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ダレン・シャン 〜奇怪なサーカス〜



なるほど、これはおもしろい。
児童文学シリーズの中の一つ、ダレン・シャンの一巻目です。
ハリーポッターの大ブレイク以降、児童文学がジャンルとして大きな注目を浴びております。
これもその中の一つ。と、
お考え頂いてまあよろしいかと思います。

たぶん、そういうコーナーが今ならたいていの本屋さんに作ってあるだろうし、そういう
コーナーへ行けばまずこのシリーズは置いてあると思います。


さて、私は去年から今年の一月にかけて何回か引越しをしていますが、その中の
一時期に、数度にわたって、学校帰りの小学生などがこのシリーズの本を読みながら
帰っているのを見かけたことがあります。
まあ、単なる偶然なのかもしれないし、局地的ブームだったのかもしれないし、極端な話、
個々の細かい状況を覚えていないわけだから、全部同じ子だった、というオチもありえるかも
しれませんが。

とにかく、私の中ではこのシリーズは、「子供の支持率No.1 - 児童文学」として印象付いた
のでした。
ハリーを読みふけっている子供は、全然見かけなかったのにね。(むしろ、ハリーのシリーズは
どちらかと言うと、通勤電車で大人が読んでいるのを見かけることが多い気がします)


それで今回読んでみたわけです。
結論は面白かったです。
主人公の一人称語りで綴られているので、多少文章のキレが悪いところがあったり、
主にストーリー前半に、写生主義に寄っていて先が見えずにイラついてしまうきらいが
無きにしも非ずですが。
(その先の見えなさ加減が、逆に緊張感やワクワクを持続させるのにプラスに
作用している部分もあります)

主人公の少年の、心的・人間的な葛藤が、ストーリーを牽引する原動力にも、感動の
基本構造にもなっている。
そういう意味では、地味なつくりではあるけれど、夢物語的ではない迫力があるし、
大人でも子供でも読むことができる。

主人公ほか少年たちのキャラクター、というか行動もかなり印象が強い。
あくどい、とまでは言わないまでも、結構インモラルだ。微妙にネタバレなので
以下数行、反転させておくけど、


他人のものを盗み、約束は破る。
親の金をこっそり勝手に借りてみたり、「大人が『見るな』と言うものなら
おもしろいに決まってる」などと言ってそれを見に行こうとする。
好きな動物は“蜘蛛”で、その「肉食動物」的なところが好き。
描写的にも、血や肉に対する明瞭な言及がある。



結構なやんちゃ坊主である。
正しく悪ガキ小説だと思う。

ハリーが(2巻以降どう変わっていくのかは私は知らないけれど)夢と勇気と冒険
を基軸にしていて、「両親が、新刊が出ると、子供に『読み聞かせ』る権利を
取り合う」ようにして売れている、という話を聞いたことがある。確かにこの本と
比べてしまうと、かなり上品なお話だったという印象になる。


この本は、うんこを投げたりちんこを出したり、大人を罠に嵌めたりはしないものの、
それでも過敏な親御さんなら、眉をひそめる人もいるのではなかろうか。

そしてそれゆえに、子供本人にとってはそれだけ目の離せない本になりえる
可能性を持っているのだ。


とりあえず、私はシリーズの2巻を買ってきた。(ハマってんじゃん!)


2004.10.11.