(1997.8.25)
<第 1 章 > 生命とは何か・・・・・
生命を、一言で説明するのは困難です。地球が生まれたのは、46億年前。それ
から約10億年後に、この地球上に生命の息吹が見られます。その前後に、ここで
一体何が起こっていたのか。
最初に生まれた生命体は、個体を複製し、それを繰り返し、どんどん増殖していっ
たのでしょう。むろん、楽な歩みではなかったことは想像できます。そして、その頃
には最初の個体は死に、その次の個体も死に、“命”は増殖と共に次々に受け継
がれていったのでしょう。しかも、生命体は、その間にも巧みに進化しています。適
応と進化と増殖。この流れの中で、“命”はより安定した環境を構築してきました。ま
た、種の多様化も進みました。植物の時代から、動物の出現へと環境も大きく変わ
ります。そうした中で、“命”は、生態系や生命圏といった様相を呈してきたのでしょ
う。そして、その中では、闘争や共生があり、淘汰があり、更なる進化があったはず
です。
ところで、このあたりで、最初の生命体から受け継がれた、“命”について考察し
てみる必要があります。まず、進化した大型動物で考えてみましょう。この動物の体
内では、細胞は絶えず新陳代謝しています。細胞に宿る“命”は、ものすごい速度で
新陳代謝しているのです。また、新陳代謝は細胞のレベルにとどまらず、個体のレ
ベルにおいても、種のレベルにおいても、生態系のレベルにおいても、より長いスパ
ンで展開しています。
さて、ここで騙されていけないのは、最初の“命”です。“命”は、バクテリア等も含
め、地球表層の数百万種の生命種に分岐しているのです。その総個体数となると、
想像を絶します。しかも、大気表層では、宇宙空間にも漂出しています。また、今で
はDNAレベルで最高モードの人類は、その知能によって、確実に太陽系空間に進
出しつつあります。この時、彼、最初の“命”が、どのような姿であるかを考えてみる
必要があります。
< ここでは、最初のDNAを“原初・DNA”、最初の生命体を、“原初・生命体”と命
名することにします。>
< 生物学者は、さまざまな経緯から、最初のDNAはたった一つだったのではない
かと言っています。つまり、たった一つのDNAが増殖し、この膨大な生命圏を創出
したということです。事実、この地球生命圏で使われているDNA言語は、たった一
種類なのです。こう考えると、一個のDNAがいかに狂暴であり、偉大であり、想像を
絶するシステムであるかということが分かるでしょう。そして、そう、私もあなたも、全
細胞が“原初・DNA”で書かれた“原初・生命体”の一部なのです。“原初・DNA”
は、進化しつつ、地球表層の巨大生命圏に、織物のように過不足なく精密に織り込
まれているのです。この巨大になった“原初・生命体”は、いったい何を意図し、何
処を目指し、どのように流れていこうとしているのでしょうか。>
“原初・生命体”、つまり彼は、最初の個体の死と共に、死んでしまったのでしょう
か。いや、本当の意味では、死んではいなかったのです。“原初・生命体”は、確実
に受け継がれ、確実に増殖していたのです。彼はまさに、進化というプロセスを発
現しつつ、膨大な生命圏を作り上げていたのです。
ここで、彼、つまり“原初・生命体”を認識するのに重要な視点は、その構成要素
や物質を見るのではなく、そのプロセス性を見るということです。有機体(つまり生命
体)は、機械論的にとらえるのは、極めて困難です。
(1997.8.27)
<第 2 章 > 原初・生命体の考察
ここで、もう少し詳しく、原初・生命体や原初・DNAというものについて考えてみま
す。
(1)
DNAそのものについては、別に新しいページを作る予定です。ここでは、原初
DNAの存在的意味の考察にとどめます。
(2)
地球の原始の海で、原初・生命体が発現した状況については、後に詳しく考
察します。
さて、ここでは、原初・生命体が、どのような時空間に拡大し、どのようにカオスを
支配し、どのように生命圏を維持しているかを考察します。また、この生命体システ
ムは、何処まで拡大していくのか等も考えてみます。しかし・・・・・難しいです。とて
も、あっさりと回答の出るような問題ではありません。
<
とりあえず、周囲を見回しながら、一歩一歩あるき始めてみます。>
それにしても、36億年も生き続けている原初・生命体には、どのような力が宿って
いるのでしょうか。どれほどの能力があるのでしょうかか。また、どのように、36億
年もの間、この地球生命圏を守ってきたのでしょうか。例えば、生命圏のもつ恒常
性や、進化の波頭、ホモ・サピエンスの出現は、彼の意図したものだったのでしょう
か。また、地球上の各地で散見される超常現象の源の幾つかは、彼が介在してい
るということは考えられないでしょうか。彼こそ、まさにこの生命圏においては、神の
様な力を持つのでしょうか。むろん、この生命圏を創出した経緯を考えれば、それぐ
らいの調整能力は、あって当然とも思えますが・・・・・
それにしても、ここはもう少し時間をかけ、慎重に考えたほうが良いのかもしれま
せん。原初・生命体が、まさにそのまま未発達の状態で、この生命圏に介在してい
るとは考えられません。また、本当に、そのような原初からの統一意識が在り続け
ているのかと言われれば、私は、何かに支援されていたと考えています。いずれに
しても、総合的な調整能力なしに、このような生命圏が成立するのは、不可能だか
らです。
人体に統一意識が有るように、生態系や生命圏にも、それぞれの統一意識が有
ると考えます。また、集団や社会や国家にも、私たちが知っているものとは別の形
の、超意識体が形成されている可能性もあるのです。
<
このように見てくると、こうした考えは、もはや科学的とは言えない段階かも知れ
ません。むしろ、神秘主義に近いような気がします。いずれにしても、私たちは、い
つまでも還元主義的機械論にしがみついてはいられないのです。ニュー・パラダイ
ムは、とりあえず、“物”と“心”の統合から始まっているのです。この流れは、すでに
20世紀初頭の、量子力学の創設に端を発しています。ここで、すでに“因果律”は
崩壊し、“客観性”という座標も失っているのです。>
<ニュー・パラダイムについては、“ニュー・パラダイム”のページをお読みください>
<“因果律”
とは、原因があり、結果があるという、科学的常識のことです。しかし、 量子の世界では、この関係が崩壊していたのです。つまり、結果には、必ずしも原
因というものはなかったのです。>
<“客観性”
とは、科学における観測者の座標です。しかし、この観測者という第三
者の座標は、量子力学では許されなくなったのです。むろん、この世には、完全な
第三者の座標などは存在しません。そこに、人間の意識が介在すれば、相互作用
が発生するからです。つまり、我々は、“参与者”という立場になるのです。まさに、
ここに、“物”と“心”の統合の一端を見ることができます。“意識”
と “この世”の相
互作用、“意識” と
“物”の相互作用ということを、じっくりと考えてみてください。>
<第 3 章 > 最大の敵 ・
エントロピーの増大
さて、・・・・・彼、つまりこの原初・生命体の恐れているもの、最大の敵、最大の脅
威とは何でしょうか。それに対抗するために、まさに彼はこのような膨大なシステム
を作り上げたと考えられるからです。しかも、現在も、あらゆるレベルで構造化を推し
進め、壮大な進化の戦略を練って戦っているのでいす。 しかし、彼は、ただ存在す
るためだけに、このような巨大生命圏を構築したとも考えられません。
( 科学的分析の方は、科学の専門書をお読みください。)
さて、その彼が戦っているものとは、まぎれもなく、この宇宙のエントロピー増大の
流れだと思います。
この熱力学の第二法則は、いかんともし難いものです。例の、“
形あるものは、
すべて滅する ”
というやつです。やがて、いつかやってくる大宇宙の死も、このエン
トロピー増大による熱的平衡死とも言われています。
ところで、このエントロピーの増大とは、破壊であり、すべての物をかき混ぜて、均
質化することです。そして、それが百億年のスケールで行われるのが、大宇宙の熱
的平衡死です。宇宙はコップの中のミルクの様に完全にかき混ぜられ、均質化して
しまい、熱的な死に至ってしまうのです。
(
詳しくは、熱力学関係の書物をお読みください。コップの中のミルクはたとえです。
ミルクはコロイド状であり、これは熱的な死ではありません。また、熱的平衡死だけ
が、この宇宙の終末の姿ではありません。それは、宇宙モデルによって様々です。)
さて、この熱力学的なエントロピー増大に対抗する力が、いわゆる進化であり、構
造化のベクトルです。問題の一端は、まさにここにあるのではないでしょうか。何
故、この宇宙に、進化と構造化の流れが発現しているのか・・・・・
それとも、これは逆で、生命発生の条件が、“宇宙の初期条件”にあったために、
進化と構造化の流れが起こってきたのか・・・・・
それにしても、36億年を生きる原初・生命体は、どのような時空間に展開してい
るのでしょうか?宇宙空間から眺めると、地球は青い水の惑星です。そこに、まぎ
れもなく、巨大生命圏が息づいています。そして、まさにそこに、私自身が存在して
います。デカルトの言葉を借りるまでもなく、まさに“我あり”です。
<第 4 章 > 参考.....( “機械”と“有機体”の比較 )
ここでは有機体(すなわち生命体)というものを理解するために、“機械”と“有機
体”を、システム論的に分析してみます。
< 機械 >
・・・・・機械は、組み立てるものである。
・・・・・構成は静止画像のように見え、情報は単純な線形上を流れる。
・・・・・様々な寄せ集めで組み立てられ、システムには柔軟性がない。
< 有機体 >
・・・・・有機体は、組み立てられるものではなく、成長するものである。
・・・・・構成要素の枠の中でバラつきがあり、全く同一というものは存在しな
い。しかし、内部的には、柔軟性と可塑性に富む。
・・・・・有機体の情報系は、複雑で、フィードバック・ループの形で流れる。そ
の全体像を理解するには、プロセス性を把握しなければならない。
|