海賊男(ガスパー)

 当初は試合出場の予定がなかった猪木だが、因縁浅からぬ、あの海賊男の襲撃予告により、急きょ出陣となった。「あの海賊男」といっても新しいファンには何のことか、分からないのだろう。
 海賊男は、その名の通りダーバンを巻き、海賊風の衣装を身にまとい、ジェイソンのようにアイスホッケーのゴールキーパーマスクをしたキャラクター・レスラーである。杖を持参し、凶器として使用していた。
 1986年から87年にかけて、新日マットに登場した。ストロング・マシンズとビートたけし率いるTPGの間の時期であり、前田、藤原、高田ら旧UWFがUターン参戦していた。外人レスラーではブルーザー・ブロディーが追放処分から復帰した頃で、武藤敬司が1度目の凱旋帰国(WCWでムタになる前)、長州らジャパン勢の復帰直前といった時代背景であった。
 フロリダにいた武藤を謎の海賊男が襲撃したというニュースが入ったのが最初で、その後、ビリー・ガスパーと名乗る男から新日襲撃予告のファックスが届いた。新日マットに登場した海賊男の矛先は武藤から猪木へと替わり、さらに、バリー・ガスパーなる第2の海賊男も登場、ガスパーズが結成され、増殖の気配もあった。
 87年3月26日に大阪城ホールで開催された「INOKI闘魂LIVE」では、メインの猪木vsマサ斎藤戦に乱入、斎藤に手錠をかけて連れ去ったことが原因で暴動騒ぎが起きている。
 正体は、時と場合によって違う人物だったようだが、主体となっていたのはカウボーイ・ボブ・オートンJRである。また、マサ斎藤とタッグを組んで、猪木と対戦したのは馳浩だったといわれる。
 ストロング・スタイルの新日に相応しくないとして、ファンからは不評だったが、私は結構好きなキャラクターだった。
 今回9年振りに出現した海賊男は、その体格と動きから、また同日開催となった新日名古屋大会に出場していないことから、その正体は明かである。