微生物に関する用語解説
グラム陽性菌クリスタルバイオレットで染まる菌
グラム陰性菌サフラニンで染まる菌
黄色ブドウ球菌化膿性炎症で皮膚(せつ、毛のう炎など)や臓器(結膜炎、関節炎、骨髄炎など)に化膿巣をつくり、ときに敗血症をきたす。食中毒(嘔吐)をおこしたり、抗生物質が効かなくなるいわゆる多剤耐性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌による院内感染が問題になっている。
レンサ球菌溶血毒素や発熱毒素を産生し、化膿性急性感染症とその後遺症をきたす。
大腸菌O抗原(164種)、K抗原(90種類)、H抗原(55種類)があり、血清型別される。病原性の強い菌群は病原性大腸菌(下痢原性)と呼ばれる。
赤痢菌大腸粘膜上皮細胞に進入し赤痢をきたす。
サルモネラ菌全身感染する(腸チフス、パラチフス)菌と、局所感染する(急性胃腸炎、食中毒)菌がある。
コレラ菌コレラ毒素を産生し、大量の水様便(米のとぎ汁様)をきたす。海水の塩分でも増殖する。患者は脱水症状で死亡する場合が多い。
腸炎ビブリオ菌耐熱性溶血毒(TDH)や、その類似毒素(TRH)を生産する。1〜8%の塩分中で増殖する。
淋菌男性は尿道炎、女性は膣炎、尿道炎、子宮頸管炎などを起こす。
髄膜炎菌健康保菌者(鼻咽腔)から、5才以下の小児に感染。血中に入り(流行性)脳脊髄膜炎を起こす。
百日咳菌各種の毒を産生するが、百日咳毒素が重要な病原因子。咳は激しく、吹笛様吸気や、嘔吐、酸素欠乏をきたす。ワクチンあり。
ジフテリア菌蛋白合成阻害作用を示すジフテリア毒素のため、呼吸筋、軟口蓋、四肢筋、心筋などの麻痺をきたす。
ボツリヌス菌強力な神経毒素を産生し、ボツリヌス中毒を起こす。毒素の抗原性により、A〜G型に分類される。ヒトに中毒を起こすのは、A,B,E,F型。真空パック中でも菌は増殖する。死因は呼吸筋の麻痺。
破傷風菌破傷風の原因菌。創傷部より感染し毒素を産生する。毒素は運動神経末端を通って、骨格筋の強直性麻痺(痙攣)をおこす。未開発国では、臍帯から新生児への感染も多く、年間100万人ほど死亡している。
結核菌気道より感染して、肺に感染巣をきたす。通常これは、石灰化して発病しないが、一部のヒトにおいては発病する。またときには、リンパや血液を通って、髄膜炎や、骨結核などを来すこともある。近年15才以下のヒトに発病が多くなっている。世界的にも、年間数百万人死亡。
らい菌らい菌は感染力の非常に弱い菌。密接な接触がない限り感染しない。
肺炎マイコプラズマ異型肺炎を起こす。小児に好発し、4年に一度オリンピックの年に流行する傾向がある。
発疹チフス(リケッチア) 菌血症をおこしているヒトに吸血したコロモジラミを介して伝搬される。高熱、出血性の発疹が出現。
なお、リケッチアとは、ダニ、シラミ、ノミなどを介して、ヒトに感染するが、生活細胞でなければ増殖できない微生物のこと。
梅毒トレポネーマ性病の一種を引き起こす。感染3年後(3期)以降ではゴム腫、中枢神経障害が出現する。妊婦が感染した場合、菌は胎盤を通過し胎児は先天性梅毒になる。
クラミジア・トラコマチス近年は、性感染症(STD)として、尿道炎や子宮内膜炎、卵管炎、卵巣炎などをきたす。通常クラミジアと言っているのはこれのこと。
ウイルス 細菌類とは異なり、細胞壁、細胞膜、細胞質、核と言う構造を持たない、小さな微生物。大きさは20〜300nmで、光学顕微鏡では見えない。
生きた細胞内に入り込んだときにのみ、自らの核酸の遺伝情報に基づいて、細胞の代謝酵素や成分、蛋白合成の場のリポソームを介して自己成分を合成増殖する。ウイルスが細胞内で増殖すると、多くの場合、細胞は破壊し死滅する。
良く知られているウイルスインフルエンザウイルス(A型、B型、C型)。麻疹ウイルス(はしかの原因ウイルス)。RSウイルス(乳幼児の急性気道感染の病因として最も多い)。痘瘡ウイルス(天然痘の病原)。風疹ウイルス(風疹を起こす)。アデノウイルス(かぜ症状、プール結膜炎、幼児の下痢、嘔吐、腹痛を伴うかぜ症状)。ポリオウイルス(小児麻痺)。肝炎ウイルス(A,B,C,D,E型)。単純ヘルペスウイルス(口唇ヘルペス、眼瞼ヘルペス、角膜ヘルペス)。水痘−帯状ヘルペスウイルス(水痘、帯状疱疹)。ムンプスウイルス(おたふくかぜ)。日本脳炎ウイルス狂犬病ウイルスヒト免疫不全ウイルス(HIV)(エイズ)。
プリオン核酸を含まない、蛋白質のみからなる因子。正常細胞に存在するプリオンタンパク質が異常なタンパク質に変化し、脳組織に蓄積し、プリオン病がおこる。クロイツフェルト−ヤコブ病狂牛病で知られている。
抗菌スペクトル抗生物質をはじめとする抗菌薬の種々の微生物微生物に対する最低は発育阻止濃度を系列化したもの。または抗生物質が有効な微生物に印を付け、プリズムのスペクトルのように系列化して表現したもの。例として普通に使われる消毒剤の抗菌スペクトルを図に示します。
腸球菌ヒトや動物の腸管内の常在菌であるが、普通の抗生物質のみならず、その特効薬として用いられてきたバンコマイシンに高度の耐性を獲得した、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が近年大きな問題となってきた。
炭疽菌ヒト、動物両方に感染する、芽胞形成菌。通常土壌中に存在。
コクシエラ菌 Q熱はリケッチアの一種であるコクシエラ菌(Coxiella burnetii)によって起こる人獣共通感染症。病原体は0.2〜0.4x1.0μm、球菌の1/2〜1/4の大きさでT相菌とU相菌が存在します。T相菌は感染力が非常に強く、慢性Q熱に移行します。U相菌は感染力が弱く、急性Q熱に移行。


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