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     最新マントル対流の風景・・・

                                        

                    “プレート”テクトニクス理論  / “プルーム”テクトニクス理論

 トップページHot SpotMenu最新のアップロード                             担当 : 高杉 光一 

   INDEX                        wpe85.jpg (4903 バイト)  

プロローグ プロローグ 2002. 4.22
No.1 〔1〕 東海地震 ・東南海地震 ・南海地震の“想定震源域” 2002. 4.22
No.2 〔2〕 超大陸の離合集散 2002. 4.22
No.3 〔3〕 スーパープルームの風景 2002. 5.13

  

         参考文献      

         日経サイエンス  2002年4月号

                  地球史を支配した水/“スーパープルーム”のダイナミクス

                                      丸山 茂徳 (東京工業大学)

                                            東京新聞   2002年4月7日号  

                  迫り来る?巨大地震 ( 東京新聞サンデー版/世界と日本 大図解シリーズ )

 

   プロローグ               room12.982.jpg (1511 バイト)         

 

「ええ、折原マチコです。すっかり緑の美しい季節になりました。そういえば、もうまも

なくゴールデンウイークですね。うーん...1月、2月、3月は、本当にあっという間で

した。1月は“イク”、2月は“ニゲル”、3月は“サル”...4月は...うーん...“ヨケ

ル”かしら...ええと、5月は...」

「バカなことを言ってないで...」高杉が、カチャリ、とコーヒーカップを受け皿に戻し

た。「さあ、始めるぞ、」

「あ、はい...

  ええと...高杉・塾長...今回は、“地球圏宇宙”のセクション・1、“地球・物理”

なのですが、どんな話になるのでしょうか?」

「うむ...そうですねえ...“プレートテクトニクス理論”というのは、聞いたことがある

と思います。ドイツの科学者ウェゲナーが提唱した、“大陸移動説”といわれるもので

す。これが、20世紀の半ば頃に実証されました。

  それ以降、このプレートテクトニクス理論は、急速に進展しています。日本海溝に沈

みこむプレートや、東海道沖で沈み込むプレートで、地震が多発している原因が、この

プレートテクトニクス理論によって説明されているわけです」

「はい、」

「地球というのは、大雑把に言うと、地表面から数十キロメートル下までを“地殻”とい

います。つまり、大陸も海洋も、この地殻の上にのっているわけですね。したがって、

大陸の所では、地殻はかなり厚いわけですが、逆に深い海の所では、地殻は非常に

薄くなっています。

  それから、その地殻の下が、“マントル”と呼ばれている所です。このマントルは、

部マントル下部マントルに分類されます。上部マントルは、深さ約660kmまでと言

われます。そして下部マントルは、そこから深さ約2900kmまでの領域にを言いま

す。下部マントルというのは、したがって、地球の非常に深い領域にまで達しているわ

けですね、」

「ふーん...それは、溶岩ということなのでしょうか?」

「まあ、そうですね。ドロドロの“マグマ”です。しかし、上部マントルと下部マントルが

分かれているように、ここを境にして、マグマの性質が大きく変わっているのでしょう。

したがって、ここにある種の境界面が出来ているわけですね。

  まあ、後で述べますが、日本海溝あたりからプレートが沈み込んで来て、この660k

m付近の境界面まで沈むと、ここでいったん滞留するようです。それから、1億年から

2億年の周期で、まとまって下部マントルへ沈んで行くといわれます。これが、今回説

明する、“プルームテクトニクス理論”の、駆動エネルギーになっていると言われて

います...」

「うーん、分らないわねえ...」

「まあ、それは後で説明します...

  ええと...それから、下部マントルから下の領域、つまり、地球表面から2900km

以下の領域ですが、この地球の中心部は、核(地核)と言われています。そして、こ

の核も、“外核”“内核”に分類されています...いいかね?」

「あ、はい...地表から2900km以下の、地球の中心を、“核”というのですね」

「そうです。そして、“核”には、“外核”と“内核”があります。

  ちなみに、“外核”は、深さ2900kmから5000kmまでの領域です。この外核領

域は、主に“鉄”からなり、“高温高圧の液体状”いわれます。まあ、地球には、膨大

な量の鉄があるわけですね...これも、覚えておいて下さい...

  それから、その下のさらに中心部を、”内核“というわけです。ここは、特別な所で、

高密度の“固体”と考えられています」

「うーん...地球の中心は個体なんだ...そして、外核は、液体状の鉄なのね...

あの、どうしてそんなことが分るのかしら?」

「まあ、長年の研究の成果だろうね...吹き上がってくるマグマを調べたり、地震波を

世界各地で精密に調べたり、そうしたデータを、コンピュ−ター処理して、地球内部の

地図を作ったり...まさに、人体の内部を診断するようなものだね...」

「そうかあ...そうした研究者が、大勢いるのね、」

「ま、そういうことだね...

  さて、繰り返しになりますが、マントルの上に、地殻であるプレートが浮いているわ

けです。そしてプレートは、幾つかに分かれていて、マントル対流で駆動されながら、独

特の動きをしているというわけですね。それで、超大陸が離合集散を繰り返し、どこか

の海底が、チョモランマの頂上付近にまで持ち上がったりもするというわけです...」

「あ、その話は、聞いたことがあります。エベレストの頂上が、海の底だったというの

は。本当なのでしょうか?」

「うむ。本当だ。直接、地質学者が確認している」

「そうかあ...でも、塾長、地殻というのは、ごく薄いものなのでしょう?」

「まあ、そうだね。プレートは、核やマントルと比べると、非常に薄いものだ。リンゴに例

えれば、皮の部分かね。果肉がマントルで、芯が核に当たるかな...」

「ふーん...」

                                               

「さて、ともかく...日本の太平洋側での大地震は、プレートテクトニクス理論によっ

て、うまく説明されています」

「うーん...そのあたりの話は、何度も聞くんだけど、よく分らないのよね、」

  高杉は、マチコの顔を眺め、ゆっくりとコーヒーカップを口へ運んだ。

「いずれ...詳しく考察していく課題だが、ここでもざっと説明しておこうかね?」

「はい...」マチコも、コーヒーカップを取り上げた。

                                                    room12.982.jpg (1511 バイト)                     

 

 〔1〕   東海地震    

        東南海地震        

             南海地震     

                      ・・・の“想定震源域”!  

                   wpeC.jpg (18013 バイト)                                                        


「ええと...」高杉は、作業テーブルの上の、パソコンのマウスを動かした。横長の

32インチ液晶ディスプレイに、日本列島の地図が表示された...

「まず、ここに示されているように...日本列島はユーラシアプレート”と、“北米プレ

ート”の上にのっています。この2つのプレートは押し合っていて、その境界線が“フォ

ッサマグナ”(新潟県の糸魚川、長野県の青木湖、木崎湖、松本盆地、諏訪湖西岸、山梨県の甲府盆地西縁、さらに

静岡県の太平洋岸までを結ぶ大構造帯。日本列島が折り曲げられている、岩石の砕けた大破砕帯。)です...」

「うーん...“フォッサマグナ”ねえ、」

「まあ、力学的には、この図で見るように...東日本がのっている“北米プレート”

は、南下して来ています。そして、東側から“太平洋プレート”に押されています。ま

た、西日本がのっている大陸側の“ユーラシアプレート”に対しては、南から“フィリピン

海プレート”が北上しています...

  ま、このあたりは、つまり、プレート的には、非常に複雑なわけです...まあ、これ

から、少しづつ説明していきますがね...」

「あの...でも、何故でしょうか...」マチコが首を傾げた。「何故、太平洋の日本近

海側に、プレートが集まってくるのかしら?」

「うむ。それは、ですね...いずれ2億5000万年後には、このあたりを中心に、“パン

ゲア”のような“超大陸”が形成されるからです。今は、まさに、その過程にあるわけで

す。だから、プレートがどんどん集まり、その上にのっている大陸も、日本に向かって

押し寄せてきているわけです」

「ふーん...日本を中心に、超大陸ができるのかしら?」

「まあ、日本というよりは、アジアを中心にですね。つまり、日本列島は、アジア大陸の

外縁に位置しているわけだから、すでに、このようにプレートが集まってきているので

す...

  さしあたり、今から5000万年後には...まず、オーストラリア大陸が日本列島に

衝突します。そして、このあたりは押しつぶされ、巨大な山脈になっていると推定され

ています」

「うーん...」

「まあ...だいぶ遠い未来の話ですがね、」

「それで...うーん...日本列島というのは、ユーラシアプレートと、北米プレートの

上にのっているのね?」

「そう...大陸の“ユーラシアプレートにのっているのが、西日本北から南下してい

北米プレートにのっているのが東日本す。そして、“ユーラシアプレート”は、北

上する“フィリピン海プレート”と、“北米プレート”は東から押し寄せる“太平洋プレー

ト”に押されています。そして、日本列島が2つに折れている所が“フォッサマグナ”

つまり、このフォッサマグナを境にして、日本列島の地質構造は、東西で大きく異なっ

ているのです。それは、それぞれ、違うプレートにのっているからです。

  まあ、文化的にも民俗学的にも、色々な意味で東日本と西日本が分れていると言

われますが、根本はこの地質構造的な違いから来ているのかも知れません。いずれ

にしても、最大の違いは、別々のプレートの上にのっているということです。あるいは、

全ての要因は、ここに端を発しているのかも知れません」

「うーん...うーん...」マチコは、腕組みをした。

「さて、何故こんな事態になっているのかと言うと...つまり、やがてここに超大陸が

出来るから、プレートが集まってきているというわけです。では、何故、プレートが集ま

って来ているのかと言うと、日本海溝マリアナ海溝、あるいは大陸のプレートの下

へ、集まってきたプレートがどんどん沈み込んでいるからです。

  こうした沈み込んでいくプレートが、マントル対流になっていくわけですね。したがっ

て、プレートの上にのっているオーストラリア大陸も、やがて5000万年後には日本列

島に合体し、そこにエベレストのような大山脈ができるというわけです

「うーん...“太平洋プレート”は、どうなっていたかしら?」

「ああ...“太平洋プレート”は、ハワイの方から、日本列島の方へ押し寄せて来てい

ます。あのあたりの海嶺から、マグマが噴出し、プレートをどんどん押し出しているので

す。そして、海底で日本列島ののっている“北米プレート”とぶつかり、日本海溝から

地下へ潜り込んで行きます。まあ、その先は、どんどんマントルの中まで落ち込んで

いきますね」 ( このプレートの沈み込みについては、今回の“プルーム”テクトニクス理論で、詳しく考察します。)

「うーん...何故、沈み込むのでしょうか?」

「うーむ、いい質問ですね...どうして太平洋プレートの方が、大陸のプレートの下側

へ潜り込むのかということですね。それは、つまり、海洋をのせているプレートの方が

重いからです。これは、常にそうです。南から北上しているフィリピン海プレートも、大

陸のプレートの下側へ潜り込んで行くわけです。

  そして、そこでは、“海溝”(急に数千メートルも落ち込んでいて、溝のように細長く続いている海底地形)

か、“トラフ” (海溝よりも、浅く広く落ち込んでいる海底地形)とか、プレートどうしがぶつかっている、

独特の海底地形があります」

「うーん...それで、どうして地震が起こるのでしょうか?」

「ああ、そうそう...それが一番肝心ですね...

 うーむ...日本列島で起こる地震には、2種類あるということを、まず言っておきま

しょう。それは、“海洋型地震”と、“直下型地震”の2種類です」

「はい、」

「まず、それを説明しましょう...

   《海洋型地震》                                


  プレートが沈み込んでいる日本海溝や、プレートどうしが衝突しているト

ラフに沿って起こる地震です...まあ、地震そのもののメカニズムは、プレ

ートどうしの摩擦によるエネルギーの蓄積と、その開放によるものです。

 

相模トラフ...これは北米プレートとフィリピン海プレートが衝突している

所です。まあ、神奈川県沖の相模湾にあるわけですが、ここに東側から太

平洋プレートが押し寄せて来ています。きわめて複雑ですね...すぐ西に

は、フォッサマグナがあり、その向こうは、ユーラシアプレートです。

駿河トラフ...これは、相模湾の西隣の静岡県沖で、いわゆる駿河湾

あります。まあ、ここが、“東海地震・想定震源域”にあたるわけです。ま

あ、想定震源域と言うのは、このトラフのことではなく、その北側のかなり広

い地域を指していますね。最近、この“東海地震・想定震源域”が拡大され

たというニュースがありました。しかし、これは行政的な指定地域の拡大で

あり、物理的な地震の現象とは関係がありません...

  うーむ、この駿河トラフは、フォッサマグナの西側にあるわけで、ユーラシ

アプレートにのっているわけですね...そして、南からフィリピン海プレート

が北上しているという構図です...

南海トラフ...これは、この図で見ると、駿河トラフのさらに西側の広い領

域ですね。東海・近畿・四国を押し上げているフィリピン海プレートが作って

いるトラフです。

       ええ...国が定めている“想定震源域”を見ると、大体こうなります wpeC.jpg (18013 バイト)house5.114.2.jpg (1340 バイト)

 

“東海地震・想定震源域”....駿河トラフ/静岡県の太平洋側

“東南海地震・想定震源域”...南海トラフ/愛知県、三重県の太平洋側

“南海地震・想定震源域”...南海トラフ/和歌山県から四国の太平洋側

 

  こうした海溝型地震の特徴は、非常に規模が大きいということですね。そ

して、震源は深い海底下のために、大津波を引き起こします。被害も甚大

になります...

        <例: 関東大震災の関東地震や、南海地震などです...>

   《直下型地震》                                 


  こっちの方は、陸地の
活断層が震源となる地震です。規模は海溝型ほど

大きくはありませんが、都市の直下で起こったり、震源が浅かったりすると、

甚大な被害になります。予測の方も難しいようです...

        <例: 1995年の、阪神・淡路大震災がこれに当たります。

                  正式名称は、“兵庫県南部地震”です...>

 

 〔2〕 超大陸の離合集散    wpeC.jpg (18013 バイト)  wpe89.jpg (15483 バイト)  wpeB.jpg (27677 バイト)  

 

「さて、参考文献の副タイトルに、“スーパープルーム”という言葉があります。この論

文は、全体がこの説明なのですが、ここではこの言葉の定義だけを簡単に説明してお

きます。

  “スーパープルーム”というのは、先ほど述べた“外核”の表面から、下部マントル、

上部マントルへと上昇してくる、“高温のマントルの大規模な上昇流”のことです。現

在この“スーパープルーム”は2つあります。1つは、“太平洋スーパープルーム”で、

もう1つは“アフリカ・スーパープルーム”です」

「うーん...アフリカで鉱物資源が豊富なのも、こうしたマントルの上昇流が関係して

いるのかしら、」マチコが、ミミちゃんの耳をつまんだ。

「そうですね...ダイヤモンド金鉱脈希少金属などは、マントル対流全体から見

たら小さな話ですが、確かにこうした“スーパープルーム”の上昇流と関係しているで

しょう...

  ああ、それから、もう1つ重要なものに、プレートが沈み込んでいく、“コールドスーパ

ープルーム”というのがあります。これは、現在、1つしかないようですが、この沈み

込みがあって、上昇流の“スーパープルーム”もあるというわけです」

「ああ、はい...」

「ええ...現在、1つあると言ったのは、“アジア・コールドスーパープルーム”です

ね。これが、日本海溝などの、東アジアのプレートの沈み込み帯の下で起こっている

現象です...

  まあ、“コールドスーパープルーム”については、非常に重要なので、後で詳しく説

明します。いずれにしても、これは沈み込んでいく方のマントル対流なのです」

「はい、」

「ともかくですねえ...この東海から四国へかけての“想定震源域”では、東から“太

平洋プレート”が押し寄せて潜り込み、南からは“フィリピン海プレート”が押し寄せて

潜り込んでいます...」

「はい、」

「さて、いいかね...

  この東アジアの下にある、“アジア・コールドスーパープルーム”というのは、実は

まるでブラックホールのように、周辺のプレートを引き寄せ、飲み込み、マントルの中

へ沈み込んでいくのです...

  先ほども言ったように、こうした地球の臍(へそ)に引き寄せられるプレート運動で、

“約5000万年後”には、オーストラリア大陸が日本列島に衝突します。そして、日本

列島は、押しつぶされ、押し上げられ、巨大な山脈になるというわけですね」

「はい...でも、ずいぶん先の話よね、」

「そうです...しかし、地質年代的に見れば、それほど遠くない未来の出来事でもあ

るのです。恐竜が絶滅したのが、中生代の白亜紀の終りで、今から6500年前です

ね...だから、5000万年というのは、そうした時間スケールの話なのです」

「あの、日本のあたりは、ヒマラヤ山脈のようになるのかしら?」

「うーむ...具体的な予測は難しいですが、多分、そうかも知れません...」

「うーん...そうかあ...」

「で、逆に、“約5000万年前”はどうだったと思うかね?」

「そうか、それも重要よね、」

「うむ!5000万年前は、この“アジア・コールドスーパープルーム”のエネルギーは、

“アフリカ大陸”と、“サウジアラビア”と、“インド亜大陸”を、アジア大陸に引き寄せ、合

体させていたのです。つまり、この“アジア・コールドスーパープルーム”は、その頃か

らすでに、一連のプレート運動の駆動力として機能していたというわけです...」

「そうかあ...スケールの大きな話よねえ...」

「そう...そして、今から約2億5000万年後には、北米大陸と南米大陸がここに合

体し、アジアを中心とした超大陸が完成します。あの数億年前にあった、“パンゲア”

の様な超大陸になるわけです。

  ちなみに、約2億5000万年前といえば、古生代の終わり頃で、この地球生命圏に

おいて最大級の大量絶滅のあった頃です。その後、地質年代は中生代に入り、生態

系の姿は一変していきます。あの、恐竜時代が始まるわけですね...」

「うーん...あ...ミミちゃん!

  “ミミちゃんガイド”の方が、準備ができたようね。それじゃ、よろしくお願いします」

「うん!」

 house5.114.2.jpg (1340 バイト)ミミちゃんガイド       wpe89.jpg (15483 バイト)<ユニコーン君> 

<3つの超大陸 : ロディニア、ゴンドワナ、パンゲア >

「はい、ユニコーン君、準備はいいでしょうか?」

「はい。準備完了です。よろしくお願いします、先輩」

「うん...それじゃ、しっかり頑張ってください」

「はい」

 

「ええと...プレートテクトニクス理論によると、過去10億年の間に、地球表

面には3つの“超大陸”が生まれました。この“超大陸”というのは何かとい

うと、地球表面の陸地の部分が全て1つに合体し、巨大な1つの大陸になっ

た状況をいいます。つまり、地球表面は、1つの大陸と、1つの海になってし

まったのです...」

「ふーん...」ユニコーン君が、角を天空に立てた。「すると、大陸というの

は、離合集散をくり返しているということですか?」

「そう!」ミミちゃんが、うなづいた。「10億年前...“ロディニア”という超

大陸があったことが分っています。ええと、5億7000万年前から、古生代

“カンブリア時代”が始まっています。したがって、この大陸は、それよりも

だいぶ前の、地球の陸上風景ということになります。

  古生代より前の“先・カンブリア時代”には、すでに海には真核生物が生

息していました。でも、陸には、生物はまだ進出していませんでした。陸に

生物が進出するのは、古生代のシルル紀です。これは、4億2000万年前

頃になります。

  ええと...つまり、超大陸・ロディニアは、動物や植物の姿はなく、原始

地球の姿...溶岩の冷えた、岩石だけの大陸だったわけですね...

「それじゃあ、火星のような、岩だけの世界だったのでしょうか?」

「うん。似ているわね...それから、一方には、原始地球の穏やかな海が

ありました。そこで生命は、のどかな揺籃期(ようらんき/揺り篭の中で過ごす期間)

過ごしていました...」

「ふーん...揺籃期ですか、」

「36億年前に生まれた最初の生物は、シアノバクテリアだと言われていま

す。このシアノバクテリアが、原始地球の大気に、遊離酸素(化合物としての酸素

ではなく、分子としての酸素)を供給した要因の1つと考えられています。

  このシアノバクテリアの化石は、ストロマトライトと呼ばれていますが、これ

はグリーンランド(北極圏)やオーストラリアで見つかっています。そして、この

両方の化石は、すぐ近くの同じ海のものだったと推定されています。つま

り、グリーンランドとオーストラリアの海岸は、太古の地球においては、すぐ

隣どうしだったということですね。今では、北極圏と、南極に近い所に離れて

いますね...」

「ふーん...」

「これが、プレート運動なのです」

「すごいですね」

「うん、」ミミちゃんは、コクリとうなづいた。「さあ...2つ目の超大陸は、5

億〜6億年前に生まれたゴンドワナです。これは完全な超大陸ではな

く、“準・超大陸”と呼ばれています。

  つまり、この後...いまから、3億〜4億年前には、ゴンドワナにアジア

と北米とヨーロッパの各大陸が合体し、3つ目の超大陸である“パンゲア”

が出現しているのです」

「“パンゲア”は、地質年代で言うと、いつ頃なのでしょうか、」

「ええと...3億〜4億年前だから、古生代シルル紀、デボン紀、石炭紀

のあたりですね。シルル紀には、陸に植物が出現しています...最初に陸

に上がったのは、移動の出来る動物だったでしょうが、やがて植物が繁茂

し、光合成をはじめ、進化の主力は陸の方へ移って行ったと思われます」

「うーん、すごいですねえ、」

           wpe89.jpg (15483 バイト) wpe57.jpg (5177 バイト)  wpe56.jpg (9977 バイト)   house5.114.2.jpg (1340 バイト)  

 

「はい、ミミちゃんたち、ご苦労様でした」マチコが言った。「お団子を食べて、一休みし

てください」

「はーい!」ユニコーン君が言った。

「さて、」高杉が、椅子の背に体を引いた。「それじゃあ、我々は、何故このような超大

陸が形成されてきたのかを、もう少し詳しく見ていきますかね」

「はい!」

                                                                                              house5.114.2.jpg (1340 バイト)    

 

 

 〔3〕 スーパープルームの風景 wpeC.jpg (18013 バイト)

                                                ...(2002. 5.13)

 

「ええと、スーパープルームというのは...」マチコは、作業テーブルの上のマウスを

動かした。「前にも説明したように...地球中心の核(外核の表面から、下部マント

ル、上部マントルへと上昇してくる“高温マントルの大規模な上昇流”のことでし

た...

  現在、このスーパープルームは2つあります。1つは、“太平洋・スーパープルー

ム”...そして、もう1つは、“アフリカ・スーパープルーム”...それから、逆に地殻

が沈み込んでいく、コールドスーパープルームというのがあります。それは“アジア・

コールドスーパープルーム”が1つだけです...ええと、塾長、これでいいのでしょう

か?」

「はい...ええ、そうですね。地球表層のプレートの沈み込みは、まず上部マントル

と下部マントルの境界面までゆっくりと沈んでいきます。そして、そこで一時的に滞留

します。深度約660kmのあたりです。こうした沈み込んだプレートは、“スラブ”と言う

のだそうです」

「はい...」

「参考文献の理論では、この3つのスーパープルームが、地球を変動させているメイ

ンエンジンではないかと推定しているわけです。そして、とりわけ沈み込んでいく、コ

ールドスーパープルームに注目しているようです」

「うーん...沈んでいく方ですか、」

「そうです。プレートの沈み込みと一緒に、“大量の海水”が、マントルの深部にまで

運ばれていくことに注目しているわけです」

「うーん...沈んでいくプレートの隙間から、海水が入っちゃうのでしょうか?」

「いや、地球の内部というのは、非常に高温高圧の世界です。いわゆる、マグマがド

ロドロに溶けていて、内部へ行けば行くほど、想像を絶する超高圧がかかって行きま

す。つまりそれが、地球という惑星構造なのです。したがって、隙間から海水が入っ

てしまうというような感覚とは違います。そんな高温高圧の世界には、隙間などは無

いと考えた方がいい...」

「うーん...そうかあ...じゃ、どのように大量の海水が入るのでしょうか?」

「うむ、」高杉は、作業テーブルに片肘を置いた。「では、どういうことかというと、プレ

ートは海水を大量に含み、“含水鉱物”として、マントル深部にまでゆっくりと沈んでい

くのです...

  そして、地下100kmあたりの温度が、600℃前後で状況が変わると推定してい

ます。マントルの温度が600℃前後よりも高ければ、“含水鉱物”は熱分解し、そこ

で放出された水は再び表層へ移動するということになります。しかし、それより温度

か低ければ、“含水鉱物”は分解されず、深度660kmあたりまで沈んで行き、そこ

で滞留するわけです。

  そして、1億年から2億年の周期で、下部マントルの表層を突き破り、マントルの最

深部である2900kmまで沈んで行きます」

「海水は、そこまで運ばれていくわけでしょうか?」

「まあ、そのようですねえ...そこはもう、地球の核の表層になるわけですね。これ

が、コールドスーパープルームと呼ばれているものです。そして、入れ替わりに、別

の場所の外核表層から、熱いスーパープルームが上昇していくと推定されます...

  まあ、こっちの方は、沈み込んでくるプレートに対し、押し出されるように上昇して

いくのでしょう...」

「うーん...それ以上は、沈まないのでしょうか?」

「そうですね...いずれにしても、実際には、誰も見たことがないわけです。しかし、

下部マントルの下は外核で、そこはもうドロドロに溶けた鉄が主成分の世界になりま

す。温度も4000℃ぐらいに達しています。ま、その中までは、さすがに含水鉱物も

沈んではいかないだろうというわけです...」

「うーん...すごいわねえ...」

「まあ、単純に説明しましたが、実際には、もっと相当に複雑な世界だと思います。

例えば、少量でも、海水が入ることで、マントルの性質がガラリと変わるといいます。

つまり、マントルの粘性が下がって、流動性が劇的に増すわけですね。その他にも、

惑星内部の複雑な現象が、山ほどあるでしょう...

  例えば、あの膨大な地球磁場を発生させているダイナモの原理も、こうした地球内

部が内包している巨大現象なのです...そこにはまだ、人類文明の想像を絶するよ

うなメカニズムが存在するのかもしれません...

  これは生物学の話になりますが、最近、膨大な地下生物圏(Deep Biosphere)

の存在が話題になっています。その生物量は、これまで私たちの知っていた地表の

生物量と同等か、それ以上といわれます。このように、この地球においても、私たち

の知らないことはまだ非常に多いわけです...」

「はいでも、大体の風景としては、こういうことだということですね

「ま、そういうことです

 

                             wpeB.jpg (27677 バイト)                                                                      

 

「ええ、マチコです...

  今回の“地球・物理”の考察は、ここまでとします。こうした最新の地球物理の風景

は、今後もどんどん更新されていくことになると思います。どうぞ、今後の展開にご期

待ください

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