営業委託契約書

書式

経営委託（営業委託、業務委託）の問題点

• 受託者は、信頼できる人を

  経営委託（経営委任、営業委託、業務委託）では、受託者に仕事を任せるのですから、 経営委任した相手（受託者）を信用ある人にしない と問題が発生します。そこで、せめて、保証人が必要です。１７条では、連帯保証人は継続的取引から発生する一切の債務を保証することとなります。これを 包括根保証 と言います。
  包括根保証の場合、民法（４６５条の２）改正により、２０２０年４月１日より、限度額を決めることが必要です。限度額の記載がないと、保証は無効です。

• 建物賃貸借契約との違い

  建物の賃貸借契約について、借地借家法の適用を免れるなどの目的で、あるいは、転貸借であることを避ける目的で、契約書では経営委託等の記載をし、支払うべき金員も家賃以外の名目を用いることがよくおこなわれている。
  しかし、経営委託であるか建物賃貸借であるかは、すなわち、契約の性質は、契約書に用いられた契約の名前だけで決定すべきではなく、契約書の条項、特に営業の損益の帰属と支払金額が一定かどうかの定めや、営業の実態をも重視するべきであるとするのは従前からの判例の流れです。

• 建物が賃借物である場合

  建物の賃借人が業務委託する場合は、建物の管理を自分でしないと（建物の占有が委託者にないと）、建物の無断転貸借であると認定され、賃貸借契約を解除される危険があり、そのような判決もあります。
  そこで、経営委託につき賃貸人の承諾を取るなどの対策が必要です。完全ではないですが、9条に、「本件店舗がある建物の管理、占有は委託者にあり、受託者は、委託者の承諾の下に本件店舗がある建物に出入りする」などと追加した方が良いです。

判決

• 大阪高等裁判所平成９年１月１７日判決（出典：判例タイムズ９４１号１９９頁）
  本件契約書上では店舗経営委託契約とされているものの、そこでの店舗「知己」の経営は控訴人（受託者）の名義で、その計算と裁量により工行われ、被控訴人（委託者）がその経営に関与することなく、控訴人より被控訴人に支払われる分配金、共益費名義の金員は店舗経営による収益にかかわりなく定額であることからすると、右の契約は、店舗経営委託契約の性格を持たず、かえって控訴人に本件物件と内装・器具を飲食店「知己」の営業のために自由に使用収益して、その収益を取得（損失のときはこれを負担）することを許し、その対価として一定額の金員を受領することとする建物賃貸借の性格を有することは明らかである（右判断については、最高裁第一小法廷 昭和３９年９月２４日判決・裁判集民事７５号４４５頁、最高裁第一小法廷平成４年２月６日判決・判例時報１４４３号５６頁及びその原審東京高裁平成元年７月６日判 決・判例時報１３１９号１０４頁参照）。
  　もっとも、本件契約に際し、本件物件には被控訴人又は前の使用者の設置した内装、什器備品があり、被控訴人はこれを控訴人に提供したものとみられ、また、契約書上、酒類、調味料の仕入れ先を特定の販売業者に制限する規定がある。
  　しかし、これらは、本件契約が本件物件の賃貸借であることを左右するようなものではなく、右賃貸借の付随的約定と解されるにとどまる。 　ほかに、三の賃貸借である旨の認定を覆すに足りる証拠はない。
• 最高裁判所平成４年２月６日判決
  原審は、（一）　本件施設物は、鉄道高架下施設であるが、土地に定着し、周壁を有し、道高架を屋根としており、永続して営業の用に供することが可能なものである から、借家法にいう建物に当たる、（二）　本件店舗は、本件施設物の一部を区切ったものであるが、隣の部分とはブロックにベニヤを張った壁によって客観的に区別さ れていて、独立的、排他的な支配が可能であるから、借家法にいう建物にあたる、（三）　本件店舗での営業に関する亡大井慶寿と被上告人との間の本件契約は、経営委 託契約ではなく、本件店舗及び店舗内備品の賃貸借契約であって、借家法の適用がある、（四）　本件契約は、期間満了後、期間の定めのない賃貸借として更新されてい る、（五）　亡慶寿の相続人として同人の地位を継承した上告人がした本件契約の解約申入れに正当事由はない、として、上告人の本件請求を棄却しているが、原審の右 認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
• 東京地方裁判所昭和６０年９月９日 判決（出典：判例タイムズ５６８号７３頁）
  （１）本件契約の締結に際し金井から控訴人に対し、かなり高額というべき一〇〇万円が保証金として、理由の如何にかかわらず返 却しないとの約定の下に支払われていること、（２）金井は控訴人に対し、店舗使用料として毎月末日までに定額の一か月一五万円を支払うものとされ、右支払を一か月 以上滞納した場合には本件契約は解除され、即刻本件店舗を明渡すとの約定の下にその支払がなされてきていること、（３）本件店舗におけるバーみわの営業即ちその仕 入れ、販売、水道光熱費、必要経費の支払は、すべて金井の計算と危険負担においてなされ、その営業実績の報告はなされていないし、その報告も義務づけられておらず、 控訴人は右営業に関する帳簿類の管理点検などもしたことはないこと、（４）また、本件店舗におけるバー営業に伴う飲食税の納付も金井がその負担において行つていた こと、（５）控訴人は、時折本件店舗に姿をみせることはあつたが、本件店舗におけるバー営業に関し容喙することはなかつたこと、（６）その他、本件契約書上には、 金井が本件店舗を他に転貸することを禁止し、これに違反した場合は、契約を解除し、即刻本件店舗を引渡すとの約定があつたことが認められ、右認定に反する原審及び 当審における控訴人本人尋問の結果は信用できないし、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
  　右認定事実に照らして考えると、本件契約上の金井の地位を控訴人の単なる使用人又は経営受託者とみることには無理があり、本件契約は、金井の本件店舗におけるバー 営業を目的とする本件店舗の賃貸借契約であると認めるのが相当である。
• 最高裁判所昭和３９年９月２４日（出典：最高裁判所裁判集民事７５号４４５頁）
  いわゆる経営の委任または委託の場合、法律上委任の形式をとるにかかわらず受忍者が自己の計算において自己の裁量に従つて経営を行い、委任者に対して一定の金員 を支払うことが少なくない。かかる場合、経営の委任といつても実質は営業の賃貸借に外ならないと解すべきである（このようなことはコンツエルン関係で屡々その例を見るところである）。
  しかして原審の認定によれば上告人と訴外弓谷種一との間において経営委託契約の形式の下に、弓谷は上告人が被上告人より賃借する本件家屋のう ちの２坪余の店舖を使用し、同人自身の計算において鳥禽類の仕入販売を行い、収益如何にかかわらず上告人に対して月額６０００円を下らざる金員を支払うことを約し、 弓谷は該契約に基づいて右店舖を使用するものであるというのであって、右認定は挙示の証拠によつて肯認し得る。しからば上告人は経営委託契約の名の下に、その賃借 する本件家屋の一部を弓谷に転貸したものと認むべきであり、これと同旨に出でた原審の判断は正当であり、原判決には所論の違法はない。それ故論旨は採用できない。