを、私たちに提供してくれるかも知れません...」

「あのあたりは、海は豊かですよね?」

「まあ、そうですねえ...魚影は濃いと思います...いい漁場でしょう...

  ウミイグアナは、陸から海へ生活圏を移し、豊かな海で進化したイグアナです。ま

あ、イグアナですから、食べているのは魚ではなく、海藻ですがね...」

「魚は食べないのでしょうか?」

「さあ、私はその方面の研究者ではないですから、詳しいことは知りません...しか

し、長い進化の時間の中で、たまたま口に入ることもあるでしょう...それ以上のこ

とは、私には言えません...」

「はい、」

過去の酸性化は...」高杉が言った。「どうなのでしょうか?5500万年前にも、

当に“急激な地球温暖化”があったわけですが、」

「そうですね。それも、注目すべき1つでしょう...

  約5500万年前...C新生代/古第三紀/暁新世(ぎょうしんせい)/始新世/“温

暖化極大”の、地質学的な記録を精査することも、問題解決の重要な指針になるか

も知れません。

  当時は、大気中のCO濃度が、現在よりもはるかに高く、したがって海洋のpH

ぐんと低かった時代です。その期間には、多くの海洋生物が死滅しました...」

「この時は、」高杉が言った。「メタンの大放出が起こったと推定されていますね...

深海底のメタンハイドレートが、急激に大気中に大放出されたのでしょうか?」

「うーん...分りません...

  分りませんが、そう推定している根拠は、メタンハイドレートの存在が分ったからか

も知れません...だから、考古学者は、その犯人はメタンと推定しているのかも知

れません。

  当時の地球大気は存在しませんし、かすかなその時代の地層などから、それを推

定するわけです...まあ、これも、今後の研究課題としておきましょう...」

「うーむ...考古学的な推定ですか、」

「そうです...そして、この時のメタンの大放出は、現代文明が吐き出しているCO

量的速度に匹敵する、急激なものだと言われています...それほど急激な、地球

温暖化・海洋の酸性化が起こっているようなのです...」

「それで、地球環境には、どのような影響が出たのでしょうか?」

「深海を、熱波が襲ったようです...水温が6℃も上昇したようですね」

「ほう...6℃もですか!」

「はい。この急激な温暖化が...”どのように”起こり...“どのように収束”したの

か...これを知る事が、“現在の温暖化の暴走”を止める、カギになるかも知れませ

ん」

「ふーむ...」

「前にも言ったと思いますが...

  8億年から6億年前にかけて、地球の“全球凍結”がありました...何故か、地球

は、寒冷化温暖化を繰り返しています...この大自然のサイクルは、地球生命圏

が生きている証拠の、脈動のようなものかも知れません...

  そして、この“全球凍結”の後に、“カンブリア紀の生物大爆発”が起こっています。

もっとも、その前に“全球凍結”の折に、“種の大量絶滅”があり...巨大な空きニッ

が広がっていたわけです...つまり、広大な、“生態系的な空き領域”が、地球生

命圏全体に存在していたわけです...

  したがって、ここが地質年代の大きな境目になるわけです。前は、先カンブリア時

...そして後は、古生代・カンブリア紀ということになります...まあ、5500万年

“温暖化極大”の時は、“種の大量絶滅”までは至ってはいませんが...」

「うーむ...新生代/古第三紀/暁新世・始新世“温暖化極大期...”です

か...」高杉が、腕組みをした。「大自然のサイクルでも、そうしたことがあるというこ

とですねえ...プレートの異変でしょうか...造山活動でしょうか...」

地球内部も、ダイナミックに活動していますからねえ...地球磁場も、しきりに動き

ますし...それに、プレートの沈み込みと共に、大量の海水も、“含水鉱物”として、

マントルの深にまで入りますし...これは、塾長のほうが詳しいわけですが...」

                                     (詳しくは、こちら...)

5500万年前と言えば...」夏美が、壁面スクリーンを振り返り、自分で年代データ

を拡大した。「恐竜が絶滅した、“中生代末期の大量絶滅”の後ですね...あれは、

ええと、6500万年前ですね...それから1000万年後“温暖化・極大期”です

か...」

「この“温暖化・極大”が、」堀内が言った。「現在の温暖化状況と、非常によく似てい

るわけです...

  いずれにしても、このまま推移すれば、“温暖化/海洋の酸性化”は避けられない

でしょう...すでに、異常気象気候変動海水の上昇が、人類文明の足元を洗い

始めているわけです...」

          

  ≪ 方策はある   house1.116.1.jpg (2635 バイト)

   index.1102.1.jpg (3137 バイト)     wpe74.jpg (13742 バイト)   wpeB.jpg (27677 バイト)  

「結局...」夏美が言った。「どうしたらいいわけでしょうか?その、対策は?」

“方策はあり!”です...」高杉が、強い口調で言った。「“人間の巣”を急ぐべきで

す。“人間の巣”は、これから本格化してくる“異常気象”にも、“短期・長期の気候変

動”にも、十分に対処できるものです」

「はい...」夏美が言った。「ええと...では、“方策はある!”ということですね。そ

の方向へ、“戦略的・方向転換”を行えば、“地球温暖化/海洋の酸性化”は回避さ

れ...“人類文明は持続可能”ということでしょうか?」

「そうで!

  また、結果的にどうなるにせよ、“文明の折り返し”は...まさに、“文明種族の理

性”にかけても“実行”すべきものです!そのための、“理性”を示すべきです!」

「はい!」

「そこには...」堀内が、微笑して言った。「“極楽浄土”が展開できる事を、期待して

います」

「21世紀は...」高杉が、大きく息をついた。「まさに、文明の“最大の試練の時”

す。いわゆる、大艱難(だいかんなん)の時”でしょう...この“未曾有の艱難”を、“人間

の巣”を創設によって、乗り切って欲しいと思います...」

「それは、まず、」堀内が言った。「世界で最も、“急速な少子高齢化社会”の進む、日

本からということですね...」

「はい!日本が、“大戦略”に取り組まなければなりません!」

   index.1102.1.jpg (3137 バイト)                     

「ええ...夏美です...

 このページは、ここで終ります。ありがとうございました。課題が山積しています。どう

ぞ、次の展開にご期待ください!」 

 

 

                                                                                                                              法律書店バナー2