相談
国家公務員である夫が亡くなりました。残されたものは、自宅(時価5000万円)と死亡退職金約3000万円です。夫との間には子供はなく、夫の先妻の子供(独立している)と私が相続人です。
(1)誰が退職金を受け取るのでしょうか。
(2)遺産分割はどのようにするのでしょうか(退職金は特別受益か)。
相談者は、弁護士事務所を訪れました。
回答
(1)相続財産か
退職金が遺産(相続財産)であるかについては問題があります。退職金を賃金の後払いと考えると遺産ですが、遺族の生活保障と考えると遺産ではなく遺族の固有財産と考えられます。
国家公務員の退職手当については、国家公務員退職手当法2条、11条、11条の2が受給権者を「遺族」とし、受給権者の範囲と順位を決めています。受給権者の範囲と順位が民法の相続人の規定と異なっています(大きな特徴は、内縁の妻が受給権者になる場合があることです)から、この規定は公務員の収入に依って生活していた遺族の生活を保障する目的として受給権者を定めたものと解釈できます。従って、公務員の退職金は遺産ではありません。
なお、地方公務員の場合は条例で決まっていますが、国家公務員に準じる場合が多いです。
民間企業の退職金も就業規則などにより受給権者が決まっています。
従って、あなたの場合、退職金は遺族であるあなたの固有財産であることになります。
判例も同様です。
(2)特別受益か
あなたが、退職金を受取ると、これを特別受益(民法903条)として遺産分割するかが、さらに問題となります。
退職金を賃金の後払いと考えると特別受益に当たり、遺族の生活保障と考えると特別受益に当たりません。
これについては基本的には次のように考えるとよいでしょう(法曹会、「遺産分割事件の処理をめぐる諸問題、P262」)。
| 相続財産 | 法定相続分1/2 | 特別受益 | さらに取得できる金額 |
|---|---|---|---|
| 特別受益に当たると | |||
| 3000万円(退職金)および5000万円(自宅) の合計8000万円 | 4000万円 | 3000万円 | 1000万円 |
| 特別受益に該当しないと | |||
| 5000万円 | 2500万円 | 0 | 2500万円 |
| 2条 | (適用範囲) |
| この法律の規定による退職手当は、常時勤務することを要する国家公務員(以下「職員」と言う。 )が退職した場合、その者(死亡による退職の場合は、その遺族)に支給する。 | |
| ・・・ | |
| ・・・ | |
| ・・・ | |
| 11条 | (遺族の範囲及び順位) |
| 1 | 第2条に規定する遺族は、左に掲げる者とする |
| 一 | 配偶者(届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。) |
| 二 | 子、父母、孫、祖父母、 及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた親族 |
| 三 | 前号に掲げる者の外、職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた親族 |
| 四 | 子、父母、孫、祖父母、及び兄弟姉妹で第二号に該当しないもの |
| 2 | 前項に掲げる者が退職手当を受ける順位は、前項各号の順位により、 第二号及び第四号に掲げる者のうちにあっては、同号に掲げる順位による。 この場合において、父母については、養父母を先にし実父母を後にし、 祖父母については、養父母の祖父母を先にし実父母の祖父母を後にし、 父母の養父母を先にし父母の実父母を後にする。 |
| 3 | 退職手当を受ける同順位の者が二人以上ある場合には、その人数によって等分に支給する。 |