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河原崎ゼミナール日程表2003年前期



2003年前期 テ−マ

01. 不作違犯 保証者説、不作為による放火、判例の変遷

02. 因果関係 
結果的加重犯を中心に因果関係の判断基準を明らかにする。特に、被害者の特異体質や、
行為後の行為者ないしは第三者の行為の介在が、因果関係の判断にどのような影響を及ぼしているのかを検討する。

意義
結果犯の場合、行為と結果の間に因果関係が必要

条件関係が必要
実行行為との間で因果関係
現に発生した結果
仮定的因果関係の排除

因果関係の断絶
因果関係の中断

合義務的な択一的挙動
昭和4.4.11大審院判決:業務上過失致死、京踏み切り事件
結果回避可能性がない場合。犯罪の証明がない

不作為犯の因果関係・・「期待された行為がなされたならば、結果は阻止できたであろう」との関係が必要
H1.12.15最高裁決定:保護者遺棄致死罪
保護責任の根拠
先行行為・・注射、同行?
注射との因果関係、作為犯ではないか。
傷害の故意はない。過失傷害になってしまう。

相当因果関係

判断の基礎事情
一般人が認識可能な事情、行為者が特に認識していた事情
社会生活の経験に照らして、その行為から、その結果が生じることが相当である
他人の行為の介入
S42.10.24最高裁決定;傷害致死、業務上過失致死
同乗者が引き摺り下ろすことは、経験則上予想し得ない

H2.11.20最高裁決定;傷害致死、大阪南港事件
死期を早めた。

H4.12.17最高裁決定;業務上過失致死、スキューバダイビング
補助指導者、被害者にも過失あったが、因果関係あり

S53.3.22最高裁決定;業務上過失傷害と殺人

T12.4.30大審院判決、殺害も目的で首を絞め、反抗発覚を恐れ、10数町離れた海岸に運び放置したところ、
被害者は砂を吸引し、死亡した。ウエーバーの概括的故意

客観的帰属論?・・論文を見る
事実的因果関係・・実際に発生した場合
規範的因果関係・・不発生の因果関係?
合義務的行為の不作為危険増

客観的帰属:objektive Zurechnung 、因果関係
主観的帰属:subjektive Zurechnung,責任

山口厚「相当因果関係と客観的帰属」法学教室176-66
山中敬一「刑法における客観的帰属の理論」

積極的加害意思と正当防衛の成否に関する判例を起点に、
防衛の意思の内容およびその判断構造、自招侵害に対する正当防衛の限界、
防衛行為の必要性・相当性の要件の意義について検討する。
03. 正当防衛、誤想防衛、民法との関係を含む
刑事法演習T第2回
テーマ:正当防衛

参考文献 @)松生光正「刑法判例百選」p54
A)須之内克彦「刑法判例百選」p56
B)大島一泰「刑法判例百選」p58
C)曽根威彦「誤想過剰防衛と刑の減免」法曹時報49-1-18
D)船田三雄「最高裁判所判例解説:刑事編」昭和42年度、p110

参考判例:東京高裁平成6.7.20判決(判例時報1537-181)

次の事例を読み、以下の設問に答えなさい。

事例
被告人Xは、四人の男兄弟の長男であるが、自宅一階八畳の間で横臥中、前夜
来同じ室内で飲酒しながらテレビを見ていた実弟A(三男)が、聞こえよがし
に被告人Xに嫌がらせを言っているのに対し、立ち上がって、早く寝るように
言ったところ、逆に同人から食ってかかられたため、「何が気に食わないんだ。
文句があるなら殺せ」と言い返した。すると、同人は、立ち上がって被告人X
に近づき、いきなり右胸を足蹴りし、被告人Xは、後方に倒れ込んだ。
その後、立ち上がろうとした被告人Xに対しAが?みかかり、立ち上がった被
告人Xと?み合いとなった。物音を聞きつけて隣室から入ってきた末弟Bが引
き離そうとしたが、両名は離れず、移動しながらさらに揉み合った末、押入れ
の前あたりで再度倒れ込んだ。
Bは、両名を仲裁するつもりで、倒れ込んでいる被告人Xを上から押さえつけ
たところ、その後方からAが被告人Xのスエットパンツを脱がそうとして引っ
張り、また、股間を殴打したりしたため,両名から共同して攻撃されるものと
考えた被告人Xは、自己の身体を防御すると共に、日頃のAに対する恨みをも
晴らすため、咄嗟に同人殺害の意を決し、上から押さえ付けられたまま、腹這
いの姿勢で必死に押入れに付き、襖を開けてその中の段ボール箱から、刃体の
長さ約14・5センチメートルのハンターナイフを取り出して鞘を払うや、後
方に向きを変え、両膝を布団に付けた前かがみの姿勢で同人と正対し、峰を上
にして、右手に持ったナイフでAの胸を2、3回突き刺した。
被告人Xは、ナイフを持っている手で、自分を押さえつけているBを払ってど
かせ、右手首に切創を負った同人が父親に応援を求めるために立ち去った後、
なおもしがみついてくるAの胸部及び腹部を右手のナイフでさらに思い切り突
き刺し、よってその頃同所において、同人を左右肺刺創に基づく失血により死
亡させて殺害した。

設問
1 刑法上の正当防衛の意義について述べよ
2 正当防衛の要件について述べよ。
3 けんか闘争と正当防衛の違いは何か。
4 防衛行為の「相当性」と何か。
5 Aに対する関係と、Bに関する関係で、Xの責任を論ぜよ。
6 Bが仲裁するつもりではなく、Xを攻撃する意思があった場合のXの責任は、どうなるか。
7 Xがナイフを使用しないで、AおよびBを攻撃し、傷害を負わせた場合のX
の責任は、どうなるか。
8 過剰防衛で、刑法36条2項の適用される理由は何か。

【復習課題】
下記判例を読み、防衛者に積極的加害意思があった場合に、
正当防衛の規定を適用できるかについて論じる場合の問題点を整理しなさい。

判例百選p50、p48

誤想過剰防衛侵害についての誤想・・・・36U
減刑、免除の根拠
違法性減少・・・正当な利益の防衛
責任減少・・・・精神の動揺
防衛行為の過剰性についての誤想・・・過失犯


最高裁S52.7.21、積極的加害意思があるときは、急迫性を欠く

最高裁S50.11.28、積極的加害意思があるときは、防衛意思を欠く

03-2 緊急避難

緊急避難では、自招危難等の問題を検討することで、
非難行為の相当性の意義を明らかにする。

意義
要件
現在
危難
生命、財産・・列挙・・貞操、国家法益
避難の意思
やむを得ず
補充性、法益権衡
S57.11.29東京高裁判決道路交通法違反、
酒気帯び運連
避難行為
効果
違法性阻却
責任阻却
2分説
自招危難
否定説・・判例
肯定説
木村説・・故意の危難は否定、過失による危難は肯定
野村説・・原因と相当因果関係にある危難については否定
大審院T13.12.12判決、業務上過失致死
誤想避難
過剰避難


03-3 自救行為
自救行為の合法性が認められた判例
自救行為が認められた例、百選P41佐世保簡裁S36.5.15、器物損壊罪を否定
大阪地裁S40.4.23、器物損壊犯人を逮捕
岐阜地裁S44.11.26、建造物損壊罪を否定
福岡高裁S45.2.14、器物損壊、不動産侵奪を否定
4日後に回復、侵奪者の占有は未確立

03-4被害者の同意
違法性阻却の理由
@社会的相当・・・行為無価値
A優越的利益の存在・自己決定の自由
B法益性(要保護性)の欠如・個人に委ねられている

最高裁S55.11.13、保険金詐欺目的の傷害の同意
違法な目的の承諾なので、違法性を阻却しない。





04 責任
責任主義
故意、過失
責任の本質
道義的責任論・・自由な意思決定を行えるものが道義的に非難できる・・応報刑
社会的責任論・・社会にとって危険な者が、社会防衛のため刑罰を受ける地位にある・・教育刑
心理的責任論
規範的責任論・・義務違反・・期待可能性


04. 責任能力 限定責任能力、原因において自由な行為を含む
心神喪失・・精神の障害により、@弁識能力を欠くか、A行動制御能力を欠く場合
心神耗弱・・精神の障害により、@弁識能力が著しく低い、A行動制御能力が著しく低い場合

原因において自由な行為
行為、責任同時存在の原則
間接正犯類似説・・自己を道具
行為、責任同時存在の原則修正説・・責任能力ある状態で行為を決定している

続く

05. 0527故意、事実の錯誤 法定的符合説を含む  06. 0603違法性の意識 故意の要件か、法律の不知
違法性とは 事実の錯誤と法律の錯誤  判例   07. 教唆犯 未遂の教唆、教唆の未遂の区別、間接正犯
S58.9.21最高裁決定 12歳の幼女の顔にタバコの火をつけて窃盗をさせた--間接正犯

08. 共同正犯 過失の共同正犯を含む、
共謀共同正犯
共謀共同正犯 S33.5.28最高裁 共同意思主体の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議

共同正犯か幇助犯か
主観説、自己の犯罪か、他人の犯罪か
形式的客観説
実行行為の一部を分担したか
実質的客観説
実質的に見て、重要な役割を果たしたか

共同正犯  実行行為、すなわち構成要件に該当する行為を行なうもの
共同正犯              犯罪を共同して実行するもの     
共同実行   
意思の連絡 「甲は殺意をもって、乙は傷害の意思で、 行為をともにする意思で、丙に対して発砲したところ、乙の1発だけが命中して丙が死亡した」 命中した玉が誰ものか不明の場合 過失の共同正犯
犯罪共同説
新過失論
危険行為の共同・・違法行為の共同
行為共同説


間接幇助・・従犯の従犯
最高裁S41.7.17決定、認める。
旧規定、61条1、正犯に準ず
    62条2 従犯を教唆したるもの従犯に準ず
この規定が改められた意味

片面的共同正犯・・否
片面的従犯・・・・肯
最高裁平成4.6.5決定
共犯と過剰防衛・・個別的に判断
共犯と錯誤最高裁S25.7.11
抽象的事実についての錯誤でも重なり合う限度窃盗教唆で、強盗

09. 実行未遂、着手未遂、中止犯 減刑の根拠は何か
予備と中止 自首を条件とした必要的減免 内乱予備 私戦予備 情状による任意的減免 殺人予備 身代金誘拐予備 減免規定なし 外患予備 強盗予備 通貨偽造準備
                                                       中止未遂                                                        1意義    自己の意思で
政策   後戻りのための黄金の橋
違法性が減少
責任が減少
2 要件  必ずしも、道徳的な悔後でなくも、積極的、自発的にやめればよい。
フランクの公式
目的到達することができたとしても、これを欲しない。
 中止犯         目的到達することを欲したとしても、できない。
障害未遂
ドイツ 必ず不処罰
判例 外部的原因がないのに内部的原因により、即ち犯人に意思にかかわらざる事情により、強制せられることなく、任意に実行を中止もしくは結果の発生を防止した場合
短刀で胸を刺し流血を見てやめた   障害
目的物の不発見      障害
驚愕 障害
止めた場合
実行行為の中止            結果の発生の防止
障害未遂
着手未遂
終了未遂: 実行未遂
3 効果
減刑    必要的
予備・陰謀の中止
A判例・一部の学説   否定    放火予備、殺人予備、誘拐予備には、裁量的免除規
定あり
強盗予備には、免除規定なし
B一部の学説     予備・陰謀にも、中止未遂の規定を適用すべき
強盗の予備で着手しないと2年以下の懲役 
着手して中止すると刑の免除可能
中止の場合は、必要的免除
基準になる刑は予備の刑、既遂の刑
大塚
共犯と中止
共犯の離脱:着手前に離脱は予備の共犯?              
10. 不能犯 危険説
11. 予備罪 予備の共同正犯を含め
12. 共犯と身分、必要的共犯

登録 2003/4/16