UWF旗揚げ

 真相は明らかではないが、UWFの旗揚げは、引退した初代タイガーマスクの佐山と同じく新日プロを追われた新間が手を組んだのが発端で、表向きはタイガーマスクを復帰させるためだったが、実際は新間が、クーデターで失脚した猪木とシンパレスラーの受け皿として設立した団体といわれる。さらにはジャイアント馬場も参加し、フジテレビが放映することになっていたという説もある。それに気づいた佐山がいち早く計画から手を引いたとも言われている。
 猪木が移籍する話しはついていたとされ、旗揚げシリーズのポスターには猪木、タイガーマスク、前田日明、長州力、アンドレらの写真があった。旗揚げ戦では観客の間から「猪木コール」も起きている。
 新間は猪木に移籍金を渡したと発言し、猪木はこれを否定している。移籍金の話しは新間の発言が「4、5千万」という曖昧なものであり、猪木の移籍金としては少な過ぎることから信ぴょう性はないが、猪木にはUWFに移籍する意志があったと思われる。
 いずれにしても、猪木の移籍は実現せず、UWFは4月11日に大宮スケートセンターで旗揚げ。前田日明、マッハ隼人、ラッシャー木村、グラン浜田、剛竜馬という意外なメンバーでスタートした。後に新日本から特別参加した藤原喜明、高田伸彦(延彦)が合流することになるが、猪木に参加の意志がないことを悟った新間は5月21日に引退会見を開き、UWFおよびプロレス界から撤退した。
 UWFは、「Uスタイル」と呼ばれる理想のレスリングを実現するために旗揚げされたわけではない。恐らくは訳の分からないまま取り残された形になったU戦士たちが、一か八かの賭けとして、自分たちの得意とするもの、つまり道場でのスパーリングをそのままリングに持ち込むというスタイルで勝負したのだろう。皮肉なことに、これがファンの支持を集め、プロレス界に大きな新しい流れを作ることとなった。
 そしてUWF騒動と前後してもう一つの事件があった。長州らの大量離脱である。前年に新日本を退社し、新日本プロレス興行株式会社を設立した大塚直樹社長が6月22日に抜き打ち的に全日本プロレスとの業務提携に踏み切った。9月21日には長州ら5選手が新日本を離脱、最終的に13人の選手がジャパン・プロレスと合流し全日プロのマットに上がった。