離婚時に父親が親権者になりました、親権者を私(母親)に変更できないか
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2023.1.31
更新mf
相談
離婚
私(29歳)は2年前に離婚しました。子供とも2年以上会っていません。協議離婚で半強制的に親権は夫にされてしまい、私は印鑑を押してしまいました。役所の人や、家庭裁判の調停に入る前の相談員の人が、「親権は後でも変えられる」と、軽く言っていたので、私も軽く考えていました。
私は、自分の親に頼る事もできないのに、子供を連れて家を出ました。専業主婦だった私は仕事を始めたのですが、子供をすぐには保育園に入れてもらえず、夫の親に預けてしまったのです。口約束で、引き取るのは仕事が落ち着いて保育園が決まる頃に、話し合って決めるはずでした。
1、2週間後、会わせてくれるはずが、「都合が悪い」と言われました。その後も、理由を付けて会わせてもらえず、しまいには、「こっちで幼稚園を決めたから、こっちで育てる」と言われ、勝手に決められてしまいました。
幼稚園への交通の便も悪く、私は、車の免許もありません。相手は家族総動員で待ち構えているので、私は、相手の家にも行けず、私一人では怖くて、子供に無理にでも会いに行く事ができませんでした。相手の家族からは、「お前の方が離婚だと、勝手に出て行ったのだから」と言われ、
嫌がらせに近い事や、暴言を吐かれたりして、私は、参ってしまい、その時はそれで終わってしまいました。私は、寂しくて、すぐに、今の夫と再婚しました。
調停
私は、家庭裁判所に、親権者変更の調停申立をしました。しかし、調停委員からの話しでは、前と全然違い、「よっぽどの理由がないと親権は変えられない」と、言われました。相手は、「家族みんなで看る、人がいるし、経済的にも不自由していないし、あなた(私)が子供にも会っていないので、親権者変更は無理だ」と言われました。
別れた夫の両親は、若い頃か
ら借金から逃げていて、住民登録がなく、税金・健康保険・年金など何も払ってなく、国民としての当たり前のことをしていません。
元夫も、収入を偽って税
金関係をごまかして払っているし、県営住宅も嘘を付いて安く入っています。そんな人達の方が私より権利があるのですか?
家庭裁判所では、調停委員から、相手は、「子供が小学校に入ったら会わせると、言っているから、今は無理に会うと、そのときが来ても会わせてもらえなくなるから」と、説得されてしまいました。親権だけ
ではなく、こどもに会うことさえも認められず。調停は終わりました。
私はなかなか妊娠しにくい体質みたいで、会っていない子供もやっと産
まれました。今もやっぱり全然できません。別れた夫は、当時は、「再婚しない」と、言っていましたが、元夫が再婚してしまったら、私は一生子供を育てることが
できなく、別れた子供にも会えなくなると思うと悲しいです。
どうすることもできないのですか?
法的には無理なのですか?
私はわがままで自分勝手な
のでしょうか?
回答
親権者変更
親権者変更は、手続き的には 家庭裁判所 の審判で行います。その場合、子供の監護教育のために親権者を変更する必要があるかが判断されます。親のために親権者変更が必要であるかは、考慮されません。
子供の教育監護の現状に問題がない場合、親権者変更は認められないでしょう。
子供が児童福祉施設に入れられた場合、あるいは、親権者が死亡した場合等、問題が生じた場合には
親権者変更が認められるでしょう。 ただし、親権者が死亡した場合でも、養育環境に問題なければ、その時の監護している人(祖父母など)が親権者に指定され、実親が親権者に指定されないこともあります。
なお、子供が自分の意思を持つ頃(12歳前後)には、裁判所は、子供の意思を重視し、子供の意思が15歳以上の場合は子供の意思を尋ねることになっています(家事事件手続法169条2項)。面接交渉権
面接交渉権 は、認められる可能性は大です。相手が拒否するなら
家庭裁判所に、再度、調停申立をしてください。 弁護士に依頼することも考えましょう。
調停委員の説得
調停委員は、仕事を早く片付けようとする意識がありますから、当事者は気をつけましょう。簡単に説得に応じてはいけません。後で、後悔しないように。
即答を求められても、「考えてから、次回に回答します」と言って、即座に回答せず、次の調停期日に回答するように心がけましょう。その間に、信頼できる人、あるいは、弁護士などに相談しましょう。
判決
- 福岡高等裁判所平成27年1月30日決定
(1) 民法819条6項は,「子の利益のため必要があると認めるとき」に親権者の変更を認める旨規定しているから,親権者変更の必要性は,親権者を指定し
た経緯,その後の事情の変更の有無と共に当事者双方の監護能力,監護の安定性等を具体的に考慮して,最終的には子の利益のための必要性の有無という観点から決せ
られるべきものである。
そこで検討すると,前記2で認定した事実によれば,@未成年者らは平成25年□□月以降,親権者である相手方ではなく抗告人及びその両親に監護養育され,
安定した生活を送っており,このような監護の実態と親権の所在を一致させる必要があること,A婚姻生活中において,相手方は,未成年者らに対して食事の世話等は
しているものの,夜間のアルバイトをしていたこともあって,未成年者らの入浴や就寝は抗告人が行っており,またその間の未成年者Cの幼稚園の欠席日数も少なくな
いこと,B相手方は,未成年者らの通園する幼稚園の行事への参加に消極的であること,また,親権者であるにもかかわらず保育料の支払いも行っていないこと,C相
手方に監護補助者が存在せず,抗告人と対比して未成年者らの監護養育に不安がある(両親を含めた抗告人と相手方との話し合いにおいて,相手方以外が相手方が未成
年者らの親権者となることに反対したことからも,その監護能力に不安があることが窺える。)こと,D未成年者らの親権者が相手方とされた経緯をみても,未成年者
らの親権者となることを主張する相手方に抗告人が譲歩する形となったが,他方で相手方の住居や昼の仕事が決まり,生活が安定するまで未成年者らを監護することと
なり現在に至っているので,必ずしも相手方に監護能力があることを認めて親権者が指定されたわけではないこと,E相手方が養育に手が掛かる幼児がいながら婚姻期
間中に男性チーフと不貞行為を行っており,未成年者らに対する監護意思ないし監護適格を疑わせるものであることが認められる。
そうすると,未成年者Cが5歳,同
Dが4歳と若年で,母性の存在が必要であること,不動産会社への再就職が決まり,一定の収入も見込まれることを併せ考慮しても,未成年者らの利益のためには,親
権者を相手方から抗告人に変更することが必要であると認められる。
- 東京家庭裁判所平成26年2月12日審判
前記二(5)のとおり、未成年者は、姉Fを中心とする相手方親族による監護のもと、相手方実家で生活しているところ、本件記録に照らしても、未成年者の監護状況に問題点は見当たらない。そして、家庭裁判所調査官による平成二五年×月×日付け調査報告書(以下「本件報告書」という。)によると、未成年者の実際の監護を担う姉Fを中心とする相手方親族と申立人との関係は良好であるのに対し、相手方親族と相手方との関係は良好でないことが確認できる。
しかも、本件報告書によれば、未成年者の相手方に対する印象・評価も良好でないことは否定し難い上、家庭裁判所調査官が未成年者に今後の生活等についての意向を尋ねたのに対しても、未成年者は、相手方と生活はしたくない旨及び現在の生活を続けたいし、また、将来的には、申立人宅に生活拠点を移転することになるであろうが、その場合にも相手方実家と行き来したい旨を述べている(このような未成年者の意向も、同人の年齢(数か月後には一一歳に達する小学校五年生である。)や本件報告書から確認できる未成年者の応答ぶり等からすると、十分な判断のもとでの意思の表明として尊重するのが相当である。)。
してみると、本件離婚後、相手方の未成年者への関わりが変化し、しかも、相手方と未成年者が生活拠点を異にするなど、未成年者を巡る監護状況に変更が生じているため、その状況に応じて、未成年者の親権者を相手方から申立人へ変更する必要があると認められる。
2013.7.14