NWFヘビー級選手権

  1973年当時、全日本プロレスにはNWA、国際プロレスにはAWAというアメリカのメジャー団体との協力関係があった。これに対して、新日本プロレスは、坂口征二の入団、テレビ中継の開始、独自ルートでのタイガー・ジェット・シンの発掘と明るい材料はあったものの、依然として外国人のブッキングルートは確立できずにいた。この年の8月3日には渡米した猪木がNWA総会で加盟申請したが、水面下での全日プロの動きもあり、却下された。
 こうした背景のもと、看板タイトルを求めて、新日プロが招聘したのが、NWF世界ヘビー級王者のジョニー・パワーズであった。
 NWFはナショナル・レスリング・フェデレーションの略で1971年12月1日オハイオ州クリーブランドとニューヨーク州バッファローを本拠地に、ペドロ・マルティネス代表とジョニー・パワーズが中心となって設立した団体で、NWA、AWAそしてWWWWFの全米3大組織に次ぐ勢力であった。
 12月10日、東京体育館でパワーズを破り、王座に就いた猪木にとって、NWFのベルトはIWGP以前の代名詞とされ、このベルトを賭けて、数々の名勝負を展開していった。
 初防衛戦はストロング小林との「昭和巖流島決戦」で、シンとは血の抗争を繰り広げた。ルー・テーズ、ビル・ロビンソンといった大物相手に防衛に成功。後半の最大のライバルはスタン・ハンセンで、ボブ・バックランドのWWWF王座ともダブルタイトル・マッチとしても戦った。
 1981年、IWGP参加のためベルトを返上するまで、連続27回を含む40回以上の防衛に成功した。返上されたベルトは自然消滅。猪木一代のみのベルトとなった。
 2003年には王座が復活され、トーナメントを制した高山善廣が王者となり、7度の防衛に成功するが、中邑真輔のIWGPとの統一戦に敗れて、王座は再び封印された。
 ちなみに、当初このベルトはNWF世界ヘビー級選手権となっていたが、1977年8月29日から世界の名称は取り除かれた。これはNWAからの通達によるもので、交換条件として猪木のNWA世界ヘビー級選手権挑戦を確約したといわれるが、実現はしなかった。

1973年(昭和48年)12月10日 東京体育館 *第14代王者に
 アントニオ猪木(2−1)ジョニー・パワーズ
  1.猪木(20分26秒 コブラツイスト)パワーズ
  2.パワーズ(5分49秒 8の字固め)猪木
  3.猪木(5分10秒 卍固め)パワーズ
1974年(昭和49年) 3月19日 蔵前国技館 *初防衛
 アントニオ猪木(29分30秒 原爆固め)ストロング小林
1974年(昭和49年) 3月21日 米オハイオ州クリーブランド・スポーツ・アリーナ *V2
 アントニオ猪木(1−1)アーニー・ラッド
  1.(15分17秒 両者カウントアウト)
  2.ラッド(5分17秒 体固め)猪木
  3.猪木(8分16秒 体固め)ラッド
1974年(昭和49年) 6月20日 蔵前国技館 *V3
 アントニオ猪木(2−0)タイガー・ジェット・シン
  1.猪木(20分51秒 卍固め)シン
  2.猪木(1分21秒 反則)シン
1974年(昭和49年) 6月26日 大阪府立体育会館 *V4
 アントニオ猪木(2−1)タイガー・ジェット・シン
  1.(11分25秒 両者リングアウト)
  2.猪木(9分46秒 レフェリーストップ)シン
1974年(昭和49年) 7月30日 名古屋市吹上ホール *V5
 アントニオ猪木(2−1)ジョニー・パワーズ
  1.猪木(8分28秒 コブラツイスト)パワーズ
  2.パワーズ(5分35秒 8の字固め)猪木
  3.猪木(4分25秒 反則)パワーズ
1974年(昭和49年)10月10日 蔵前国技館 *V6
 アントニオ猪木(13分13秒 体固め)大木金太郎
1974年(昭和49年)11月 1日 札幌中島スポーツセンター *V7
 アントニオ猪木(1−1)アーニー・ラッド
  1.猪木(17分5秒 体固め)ラッド
  2.ラッド(7分42秒 体固め)猪木
  3.猪木(10分26秒 弓矢固め)ラッド
1974年(昭和49年)12月12日 蔵前国技館 *V8
 アントニオ猪木(28分27秒 卍固め)ストロング小林
1974年(昭和49年)12月15日 ブラジル・サンパウロ・コリンチャン・スタジアム *V9
 アントニオ猪木(19分31秒 両者リングアウト)アンドレ・ザ・ジャイアント
*NWF本部からのシの挑戦を受けるようにとの要請を拒否し、王座返上
1975年(昭和50年) 3月13日 広島県立体育館 *王座決定戦で敗戦
 タイガー・ジェット・シン(19分24秒 体固め)アントニオ猪木
1975年(昭和50年) 3月20日 蔵前国技館 *シンが初防衛
 タイガー・ジェット・シン(19分1秒 両者リングアウト)アントニオ猪木
1975年(昭和50年) 5月19日 カナダ・ケベック州モントリオール・ポール・サウペ・アリーン *王座移動なし
 アントニオ猪木(1−1)タイガー・ジェット・シン
  1.猪木(7分18秒 逆さ押さえ込み)シン
  2.シン(5分11秒 体固め)猪木
  3.猪木(3分47秒 反則)シン
1975年(昭和50年) 6月26日 蔵前国技館 *第16代王者に
 アントニオ猪木(2−1)タイガー・ジェット・シン
  1.猪木(10分41秒 回転足折り固め)シン
  2.シン(2分47秒 アルゼンチン式背骨折り)猪木
  3.猪木(4分23秒 体固め)シン
1975年(昭和50年)10月 9日 蔵前国技館 *初防衛
 アントニオ猪木(17分40秒 岩石落とし固め)ルー・テーズ
1975年(昭和50年)12月11日 蔵前国技館 *V2
 アントニオ猪木(1−1)ビル・ロビンソン
  1.ロビンソン(42分53秒 逆さ押さえ込み)猪木
  2.猪木(16分19秒 卍固め)ロビンソン
  3.時間切れ引き分け
1976年(昭和51年) 3月18日 蔵前国技館 *V3
 アントニオ猪木(2−1)ジョニー・パワーズ
  1.(18分23秒 両者リングアウト)
  2.猪木(5分3秒 卍固め)パワーズ
1976年(昭和51年) 8月 5日 蔵前国技館 *V4
 アントニオ猪木(12分43秒 両者リングアウト)タイガー・ジェット・シン
1976年(昭和51年)10月10日 韓国ソウル奨忠体育館 *V5
 アントニオ猪木(18分3秒 リングアウト)パク・ソン
1976年(昭和51年)12月 2日 大阪府立体育会館 *V6
 アントニオ猪木(17分30秒 逆さ押さえ込み)イワン・コロフ
1977年(昭和52年) 2月10日 日本武道館 *V7
 アントニオ猪木(22分55秒 レフェリーストップ)タイガー・ジェット・シン
1977年(昭和52年) 3月31日 蔵前国技館 *V8
 アントニオ猪木(20分33秒 体固め)ジョニー・パワーズ
1977年(昭和52年) 6月 1日 愛知県体育館 *V9
 アントニオ猪木(23分14秒 両者リングアウト)アンドレ・ザ・ジャイアント
1977年(昭和52年) 9月 2日 愛知県体育館 *V10
 アントニオ猪木(25分13秒 体固め)スタン・ハンセン
1977年(昭和52年)12月 1日 大阪府立体育会館 *V11
 アントニオ猪木(24分1秒 卍固め)パット・パターソン
1978年(昭和53年) 2月 3日 札幌中島スポーツセンター *V12
 アントニオ猪木(21分23秒 リングアウト)タイガー・ジェット・シン
1978年(昭和53年) 3月30日 蔵前国技館 *V13
 アントニオ猪木(24分58秒 卍固め)マスクド・スーパースター
1978年(昭和53年) 6月 1日 日本武道館 *WWWFヘビー級との両選手権 V14
 アントニオ猪木(1−0)ボブ・バックランド
  1.猪木(40分8秒 リングアウト)バックランド
  2.時間切れ引き分け
1978年(昭和53年) 7月24日 広島県立体育館 *V15
 アントニオ猪木(22分34秒 逆さ押さえ込み)ペドロ・モラレス
1978年(昭和53年) 9月21日 品川プリンスホテル・ゴールドホール *V16
 アントニオ猪木(25分37秒 体固め)タイガー・ジェット・シン
1978年(昭和53年)11月 1日 愛知県体育館 *V17
 アントニオ猪木(11分41秒 卍固め)クリス・マルコフ
1979年(昭和54年) 1月12日 川崎市体育館 *V18
 アントニオ猪木(27分2秒 反則)ボブ・ループ
1979年(昭和54年) 4月 5日 東京体育館 ランバージャックデスマッチ *V19
 アントニオ猪木(20分26秒 体固め)タイガー・ジェット・シン
1979年(昭和54年) 4月17日 米ペンシルバニア州アレンタウン・アグリカルチャー・ホール *V20
 アントニオ猪木(10分11秒 弓矢固め)ニコリ・ボルコフ
1979年(昭和54年) 4月22日 メキシコ市エル・トレオ・デ・クワトロ・カミノス V21
 アントニオ猪木(2−0)カネック
  1.猪木(11分40秒 反則)カネック
  2.猪木(7分50秒 体固め)カネック
1979年(昭和54年) 5月10日 福岡スポーツセンター *V22
 アントニオ猪木(16分49秒 首固め)ジャック・ブリスコ
1979年(昭和54年) 8月 2日 品川プリンスホテル・ゴールドホール *防衛回数カウントされず
 アントニオ猪木(17分59秒 ノーコンテスト)タイガー・ジェット・シン
1979年(昭和54年) 8月10日 米カリフォルニア州ロサンゼルス・オリンピック・オーデトリアム *V23
 アントニオ猪木(7分3秒 両者リングアウト)タイガー・ジェット・シン
1979年(昭和54年) 8月17日 カナダ・カルガリー・スタンピート・グラウンド・ビクトリア・パビリオン *V24
 アントニオ猪木(9分15秒 体固め)スタン・ハンセン
1979年(昭和54年)10月 4日 蔵前国技館 インディアンオイルデスマッチ *防衛回数カウントされず
 アントニオ猪木(20分22秒 ノーコンテスト)タイガー・ジェット・シン
1979年(昭和54年)11月 1日 札幌中島スポーツセンター *V25
 アントニオ猪木(17分1秒 反則)ダスティ・ローデス
1979年(昭和54年)12月 4日 大阪府立体育会館 *V26
 アントニオ猪木(8分29秒 体固め)ペドロ・モラレス
1979年(昭和54年)12月17日 米ニューヨーク州マジソン・スクエア・ガーデン *V27
 アントニオ猪木(14分59秒 体固め)グレート・ハッサン・アラブ
1980年(昭和55年) 2月 8日 東京体育館 *王座転落
 スタン・ハンセン(17分12秒 リングアウト)アントニオ猪木
1980年(昭和55年) 4月 3日 蔵前国技館 *第18代王者に
 アントニオ猪木(12分55秒 体固め)スタン・ハンセン
1980年(昭和55年) 5月 9日 福岡スポーツセンター *初防衛
 アントニオ猪木(17分3秒 反則)スタン・ハンセン
1980年(昭和55年) 8月 9日 米ニューヨーク州シェア・スタジアム *V2
 アントニオ猪木(9分41秒 体固め)ラリー・シャープ
1980年(昭和55年) 9月11日 大阪府立体育会館 *V3
 アントニオ猪木(17分47秒 リングアウト)スタン・ハンセン
1980年(昭和55年) 9月25日 広島県立体育館 *V4
 アントニオ猪木(10分49秒 逆さ押さえ込み)スタン・ハンセン
1980年(昭和55年) 9月30日 日本武道館 *V5
 アントニオ猪木(14分53秒 卍固め)ケン・パテラ
1980年(昭和55年)11月 3日 蔵前国技館 *V6
 アントニオ猪木(13分19秒 体固め)ハルク・ホーガン
1980年(昭和55年)12月29日 米ニューヨーク州マジソン・スクエア・ガーデン *V7
 アントニオ猪木(12分47秒 体固め)ボビー・ダンカン
1981年(昭和56年) 2月 4日 大阪府立体育会館 *V8
 アントニオ猪木(12分37秒 体固め)ケン・パテラ
1981年(昭和56年) 4月17日 鹿児島県立体育館 *王座はコミッション預かり
 アントニオ猪木(13分24秒 没収試合)スタン・ハンセン
1981年(昭和56年) 4月23日 蔵前国技館 *王座決定戦で第19代王者に
 アントニオ猪木(12分56秒 体固め)スタン・ハンセン
*IWGPに向け王座返上